海外旅行特化メディアでMAU10万人超え!「TABIMUSE」運営会社バリーズ株式会社CEOに聞く、共感から育てるサービス作りとは?
バリーズが運営する「TABIMUSE」は旅好き女性から絶大な支持を受ける海外旅行情報メディアだ。海外旅行をこよなく愛する女性たちが、自身が体験した旅行で撮影したオシャレな写真とセンスのある文章で綴る旅行記がメインコンテンツとなっている。旅行メディアが乱立する昨今の状況の中、読者1人あたりのPVおよびページ滞在時間は、他の有名旅サイトの2倍近くの差をつけ、海外旅行特化メディアとしては異例のMAU10万人以上を誇る。
しかもスポンサーには、ディズニーインターナショナル・ANA・日本旅行・三越伊勢丹というようなビッククライアントを多数有している。
BtoCサービスの運営者は、顧客数を増やしたい、商品のクオリティを上げたい、工数・経費はなるべく抑えたい、スポンサーを増やしたい等々、多くの課題を抱えていることだろう。
今回は、実直に顧客の共感を積み上げ、コミュニティが拡大を続ける、バリーズ株式会社代表取締役 野々村菜美氏に、選ばれるサービスになる秘訣について伺った。
TABIMUSEが読者から選ばれている理由
-まずTABIMUSEとはどのようなメディアか、そして、事業内容を教えていただけますでしょうか。
TABIMUSEは、オトナの女性向けに、厳選したホテル・グルメ・スパ・ショッピングなどの情報をお届けする海外旅行専門メディアです。「ミューズ」と呼ばれる独自の旅スタイルがあり、SNSで濃いファンを持つインフルエンサーが、実際に体験した海外旅行を写真と文章によって綴った旅行記がメインのコンテンツになります。1日目・2日目・3日目…と、彼女たちが空港から始まって現地に滞在し、帰国するまでの旅体験を紹介しており、TABIMUSEを見て「私もこんな旅をしてみたい!」と参考にしてもらえるような内容になっています。
このTABIMUSEのメディアを軸に、イベント事業、ツアーやメディア・コラボ商品など多岐にわたるプロデュース事業、ホテルとインフルエンサーのマッチングプラットフォーム「SOCIAL PORT」の運営など、TABIMUSEで培った経験やノウハウを生かして横展開も行っております。
-TABIMUSEはMAU(Monthly Active Users)が10万人以上であったりページ平均滞在時間が4分50秒と、他の旅メディアに大きな差をつけているのはすごいですよね。どういった工夫でこれを可能にさせているのでしょうか。
一番の強みはやはり、記事を作ってくれるミューズの皆さんの良質な記事です。写真一つとっても、画角だったり明るさや色合いだったり、微妙な調整で大きく印象がかわります。オシャレなカフェのマグカップの写し方一つとってもそうですし、ホテルのインテリアだったり、何気ない街の風景さえも、彼女たちの見えている風景ってやっぱりセンスがあるんです。
そして、写真は上手くても文章力がないと海外旅行そのものの魅力が伝わりませんが、トップブロガーの皆さんはさすが文章力もあるし、何気ない一面を切り取る力が素晴らしいんです。トランジットの際の注意点からその土地にあったファッションコーデ、現地で実際に感じた街の治安だったりと、旅行をしたい女性が「そういうところを知りたい!」と思う情報を提供してくれています。そのおかげもあって、96%の読者さんが次の旅行の参考にしたいと回答して下さっています。
-TABIMUSEを始められた経緯について教えてください。
2014年に創業し、現在5期目になります。きっかけは、私自身海外旅行が大好きで、前職の会社員時代に休暇を使って、フィリピンのマニラに旅行をした時、ホテルのバーで友人と「海外旅行の食べログみたいなサイトがあればいいのにね!」と雑談していたのです。それが、帰りの飛行機の中では「実際にどういうサイトを作ればいいかな?」という話ですっかり盛り上り、どんどん具体的に前に進んでいきました。
当時、私が海外旅行をしたいと思った時に、いろんなサイトや雑誌を見て下調べをする中で、一番役に立ったのは個人で運営されているブログだったんですよね。インターネットのまとめサイトや雑誌の情報も、もちろん参考になるのですが、やっぱり実際に行った人が、どんな所へ行きどんなことを感じたのか、ブログだと書いている人の顔が見える分、リアルにその土地の魅力を感じることができたので、とても参考にしていました。
