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2020年02月05日(水)

本田圭佑も出資する、オーマイグラス。日本のメガネで世界を取れ!清川忠康代表の挑戦

経営ハッカー編集部
本田圭佑も出資する、オーマイグラス。日本のメガネで世界を取れ!清川忠康代表の挑戦

今、メガネのネット通販事業者として日本最大手となったオーマイグラス株式会社。代表取締役社長の清川忠康氏は、スタンフォード大学経営大学院留学中の2011年に起業し、同社を現在に至るまで加速度的に成長させてきた。 
メガネ通販で日本のトップを極めてもなお、オーマイグラスの躍進は止まらない。同社は2014年に業態転換し、ECサイトのみならずリアル店舗の出店を開始。現在都内に3店舗、全国で9店舗を出店し、さらなる新規顧客獲得に乗り出している。
今回はメガネ業界の革命児である清川氏に、起業の経緯やオリジナルメガネブランドに込めた想い、リアル店舗を出店させた意図、オムニチャンネルを取り入れる中で生まれた新たな課題への向き合い方などを、赤裸々に語ってもらった。

日本ブランドで世界を取る

―まずは会社概要を聞かせてください。様々なメガネブランドがある中で、オーマイグラスはどのような特徴を持つ会社なのでしょうか?

オーマイグラスは、日本のメガネを世界へ向けて販売していきたいという想いで創業した会社です。福井県鯖江市という日本製のメガネの95%以上が作られているメガネの産地から仕入れを行い、ECサイトでメガネ・サングラスを販売するという形でスタートしました。ネットでの販売なので、自宅で5日間・5本の眼鏡を無料で試すことができるといった試着サービスを充実させています。ここ数年はリアル店舗を出店し、OMOの考えも取り入れています。

―日本のメガネを世界へという想いについて、詳しく聞かせてください。

例えばバッグだとヨーロッパに職人がたくさんいて、グッチやエルメスといった有名ブランドがありますよね。これらは産地とブランドが同じ場所です。ところが、高級メガネの日本製のシェアはすごく高いにも関わらず、日本のメガネブランドは世界で活躍していません。日本は下請けビジネスをしているんです。そんな現状の中で、日本のブランドが日本で作られた製品で世界を取るということは、とても重要で意義があることだと考えたんです。

―なるほど。最近は自社ブランドのメガネも展開されているようですが、それぞれに込められた思想も聞かせてください。

自社ブランドとしては、「Oh My Glasses TOKYO(オーマイグラス東京)」「TYPE(タイプ)」「PAGE(ペイジ)」の3つを展開しています。

Oh My Glasses TOKYO(オーマイグラス東京)」は、福井県鯖江市の工場が元々持っていた型に「Oh My Glasses TOKYO(オーマイグラス東京)」という名を付け、ロゴを変えて比較的リーズナブルな価格帯で販売を始めたものです。メガネ1本で大体2万円くらい。既存のメガネにマーケティング投資をして、新規のネット層に向けて提供しようとしたんです。

TYPE(タイプ)」は、Wieden+Kennedy Tokyo(ワイデン アンド ケネディ トウキョウ)というクリエイティブエージェンシーさんと組んで作ったメガネブランドです。文字の書体とメガネのフレームの形を連想させたデザインで、クリエイター向けのメガネを作っています。

そして「PAGE(ペイジ)」は、昨年から出資していただいている本田圭佑さんとコラボして立ち上げたサングラスブランドです。売上の2%をカンボジアの恵まれない子どもたちへ寄付しています。

―世界で活躍するプロサッカー選手の本田圭佑さんと一緒にコラボするなんて!そもそも本田さんに出資してもらうことになった経緯を聞かせてください。

2、3年前、オーマイグラスの認知を上げるべく「ベンチャーに興味を持っている有名な方に協力してもらえないだろうか」と考えたのがスタートです。ディスカッションを重ねていく中で、「最近本田さんがベンチャーへのエンジェル投資を始めた」という話が挙がったんです。そこで、高校時代からの友人であるエンジェル投資家に本田さんの側近の方を紹介してもらいました。その方にプレゼンをした後に、「来週会えますか?」と連絡をいただいて。場所を聞いたらなんとメキシコのパチューカ(笑)。すぐに予定を調整して、メキシコまでプレゼンしに行きました。

―本田さんとはどんなお話をされたんですか?

