経営ハッカー | 「経営 × テクノロジー」の最先端を切り拓くメディア
2019年09月05日(木)

マジレス炸裂!田端大学塾長・田端信太郎×freee株式会社・鈴木眞理のガチンコ対談【後編】

経営ハッカー編集部
マジレス炸裂!田端大学塾長・田端信太郎×freee株式会社・鈴木眞理のガチンコ対談【後編】

今、ビジネスマンの“脳味噌のスポーツクラブ”的存在として、大いに注目を集めている『田端大学』。元LINE執行役員で現ZOZOTOWN執行役員の田端信太郎さんが2018年に立ち上げたオンラインサロンで、歯に衣着せぬ叱咤激励、いわゆる“マジレス”の数々が話題となっています。

田端大学では毎月定例会議が開催され、メンバーがその月の課題図書に関して課題を提出し、田端さんに選ばれた3人がプレゼンを行いMVPを決めます。今回、田端さんと対談するのは、2019年5月の定例会議において、入会初月で月間MVPを獲得しそこから3ヶ月連続プレゼンターに選出中のfreee株式会社鈴木眞理@shinri_55さん。

田端さんのマジレスが炸裂した【前編】に引き続き、【後編】ではビジネスや起業のあり方、マーケティングやブランディング、副業の重要性などについて白熱した意見が交わされました。その模様をお届けします。

田端大学がベンチャー企業社長向けプランを作った理由

鈴木:IPO事業部を始めてから、ベンチャー経営者の方と話すことも多いんですけど、田端さんも今回ベンチャー企業社長向けプランを作ったじゃないですか。それはどんな理由があったんですか?

田端:田端大学はある種のビジネスナレッジ提供業。自分が法人を作って思ったんですけど、人の会社に発注するお金って経費になるから、相手に対しての損金として自分の受注が立つということは、自分の売上を膨らます上ではめちゃくちゃ大事だと思うわけですよ。でも、個人のポケットマネーだとそういう感覚がないじゃないですか。学生も200人に到達して、これ以上個人を増やしていくのはそろそろ難しいなと思っていて。そうすると次に単価を上げていくためには、1人の単価を上げるしかないというのと、もともとツイッターでの拡散をセットにしたら高単価でも取れるだろうな、とは思っていたんです。

鈴木:実際、ベンチャー社長向けプランは一瞬で埋まっていましたよね。ベンチャーをターゲットにしたのは社長個人がお金が払いやすいということから?

田端:会社として受注して、行きたくもない社員を「お前、田端大学に企業派遣として行ってこい」みたいな感じで数人送り込まれるのって、お互い不幸だと思うんですよね。そういう意味でいうと、スタートアップの創業オーナー社長というのは、基本的に法人と個人が一致しているじゃないですか。完璧に一致はしないけど重なっている部分が大きい。だから、法人会員のようで個人会員ということを考えると、必然的にそうなるんですよね。

鈴木:社長=法人というか、会社の顔というか。

田端:そうそう。ベンチャーの社長と話をしているとヴィジョナリーな人って多いんですけど、でも社長自体が前に出ているかというと出ていない会社も多い印象です。

鈴木:freeeも社長の佐々木はあまり前に出るのが好きじゃないほうですね。でもそれこそ、ZOZOの前澤さんは前に出ている。社長個人が前に出てくるのって、会社の認知度を上げるためには有効なのかなと思うんですけど。

田端:唯一絶対の道ではないが、王道の一つではあると思いますよ。

鈴木:そういうところを狙って、ベンチャー社長プランを作ったと。

田端:逆にその自己顕示欲に対して、横から燃料投下の助太刀しますよ、という(笑)。そのかわり会費くださいっていう、平たくいうとそういうモデルじゃないですか?ソーシャル雇われ太鼓持ちみたいな。

鈴木:そこで一気に、田端砲で認知度が上がっていくと。

田端:あとはZOZOもそうですけど、そうは言いながらも創業オーナー社長って、ほっといたら裸の王様みたいになりがちだから、僕みたいな人間が外から身も蓋もなくマジレスしてあげると、けっこう喜ばれるんですよ。社員になっているとなかなか言えないじゃないですか。

鈴木:なるほど。でも田端さんはZOZOの社員じゃないですか。前澤社長にマジレスすることってあるんですか?

