2019年12月27日(金)1ブックマーク

気づいていますか?BtoBマーケティングの問題。97%のアンノウン(匿名)潜在顧客にどう対応するか~SATORI植山浩介氏に聞く

経営ハッカー編集部
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日本のBtoBビジネスや高単価商材のマーケティングでは、リード(見込み客)をどう増やすのかで各社マーケターは頭を痛めている。通常のWeb経由のアプローチでは、見込み客が資料請求するためにメールアドレスを打ち込んでくれないと、実名化できずセールスに繋げられない。しかし、アドレスを打ち込んで何者かを明かし資料をダウンロードしてくれるのは、関心をもった見込み客のわずか3%程度でしかないとSATORI株式会社代表の植山浩介氏は指摘する。それゆえにマーケターは、どのように資料請求までもっていき実名化するのかに腐心しているわけだが、そもそもリードを増やしたいなら、逆説的であるが残り97%の見込み客を深堀すればよい。そこで、「アンノウンマーケティング(匿名ナーチャリング)」と呼ばれるマーケティングが必要だという。どのように匿名(アンノウン)のユーザーを育成(ナーチャリング)し、実名化し、セールス活動に接続するのか?在学中に起業し、そこからずっとマーケティングツール一筋、エンジニアおよび経営者として8つのプロダクトを世に送り出した植山氏なのだが、9度目の正直「SATORI」がようやくクリーンヒットなのだという。今回国産マーケティングオートメーションの先駆者、植山氏に、今、企業が取り組むべきマーケティングの実践法を聞いた。

目次

    ―まず「SATORI」の概要について教えてください。

    かつて営業といえば、飛び込みやテレアポなど、あの手この手で見込み客に会うことでした。しかし、見込み客によるインターネットでの情報収集が容易になったことで、営業マンからの情報獲得の価値が下がり、営業マンが見込み客に会うこと自体が非常に難しくなってしまいました。昨今の見込み客は時間を割いて営業マンに会う必要性がないのです。今後、購買者と企業とのコミュニケーションの85%は対面のやり取りなしで行われるようになるという予測*もあります。(*出典:Gartner Predicts, Gartner Customer 360 Summit 2011)
    だからこそ「非対面での顧客開拓を仕組化する」ことを目的としたマーケティングオートメーション(以下MA)が注目されているわけです。それを支援するMAツールに必要な機能には以下のようなものがあります。


    1. リード管理:リードのデータベース機能
    2. リードジェネレーション:カスタマーの母集団となるリードを大量に獲得する機能
    3. リードナーチャリング:リードとコミュニケーションし、成約確度を把握するとともに、向上させるための機能
    4. リードクオリフィケーション:成約確度の高そうなリードを絞って抽出する機能
    5. オートメーション:決められたルールに従って、リードへのコミュニケーションを行う自動化機能


    BtoBビジネスや高額商材の場合、すぐに商品やサービスを購入するケースは少なく、リードジェネレーションと、リードナーチャリングによって継続的に見込み客をフォローしていくことがますます重要になってきています。

    ―そのような中で、「SATORI」が多くの企業に受け入れられている要因は?

    ソフトウェアは、お客様に使ってもらって成果を出していただき、追加の課題がでてきたらまたソフトウェアをアップデートしていくというカスタマーサクセスをお客様と歩むことが重要です。これを愚直にやり続けているからだと思います。

    グローバルなソフトウェアはどんな国の顧客でもある程度対応できるように最大公約数的なソフトウェアになりますが、私たちはお客様のカスタマーサクセスのために日本人相手にソフトウェアをアップデートしていっているので、国産としての強みがあります。

    今のマーケティングオートメーションは、マーケティングではない?

    ―では、今のマーケティングオートメーション(MA)の状況をどのように捉えていますか?

     正直にいうと、日本はまだまだマーケティング活動が根付いているとは言い難いのではないでしょうか。現在、MAを導入している企業においては、マーケティング自体というより営業支援が目的で導入されているのが実情だと思います。営業支援もMAの一つの形ではありますので、第一段階としては成果を上げるべきではありますが、その先に両輪のもう一つであるマーケティング業務にも注目されると良いなと思います。

    ―それは日本の慣行も影響しているのでしょうか?

    日本には営業が強い会社が少なからずあります。営業が強いからセールスマンが行くという行動様式になりますよね。それゆえ、日本はMAが発展していると言われることも増えてきましたが、SFAの延長としてMAが使われる形で発展しているのだと思います。MAの導入企業は日本では3,000社くらいでしょうか?市場としてはまだまだこれからです。

    ―具体的に日本のマーケティングにはどういう特徴があるのでしょうか?

