2020年01月23日(木)1ブックマーク

売れない理由は立地のせいじゃない!メディア×SaaSで隠れた小売店舗を表舞台に~Pathee(パシー) 寺田真介代表に聞く

経営ハッカー編集部
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「小売業には飲食店ポータルのような検索サービスもなく、もっともIT化が遅れている分野のひとつとなっている」と寺田氏は指摘する。社会的な非合理性が許せない研究者マインドで、小売店舗が光を浴びる世界の創出に取り組み、今成果が実を結びつつある。ネット時代にお店の情報がインターネット上で見つからないことは、存在していないことと同じこと。頑張っているのに埋もれてしまっている小売店を元気にしたいと、国内最大級のお出かけ情報検索サイトPatheeとマーケティング支援SaaSを両輪とした小売業の支援戦略を聞いた。

目次

    Patheeで小売店舗のデジタルマーケティングを支援

    ―Patheeの事業内容を教えてください。

    当社の事業は、小売業を中心とする店舗の主要課題の一つ、顧客接点創出のためにメディアとデジタルマーケティングを支援するITサービスの2本立てで、それらの相乗効果によって相互に成長する事業をおこなっています。まず、メディアでは一般ユーザーを呼び込むお出かけ情報検索サイト「Pathee(パシー)」、さらに店舗のストーリーマーケティングを支援する「Pathee Epic」を展開しています。
    お出かけ情報検索サイトPatheeは「新宿 メガネ屋」「渋谷 充電スポット」といったお出かけの目的や外出先でのちょっと役立つ情報にフォーカスしたお出かけメディアです。現在、掲載店舗数は15万店舗です。月間1200万PVの国内最大級のお出かけメディアに成長しています。

    Pathee https://pathee.com/

    もう一つの小売店舗のデジタルマーケティング支援SaaS「Patheeパートナー」は、店舗のWebサイトの認知向上、SNSなど運用支援、オンラインキャンペーンなど集客のための統合的なマーケティングマネジメントを提供するSaaSです。当社の技術力により、横断的なメディアマネジメントとデジタルマーケティングを圧倒的な効率性で実現します。

    (参考)Patheeパートナー https://pathee.com/lp/

    自由な研究ができる会社を目指して起業

    ―Pathee創業の背景は?

    学生時代の話に遡りますと、東京大学の情報理工学部で無線通信の経路最適化などを研究し、この分野で博士号を取得しました。
    その後日立製作所の研究所に3年弱ほど勤務して、通信規格標準化やスマートグリッドなど国家プロジェクトにも関わりながら様々な研究開発に携わりました。
    入社3年目の2011年頃、FacebookやTwitterが日本でも話題となり、GoogleやAmazonといったITサービス大手の存在が気になり始めました。モノを買うのはAmazon、検索はGoogle、SNSはFacebook、Twitterなどが台頭してきましたが、日本のサービスは一つもありません。学会に出てもGoogleのような外資系の企業が発表する研究は自社サービスで生かされており、とても面白そうにみえた。
    そのような体験があって、隣の芝生は青いじゃないですが、日本の研究者やエンジニアはサラリーマン化しているんじゃないかと危機感を感じるようになり、将来を考えたら会社を辞めたほうがよいという判断に至りました。

    -起業するために会社を辞めたのではないと?

    実は、辞めた当時は何かプロダクトを開発しようとかは考えていなくて、「日本でもGoogleのように研究者が自由な発想で研究できる場を創りたい」という想いが強かったんですね。
    前職で取り組んでいた委託系の研究の場合では、予め予算が決まっていて、研究領域も限定されている。いわゆる制限がかかっている。世の中で汎用化したらもっとこういう世界ができるという構想があっても、この枠のなかでという制限があるんですね。もちろんその領域のなかで創意工夫はするのですが。
    ところが学会でなどでは、自社サービスを展開している外資企業が、自社のサービスの中で培った研究を発表するとめちゃめちゃ面白いわけですよね。こういうことができる会社があるんだな、という羨望の目で見ていました。(もちろん日本の企業にもありますが。)
    自分自身ももちろんそうですが、日本の研究者が自由な発想で研究できる場があったらいいなと思って、自分が会社を立ち上げるならそういう会社にしたいと思い、創業することにしました。 
    会社を辞めた時は、自由に何でもできたんですが、VCのサムライインキュベートの榊原さんにお会いする機会があり、彼に背中を押されました。

    事業計画もないままベンチャーキャピタルにアプローチ

    ーサムライインキュベートの榊原さんにはどうやってアプローチしたのですか?

