2020年01月17日(金)1ブックマーク

日本の生産性が低いのは「紙とハンコ」のせい?業務を完全ペーパーレス化する賢い方法~ペーパーロジック横山公一氏

経営ハッカー編集部
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日本の労働生産性はG7加盟国で最下位だという話はよく耳にする。しかし、生産性が低い原因は何なのかというと議論百出、どうも釈然としない。しかし、IT化が遅れているというのは、その中でも有力な答えの一つだ。とりわけバックオフィスの生産性を落としているのが「紙とハンコ」だ、とぺーパーロジック株式会社代表の横山公一氏は指摘する。公認会計士として、膨大な紙とハンコと格闘してきた実体験から問題提起し、ついに完全ペーパーレス化の電子認証基盤を独自に作り上げてしまった。あらゆる法的要件を満たし、ワークフロー、電子契約、ストレージが一体となった、バックオフィスの一気通貫・完全ペーパーレス化の仕組みとはどのようなものか?今回、横山氏に聞いた。

目次

    紙とハンコとの闘いが始まる

    -まず、御社の電子認証基盤サービスの概要を教えてください。

    当社の基盤技術では 電子契約やペーパーレス化にかかわるあらゆる法的な要件を満たしつつ、内部統制をきっちりできるようにしながら、領収書・請求書から契約書まで全ての、特に「法例で保存が義務付けられている」企業文書のライフサイクル全般をデジタル化できるのが特長です。

    具体的には、主に3つの製品があります。1つめは社内の稟議などの申請・承認業務を効率化する電子稟議(ワークフロー)、2つめは社外との契約書をデジタル化するpaperlogic電子契約、3つめとして書類の保存をするpaperlogic電子書庫の各製品があり、それぞれ個別のプランがあり初期費用なし、月2万円程度からの定額料金でご利用いただけます。どの製品にも標準で電子認証基盤技術が実装されています。3サービスは2019年3月にリリース開始しましたが、金融業、製造業、不動産業などを中心に約100社様にご利用いただいています。

    出典:ペーパーロジック株式会社ウエブサイト(https://paperlogic.co.jp)より

    -ペーパーレス化への問題意識はどのような経緯でお持ちになったのか、そもそもなぜ公認会計士になろうと思われたのですか?

    私の実家は福島の会津若松で、親が自営業でしたので子供ながらに将来は何か自分でビジネスをするんだろうなと思っていたんです。なので、もとよりサラリーマンになるつもりはありませんでした。

    バブル時代の真盛りに東京の大学に入り、周囲と同様遊びまわっていると、あっという間に大学4年生になり就職を意識したとき、何か虚しさとか、消化されていない自分がいまして。あぁ自分はいつか事業をやるって考えてたなと思い出し、事業に役立つ勉強って何だろうと大学の生協で参考になりそうな本を探しました。そのとき、会計士になったら様々な企業の経営を会計面から把握でき、事業をやるにあたって勉強になると気づきました。私は法学部でしたので簿記もやったことがなかったんですが、その日のうちに会計士・税理士の専門学校に申し込んで、そこから勉強を始めたんです。

    会計の勉強しているうちに、「ビジネスマンの父より息子への30通の手紙」というアメリカのベストセラーになった本と出会いました。それは、事業で大成功した父親が人付き合いとか、お金の使い方とか、家庭とは、ビジネスとは何かを、手紙で息子に語るという本でした。それを読み終わったら、なぜか号泣してしまったんです。

    そして、著者のG.キングスレイウォード氏の経歴を見たら、米国の大手監査法人プライスウォーターハウスの会計士さんでした。彼は監査先の事業家に見初められて、ある会社の経営を任されて会社を大きくしたんです。そういう本との出会いがあって、自分が会計士になろうと思った判断は間違ってなかったんだと確信しました。それで、よし、入るならプライスウォーターハウスだと思ったんです(笑)。

    -結局プライスウォーターハウスには入れたのでしょうか?

