2020年03月23日(月)0ブックマーク

スキマ時間を意味のあるものに変える時間価値創造企業、タイミー代表小川嶺氏の目指す世界とは?

経営ハッカー編集部
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スキマ時間の発見というのは、コロンブスの卵のようなもの。日々の生活の時間の中で、誰にとってもスキマ時間は存在する。しかし無為に消費してしまいがちなこの時間資産をどう活用するかで、人生を変えられるかもしれない。そんなスキマ時間がもたらす限りない価値を再発見したのが学生起業家のタイミー代表小川嶺氏だ。ちょっと空いた時間だけ働きたい働き手と働いてほしい雇用主を最短で結ぶマッチングアプリ「Timee」は、今やアルバイトやパート従業員の確保が難しい企業の人手不足の解消はもとより企業の採用活動にも活用されている。それだけではない、働き方改革で注目されるワークシェアリング、ギグエコノミー、さらには地方創生といった視点でこのスキマ時間に着目すると、これまで見えなかったビジネスの可能性も見えてくる。そんなスキマ時間が生み出す新たな価値を創造するビジネスについて小川氏に聞いた。

 

目次

    スキマ時間でバイトする?空いた時間にすぐ働くという新しい時間の使い方

    ―まず事業内容をお聞かせください。

    スキマ時間を活用して「特定の時間だけ働きたい」働き手と「特定の時間だけ働いてほしい」雇用主を結ぶマッチングアプリ「Timee(タイミー)」を開発、運営しています。利用者数は100万人、 導入店舗数も10,000箇所になりました。(2020年2月現在)

     

    Timeeの特長は、スキマ時間で働きたい人と、特定の時間だけ働いてほしい雇用主とのマッチングが非常に簡単にできることです。

    これまでは、まずバイト先を探して履歴書を送付し、面接を受けて採用になったらシフトが組まれて、メールに返信をして前日に確認の電話がかかってくる。そして働いた分のお金が入金されるのは、翌週か翌月末というのが一般的でした。

    Timeeを使えば、アルバイト採用の面接や登録会も必要ありませんので、条件をクリアしていれば、好きな場所・好きな時間・好きな職種ですぐ働けます。また、仕事が終わったら、その場で報酬がアプリに反映されて、24時間銀行口座で引き出すことが可能なので、すぐにお金をもらうことができるのです。
     

    起業への目覚め

    ―学生起業家としても注目されていますが、いつから起業をしようと考えていたのですか?

    私は高校では生徒会長をしていましたので、組織を率いて何かをしたいという志向は当時からあったのですが、起業を意識したのは、日本政策金融公庫の高校生ビジネスプランに応募したことがキッカケです。その時はセミファイナルまでは進んだのですが最終選考に残れず大変悔しい思いをしました。

    そうした中、私が高校3年の時、祖父が亡くなり、その時曾祖父が事業家だったことを意識し始めました。曾祖父は明治時代から東京港区に本社を持つ「小川乳業」という牧場事業を経営していて、明治乳業、森永乳業と並ぶ三大乳業と呼ばれていたそうです。

    曾祖父の事業は残念ながら祖父の代でたたまざるを得なかったのですが、祖父が亡くなったことで「人間はいつかは死を迎える。人生の時間には限りがある」ということを自分ごととして学び、一方で「自分が生きているうちに祖父や曾祖父の名誉を復活させたい」という想いが重なり、起業することを強く意識しはじめたのです。

    ―大学入学後、起業に至った経緯は?

    高校卒業後、私は経営を学ぶために立教大学の経営学部に進学しました。そして、大学に入学してすぐに高校時代のリベンジと思い、慶応義塾大学開催のビジネスコンテストでプレゼンしたところ、今度は見事、優勝を勝ち取ることができました。この勢いで、数人のメンバーとファッション系の事業を立ち上げることに決めたのです。
    事業内容は、私の出身高校が男子校でしたので、大学入学を機におしゃれになりたい、という自分の課題を解決することができるEC事業を構想していました。早速、創業資金を調達するために、ベンチャーキャピタルに訪問してプレゼンを繰り返しましたが、現実は予想以上に厳しい。結果は無残で、すべて断られてしまいました。ただ、チャレンジした結果、様々なフィードバックを得ることができましたので、それをもとにビジネスプランをブラッシュアップして再挑戦したところエンジェルから出資をいただけることになったのです。

    ―ファッション事業からピボットしたのはなぜですか?