    Facebookが日本で台頭し始めた時期に「大学生がアプリをつくってVCから資金調達、そして起業する」というような記事を読んだんですね。今思えば無謀極まりない話ですが、世の中にはVCというものがあるのを知って、VCをネットで調べて上から順番に連絡していって。でも9社に断られました。当たり前ですよね。ところが、10番目にサムライインキュベートさんのアポが取れました。事業計画書もないままの突撃だったのですが、大変ありがたいことに、榊原さんに「面白そうなこと考えてるね」「やっちゃいなよ」と言われたんです。出資するためには会社になっていないとだめだという話でしたので、次の日に登記しに行きました。

    ―出資を受けてどのように事業アイデアを練られたのでしょうか?

    私は非合理な社会が許せないという考えがあります。たとえば、飲食店の情報は食べログ、ぐるなび、ホットペッパーなど様々なものがあります。
    前職を辞めて出身の愛知県に帰るとき、新幹線のチケットを買うために金券ショップはどこにあるんだろう?そもそも欲しいチケットは売っているのか?家の近くにクリーニング屋さんがあるのか?とか、まったくわからなかったんですね。東京との格差も許せませんでした。なぜJUDY AND MARYは東京だけでゲリラライブをやってるんだと。そういう背景もあって(笑)
    これだけ飲食店の情報をはじめ、あらゆる情報がネットで検索できるのに、物を買うときだけ情報がないっていうのはなんて不便なんだと思っていたんです。ハンカチ1枚探すのに、どこに売っているのかわからないし、何件かお店を回っても結局良いものがないとか。誰かと待ち合わせをしたとき、待ち合わせ場所で10分時間ができて、少しだけ座れるベンチを探そうと思ってもどこにあるかわからない。喫煙所の場所もわからず探し回っても結局ないとか、こういう不便さが嫌で嫌で。とても面倒くさがりなので。
    こういう誰もが実は感じている知りたいというニーズがあるのに、何で誰もここを解決しようとしていないのだろうと気づいて、だったら自分がやろうと決意したということです。

    ―資金調達はその調査のために使われた?

    いくら検索されないといっても、ネット上のどこかには、小売店の情報があるんじゃないかと思って、検索結果の1万件目でもいいからそういう情報が載ってるんじゃないかと全部情報を洗い出したんですけど、やっぱりなくって。すでにインターネットにある飲食以外の情報を整理していくことで目的の場所が探せるようになるんじゃないかと思ったんですが。
    そこで、毎月2億ページくらいデータを収集して分析してみたところ、実店舗のほとんどのお店がウェブに掲載されていないことがわかりました(笑)そもそもデジタル化されていない。逆に飲食の情報はかなり集まりましたので、ゲテモノ料理が食べられるお店というカテゴリーで検索ができるようにもなるくらいでした。最初は検索エンジンの開発を行っていましたのでサーバー代がめちゃめちゃかかりましたね。
     私はアルゴリズムでなんとか問題解決しようという発想が好きなので、作っていて面白かったですし、何でも自由に制限なく挑戦できるというのが楽しかったですね。当初はビジネスのことは1mmも考えたことがなかったです(笑)

    メンバー皆で小売店100店舗に突撃し、課題のヒアリングをして見えてきたこと

    ーPatheeはご自身の体験から生まれた事業だと思いますが、事業構想にあたってユーザーのニーズをどのように検証したのですか?