    それが、合格発表を見に行って、合格を見届けてから家に帰ってきたら、その日のうちに留守電に20件くらい大手の監査法人さんも含めて「おめでとうございます。面接お願いします」とか、伝言が入ってたんですね。私の電話番号を何処で入手したのかわかりませんが...。30年前の当時は個人情報保護法など無縁の世の中でしたからね(笑)。

    もちろん第一志望はプライスウォーターハウスだったんですが、たまたま面接の順番が最初がトーマツ(現 有限責任監査法人トーマツ)だったので、予行演習だと思って面接を受けたところ、パートナーがいきなり面接に出てきてくれて。当時は面接といってもバブル時代ですので特上のお寿司をいただきながら雑談をするという形式でした。

    噂では、一番給料が安くて朝まで働かされるのがトーマツだという話を聞いていたので嫌だなぁと思いながらも話を伺っているうちにだんだんその気になってしまい、そのパートナーが「じゃぁ僕が他の監査法人さんの面接を全部断ってあげよう」と言ってその場で10件ほど電話して下さって、それでトーマツさんにお世話になろうと決めました(笑)。

    -トーマツでの業務は?

    トーマツには約8年、31歳まで在籍しました。配属はIPO準備を支援する部隊。文字通り、株式公開支援業務や法定監査業務を行っていました。

    そして、辞める2年ほど前にストラクチャード・ファイナンスという仕組み金融の仕事が複数舞い込んできたのです。それまで日本は資金調達といえば、株式発行、借入、社債くらいしかありませんでしたが、欧米では仕組み金融が発達していて、SPC(特定目的会社)を作って、キャッシュフローを生むアセットだけを別にして投資家のファイナンスをつけるというのがあたりまえになっていたのです。

    ある時、担当していた会社さんが証券化、流動化をはじめることになりました。当時は勉強するにも教科書も少ないし、自分で勉強しながらでしたが、今度外資系の会社が提案に来るから、同席して欲しいとなりました。その後もこういった依頼が多くなりましたね。そのうち金融機関や外資の方も「トーマツの横山が詳しいらしい」と言っていただけるようになりました。

    その業界では有名だった会計事務所の代表の方と様々な案件でご一緒するようになったときに、その代表から「横山さんもやればいいのに」と言っていただいた。それを真に受けて(笑)、1999年に証券化に特化した会計事務所をつくって独立しました。その後、案件がひっきりなしに入ってくるようになりました。

    -独立後どのように今の問題意識を持つにいたったのでしょう?

    金融特化型の会計事務所の設立後は、とんとん拍子で会社が大きくなり、当時は約220人くらいの社員で1,500件のプロジェクトを動かしていました。受託資産で4兆円位、金融債権や不動産、知財など多岐に渡っていました。

    しかし、監査法人時代では膨大な資料をFAXで送ってもらい、それを修正して送り返すとかしていたわけですが、ストラクチャード・ファイナンス専門にやりはじめますと、さらに紙とハンコに翻弄されるようになり、きわめて非効率な動きがありました。

    「この非効率さを何とかできないか」ということで、会計事務所グループの関連会社的位置づけとしてビジネスドキュメントをデジタル化するペーパーロジックの設立にいたったわけです。当初は二足の草鞋でしたが、私にしかできない分野のほうに使命感を感じて、私は会計事務所の代表を辞し、同時に株式を売却し、ペーパーロジックの事業に専念することにしました。こういう経緯になります。

    未だに幅を利かせる紙とハンコ、そのボトルネックは?

    -面倒な紙とハンコの非効率性をどうしたら解決できるかという使命感で創業されたと。でも、それが当初からそれがビジネスになると思われましたか?