実はパチューカの彼の自宅で早速プレゼンをさせてもらったとき、時間切れになってしまったので、翌日にもプレゼンの機会をいただきました。2日連続で本田さんの前でプレゼンをしたんです。本田さん自身がサッカー選手として世界で活躍してきていて、日本から世界に出て活躍するということを具現化したような人じゃないですか。彼は「日本のものを世界へ」というような大和魂を持っている熱い人なので、「メガネで世界を取るんだったら協力しますよ」という回答をいただきました。
 
そこからどんなコンセプトにしようかとディスカッションを重ねていく中で、本田さんから「メガネを通じて社会貢献もできたらもっと良いよね」という話が出てきたんです。そうして社会貢献ブランドという形で「PAGE(ペイジ)」が誕生しました。

考えを変えてくれたスタンフォード留学

―そもそもなぜ起業しようと思い立ったのでしょうか?

スタンフォードに留学したことが大きなきっかけでした。留学するまでは起業しようなんて全く考えていなかったんですよ。アメリカでスタートアップの文化や起業の文化に触れて、次第に考え方が変わってきたのだと思います。
 
留学中にスタンフォード大学の先輩のスタートアップで学生インターンをさせてもらったり、起業に関係するような新しいビジネスの授業を取ったりして、起業もいいなと徐々に思い始めたんです。同時に、就職するという選択肢もありました。もし就職するなら、アメリカで急成長しているけれど日本ではまだこれから、というようなアメリカのメガベンチャーを考えていましたね。

―そのような状況で、最終的に起業を選んだ決め手は?

2011年にあった2つの出来事が決め手となりました。まず、2011年の1月〜3月頃にスタンフォード大学ビジネススクールでGoogleの元CEOのエリック・シュミットの授業を受けたんです。彼の授業で事業プランを考えるという課題があって、そこで考えたのが今に繋がるメガネの通販事業でした。そしてもう一つ、3月に東日本大震災が起こります。これらの出来事によって、日本のものを世界に届けるということの意義をより一層強く感じ、自分で起業しようと決断しました。

―起業当時はどのように資金を集めたのですか?創業時期やメンバーは?

最初はお金がなかったので、エンジェル投資家から出資してもらいました。2011年7月に、僕含め2人で創業して、直後にさらに2名加わった形です。共同創業者は、元々僕が新卒で入社したUBS証券にいた人物です。会社にいた時期は被っていないのですが、彼がスタンフォードに遊びに来たときに初めて会って、一緒にやろうということになって。少し後に入ったあとの二人は、そのスタンフォードで出会った彼が以前働いていたベンチャーにいたエンジニアや、僕が足繁く通っていたベンチャー向けのミートアップで出会ったエンジニアです。

リアルとネットの両形態ならではの課題

―創業時4人だったのが今では社員50人に増え、店舗も拡大して順調に事業を成長させているように見えますが、やはり苦難はあったのでしょうか?

まず、福井県鯖江市と一緒に仕事ができるようになるまでに苦労しました。そもそも会ってもらえないということもありましたし、やっと取引先がOKを出しても競合大手からNGが出て進められないということも少なくなかった。そんな中で、共通の知り合いを介して鯖江市の市長に会うことができました。市長自身がさらに人を紹介してくれたり、直接アポを取ってくださったこともあります。鯖江市の方々の協力があって、2011年の秋頃には契約して仕事ができる状態になりました。

―それが最初の大きな壁だったのですね。その後、御社は2014年からネット販売のみならず店舗を出店されています。いわゆるOMOの考えを取り入れているのだと思いますが、この時期の出店にはどんな意図があったのでしょうか?

2014年に資金調達したので、業態を一部転換したんです。オーマイグラスのサイトでメガネを購入する方はある程度欲しい物が決まっていて、能動的に検索して自分のメガネを選ぶ人が多い。一方、受動的な人にとってメガネのネット通販はまだハードルがあります。そういう方のフォローをするためにも、リアルな店舗を作って実際に足を運んでもらう必要があったんです。店舗ならその場でメガネを作るための検眼やアフターサービスができるし、もちろん試着もできます。通販でも試着サービスはありますが、実は配送ではなく店舗でメガネを受取る方が結構多いんですよ。店舗受け取りだと、ネットのみでのやり取りと比べて返品率が大幅に下がります。やはりそこは店舗スタッフの後押しが効いてくるのだと思います。

―ネットと店舗の垣根をなくし購買意欲を掻き立てるマーケティング手法OMOに取り組んでみて、特に難しいと感じる課題はありますか?

やはり、スタッフマネジメントですね。小売はそこが重要だと思います。ネット通販から始めて店舗を出店するようになったので、ネットビジネスから現場ビジネスへとトランスフォーメーションするのはなかなか大変でした。オフィスで働くエンジニアと、現場の店舗スタッフの働き方のちょうどいい塩梅を見つけ出すのは難しかったです。エンジニアとの向き合い方の延長線上でスタッフマネジメントを考えていたのですが、働くモチベーションや想いなどにズレがあることに最初は気づくことができず、順風満帆とは行きませんでした。結果として、当社は最近では珍しいかもしれませんが副業やリモートは基本的に禁止しているんですよ。同じ時間を共有することで、チームとしての一体感が生まれるという小売りならではの感覚ですね。

―現場のスタッフマネジメントで特に大変だったことは何ですか?