だから初めは起業したいとか、経営者になりたいという意志があったのではなく、こういうサービスがあったら私も嬉しいし、さらに日本の旅好き女性にとっても役立つサイトになるのではという想いから始めました。
-違う畑からの起業は大変ではなかったですか。
もちろん初めてのことばかりで色々と大変なことはありました。全くの素人だったので特にマネタイズには苦労しました。どんなに想いや世界観があったとしても、PVとしてすぐに反映されるわけではないことにすぐに気づかされました。それでも、私を信じて応援してくださる方や、記事を待ってくれている読者のために頑張りたいという想いがあって、そこから経営者としての自覚を持ち始め、創業から半年くらいでなんとか資金調達に漕ぎつけることができました。
とにかく「こういうメディアを作りたい!」という想いを周囲に伝え、スタートアップ企業の経営者やコンサルタントを紹介してもらうなどしていた頃、個人的にFacebookをフォローしていた女性起業家の経沢香保子さんがスタートアップへの投資を行っているという投稿を目にしたのです。メッセージを送るとすぐに返事をいただき、直接お会いした時に、未来のビジョンや熱い想いをプレゼンしたところ、事業計画書の精査もほどほどに「応援したくなった」とご支援をいただくことになったのです。これが大きな転機となり、出資頂いた資金で社外のリソースを使ってサイトを充実させるなど、インフラを整えていくことができました。
良質な記事を生み出してくれる“ミューズ”との関係づくり
-ライターであるミューズはどのようにして選ばれているのでしょう?選定基準はありますか?
ミューズに共通しているのは「海外旅行が大好きで、自分の旅スタイルを楽しんでいる」ということです。有名モデルさんやインスタグラマーさん、会社員の方、海外が好きで移住された方など、それぞれが海外旅行への想いを強く持ってらっしゃいます。だから写真にしても文章にしても、それぞれの魅力が光っていてこだわりを感じるんです。
オープンした当時は、インスタグラムやブログを見て、この人の世界観がステキだなと思った方に「海外旅行の魅力を発信するメディアを作りたいから、あなたの旅体験をTABIMSUEに綴ってほしい」とラブレターのようなダイレクトメールを送って、地道にお願いしていました。すると不思議なことに、断られることは殆どなくて、むしろ「私もそういうサイトが欲しかった」と賛同してくれる方ばかりでした。やっぱりTABIMUSEは今の時代に必要とされているなと、自分の中でも再認識することができました。結果的に1年目は70人くらいのミューズにご参加いただくことができました。
当初はフォロワー数が多い方を優先していましたが、最近では読者さんとのエンゲージの強さを重視しています。フォロワーが5万人いても“いいね!”が200という方もいる一方で、フォロワーが1万でも1,000以上の“いいね!”がつく方もいらっしゃいます。そういった読者さんとの接点が強いマイクロインフルエンサーに注目し、現在では250~300人の方にミューズとして活躍していただいております。
-ミューズの方のモチベーションは何なのでしょう?
皆さんに驚かれるのですが、ミューズの皆様に金銭的な謝礼はお支払いしていないんです。私の頭の中にライティングにお金をかけるという発想がなかったということもあるのですがミューズの方々には「ミューズとしてTABIMUSEで記事を書ける」ということ自体がモチベーションになっていただいているようです。ミューズになることで、自身のブログやインスタグラムのブランドが上がって、いいね!の数が増えたり、中には活動が評価されて海外の観光局から直接お声がかかって、お仕事に発展する方もいらっしゃるんです。それぞれのミューズが、TABIMUSEを上手に活用してくださっていることを感じます。このように、想いの部分に共感して無償で協力することが、結果的にミューズの方のプラスに働いているので、非常に良い関係を築けていると思います。
クライアントから評価されるのはコミュニティの力
-ディズニーインターナショナル・ANA・日本旅行・三越伊勢丹、他にも大手有名企業がクライアントにいるようですが、どのように協力関係を築いてきたのでしょうか。
クライアントの皆様が評価してくださるのは、コミュニティが持つ力だと思います。先ほど申し上げたように、ライターであるミューズの皆さんは独自の世界観を持ち、そこに共感を生み出しているインフルエンサーであり、読者もそういった世界観に憧れてミューズたちを参考にしながら旅を楽しむ女性達です。そのような海外旅行が好きな女性は、ファッションや流行にも敏感な方が多く、消費意欲も高いし発信力も高いんです。そういったアクティブ層をTABIMUSEがコミュニティとして形成していることが、クライアント企業様が魅力を感じてくださる理由のようです。
