2020年04月13日(月)0ブックマーク

中国市場、成功の鍵は14億人のクチコミ解析にあり! ~トレンドExpress濵野 智成氏

経営ハッカー編集部
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目下、新型コロナウィルス禍の逆風はあるが、今こそ冷静に将来の海外戦略を考えるチャンスかもしれない。今後、中長期的に成長が見込まれる中国・アジアの巨大市場をどのように攻略すべきか?今までは、海外ビジネスにおいて多くの企業が試行錯誤する中、実際に成功している企業はほんの一握りというのが実態だ。こうした現状に対し、「海外消費者に対する理解が圧倒的に不足したままプロモーションしていることが成功確度を下げている」とトレンドExpress 濵野智成代表は指摘する。これに対し、アンケート調査だけでは見えない、消費者の大量のクチコミから見えてくる集合知レベルの本音の理解が海外ビジネスでは重要となる。そこで今回、濵野氏に14億人のSNSビッグデータ解析から読み解く中国市場進出の成功法則と今後の展望を聞いた。

 

目次

    中国のソーシャルビッグデータ解析でビジネスの成功確度を高め、再現性の高いマーケティングを支援

    ―はじめに事業内容をお聞かせください。

    当社は、2015年11月の設立以来、世界各国のソーシャル・ビッグデータを使ったマーケット調査・分析および分析に基づくPR及びプロモーションによる日本企業の海外進出支援サービスを手掛けてまいりました。

    近年は、中国向けの進出支援サービスに注力しており、中国のSNSなどのクチコミビッグデータから抽出した消費者インサイト(潜在ニーズ)に基づく分析サービスやプロモーションサービスを手掛け、2018年からは日本商品の爆買いブームの火付け役と言われる日本在住中国人ソーシャルバイヤーをプラットフォーム化した越境ECサービス「越境EC X(クロス)」を立ち上げ、成長著しい約2兆円の日本-中国間の越境EC市場に参入しました。2019年には、中国内陸部の小売企業と事業提携し、OMO(Online Merges with Offline)市場に進出しています。

    私たちは、中国のSNSなどのソーシャルビッグデータを独自技術で分析できる企業であり、日本企業の中国事業支援のリーディングカンパニーとして、ナショナルブランドを中心とした日本企業約300社の中国進出や中国でのマーケティング活動の支援実績があります。

     

     

    日本のアイデンティティへのリスペクトと日本の未来への強烈な危機感が原体験に

    ―創業の経緯をお聞かせください。

    私は20代続く経営者家系に生まれました。その影響もあり、将来は起業しようと幼少期から思っていました。しかし、父の事業がバブル崩壊の煽りを受け、やむなく家業をたたまざるを得ませんでした。当時中学生だった私は父の苦しむ姿を見て、自分は企業経営を支援する仕事に就きたい、と思うようになりました。

    その結果、「経営者を支援したい」と考え、世界有数のコンサルティングファームであるデロイトトーマツグループに入社しました。約120社ほどの経営コンサルティング支援を行っていましたが、そのうちの1社でビッグデータ解析事業を行う株式会社ホットリンクに参画することになります。このときのきっかけも、「経営者を支援したい」という一心です。当時のホットリンクは、米国企業買収後に多額の借り入れがあり、経営の緊急事態で、「コンサルティングだけではできないことがある」と思ったからです。あとは、創業者の内山の「グローバルでビジネスをしたい」、「データが今後の次世代のインフラになる」という考えに共感したからですね。

    実は私もオーストラリアに留学していた経験があります。当時の日本は毎年政権交代があり、GDPは3位に転落。時価総額ランキングにおいても上位から日本企業がどんどんいなくなり、日本の世界からのリスペクトが失われていく危機感を感じていました。

    一方で、海外からの日本のコンテンツや文化へのリスペクトは非常に高かった。日本のアイデンティティとも言える神仏習合、和洋折衷といった異文化との融合により生み出された独自の日本文化は、日本のコンテンツ産業やイノベーションを生み出す源流としても海外から大変評価をされていることも実感できました。

