2020年02月07日(金)1ブックマーク

中小企業の経営者も従業員も幸せにする投資ファンド くじらキャピタルの企業再生の手腕とは?

経営ハッカー編集部
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投資ファンドによるM&Aが増加している。レコフデータの調査によれば、日本企業に対する投資ファンドによるM&Aは660件と、前年同期の522件より21.7%増加した(※)。

投資ファンドとは、売上規模が1000億以上などの大手企業を投資対象とするのが一般的だ。そういった大手企業を相手に大規模な投資を行うファンドの中には、投資先の企業を事実上乗っ取り、今まで投資先の会社が培ってきた人材や資産を徹底的に切り売りすることで利益改善を図り、大きなリターンを得ようとするファンドも少なくない。

しかし、一方であえてその真逆を行く投資ファンドがある。それがくじらキャピタルだ。くじらキャピタルが相手にしているのは売上規模が数十億程度の中小企業だ。なぜくじらキャピタルは中小企業ばかりを投資対象に選ぶのか。その理由や創業の経緯について代表取締役 竹内真二氏に話を聴いた。

(※)株式会社レコフデータ「2019年1-9月の日本企業のM&A動向」<https://www.marr.jp/genre/market/q_report/entry/18111>

目次

    くじらキャピタルとは?

    ―御社はどんなことをされている会社なんですか?

    弊社はバイアウトファンドの運営会社です。バイアウトファンドとは、対象会社の過半数株式を取得して経営権を持たせて頂き、業績を回復させたのちに次のオーナーにお渡しする、という仕事です。たいてい投資ファンドというと、大きな会社しか相手にしません。なぜなら手数は大きな会社でも小さな会社でも変わらないから、同じ手間暇やコストをかけるなら大手のほうが効率よくリターンが得られるからです。

    しかし、弊社は、あえて投資対象を中小企業に絞っていることが特徴です。デジタルを使って停滞している会社をリストラせずに再成長させ、ステークホルダー全員をハッピーにすることを実現するのが弊社のミッションです。

    ―一般的な投資ファンドが大企業をターゲットにする中、どうして御社は中小企業をターゲットにするのでしょうか?

    僕はもともと外資系の金融機関出身で、顧客も超大手企業ばかりでした。でもそんな超大手企業って、日本の企業の中のほんの0.1~0.3%程度なんですよ。そんな超大手が日本の企業のすべてだと思っていたんですけど、実は日本の企業の99.7%は中小企業なんですよね。中小企業ほど経営資源に乏しく、経営者が経営難に悩み、従業員も疲弊している会社が多いのに、ここに対して支援の手を差し伸べているところはほとんどなかったことに疑問を持ちました。

    確かに効率だけを考えると割に合わないし手数もかかるんですが、誰も手掛けなければこのまま日本経済全体が停滞してしまう。日本の中小企業を、そして中小企業を取り巻くステークホルダーを何とかして救いたい。そういう想いから、中小企業をターゲットに絞って投資を行うようになりました。

    ―ファンドというと、金融機関出身の方ばかりというイメージですが、御社にはデジタル・マーケティングやシステムにかかわった経験を持つ方もいらっしゃいますよね。それはなぜですか?

    確かに、うちのチームのメンバーは、金融のバックグラウンドがあるのは社員5人のうち、僕と共同創業者の石川だけ。あとの3人はIT関係のバックグラウンドを持つ人間です。

    その理由は、当社は「デジタル変革で会社を再成長させる」と標榜していて、デジタルでモノを作れる社員がいないと価値創造につながらないからです。
    デジタルの本質は「すぐに作れる、すぐに直せる」ことにあるので、頭の中で戦略を立てて「ああでもない」「こうでもない」と議論を繰り広げるより、まず実際のプロダクトやサービスのプロトタイプを創ってみて、使い勝手がいいかどうか、顧客価値があるかどうかを見て、悪ければ直す、というサイクルを高速で回していくことが価値創造に直結します。そうなると、自社で技術者を抱えていないとスピードが全く間に合わないんですよ。

    ―でも、システムを作るのならアウトソーシングすればいいのではないでしょうか?その方が本業に専念できますし。

    たしかに、「外注すればいいじゃないか」というお声も投資家の方々からもいただくこともありますが、我々のいうデジタル変革とは、例えば「システムを作る」とか「ECを立ち上げる」みたいな些末な話ではなくて、全社横断でビジネスそのものを作り替える営みを指しています。部分的なIT化であれば外注でも問題ありませんが、「ビジネスをデジタルでどう生まれ変わらせるのか?」という命題に対して、今どのような技術があって、その実装手段はどうで、導入後の業務へのインパクトがどう、というのは、技術に精通し全体を俯瞰できる人間が内部にいないと判断ができません。「本業に専念」と仰いましたが、2020年の今、デジタルを使いこなせない人、デジタルについて判断できない人が「本業」の業績を上げることは不可能でしょう。