    当初はネットで集めた情報をGoogleのように検索できるようにしただけだったんです。ユーザーは誰しも、目的に対して失敗したくないので、まず検索してから店に入る。7割以上の人が何らかの検索をしてからお店に行きます。買い物の場合にもそういうニーズは確実にあるなということはわかりました。でもそれは私が心の中で確信をもっていただけであって、それを顕在化させないといけない。
    そこで、Googleで「五反田 ランチ」と検索するのと同じように、「五反田 文房具」って入れれば検索上位にPatheeの情報が表示されるようにしたところ、ユーザーさんが入ってきてくれることがわかった。調達の時にユーザーが求めるものに対応していくことで、メディア展開をするようになったんですね。
    2015年の時点でお店に何も調べずに行く人は全体の3割で、今は15%くらいになっているのではないかと思います。
    そうするとネット検索して出てこなかったら存在していないのと同じことになります。どれだけお店がユーザーにアプローチする場としてインターネットが重要かっていうことですよね。これが小売業にとっても、ユーザー側にとっても、ネットに埋もれず店舗の情報が露出していることがどれだけ重要かと気づかせてくれたと思うんですね。
    結局マーケティングの実践の世界なんです。小売店舗はネットに正しく情報発信すれば知ってもらえる機会ができます。いまウェブで情報を検索しても、何がわからないかっていうと、そのお店でラッピングしてくれるのか、店舗から配送をしてくれるのかなどなど分からないことだらけです。飲食店だと席数の情報まで出るのに、なんで小売店舗はそういう情報がわからないんだろうと。だったら小売りの店舗にもっと入っていって、なぜ店舗の情報をデジタル化しないのか、どうしたら情報を発信していくのかなどの話を伺い、販売にお役に立てるようなSaaSを作ろうと始まったという経緯なんです。
    プロダクト開発時には、皆で100店舗くらい突撃で訪問して(笑)、話を聞きにいきました。そもそもEメールも使ってないとか、FAXでやっているとかでした。そういう業務をデジタル化していって、集客やマーケティングに必要なユーザーに役立つ情報をセレクトしてオープンにしていくというアプローチをしてきています。ここに対してアプローチできているのはうちだけなので。

    ネットに埋もれた 15万店舗のリアル店舗をデジタル化する地域情報メディアお出かけ情報検索サイトPathee

    ー現在Patheeから検索される仕組みはどうなっているのでしょうか? 

     Patheeは日本全国どこでも情報が整備できるだけのリソースはあるのですが、検索ニーズが高いエリアを中心に作成する場所を決めています。縦軸を駅やランドマーク、横軸に男性用プレゼントといったマトリックスで分析して、検索ニーズの高いキーワードから優先順位を決めて効率的に展開するようにしています。
     ユーザーが求める情報をきちんと出すようにしていて、たとえば、新宿×スポーツショップという検索をしたときに、一般の検索エンジンだと、新宿区のスポーツショップが表示されてしまいますので、隣駅の代々木にあるお店も新宿区なので表示されてしまうんですね。普通、「新宿」を検索キーワードに入れるユーザーの多くは、新宿駅に近いスポーツショップを探しているはずですので、入力はしないけど、そういう意図をもって探しているはずなんです。そこをしっかりと反映させるようにしています。ヒットする件数を増やすのではなく絞り込みをするようにしています。
    さらにPathee Epicでは、店舗ごとの独自の物語を掲載するストーリーマーケティングによるブランディング支援をしています。私はデータを見てアルゴリズムで物事を判断するタイプなのですが、メディアの担当者がデータからではわからないエモーショナルな情報発信が小売には必要だということで、小売業では今までに無い価値があると思いましたので新たな取り組みを始めました。

    そもそもなぜ小売店舗はデジタルマーケティングが進まないのか?

    ー売り上げが伸びない、集客できないという悩みを持つ小売店舗が多いのですが、何が問題だと認識されているのでしょうか?

    そうですね。小売業の場合、マーケティングは立地戦略で勝負が決まってしまうことが多いので、お店を出した段階ですでに勝負が決まってしまっているという思い込みを持つ方が多いようです。お店がオウンドメディアを持つくらいの展開ができるようになると立地に依存せずに勝負できるようになりますので、まず内部の情報をデジタルで集約していって、集客マーケティングに活用できるような外部発信ができるように展開しています。
    小売店のデジタル化が遅れている要因は、人手が足りていないこともありますが、そもそも店舗の業務のオペレーションがデジタル化されていないことにより、飲食店に比べて相当遅れています。
    そのため小売店向けの集客マーケティング支援SaaSのPatheeパートナーは、導入しても業務負担が増えないように通常業務の中で運用できるような集客支援ツールにしています。通常業務をきちんとやった結果成果に繋がったということにしないと定着しないと思うので。
    また、 SNSでの情報発信のサポートも行っているのですが、ユーザーはGoogle、インスタ、Facebookなどで店舗の情報を見ることができますが、それらをお店がツールごとに別々に情報発信して管理していくのは大変なので、それをPatheeパートナーで一元管理することができます。

    ーなぜ小売業はデジタルメディアの活用が進んでいないのでしょうか?