    こうした原体験から、私は、もう一度、日本が世界で活躍できる社会を創りたい。日本企業がイノベーティブなチャレンジができる環境を作り、グローバルマーケットで飛躍できるような企業支援をしたい。そして、自分たちの次の世代に、よりよい世の中を残したいと考えるようになったのです。

    ホットリンクに参画するまでは、「経営者を支援したい」という想いが強かったのですが、転機が訪れたのは、参画後まもなくでした。

     

    中国14億人の巨大市場のポテンシャルに突き動かされて新規事業を立ち上げ

    ―ホットリンクに参画後、どのような経緯で当社を設立するに至ったのですか?

    まず、日本が「人口縮小」という大きな課題に直面しているという危機感があります。海外からの需要を獲得していかなければ、内需が減退して経済が失速します。そんな時に、「観光立国政策」と「爆買い」と言われる日本消費を突き動かすムーブメントが起こりました。

    私はホットリンクに参画後、経営企画や事業開発、グローバル事業の統括役員を兼務していましたが、事業のシーズとして、中国のSNSビッグデータを活用する事業の開発がテーマになっていました。

    その時、「人口縮小する日本は、中国のビッグデータを活用して、14億人の消費を獲得することができれば、日本経済が活性化するのではないか」と気づいたのです。

    これは、私がオーストラリア留学のときから感じていた「日本を再び世界で躍進させる」という個人ミッションと大きく繋がりました。

    さらには、これからはデータの時代である、ということ。産業革命は、第一次は蒸気機関、第二次は電気、第三次は通信、そして第四次はデータがインフラとなります。データがなければAIやビッグデータは機能しない。即ち、データこそがこれからの時代で新たな価値を生み出す源泉になると確信していました。そこで、中国のソーシャルビッグデータ解析を活かしたマーケティング事業という新規事業の可能性を最大化すべく、当社トレンドExpressをホットリンクから分社化して代表取締役社長に就任しました。

     

    なぜ日本企業は中国市場を攻めあぐねているのか?

    ―日本企業にとって中国の巨大市場は大変魅力的ですが、実際にビジネスに携わってみていかがでしたか?

    何より中国のテクノロジーや14億人の巨大マーケットが信じがたいスピードで変化していることに衝撃を受けました。本当にとんでもないことが起きているというのが実際のところです。あの時の衝動が、今なお私を突き動かす原動力になっています。

    しかも、中国人は世界中にネットワークを持っており、アジア、欧米はもとより、今後はアフリカにも広がっていくことでしょう。まさに中国は世界のハブになりつつある。地勢的にみても、日本との時差は1時間、大都市間の移動であれば3~4時間で済みます。ビジネス上も、欧米人と比較して、同じアジア人同士、通じ合う部分もあります。こうした背景から、私たちは、日本企業にとって、中国はビジネスチャンスの多い市場ということを実感しています。この中国市場のポテンシャルを活かさないのは、日本企業にとって本当にもったいないと思うのです。

    ―ではなぜ日本企業の多くはこうした中国市場のポテンシャルを活かしきれていないのでしょうか?

    個別の企業や商品特性にもよりますが、私の経験上、中国の消費者に対する理解が十分でないことが根本要因だと考えています。

    まず、誰をターゲットにするか明確に定まっていないことが多々あります。そのためターゲットにどのような特徴があり、どのような生活スタイルなのかも鮮明ではありません。そうした消費者理解がされていない中で無駄なプロモーションをしてしまったり、あるいはインフルエンサーマーケティングが重要だとわかっていても、答えがない状態でトライするため当り外れが出てしまうのです。しかも、その当り外れの要因が検証されないまま、一か八かのプロモーションを繰り返してしまう。つまり、誰に何を訴求すればうまくいくか、という成功法則が明確になっていないことが多いのです。これが実態なのではないでしょうか。

    ―では、中国市場で成功法則を導き出すにはどうすればよいのでしょうか?