    エンジェルから出資いただけることとなり意気揚々と法人登記をしたものの、いざ出資を受け入れるということは、それだけの責任を果たさなければなりませんので、この事業に自分の人生すべてを捧げる覚悟があるのか、それを証明できるだけの強いモチベーションが自分の中にあるのかと、改めて自分に問い直してみたのです。

    しかし、この時立ち上げようとしていたファッション事業は、ビジネスプランをブラッシュアップした結果、当初の構想からは大きくかけ離れ、おしゃれな女性向けのサービスになっていました。資金調達がゴールになってしまっていて、自分がこのサービスを手がける必然性、その根源的な動機となるWhy you?の部分がどうしてもしっくりこない。つまり、この時すでに自分がその事業をやる意味を見いだせなくなってしまっていたのです。

     

    ピボットを決意して辿り着いた、時間の新たな価値を生み出すビジネス

    ―自分が人生をかけて取り組める事業でないと分かってからはどうされたのですか?

    仲間にもその事情を説明して何とか理解を得ましたが、無給で働いてくれていた仲間のことを思うと本当に辛い決断でした。結局、ファッション事業からは撤退し、出資は受け入れませんでしたので、しばらくは日雇いの仕事をしながら何とか食いつないでいました。様々なアルバイトを渡り歩き、学業の傍ら何件も掛け持ちして働きましたが、徐々に貯金も底をつきました。

    そのとき、「自分のスキマ時間に少しでも仕事を入れてくれるサービスがあればいいのに」と気づいたのです。しかも、面倒な履歴書の送付や面接、シフトの確認や、働いてからお金が入金されるまでの時間が勿体ない。そう思って解決しようとしたのが今のTimeeの原型です。こうした自分の経験から生まれたこのサービスを実現するために、登記をしていた会社をタイミーに社名変更をして再スタートすることにしたのです。

     

    働き方改革や企業の人手不足ニーズを背景に躍進

    ―Timeeの開発はどうされたのですか?

    当初は資金もありませんでしたし、以前の事業で文系出身の自分はプログラム言語がわからずエンジニアと話がかみ合わなかった経験もありましたので、まず自分がプログラミング教室に通うことからはじめてアプリを自作しました。そのアプリをもって投資家にプレゼンしたところ事業の可能性を評価いただきましたので、まず2018年に1,200万円の資本を調達することができました。

    その後、本格的な開発を進め、同年8月にTimeeをリリース、その後3,400万円、3億円と増資を重ねました。2019年には給与の即日払いが可能なスキームを開発してセブン銀行、外食大手との業務提携も決定し、メディアに大きく取り上げていただいただことで20億円の増資につながりました。

    おかげさまで導入店舗数、利用者数ともに順調に伸びており、現在、東京・大阪・名古屋などの大都市を中心に10,000店舗ほどで人材採用ツールとしてご利用いただいています。想定以上に大手企業からの反響が大きく、また、働き方改革などの動きもあり、副業やスキマ時間といった時間の使い方を考える機会が増えてきていると思いますので、こうした世の中のトレンドを捉えることができた影響もあるのではないかと考えています。

    ―料金体系はどのようになっているのですか?

    働き手への賃金に上乗せして、30%分をシステム利用料としてお支払いいただく従量制のモデルです。
    私は対価をコミットできる会社をつくりたいと考えていて、成果報酬のようにしっかりと価値を提供してお金をいただきたかったので、サブスクリプションではなくあえてご利用に応じてお支払いいただく料金体系を採用しました。

     

    スキマ時間の使い方の多様な選択肢を生み出すプラットフォームを目指す

    ―働き方改革としては、スキマ時間はどのように利用されることが多いのですか?

    多くの企業から、正社員が本来業務に付帯する様々な雑務に追われてしまって本来やるべきことに集中することができないというお話を伺います。

    そのような時に、正社員がやらなくてもよい業務はTimeeを使ってスキマ時間のあるアルバイトさんに任せるといった形で、手軽に業務をアウトソーシングする際にご利用いただいています。

    本来業務に集中できれば、経営者や正社員の方にとっては今後の事業展開を考えたり、様々な企画を考えるクリエイティブな時間が生み出せるようになります。そのように手軽に業務をアウトソーシングができるツールとして利用いただけます。

    ―地方の人手不足も深刻化していますが、地方での取り組みはされていますか?