例えばディズニーインターナショナル様は、コンプライアンスをとても重視していますからバナー1つ貼るにしても規約が厳しいのですが、TABIMUSEの持つ世界観と読者の方々の高い熱量を評価していただいた結果、お取り組みを2年間も継続いただいています。特集に関しては企画から携わらせていただき、読者のフォトコンテストを行ってハッシュタグを集め、グランプリの方に公式ミューズとして現地を訪問してもらったりしています。さらにはクリスマスイベントを開いてTABIMUSEの読者の方々を集め、今後ディズニーに行こうとしている方へのプロモーションを行ったりしました。
その結果、実際に肌感覚として、ディズニー目当てで海外旅行に行く方が増えていることを実感しています。というのも、何よりミューズ同士で影響を受け合い現地に行っているんです。つまり、このコミュニティメンバー自体が、コミュニティメンバーを刺激して、コミュニティ全体をどんどん大きくしてくれている。それを読者も感じて、自分も海外旅行に行ってみようという相乗効果があるんですね。信頼あるクライアントがついてくださると、TABIMUSEへの信頼も上がり潜在的なクライアントの獲得に繋がっています。
オフラインイベントでも読者を大切にする姿勢
-読者の方と関わりを持たれていることはありますか。
TABIMUSEを作り上げてくださっているのは、ミューズと読者の方々ですから、イベントを行って直接双方の声を聞くように心がけています。例えば、去年の8月にニューカレドニア観光局様にスポンサーについていただき、「TABIMUSE NIGHT」というイベントを行いました。ニューカレドニアの基本情報だったり、旅をどうライフスタイルに活かすかというトークセッション、そして交流会を行いました。
-会場での読者の方々の様子はいかがでしょう。
その時に感じたのは、読者が旅好きの仲間で集まりたいとか、リアルの世界でも読者同士のコミュニティを欲しているということでした。初めて会う方同士なのに、交流会ではすぐに打ち解けて旅の話に花を咲かせている様子でした。毎回100人以上の規模のイベントなのですが、応募開始からすぐに満席になってしまうなど、私の想像以上に読者の皆さんの注目度を感じています。「どうしたらミューズになれるか」というご質問が一番多いですね。
-最後にこの記事を読まれている経営層や起業家の皆さんに対して、お伝えしたいことはありますか。
私は起業が目的ではなく、サービスを広めたいという一心だったので、特殊かもしれませんが、やはり世界観を貫いてサービスに対して愛情を注ぐことが大切だと思います。利益はもちろん大切ですが、読者のことを考えて丁寧に企画して工数をかけた分、読者からもクライアントからも信頼を集めることができますから、リピート率が高くコミュニティの結束力が強くなっていきます。特に私たちのようなベンチャー企業はそういった姿勢が大切なのかなと思います。
-貴重なお話ありがとうございました。
【プロフィール】
野々村 菜美 (ののむら なみ)
バリーズ株式会社 代表取締役CEO
地元福岡の大手百貨店に入社後、化粧品コーナー販売員として従事。店舗でのBtoCビジネスにおける営業企画、販売促進、MD計画などの業務を経験する。その後、上京しランジェリーブランドに入社。商品企画部にてコスメブランドの立ち上げに従事。オリジナル商品開発、買い付け、カタログの紙面構成・エディトリアル全般を担当。趣味である旅行領域にビジネスシーズを見出し、2014 年10 月 【旅MUSE】を事業化するべく独立。
実体験を元にした信頼性の高い情報と魅力的な写真で、多くの旅行好き女性から支持されるメディアへと成長させる。現在は、各国政府観光局、航空会社、ホテルなどのプロモーションに携わり、日本女性のアウトバウンド促進のため日々邁進している。
【企業情報】
企業名:バリーズ株式会社
所在地:本社 東京都港区北青山2-7-20 2F
資本金:9600万円
【TABIMUSE】
http://tabi-muse.com/
【TABIMUSE Instagram】
https://www.instagram.com/tabimuse/
【書籍】
MY TRAVEL RECIPE 私らしい旅のつくり方 (光文社)
https://www.amazon.co.jp/dp/4334979351