    まず、海外の消費者は、日本の消費者と考え方、生活習慣、購買動機も全く異なることを理解することが必要です。

    たとえば、中国には、「妊婦は化粧品を使ってはいけない」という文化があります。でも本当は妊婦さんも化粧をしたいと思っている。だから、SNSを使って妊婦さん同士で、「みんな実際はどうしてる?」とつぶやきあっているわけです。こういったつぶやきがどの地域にどれだけあるかがわかれば、その国や地域独特の傾向が明らかになります。このように日本とは違ったニーズが顕在化して初めてその国や地域におけるターゲットや訴求方法が鮮明に見えてくるのです。

    即ち、クチコミこそがマーケットの実態を正しく反映するもので、アンケートでは真実は見えてこない。しかも個々のつぶやきだけでなく、マーケット全体やクラスターごとの集合知のような消費者の本音を理解することが海外ビジネスの成功確度を高めるのに必須なのです。

     

    現地クチコミデータ解析から導き出す確度の高いプロモーション戦略

    ―具体的な中国進出支援の成功事例をご紹介いただけますか?

    先ほど少し触れた化粧品メーカー様のマーケティング支援の後日談がまさに成功事例の話になります。このクライアント様は、天然ミネラル成分を含んだ日本製のオーガニック化粧品を製造販売されています。当初のインタビューでは、日本製のオーガニック化粧品なので安全安心がセールスポイントです、ということでした。そこで、具体的にどのような消費者をターゲットにしているかを伺ってみたところ、その時点では具体的に中国の消費者像を描けておらず、どのように販売したらいいか試行錯誤をされているという状況でした。

    そこで、実際に中国語で「天然ミネラル」「オーガニック化粧品」というキーワードでソーシャルビッグデータ収集をしてみたところ、妊婦さんの多くがオーガニック化粧品に関心をもっていることがわかったのです。さらにその理由を掘り下げて分析してみたところ、中国では妊娠すると化粧をしてはいけないと言われていることが分かったのです。化粧品の成分が胎児に害があると言われているというのがその理由でした。

    そこでこのクライアントさんは、妊婦でも使える安全安心なオーガニック化粧品という打ち出し方でプロモーションを展開することにしました。その結果、売上が3倍増となり、桁が変わるような事業成長を実現することができたのです。この事例では、ビッグデータ解析に基づき、誰にどのようなコンセプトで販売していくかを明確にしたことが成功要因だと言えます。

    ―他にはどのような事例がありますか?

    続いては、ある捕獲型の害虫駆除商品の事例です。このクライアント様は中国市場で既に一定のシェアを確保されていたのですが、近年成長率が鈍化し、販売促進戦略にテコ入れをしようとされていました。

    そこでまず、ソーシャルビッグデータを用いて、現地で長年愛用されている他社の害虫駆除商品との競合分析を試みました。すると、このクライアント様の商品は「ペットや赤ちゃんがいても安心だ」という訴求ポイントが見つかったのです。理由は、中国の害虫駆除は毒エサが主流で、ペットや赤ちゃんが食べてしまうリスクがある、ということでした。この「ペットや赤ちゃんがいても安心」という訴求ポイントにフォーカスする戦略を練り、中国のことわざをもじったキャッチコピーを採用するなどして、大々的にプロモーションを展開しました。その結果、なんと前年比200%という大幅な売上増加を実現することができました。競合製品との差別化ポイントがより鮮明になり、消費者の心に刺さる訴求ができたため、市場での驚異的なシェア拡大を実現できたというわけです。

    ―般的な販売促進のプロモーションとは一線を画す、マーケティングプロセス全体を通じた支援をされているということですね。

    その通りです。中国市場に関わらず消費者を理解するにはこのようなインサイト分析が非常に重要です。本来、自社製品や競合製品が、どのように顧客から評価されているかがわからなければ、適切な訴求戦略は見えてくるはずがないのです。