    一つ目は、これまで小売業の集客に活用しやすい、飲食店向けのサイトでいえば食べログ、ぐるなび、ホットペッパーなどのようなデジタルメディアがなかったので、そのようなメディアに掲載するという文化がなかったんですね。
    二つ目は、実店舗の小売でデジタルマーケティングが発展しなかったのは来店や予約のコンバージョンがとりづらいからだと考えています。たとえばホットペッパーであれば飲食店でも美容院でも予約でコンバージョンがとれるのですが、リアルな小売店舗では取り置きサービスなどをやらないとコンバージョンが取りづらいのです。
    そこで、一番の課題はリアル店舗にどのように送客しているかを見える化することです。GPSのようなものとメディアの掛け合わせをやっていかなければならないと考えているところです。情報発信を増やして実際の店舗にどれだけ集客ができているのかはビーコンなどでとれると思いますので。
    最近では、ウェブメディアに掲載してもSEO対策だけになってしまうので、SNSの情報発信も支援してほしいという要望が増えてきましたので、PatheeパートナーではSNS連携を支援強化しています。

    ーPatheeのソリューションを使った成果など、取り組み事例を教えてください。

    レンタルドレスショップのアトリエはるかさんではWebからの予約が約10%増加えたとのことです。タカキューグループの靴の専門店「around the shoes」さんでは平日の来客が増え、10%~20%の集客増につながっているそうです。
    最近では2019年9月には、Patheeパートナーをピーチ・ジョンさんに導入いただきました。「そのエリアにいる、下着にニーズがある人」にリーチし、下着を購入したい人に対して、ピーチ・ジョンブランドの認知度アップを図ることが狙いです。SNSとの連携により、Instagramなどのコンテンツを配信することができる情報を自分たちでコントロールできるので、ブランディングにも活かせると期待いただいています。
    さらに、2019年10月には、東急線沿線情報誌「SALUS(サルース)」さんとの連携が決まりました。同メディアは東急株式会社が月間23万部発行する紙メディア×ECサイトです。今回、東急沿線の小売店舗の商品をピックアップしていくECサイト「SALUS ONLINE MARKET」とのタイアップ記事の連載を開始しました。例えば、シンガポール発のラグジュアリー紅茶ブランドTWG Tea といったお店を紹介しています。
    このように、今後も高級感のある店舗やモールと連携してタイアップ記事を連載していきたいと考えてます。

    ー今後の展開は?

    中小の小売店舗を元気にするというコンセプトで展開していきたいと考えています。立地戦略だけでなく、ネットを使えば集客はできます。自分たちの努力次第で集約できる。そんな努力するお店がどんどん発展していってほしい。
    今、日本は中小の小売業がどんどん廃業しています。小売業に未来はないとも言われているけれども、デジタルマーケティングで自店の努力によって集客は改善できるというソリューションを提供して日本の小売業を元気にしていきたいと考えています。
     現在は検索ボリュームが多い都市部の地域が中心ですが、本当の意味でネットに埋もれた店舗を救いたいのは地方都市でもあるので、今後は地域にも展開していきたいと思っています。

    ー全国の頑張る中小小売店舗を元気にする取り組みに期待しています。本日はありがとうございました。  

     

    ◆プロフィール
     寺田真介(てらだ しんすけ)

    株式会社Pathee代表取締役。2008年博士(情報理工)修了、無線通信技術に関する研究、文部科学省科学技術振興調整費「科学技術連携施策群の効果的・効率的な推進」プログラムの課題「電子タグを利用した測位と安全・安心の確保」に従事。同年日立製作所の研究所に入社し、スマートグリッドなどの研究開発に従事た。電子情報通信学会学術奨励賞などを受賞。2012年株式会社tritrue(現:Pathee)を設立し、お出かけ情報検索サイトPatheeの企画、開発、運営を行っている。2017年4月東京大学空間情報センター(CSIS)の客員研究員に就任。

    ◆企業概要
    株式会社Pathee

    設立:2012年1月、資本金:5億円、社員数18名、事業内容:国内最大級のお出かけ情報検索サイト「Pathee」、小売店舗向け集客マーケティングSaaS「Patheeパートナー」の企画、開発、運営など。

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