田端:しばしばありますよ。

鈴木:そうなんですね。それはけっこうモノが言える社員だということですよね。

田端:僕なんかはいつクビになってもいいと思っているから(笑)。言うべきと自分が思うことは言わせてもらいます!というスタンスなんです。

鈴木:freeeは比較的意見を言いやすい会社だと思うんですけど、社長と違う意見を言いやすい雰囲気のある会社は、まだ少ないという気はします。私自身が田端大学に入って、いろいろ厳しいマジレスをいただきましたが、そういう機会というのは意味のあることだと思います。社内で厳しいことを言われるケースって、今は少なくなっちゃっているので。その感覚がある人達は、田端大学に合うのかなと思います。

田端:今はパワハラだ何だと言われて、どんどんオブラートに包んだような物言いしかできなくなっているよね。でもサロンだと、僕がどれだけ言おうがパワハラにはならないから(笑)。

上司はあくまで会社のために結果を出すのが仕事

鈴木:当たり障りない言い方だと、確かに本音が言いづらくなりますよね。つまり、田端大学では上司みたいな役割をしていると?

田端:上司というより、いわゆるメンターですよね。上司っていうのは、いずれにせよ会社の利害を背負っているじゃないですか。

鈴木:それは上司が会社の利益を最重視しなければならないからだったり?

田端:例えば「3年間だけ地方に転勤してくれよ」なんて状況があるじゃないですか。個人にとって必ずしも良い話ではないかもしれないけど、会社としては誰か転勤させないといけない。そういう状況って、上司は決してニュートラルじゃなくて。あくまで上司っていうのは、社員なり会社の部下を使って会社のために結果を出すのが仕事だから、利害を完璧に合わせることは基本的にありえないんですよ。

鈴木:会社は利益を出すためにお金を払っているわけですもんね。

田端:なるべくなら、個人にも会社にもハッピーであればいいけど、対立はゼロじゃない。そういう意味で、僕は田端大学の学生に対して利害関係にはなく、100%その人のメリットになる観点から考えるというのが義務だと思います。田端大学は学生が僕にお金を払っているわけじゃないですか。会社は社員にお金を払う立場だから。誰が誰にお金を払っていて、どっちが権利と義務を持っているのかを考えたら、当たり前のことで(笑)。

鈴木:田端大学の学生は田端さんのクライアントで、その人達を成功させるために、厳しいことも言うのであって。

田端:成功してほしいし、できれば満足してほしい。最低でも「なんだこれ」って失望してほしくないという気持ちはあります。だから自分でもひどいこと言っているなと思いながらも、一理も二理もあることをぶつけるのが僕の職業的義務かなと思っていますね。だから僕は最近よく「SMクラブのS嬢をやっているみたいなもの」と言ってるじゃないですか。案外みんな、ビシバシやればやるほど喜ぶから(笑)。怒って出ていくかと思ったら「こんな事言われたの初めてです、ありがとうございます」みたいな。みんな素直で真面目だよね。真面目な人って多いんだなと思って。

鈴木:田端さんは、田端大学も真面目な人が多くなっているっておっしゃっていましたよね。

田端:良く言えば真面目なんだけど、悪く言えばあまり考えていないということですよね。言われたことをそのまま信じて、言われた通りにやってますみたいな。もしかしたら、会社からの大本営発表を真に受けている方が楽なのかも。何か違うなと気づいちゃうより、いろんな意味で楽だもん。意味を考えずにいることは。

鈴木:自分は会社にしがみつくというより、会社が掲げているビジョンが腹落ちしているから、それで頑張れる部分はあります。個人的な経験からですが、外資の会社はビジョンに共感して働くというより、どちらかというと売上を上げてインセンティブをもらうことを重視する面もありがち。freeeに来てからビジョンに共感して頑張れるというのは、それはそれでいいなと思っています。

田端:まあ、それこそゼロイチの話じゃないと思いますよ。

社会的じゃない起業なんて最初からありえない

鈴木:さっきのバランスの話ですよね。田端さんは「それってキレイ事だよね」みたいな話をけっこうするじゃないですか(笑)。社会のためと言うけれど、結局個人のためだよね、と。でも田端さんのやっていることは、なんだかんだ言って、社会のためという側面もあるのでは?

田端:それはそう言ってくれたら嬉しいんだけど、僕は社会的起業っていう言葉があまり好きじゃなくて。無人島で一人で起業しようと思ってもできませんよね。絶対にお客さんがいてナンボだから、最初から社会的じゃない起業なんてありえないんですよ。福沢諭吉風に言うと「一身独立して一国独立す」だから。誰かが起業してハッピーになれば、結果的に家族や知り合いなど、その周囲の人もハッピーになる。そういう波及ってあるじゃないですか。

鈴木:田端さんは「世の中に生きた証、爪痕を残したい」ということもおっしゃっています。それは自己満足なのかなと思うんですけど、そうやって家族や知り合いが幸せになることが、もっと大きな意味で充実した自己満足に通じるのかもしれませんね。