    そのため、私たちは、まず中国市場におけるクライアントの商品の真のターゲットと訴求すべきポイントを鮮明にすることから始めます。ソーシャルビッグデータ解析などを通じて、消費者を深く理解した上でマーケティング戦略を十分に練り、戦略に合致した訴求力の高いコンテンツを制作し、最も効果的なプロモーション施策を実行するのです。その結果、消費者の心に刺さる訴求ができ、クライアント様にご満足いただける成果が得られています。こうした、調査・分析、コンサルティング、プロモーションまでの一気通貫のマーケティングプロセスをワンストップで提供できることが、私たちの強みであり、差別化要因になっているのです。

     

    日本企業が世界で活躍できる社会、異文化が融合する社会を牽引したい

    ―なるほど。では、こうした日本企業の海外進出支援をしていくことで、今後、どのような社会が創造されていくとお考えでしょうか?今後の展望をお聞かせください。

    私はこの事業を通じて「日本が世界で勝てる社会を実現したい」と考えています。そして、再び世界の中での日本の存在感を取り戻したい。これをまず第1ミッションとしてやり遂げたい。

    そのためには、今後、日本企業はもとより日本の良さを強力に世界に発信していくマーケティングが求められます。そのマーケティングの分野で第1人者を目指します。これが第2のミッションです。

    日本企業が世界で活躍し、日本文化や日本の良さが世界中でリスペクトされると、さらにその先には、異文化が共創する融合的な世界が実現されることでしょう。現在は、欧米や中国の取り組みを他国がキャッチアップしていくスタイルが主流です。しかし、今後は、たとえば日本の良さと中国の良さを重ね合わせたような融合型のビジネスモデルやプラットフォームが求められてくるはずです。

    こうした融合的な社会は「何を成し遂げたいか?」が重要です。その志に集うチームは、国籍、性別、宗教の違いを超越していきます。このようにして世界中で融合社会が創られていく。私は、こうした融合的な社会の実現に向けて、人と世界とつなぐをミッションに、社会に貢献していきたいと考えています。

    ―企業のみならず個人も世界で活躍できる融合的社会の実現に期待しています。本日はありがとうございました。

     

     

    <プロフィール>
    濵野 智成(はまの・とものり)

    卒業後、世界有数のコンサルティングファームであるデロイト・トーマツ・グループに入社。120社以上への経営コンサルティング支援を行い、グループ最年少のシニアマネージャーとして東京支社長、事業開発本部長を歴任。株式会社ホットリンクに参画後、COO(最高執行責任者)としてグローバル事業、経営企画、事業開発、戦略人事、コーポレート部門を統括。新規事業として立ち上げた株式会社トレンドExpressをカーブアウト型で分社化して代表取締役社長に就任。累計資金調達12.8億円を先導し、クロスボーダービジネスの先駆者として東京と上海をベースに活動中。
    Twitter:tomohamano
    Facebook:Hamano Tomonari
    NewsPicks:Hamano Tomonari

     
    株式会社トレンドExpress
    URL:https://www.trendexpress.jp/
    所在地:〒102-0071 東京都千代田区富士見一丁目3番11号 富士見デュープレックスビズ 5階
    上海拠点:201103 上海市金雨路55号
    資本金:436,752,970円(2019年12月31日時点)

    株主:
    株式会社ホットリンク
    DNX Ventures
    日本郵政キャピタル株式会社
    株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ
    株式会社エアトリ
    株式会社アコード・ベンチャーズ
    濵野 智成

    事業内容:
    世界各国のソーシャル・ビッグデータを使ったマーケット調査・分析
    ・インバウンド消費に関する需要予測
    ・海外消費者のインサイト分析
    ・企業のブランド調査・競合調査
    ・マーケティング戦略策定分析等
    中国向けマーケティングメディア 中国トレンドExpressの編集・発行
    越境EC支援(販売、CS対応、物流、プロモーション、越境EC Xの運営)
    ソーシャル・ビッグデータ分析を基にしたPR及びプロモーション

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