    日本のマーケティングやセールスの現場で一番皆さんが困っているのは、リード(見込み客のこと、以下リード)が足りないということです。いまでもまだ展示会に出展する企業が多いのはその表れであり、米国とは違うところだと思います。
    米国ではリードの情報がごく普通に売買されていて買えるんですよ。数万ドル払うと数十万件のメールアドレスが入手できる。よって、それが前提のツールはメールアドレスを外部からインポートしてMAをスタートする仕組みになっています。
    私たちは日本ではリードがそもそも少ないということがわかっていたので、リード獲得に重きをおいたMAは、日本のニーズに合うのではないかと考えてSATORIを作りました。

    ―リードを増やすといっても、日本の場合、Webサイトで資料請求やメールアドレスを登録するときに、自分の名前を入れたくない人が多いと思います。

    その通りですね。見込み客のほとんどは匿名希望だと思います。
    あくまで概算的なものですが、
    ①匿名×そのうち顧客、かつ、資料が欲しい という人が1,000人いるとすると
    ②匿名×今すぐ顧客、かつ、資料が欲しい という人は200人
    ③実名×そのうち顧客 かつ、資料が欲しい という人が40人
    ④実名×今すぐ顧客 かつ、資料が欲しい という人が1人


    ※そのうち顧客とは、そのうち買いたいと回答した見込み客。今すぐ顧客とは、今すぐ買いたいと回答した見込み客。


    といった比率です。 
    つまり、全体に占める①+②匿名の97%の層の育成、実名化こそがポイントであるので、そこに手を打てば成果を上げることが出来ます。この匿名の見込み客へのマーケティングを、「アンノウンマーケティング」あるいは「匿名ナーチャリング(見込み客を匿名のまま育成すること)」と呼んでいますが、見込み客を増やしたい企業は、優先的にこの部分に手を打てばよいということになります。

    個人情報を最後まで取得しない。これがアンノウンマーケティング成功の秘訣

    ―「SATORI」のアンノウンマーケティングでは実際にはどのように匿名の方を実名客にするのでしょうか?

    例として、メールマーケティングにはステップメールというものがあります。このメールを見た人には次にこのメールを送る。メールを開かなかった人にはこのメールを送る、というシナリオがあります。それと同じプロセスを匿名のままやるんです。この記事を見た人にはポップアップで誘導し、さらに必要となる記事を読んでいただく。それからしばらくその方の再訪がなければ、プッシュ通知で来訪を促し、もう一度そのコンテンツを見たら資料請求いただく、という流れで、個人情報の入力を最後まで遅らせてWeb上で接客していくというのがアンノウンマーケティングです。
    これはBtoCだとよく見る光景ですが、洋服屋さんでは、買うまでポイントカードを出しません。来店して、洋服見て、接客してくれて、迷って、離脱すると。でまた来て、ようやく買って、そこでポイントカードを出して、個人情報を開示してもらう。これが当たり前ですよね。 
    BtoBビジネスのセールスプロセスは今逆になってしまっていると思います。展示会に行くと最初からいきなり名刺を求められる。そういうリード獲得の方法にすごく違和感があるんです。その実名アドレスを開示するのを最後のタイミングまで遅らせるっていうのが、アンノウンマーケティングが日本人の気質に合っていて、気の利いているポイントですね。

    ―そういった見込み客育成のシナリオは?

    それはクライアントの業種・業態、商材ごとにそれぞれです。個別コンサルをしながらお客様と設計していきます。分かりやすい例で、家を買うのはどれくらいの期間ですかって聞いても、人それぞれですよね。統計的には出ますが、Web上でそれをお客様にあわせて、そろそろこのコンテンツかなっていうのを出してあげる、そういうことが必要だと思います。 
    考え方としては顧客の属性と履歴などによってスコアリングをして、このページを見たらプッシュ通知を出して、3回目の来訪でこの記事を出すとかですね。これを匿名のままで誘導していくことになります。
    活用サポートには、個別相談会、各種セミナーなどいろいろ機会を用意していますが、「SATORI」の活用についてご説明する利活用セミナーはユーザー様であれば何度でも何名様でも無料かつ無制限でご相談を受けることが可能です。通常プランのオンラインサポートもありますのでかなりの課題解決になると思います。

    ―現在はどのような企業さんが導入しているのですか?

     現在、導入企業は600社を突破しました。実名で公開できるのは、Webサイトに公開しているUSENさま、JUST SYSTEMさま、ユニ・チャームさま、アデランスさま、神奈川トヨタさま、などの企業さまです。
    一般化すると、対面商談が発生する商材をお持ちの企業さまでしたらどんな企業さまでも活用いただけます。ですので、業種・業態などで傾向はあまり絞れませんし、商材もBtoB、BtoCに関わらずセールスマンや販売員が提案をして販売するような高付加価値商材はすべて対象になります。

    コンピュータサイエンス研究者から起業家の道へ進んだ理由

    ―東大を出て起業されるケースは当時珍しかったと思いますが、なぜ起業されたのでしょうか?