一気に加速して出店していく時期に、勢いでどんどんスタッフを採用していったことがあったんです。文化や価値観が異なる人が増えることで、結構大変な時期が続きました。

―そういった課題について、今はどのように対策を?

地道ですよ。例えば組織サーベイをチェックして少しずつ改善に取り組んだり、店舗スタッフの採用を強化したり。あとは、とにかく今は出店数を増やせばいいという時期ではないと思うので、出店を最低限に押さえています。

子どももメガネを楽しめる世の中を作りたい

―最近、子どもメガネ販売業態「Oh My Glasses Kodomo(オーマイグラス こども)」を立ち上げられたそうですね。これはどういった経緯で?

子どももメガネを楽しめるようになってほしいという想いからです。子どもって特に、メガネを楽しめない子が多いと思うんです。何より僕自身子どもの頃からメガネをかけていたのですが、メガネに対する印象がすごく悪かったんですよ。幼稚園の頃に怪我をして数ヶ月間片目に眼帯をかけていたら、逆側の目の視力が落ちてしまって。でも、今僕はファッションとしてメガネを楽しめるようになってきました。もちろんすぐには難しいかもしれないけれど、中長期的にそんな世の中を作れたらいいなと、まずは横浜店から始めてみたんです。

―子ども向けメガネは他社にもありますが、オーマイグラスならではの特徴を教えてください。

通常のオーマイグラス東京の大人のお客様と比較して、保証を手厚くしています。子どもは大人よりも視力が変化しやすく、メガネ自体を傷つけてしまうことが多いでしょう。今は15歳以下のお客様を対象に、購入から6ヶ月間・2回までレンズ度数交換を無料で行うキャンペーンを開催しています。

―せっかくめがねシャチョウにお会いできたので、かっこよく見えるメガネの合わせ方を教えていただきたいのですが……。

メガネを選ぶポイントですが、色がすごく重要です。人それぞれパーソナルカラーがありますから、例えば青っぽい色が似合う方は青と同系色のものが似合います。着る服によっても似合うメガネは変わってくるんですよ。オーマイグラスでは、メガネスタイルムービーマガジン「OMG PRESS」というYou Tubeコンテンツを配信しています。
 
そこでもメガネの選び方などを紹介しているのでチェックしてみてください。ちなみに、僕個人もめがねシャチョウとしてYou Tubeで有益な情報を発信しているのでぜひ御覧ください(笑)。先程話したスタンフォード留学についても詳しく話しています。

めがねシャチョウが直々に経営ハッカー編集長の立石にメガネをおすすめする場面も。
スタートアップの方にぜひおすすめです。eyewear for startup !

オーマイグラスのメガネって、ベーシックな品質にちょっとおしゃれ感をプラスしているんです。リーズナブルな価格でネット購入できますし、大企業のサラリーマンよりもスタートアップの方のカジュアルなおしゃれに向いていると思います。経営ハッカーの読者の方にもおすすめですよ!

 

<プロフィール>
 
清川 忠康(きよかわ・ただやす)
 
UBS証券、経営共創基盤を経て、スタンフォード大学経営大学院に留学。
在学中に米中のスタートアップ企業の経営に関わり、2年次在学中に株式会社ミスタータディ(現オーマイグラス株式会社)を創業、代表取締役に就任。主な著書「スタンフォードの未来を創造する授業」(総合法令出版、2013年)
 
 
オーマイグラス株式会社 (英文表記:Oh My Glasses Inc.)
https://www.ohmyglasses.co.jp/
 
本社所在地:〒105-0014 東京都港区芝3-17-15 クリエート三田 307
設立年月日:2011年7月15日
資本金:1億円(2019年6月30日現在)
事業内容:メガネ・サングラス通販サイト「Oh My Glasses オンラインストア」の運営
メガネ・サングラス販売店舗「Oh My Glasses TOKYO」の運営
自社商品(プライベートブランド)「Oh My Glasses TOKYO」「TYPE」「PAGE」の企画開発・販売
主要株主:ニッセイ・キャピタル株式会社
株式会社INCJ
BDash Ventures
Improvista
SMBCベンチャーキャピタル株式会社
ABCドリームベンチャーズ株式会社
TBSイノベーション・パートナーズ
本田圭佑(プロサッカー選手)

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