田端:そうそう。最高の自己満足は、他人なり家族なりが自分を通じて喜んでくれるっていうこと。最後は哲学的なことになる。

鈴木:そうですね。

田端:でも「大義のために苦しいことを我慢してイヤイヤやっています」みたいな、「私財をなげうって立派なことをやってます」みたいなのは、恩着せがましくて嫌なんですよ。別に頼んだわけでもないし「お前がやりたくてやってんだろ!」っていう(笑)。そういう人に限って「こんなに苦しい自分、頑張っている私をわかってほしい」って言いがちだから。

鈴木:アピールして周りに認めてほしいから、結局やっているんでしょということですよね。

田端:お金が儲かることは、別にゼロサムゲームじゃないから、「他人を満足させるために自分を犠牲にして」みたいになっているのが、もうダサいなって。その人がやっていることの価値って、その人がどれだけ自己犠牲しているかどうかと関係ないと思うんですよ。

鈴木:大切なのは結局、どうアウトプットされているか。

コストとバリューとプライスはそれぞれ独立したもの

田端:まずいラーメン店の店長が「うちのラーメンは原価率高いんですよ」って言ったところで、知らねえよって感じじゃないですか(笑)。ビジネス風に言うと、原価率が超安かろうが、うまかったら千円払うし、原価率9割だってまずければ食べないし。コストとバリューとプライスって、それぞれ独立している話だと思うんです。ところが、日本人の考え方としてまずコストが先にあって、それに対して2割ぐらいのマージンを乗せてプライスにして、プライスタグが付いているからこの品物は800円なんだって認識する。こっちは3千円、こっちは3万円、だから3万円のほうが良いに違いない、という具合に。

鈴木:バリューが高かったら、コストがいくら安くてもそれに見合ったプライスを付けられるということですね。

田端:そう。砂漠の真ん中で、喉が乾いて瀕死の人の前にミネラルウォーターを置いたら、10万円出したって買うかもしれないじゃないですか。採水コストがいくらかかっているかなんて関係ない。自分が持っているプロダクトをどういう文脈で売ったら一番喜んでもらえて、高く売れるか。そういうことを考えるのをビジネスだと思うんですよ。

鈴木:営業の価値は、そのバリューを伝えるられるところだと思っています。freeeにしても、法人向けのプランになってくると、マーケティングだけでは本当にそのバリューを伝えきれない。その伝えきれないバリューを伝えるのが営業の役割だと思うんです。

田端:伝えるだけじゃなくて、バリュー自体を作れると思う。法人向けプランに金額を払っても、中小企業の経理担当を3人削減できるなら、お釣りがくるじゃないですか。そういうことって、いきなりマーケティングメディア越しには言えないから。広告に書いても、さすがにそれだけではリアリティを持たない。

鈴木:そうですね。そこは直接会って面と向かって話すから伝わるということはありますよね。田端さんがベンチャー社長向けプランを設定したということは、ベンチャーのマーケティングを支援するというメッセージですよね。それはマーケティングが上手くいっていないベンチャーが多いと思ったから?

超一流の選手にもコーチが必要。ビジネスも同じ

田端:いや、そうではなくて。マーケティングやブランディングで大切なのは、要は他人から見たときにどう見えるかっていうこと。例えば、超一流といわれているスポーツ選手にもコーチがいますよね。ゴルフのスイングチェックみたいなもので、選手本人は自分で自分のことを客観的に見られないから、コーチに依頼するんです。ビジネスも自分と他者という概念があって初めて成り立つものだから、「第三者からはこう見えていますよ」という意見は根源的に必要だと思うんですよ。

鈴木:しかも、選手としての実績ではコーチのほうが劣っていたとしても、選手への指摘は率直に伝えないといけない。やはりそれは、気を使わずに本音で言える人が必要なのでしょうか?

田端:言われたほうが「なるほど」と思えるような、ある種の信頼やリスペクトが前提になりますよね。同じこと言われても、違う人から言われたら「確かに」と思うかもしれないけど、通りすがりに見ず知らずの人からいきなり言われたら「知らねーよバカ」みたいな(笑)。

鈴木:そのためにはRTB(reason to believe)が必要になってくると。

田端:RTBもそうだけど、アドバイザービジネスや社外取締役といったビジネスは、逆説的なんだけど、自分から営業に来たやつはダメなんですよ。

鈴木:それはどうしてですか?

田端:だって自分から売り込んできたヤツが、本当にクライアントにとって厳しいことを言うはずがないじゃないですか。

鈴木:そうですね。どうしても迎合しちゃうところがある。

田端:さっきの選手の例で言えば、選手側から「あのコーチがいいらしい」と聞きつけてきて、コーチになってもらえませんかと依頼する。コーチ側も「キミなかなか見込みあるね。でも俺の練習は厳しいよ」なんてことを言ってやる。お互いそんな関係だと思うんですよ。

クリエイティブな仕事に費やす時間を増やすべき

鈴木:声を掛けられる側にならないといけないですよね。でもそれって、プレーヤーとしての実績がないと最初は難しくないですか?