    大学生時代にネットエイジというネットベンチャーとの出会いがありました。1996年頃にYahoo!ジャパンの立ち上げ時のWeb開発現場でアルバイトをしました。そのとき「インターネット」に出会ってしまったんです。衝撃でしたね。
    当時、私は大学1年生で工学部におりましたので、そのまま研究者の道を歩もうと思っていたんですが、そこ(ネットエイジ社)は一種独特な雰囲気がありまして(笑)。でもそれが、私には凄くかっこよかった。良いコンテンツをアップすると一気にユーザが集まりサーバーが目の前でパンクしている。さらに、そういうコンテンツを作っている会社がいつのまにかウン億円でM&Aされるとか…。そういうダイナミックさに普通の人生と違った魅力を感じてしまい…研修者の道を外れ今があります(笑)。

    ―その中でもマーケティングにフォーカスされたのはなぜですか?

    マーケティングって、「自分たちがつくりたい世界観を世の中に問うもの」だと思うんです。そこが、凄く面白いと思っています。
    業務効率化やセールスツールも魅力はありましたが、今あるものをどうやって売るか、どうやってコストを下げるかといった部分ではなく、マーケティングは新しい世界、価値、概念を世の中にボンと投げて問いかけることができるので、チャレンジャブルに思えました。コミュニケーションの流れを変えるとか。自分たちが理想とするものを問える「どうだ!」みたいな(笑)そこがマーケティングにフォーカスした理由かもしれません。

    ―「SATORI」以前のプロダクトにはどのようなものがありますか?

    エンジニアとして23年間プロダクトを作り続けてきましたが、「SATORI」で9作品目です。実は8作目までは空振り三振でした。作っては空振りして、壊して、お客さんに謝り・・っていうのをずっと続けてきていて、9作品目でようやく「SATORI」が。例えるなら、センター前にクリーンヒットが出て、草野球チームとして活動していく基盤ができたというところですね(笑)。

    エンジニア経営者として、ひたすらプロダクトを磨いていく

    ―今後の展開をお聞かせください。

    これから3年半、今期から4年で「SATORI」の導入企業3,000社を目指しています。
    そもそも自社の課題がどこにあるのかがわからないという「自分ごと化」していないお客様もいらっしゃるので、今後はそういう方々への認知を着実に行っていくことが大事かなと思います。
    先ほどお話した通り、マーケティングオートメーションの技術で日本のマーケティングの問題、つまりリードがないという課題を解決していかなければなりません。海外ベンダーのように、見込み客のリストを買い、どの国でも適用できる汎用性を持たせるツールをつくるのではなく、これまでの知見をもとに日本のユーザーの声にあわせてソフトをアップデートし続けるのが何より重要だと考えています。 エンジニアとして、いまのプロダクトをひたすら磨いていくということですね。それに尽きます。本当にそれしかないです。 

    ―マーケティングオートメーションの先にはどのような世界があるとお考えですか?

    「マーケティングを当たり前にする」というのがあります。今は「結局セールスでしょ?」っていう捉え方をする方が多いように思います。まずはセールスに寄与しないとマーケティングにならないよねっていうところ。たしかにそうなのですが、それだけじゃないっていう、マーケティングの本質に迫る、そこの部分を極めたいです。

    ―最後に、エンジニアではなく経営者として集中すべきことは何だと思われますか?

    答えになっているかどうかわかりませんが、最近、「道」という言葉をよく使っています。経営者のスタイルは多種多様だと思います。その中で自分はどういうスタイルで、どんなやり方で行くんだということをブラさないことを心がけています。これは経営者だからということではなく、社員も一緒で、みんなに「道」がある。自身がここまで様々な経験をして、こういう境地に出られたという道を示すことで、それぞれの道に気付いてもらい各自が進んでいけるようにする。それがSATORIであり、SATORIの経営でもありますね。

     ―深いお話、ありがとうございました。

     

    ◆プロフィール 
     植山 浩介(うえやまこうすけ)
    SATORI株式会社代表取締役

    東京大学情報理工学系研究科修士課程修了後、トライアックス株式会社を設立。デジタルマーケティング業界にて23年。エンジニアリング・営業・マーケティング・会社経営に従事。2014年にトライアックスの社内ベンチャーとしてSATORIをスタートし、2015年9月新会社SATORIを設立。「マーケティングオートメーション」の第一人者として、過去半年間でセミナー50回、計1,000名以上の参加者に実践的なマーケティングのコンサルティングを行っている。
     
    SATORI株式会社
    2015年9月設立、資本金:1,513,117,539円(払込済資本)、事業内容:マーケティングオートメーションツールの開発・販売、所属団体:公益社団法人 日本マーケティング協会、一般社団法人 コンピュータソフトウェア協会

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