    おっしゃる通りで地方創生の動きも活発化しています。そこで私たちも2019年10月にタイミートラベルという5日間程度の短期間で札幌から沖縄まで行けるというプランを立ち上げました。タイミートラベルは地域の企業や農家などのお仕事を手伝うことで、滞在費・宿泊費を原則負担することなく遠方へ出かけることができるサービスです。

    一例を挙げますと、岐阜県の飛騨高山で、季節的に人手が不足する観光産業や旅館のアルバイト採用のお役にも立てるような活動が展開できています。他にも、国の地方創生政策で、東京在住者が地方で働く場合は交通費を補填したり、地方移住を支援する制度などもあります。そうした地方創生の関係人口創出の動きを踏まえて、地方自治体や地方の企業さんとも連携を図りながら、地方の人手不足などの解消や新たなビジネスの展開にも繋げていただけるように貢献できればと思います。

    ―中小企業の多くはアルバイトやパート従業員だけでなく、正社員の募集にも困っている企業も多いのですが、社員の採用活動で利用することもできるのですか?

    はい。正社員であれアルバイト採用であれ、採用活動にはミスマッチ採用が多いという課題があります。多くの場合、アルバイトも半年以内で離職してしまう。このような状況ですので、まず短期のアルバイトでお試しで働いてもらい、働く側、雇う側ともにミスマッチを少しでも減らすことにつながればいいなという想いがあります。

    Timeeには、100万人の登録ユーザーがいます。100万人の潜在的な採用マーケットがあれば、企業側にとってフルタイム社員に限らず短時間勤務でもいいので正規雇用したい人材も含まれているのではないかと思うのです。

    実際に、Timeeを使ってまずアルバイトとして採用して、アルバイトから正社員に登用するといった事例も数多くあります。正規雇用者を募集したい企業さんには、Timeeの80万人のデータベースからどう人材を発掘するか、どのようにターゲットとなる人材にアタックするか、というマインドでTimeeを使って欲しいのです。

    ―今後の展開はどのように考えていますか?

    2022年を目途に上場を目指し、シンガポール、韓国、香港などへの海外進出も構想しています。
    これまでスキマ時間は、YouTube、TwitterなどのSNSに何気なく時間を使っていた方も多いと思います。皆さんスキマ時間では大したことができないだろうと考えて、そうした時間の使い方をされていたのではないかと思うのです。

    でもそういったスキマ時間であっても時間の使い方には様々な選択肢があります。働くこと以外でも、たとえば暇な人同士が出会うとか、飲食店に誰かと食べに行くとか、時間を有効に活用する方法は人それぞれです。スキマ時間には様々な可能性と価値があります。今後は、そうしたスキマ時間の使い方の多様な選択肢を提供できるようなプラットフォームにしたいと思っています。

    私たちには、1人1人の時間を豊かにするというビジョンがあります。働く人にとっては、スキマ時間の多様な時間の使い方の選択肢を提供して、新たな価値を創造していきたいと考えています。

    採用する企業さんにもTimeeに任せれば自分がやらなくてもいいと思う業務に時間をとられないようにもっと気軽に業務をアウトソーシングできるようにしたい。そうすることで、企業の生産性向上や組織活性化にも貢献できますし、働き方は多様であってよいと思いますので、その企業にあった働き方ができる人との出会いが実現することによって採用のミスマッチをなくしていければと思うのです。

    私たちが生きている時間には限りがあります。もっと多くの方々が豊かな時間を生み出せるように私たちができることをこれからも追求していきたいと考えています。

    ―本日はありがとうございました。

     

     

    <プロフィール>
    小川 嶺 (おがわ・りょう)

    1997年生まれ。立教大学経営学部4年在学中。慶應⼤学のビジネスコンテストで優勝したのち、株式会社Recolleを立ち上げるも1年で事業転換を決意。その後リクルート/サイバーエージェントでのインターンを経て株式会社タイミーに社名変更。これまでにJAFCOやサイバーエージェントを筆頭に総額23億5600万円の資金調達を⾏なっている。50を超える様々なイベントでの登壇実績があり、現在九州大非常勤講師を務めている。
     
    株式会社タイミー (Timee, Inc.)
    URL:https://timee.co.jp/
    所在地:〒150-0043 東京都渋谷区道玄坂1-22-9 AD-O渋谷道玄坂ビル9-10F
    設立:2017年8月
    事業内容:インターネットメディア及びアプリケーションの企画・開発・運営、マーケティング、ブランディング、各種コンテンツの企画・制作
     
    免許等:有料職業紹介事業 許可番号13-ユ-311381
    主要株主:
    株式会社サイバーエージェント
    エン・ジャパン株式会社
    GV partners 有限責任事業組合
    株式会社ガイアックス
    株式会社コロプラネクスト
    F Ventures LLP有限責任事業組合
    株式会社オリエントコーポレーション
    株式会社セブン銀行
    西武しんきんキャピタル株式会社
    丹下 大
    貫 啓二
    速水 浩二 など
     

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