田端:そういう文脈で言うと、副業の大事さも見えてくるよね。いきなり本業で独立してフリーランスやるとしたら、生活のこともあるから「何でもいいからとにかく仕事ください」となりがちじゃないですか。副業だったら、社長の人柄やビジネス内容を見て、面白そうな案件だけやってもいい。そういう意味では、副業だからこそ歯車の最初の一回転目がうまく回り出す気がします。

鈴木:そうやって経験を積むことで、声を掛けられる方になっていけるということですね。それにはメンターやトレーナーが必要で、さらに時間をかけたくないところは、時間をかけなくてもできるようにする仕組みが必要になる。

田端:単純作業は本当にいらないですよね。経費精算なんかも今は自分でやっていないけど、20代の自分が現場でやっていた頃を思い出すと、もう何回も「もういいや」って領収書をゴミ箱に入れて終わらせようとしたことがある(笑)。そんなことより、その時間で他のことやったほうが良い。

鈴木:社長や経営層の時間が100あったとして、50をそこに使っちゃっているとしたらすごくもったいない。freeeとしては田端大学では学べないような、工数削減やバックオフィスの効率化、内部統制などの支援したいと思っています。

田端:本当にもったいないです。ゼロにはできないと思うけど、10以下でいいんじゃないですか(笑)。そのあたりのことを楽にしてかないと、もっと付加価値のあるクリエイティブなことに時間を使えないからね。

鈴木:本当にゼロに近くしたいですよね。なのでベンチャーの方にはぜひ、フロントサイドの戦略は田端大学に相談してブランド人を目指していただき、バックオフィスについてはfreeeで効率化していただければというのが今日の結論ということで(笑)。

田端:この副業時代、サラリーマンの方もどんどん個人会社を作ってfreeeを導入していけばいいんじゃないかと思います

鈴木:今日はありがとうございました。バックオフィス効率化したい方は是非freee鈴木@shinri_55までDMください(笑)

【プロフィール】
田端信太郎(たばた しんたろう)

NTTデータを経てリクルートへ。フリーマガジン「R25」の立ち上げや、広告営業の責任者を務める。2005年、ライブドアに入社し、livedoorニュースを統括。ライブドア事件後は執行役員メディア事業部長に就任し経営再生をリード。さらに新規メディアとして、BLOGOSなどを立ち上げる。2010年春からコンデナスト・デジタルへ。VOGUE、GQ JAPAN、WIREDなどのWebサイトとデジタルマガジンの収益化を推進。2012年、NHN Japan(現LINE)執行役員に就任、広告事業部門を統括。現在、株式会社ZOZOコミュニケーションデザイン室執行役員。


鈴木眞理(すずきしんり)

新卒でキーエンスに入社。製造工程の効率化に取り組んだあと、企業全体の効率化に取り組みたいと思いSAPに転職。SAP、OPENTEXTといった外資IT企業で大企業向けの業務効率化に携わっていく中で、日本の中小企業の生産性にこそ改善余地が多いと感じfreee株式会社に入社。大規模会計事務所向けチームのマネージャーとして営業、導入コンサルティングに携わる。現在、同社IPO事業部マネージャーとしてIPOを目指すお客様向けにfreeeを使った内部統制の整備を支援。

この記事の関連キーワード

関連する事例記事

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    インタビュー・コラム2023年02月28日経営ハッカー編集部

    衆議院議員・小林史明氏×freee佐々木大輔CEO 企業のデジタル化実現のために国が描く未来とは?

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    インタビュー・コラム2022年10月24日経営ハッカー編集部

    仕事が・ビジネスが、はかどる。最新鋭スキャナー「ScanSnap iX1600」の持てる強みとインパクト

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    インタビュー・コラム2022年08月30日経営ハッカー編集部

    ギークス佐久間大輔取締役、佐々木一成SDGsアンバサダーに聞く~フリーランスと共に築くESG経営とは?

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    インタビュー・コラム2022年08月28日経営ハッカー編集部

    サイバー・バズ髙村彰典社長に聞く~コミュニケーションが変える世界、SNSの可能性とは?

  • 資本金・資本準備金・資本余剰金の違いとそれぞれの役割を徹底解説
    インタビュー・コラム2022年08月05日経営ハッカー編集部

    バックオフィスをどう評価する? 経理をやる気にする「目標設定」と「評価基準」の作り方

関連記事一覧