    もともと会計士の仕事は、紙とハンコにまみれる仕事ですので、その時以来、やればやるほど紙とハンコは日本経済の発展の足を引っ張っているんだということに気づいていきました。

    先日訪問した企業様は、作法通りに議事録をびっしり書かせて、30個も判子がいるんですよ。その社長が言うには「俺は紙がいい。句読点の位置まで観てるから紙のほうがチェックしやすいんだ」と言っていました。トップが句読点の位置までチェックして、それで部下に議事録をびっしり書かせて製本して出席者に回覧して何十個もハンコを押させるわけですよ。これでは日本はだめになりますよ。こんなことしてたら。現場はそんな状態です。

    日本企業の時価総額は、以前は世界トップ50社中6割を超えていたのですが、今はトヨタの1社しかランクインしてない。労働生産性の順位もOECD加盟国中の真中以下なんですよ。サービス業にいたっては、なぜ米国企業の半分程度の生産性しかないのか。これから日本は人口も減少するし、生産性も下がる一方ではないか。


    労働生産性も自慢できる数字じゃないのに、さらに時短、時短って言って、労働力不足を補うには現状維持をするだけでも効率性を最低でも1.5倍にしないとけない。本当は効率性を10倍にするくらいのことをしないと日本はダメになりますよ。

    今、私も「本気でやろうよ!」という働きかけをいろんなところでしているんですが、ペパーレス化、電子化に関係する法律がめちゃめちゃ多いし統一されていないんですよ。

    -ペーパーレス化が進みにくい要因の1つは、法制度をクリアするハードルにあるということですね。

    ビジネス文書を電子化するには法的要件を満たすことが大変重要で、関連法律だけで実に300本もあるんです。国全体がデジタル化されてきているのに、法律が一本化されていなかったので、ペーパーレス化、電子化をしようにも、みなさんデジタルに移行できなくて困っている。

    しかし、ペーパーロジック独自の電子認証基盤は、電子ワークフローフローを使って、権限を持っている方が適切なタイミングで起案内容や添付ファイルを承認することで、意識せずに、当該電子データに認定事業者のタイムスタンプ、PKI(Public Key Infrastructure)基盤活用の電子署名を付し、その成果物たる電子データを法的要件を満たすストレージでキャッチし保管することにより、すべての法律要件を満たすことができるようにしたんですね。

    このためには電子稟議、電子契約、電子書庫という3点セットが必要なんです。

    これがまさに会計士として監査で見てきたガバナンス、内部統制と企業の業務効率化の集大成なんですよ。企業の業務フロー全体を最適化できるのは、企業内外の情報の流れを詳細に追ってきた会計士しかありません。だから私は企業の文書デジタル化、ペーパーレス化を進めて効率化するのは会計士の仕事だと思っています。

    -ペーパーレス化の市場規模は?

    紙とハンコをデジタルに置き換えるマーケット規模は数兆円以上あると言われています。ようやく法整備も進んできましたので、他の会計士さんや士業の方々や様々な会社さんと連携しながら商流や社内文書のデジタル化を進めているところです。

    最近は、特に上場企業やIPO準備企業などが持続的成長のために、SDGsやESG指標を経営に取り入れる流れですね。電子認証基盤を業務フローに組み込んでいただくだけで必然的に、バックオフィスのESG化が実現できます。

    デジタル化の法的要件を満たすっていうことは、見える化、なりすまし排除、改ざん可能性排除、ガバナンスの強化、ができるようになります。

    働き方改革で残業を無くそう、テレワークで女性の社会進出を促進しようという割りには、紙とハンコがあるから会社に行かないといけないわけなんですが、デジタル化すれば承認作業はどこでもできるわけですよ。だから残業削減だけして、業務改革しなくてそれが働き方改革ですか?と言っていて、このペーパーレス化による業務フローの効率化で本当の意味での働き方改革を推進できるわけです。もちろんペーパーレス化は地球環境にも優しいですしね。

    意外に簡単な導入

    -導入が進まない場合のハードルにはどのようなものがありますか?

    今は3年前とお客様の熱量が明らかに変わってきています。本気でやる気なんだなと。
    それでも、日本は長年「紙とハンコ」で業務を回してきたので、トップのITリテラシーがないとなると、それは現場ではなかなか導入しにくいですよね。

    また、中途半端に各部門が業務単位で個別にシステムを使っていて、それがあるから部門ごとにばらばらなので足並みが揃わないとか、部分最適だけど全体最適になってないという例もありますね。現場の方々たちも、どうしてもやらなきゃいけないとならないと、あまり勉強しないですよね。


    先日ある元請さんにも訪問してきましたが、「いやぁうちはお客さんから紙じゃないとだめなんですよって言われるんですよ」と言っていました。お見合いになってしまうんですね。

    -結局はトップの決断力ですか?