    もちろん、外注では先ほどのPDCAサイクルにもたつきがでてきて、デジタルの本質を損なうという理由もあります。

    具体的な例を1つお話ししましょう。たとえば、とある小売店があって、店頭販売もECも行っているが、店頭POSとECの在庫連動が今のシステムではできず、売り逃しを生んでいる状況にあるとします。一般的なファンドであれば、「両者の在庫をリアルタイムで同期できるシステムを作ろう、ただシステムのことは分からないのでシステムコンサルを呼んで要件定義をさせよう、RFP(request for proposal = 提案依頼書)を作って外注ベンダーを集めて提案させ、そこから選ぼう、できるだけ安く作ろう」となるでしょう。一方、弊社はこう考えます。

    「そもそも、店頭のPOSレジは必要なのか?店頭でもECの決済システムをそのまま使い、POSをタブレットで置き換えたらどうか?決済もEC機能を転用し、現金を禁止してキャッシュレスで行えば、POSもいらず、そもそも両システムの在庫連携をする必要がなくなり、スムーズな顧客体験を提供できるのでは?」

    このように顧客視点に立ち要素技術を組み合わせることで、ルールやオペレーション、さらにはビジネスモデルの前提ごと作り変える。さらに、それが机上の空論にならぬよう、すぐにプロトタイプを作ってみる。これは、デジタルを理解し、インハウスで技術者を抱えていないと不可能でしょう。

    バイアウトファンドなのにリストラしない、その訳とは?

    ―あともうひとつ、「リストラをしない」も明言されていらっしゃいますよね。これは何か理由があるのでしょうか。

    リストラをしないことも、なかなか他のファンドや投資家に理解されにくいですね。なぜなら、バリューアップの為には自分たちで差配できるコストカットが一番簡単で、重たい固定費を削ろうと思ったら、リストラするのが一番早いので。実は僕自身、2012年から6年間ほど経営再建にかかわっていた企業で一度だけリストラしたことがあるのですが、大失敗でした。

    ―どういうことですか?

    僕が経営者として入った当時、その会社は上場企業でしたが4期連続最終赤字、うち1期は営業赤字で経営がガタガタでした。そこで、最初に手掛けたコスト削減の一環で10数名の退職勧奨を実施しました。対象者の中には、様々な家庭の事情を抱えている人も含まれていました。相当額の退職金を支払って再就職支援もしましたが、残った社員からは「血も涙もないやつ」とのレッテルを貼られた上に、社内が疑心暗鬼に満ちた雰囲気になってしまい、士気も明らかに低下してしまったんですね。

    そこまでしてその人たちに痛みを押し付けたからと言って、利益が改善したかといえばそうではありませんでした。むしろ、その後人を増やして収支管理を徹底したことで利益が劇的に改善するという皮肉。リストラをするのではなく、業務の仕組みを変える方がはるかに価値を生み出せるのだとつくづく実感した瞬間でした。人生最大の痛恨事です。

    ―なるほど。まして10億ほどの売上規模の会社における社員一人の影響を考えると、リストラをするより残ってもらったほうがいいと。

    たいてい僕が投資先の会社に行くと、「前のオーナーが自分たちの会社を売ってしまった」「ファンドが来たということは、自分たちはリストラされるかもしれない」とビクビクされるんですよ。そこで本当に社員をクビにしてしまったら、「クビになる前に辞めてしまおう」となし崩し的に他の社員まで辞めてしまうかもしれないですよね。そうやってモラルも士気も下げてしまうくらいなら、全員残っていてほしいんですよ。今の人手不足の世の中で、人材はとても貴重ですから。

    日本には300数十万社の会社がありますが、自分たちが直接関われる企業なんて、せいぜい数十社~100社くらいかもしれません。けど、その数十から100社の社員とその家族は幸せになってもらいたいし、経営者にもハッピーリタイアをしてもらいたいと思っています。

    経営者にはハッピーリタイアを

    ―だからこそ努力を重ねても経営に苦労されている方には頼ってほしいと。

    経営者の皆さんは会社を守るために命懸けで奮闘されていると思います。しかし、そろそろ次の世代にバトンを渡したい、次の展開がみえないという方がいらっしゃったら、ぜひお話を聴かせてもらいたいですね。

    我々にバトンタッチしてもらえれば、経営者もハッピーリタイアができるし、従業員も雇用が守られるし新たな成長の機会が得られる。また、地域経済の発展にも貢献することになると、企業を取り巻くステークホルダーをハッピーにできるので、それを支えるお手伝いがしたいんです。ためらわずにぜひ声をかけてください。

    【プロフィール】

    竹内 真二(たけうち しんじ)
    リーマン・ブラザーズ、モルガン・スタンレーなどを経て、2012年に実質1号となるファンドを設立。同年4期連続最終赤字に陥っていた上場デジタルマーケティング会社の代表に自ら就任し、非上場化と経営再建を行う。無事に成功をおさめ、2018年2月に同社の代表を退任し、同年4月くじらキャピタルを創業、代表取締役に就任。以後現職。

    【会社概要】

    社名:くじらキャピタル株式会社
    設立:2018年4月
    資本金:4,900万円(資本準備金含む)
    本社所在地:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1-3-9 ヒューリック渋谷一丁目ビル CROSSCOOP内
    事業内容:
    中堅中小企業を対象とした成長支援ファンドの運営(投資事業有限責任組合の自己募集・自己運用)
    デジタル変革支援事業

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