2019年09月17日(火)5ブックマーク

再生・細胞医療は「細胞の原材料」安定供給がボトルネック、へその緒の再活用で壁を突破するヒューマンライフコード原田CEOの挑戦とは?

経営ハッカー編集部
シェア0
ツイート
ブックマーク0
後で読む

なぜ、へその緒が重要なのかを理解するために、まず再生医療の話から始めてみよう。再生医療は、飛躍的な進歩を遂げ、実用化の時代を迎えようとしている。その適用範囲は広く、抗炎症作用や組織修復作用をもつ細胞を用いて多くの疾病に対応できるのだ。現在、心不全、心筋梗塞等の心疾患、虚血性脳梗塞、筋萎縮性側索硬化症、糖尿病等の疾患から健康維持・美容に至るまで、幅広く製品開発が進められており、人類の福音として世の中の期待も高まっている。産業として見ても再生医療産業の市場規模は、2050年には国内市場2.5兆円、世界市場38兆円(経済産業省)と予測される有望分野だ。
 
その再生医療のベースとなるのが、いろいろな組織や臓器の生成に欠かせない「幹細胞」だ。幹細胞は、胚(受精卵)から培養してつくられる「ES細胞」、人工的に作製される「iPS細胞」、もともと人間のからだの中に存在している「体性幹細胞」の3種類に分けられる。
 
この中で、ヒトES細胞を用いた再生医療は、研究開発段階であり、ヒトの受精卵を用いる医療は倫理的観点から規制する国もある。我が国においても体外受精による不妊治療において使用されず破棄されることになった受精卵の利用に限ってヒトES細胞の作成が認められている。
 
次に「iPS細胞」(人工多能性幹細胞)は、皮膚や血液など採取しやすい体細胞を使って作ることができる幹細胞だ。京都大学山中伸弥教授が2012年ノーベル生理学・医学賞を受賞したことで周知され、iPS細胞を利用した創薬や再生医療への応用は進められているが、品質の均一化、安全性担保の観点から、現状では、産業化にはまだ時間がかかる。
 
前置きが長くなったが、このため現時点において再生医療分野で市販されている幹細胞は「体性幹細胞」のみだ。それでも骨髄から採取された幹細胞は、骨髄の採取がドナーにとって大きな負担となっている。しかも骨髄の入手は輸入に頼っており原材料が高価で、原価が高いために作りだされる細胞医薬品も高価にならざるを得ない。そして、医薬品を安定供給する上での、安定した原材料の確保が決定的に重要なプロセスとなる。したがって、安定した原材料の入手は、安定した細胞医薬品の提供につながるため、再生・細胞医療の普及のための最大の障壁のひとつになっている。
 
これに対し、ヒューマンライフコード株式会社代表取締役社長兼CEOの原田雅充氏が、臍帯・臍帯血等から体性幹細胞を取り出す方法及び保存する技術を東京大学よりライセンスにて入手し、再生・細胞医療の大きなハードルを突破しようとしている。今回、大手製薬会社での安定的な地位と報酬を捨て、病に苦しむ人々を一人でも減らし、一度限りの人生を心豊かに過ごしていける社会の実現を目指して、ベンチャーを興した原田氏に話を聞いた。

目次

    ヒューマンライフコードが目指す再生・細胞医療のイノベーション

    -御社の事業概要を教えてください。

    私共は、臍帯(いわゆるへその緒)や臍帯血等の周産期産物から細胞を取り出し、抗炎症作用や組織修復作用をもつ細胞を培養し、細胞医薬品として開発、難治性疾患の根治、障害のある組織を修復する再生・細胞治療の研究開発を行っております。
     
    現在、経営戦略上ライセンス導入した自動的に細胞等を分離・抽出することのできる機器「ICELLATOR」を薬事申請しており、医療機器関連事業にて、財務基盤を早期に固める目途が立ってまいりました。このため当社は第1期目から売上がたっています。
     
    再生医療等製品である臍帯由来間葉系細胞では、炎症性疾患、希少血液疾患を適応症とするものが研究段階にあり、造血幹細胞移植後に見られる皮疹・黄疸・下痢を特徴とする症候群である急性GVHD(移植片対宿主病)を適応症とするものが臨床試験段階にあります。本件は、東京大学医科学研究所との連携により開発しています。
     
    東京大学医科学研究所とは2017年9月に臍帯由来細胞を用いた共同研究に関する契約を締結、2019年3月には同研究に関する国際的な独占契約を取得、様々な疾患への治療に活かすための臨床試験も進めていきます。
     
    他には、適応症が身体的フレイル・サイコペニア(加齢による体力の低下、身体能力の低下)とする臍帯血由来血管再生細胞も現在、基礎研究段階にあります。
     
    それぞれ、国内外パートナーや研究機関との連携により開発を進めており、数年以内に新薬承認を得ることを計画しています。このように大学などとの豊富なネットワークを活用し、再生等医療等製品関連事業は「ライセンス契約」もしくは「特許共同出願」「研究開発」「薬事承認取得発売」というステップで事業化を進めていっています。

    -事業の中で、今注力していることは?

    現状は幹細胞をつくる材料の安定供給という課題に向き合っています。市販されている細胞医薬品は、主に骨髄から採取された細胞ですが、その施術はドナーさんに大きな負担が伴います。幹細胞を含む骨髄液の採取は提供者(ドナー)に入院いただき手術室で全身麻酔をかけ、腸骨(骨盤骨)へ骨髄採取用の針を刺して吸引して行います。皮膚の穴の数は、骨盤の背中側の左右から合計2~6ヶ所、 同じ穴から何回も角度を変えて骨盤に刺し直し数10回以上針を刺すことになります。これが、ドナーさんにとって大きな負担となっています。日本ではかつての薬害エイズの問題もあり、骨髄の国内流通に関する議論は進んでおらず、もっぱら米国製のものが輸入されているのが実情です。これに対して、私どもは廃棄されている臍帯など周産期産物を利活用することにより、国産かつ安価な再生・細胞医療の普及を目指しています。もったいないことに、現在、多くの周産期産物は利用されることなく廃棄されており、この未利用資源を利活用することは大きな意義があると言えます。

    -こういった分野に取り組まれた背景は何なのでしょうか?

    シェア0
    ツイート
    ブックマーク0
    後で読む

    関連する事例記事

    • インタビュー・コラム12月06日経営ハッカー編集部

      戦略は名刺に宿る!? Sansanを活用した、BtoBマーケティングに必須のABMとは

      0ブックマーク
    • インタビュー・コラム12月05日経営ハッカー編集部

      会計システムは経営の意思決定のためにある。事業拡大に耐えうる仕組みづくりにfreeeが寄与

      0ブックマーク
    • インタビュー・コラム12月05日経営ハッカー編集部

      週1振り返りで仕組み改善し、バックオフィスの社員が事業に伴走できる時間を創出。堅守速攻、組織構築の舞台裏

      0ブックマーク
    • インタビュー・コラム11月25日経営ハッカー編集部

      震災を乗り越え、事業創造拠点として東北をリードするMAKOTOグループ代表竹井智宏氏の挑戦

      1ブックマーク
    • インタビュー・コラム11月22日経営ハッカー編集部

      バチェラー2から「ハイブリッドサラリーマン」へ。ハイブリッドサラリーマン1万人化構想を小柳津林太郎さんに聞く

      1ブックマーク
    関連記事一覧