    先日、2年前に電子契約を提案した企業の社長にお会いしたんですが、社長さんから「その後うちの会社の検討結果はどうだったの?」と聞かれたんです。「フェードアウトになってしまいましたので、もう他社さんを検討されているんじゃないでしょうか?」と答えたら、「いや、うちはまだ全部紙だよ」という答えが返ってきましたので再訪したんです。すると、2年前の担当の部長と課長さんが出てこられて、最初は「やっぱり紙のフローをデジタルに変えるの難しいですよね」という話をされていたんですが、社長に直接プレゼンしたら、「何、これで済んじゃうの?」っていうことになり、なんじゃこりゃって感じですよ。そんなの多いですよ。

    社長さんも現場からIT用語を使われて、たとえば今データベースをクラウドに置き換えようとしてるんですけど、なかなか難しくて、とか言われると、そうなの?みたいになってしまって、フェードアウトしてしまうようです。

    -一方で導入がスムーズに進む企業さんはどのようなパターンですか?

    若い会社の社長さんはハードルはないですよね。やるべきだとおっしゃってくださいます。古い企業でも働き方改革でデジタル法案とか可決して、この半年で国も本気なんだということがわかり、「トップからやれと言われました」という企業も増えました。いまは変わってきていますね。また、中規模以上の上場準備企業がやるべきだということで電子契約をいろいろ勉強しはじめたというところですね。

    -今後の展開は?

    現在はセミナーを中心に普及啓発活動を行っています。週1回程コンスタントに提携先のベンダーさんのセミナーや会計士さんのネットワークでお客様に提案していただいています。もはや代理店さんを通じて販路を拡大するフェーズに入りましたので、今後は大手ベンダーさんなどとの提携も進めていきたいです。

    資本提携も進めていますが、今は色がつかない程度に出資していただいています。これだけ一気通貫でやっているのは日本ではないと思いますが、我々のアドバンテージは、会計士・税理士・弁護士などの専門家のコンサルティングができることにありますので、まずは「法的なとろこだけでも連携できないか」という他のベンダーさんからの問い合わせも増えています。そのようにモジュールでAPI連携もしていますので、どのようなプラットフォームさんとの提携もできるように、現在のところは無色透明で色がつかないほうがいいかなと思っています。今後は、3年くらいでは会社の目鼻立ちは整えたい。

    内部統制を意識しながら企業の全体最適化のために最適なソリューションを提案して企業のペーパレス化を促し企業価値を高めていくことができるっていうのは、まさに会計士出身の私の仕事そのもので、これは天職だと思っています。

    -よくわかりました。ありがとうございます。

     

    <プロフィール>

    横山 公一(よこやま こういち)
    公認会計士 税理士。ペーパーロジック株式会社代表取締役社長。1991年監査法人トーマツに入所。監査業務、株式公開支援業務、関与先の流動化・証券化の会計税務等を担当。1999年に金融特化型会計事務所を創業。代表パートナーとして取扱いファンド数1500、管理金額4兆円、金融特化型会計事務所としては国内最大手に成長させる。ファンド管理のスペシャリスト。2011年ペーパーロジック株式会社を設立、一般財団法人日本情報経済社会推進協会 インターネットトラスト研究会委員、一般財団法人日本情報経済社会推進協会 電子契約ワーキンググループ委員、産業能率大学客員教授を歴任。現在は国策・規制緩和分野である電子化・ペーパーレス化のフィンテック分野に会計・税務・法律の知見、ネットワークを投入し、生産
    性向上に資するため邁進中。

    ペーパーロジック株式会社
    2011年4月設立、資本金9億77百万円、事業内容:法定保存文書を完全に電子化・ペーパーレス化(紙原本廃棄)するクラウドソリューションを提供

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