2020年08月28日(金)0ブックマーク

インティメート・マージャーCFO久田 康平氏に聞く~DMP業界のトップランナーとしてのIPOの意味

経営ハッカー編集部
シェア0
ツイート
ブックマーク0
後で読む

DMP業界の専業最大手で2019年10月に上場を果たした株式会社インティメート・マージャー(東証マザーズ7072)。今後ますますDXが進んでいき、データエコノミー化する世界において、インターネット上の膨大なデータを活用するデータマネジメント・プラットフォーム(DMP)が不可欠だ。DMPとは、インターネット上に蓄積された様々な情報データを集積し、企業や組織が保有するデータと統合して、ビジネス等で活用ができるようにするプラットフォームのこと。アドテク業界で活用が始まり、フィンテック業界など様々な業界で導入の動きが活発化している。今回、同社のIPOを取り仕切った取締役 久田 康平氏に、DMP事業の現状、IPOに至るまでの経緯や今後の事業展開、投資家に対する姿勢を聞いた。

 

目次

    DMP(データマネジメント・プラットフォーム)業界のトップランナーとしてデータ基盤の構築を担う

    ―まず御社の事業概要をお聞かせいただきたいのですが、その前に社名の由来と御社のミッションを教えていただけますか?

    インティメート・マージャーという社名は、人工知能(AI)研究の権威レイ・カーツワイル博士らが提唱する「シンギュラリティ(技術的特異点)に向けて世界中に分散するあらゆるデータが1つに融合されていく」という考え方に由来しており、データビジネスのプロデューサー集団を目指すという代表の固い決意を反映しています。そもそもデータは特定の企業が独占するものではなく、社会の課題解決のために活用される公共性が高いインフラであるべきです。あらゆる公共セクター、民間セクター、あるいは個人が、ビジネスや日常生活の中で当たり前のようにデータを活用することで、よりよい社会が形成されていく。そのような「データエコノミー」を形成しようという考え方が根底にあります。このような背景から、私たちの「データ活用における革命を起こす」というミッションが生まれたのです。

    ―では、御社の事業概要についてお聞かせください。

    当社の事業は、当社独自のデータマネジメント・プラットフォーム「IM-DMP」を軸に、マーケティング支援、データマネジメント・アナリティクス、Performance DMP、Select DMPの4種類のソリューションを提供しています。

    データマネジメント・プラットフォーム(DMP)とは、インターネット上に蓄積された様々な情報データを集積し、企業が保有するデータと統合して、ビジネス等で活用できるようにするプラットフォームのことです。インターネット上のデータは、膨大かつ玉石混交で、そのままではビジネスに使えない状態で散在していることがほとんどです。そこで当社は、それらを利用者にとって、ビジネスで活用できる価値のあるデータに変換して提供しています。この当社独自のDMPを、社名の頭文字を冠して「IM-DMP」と呼んでいます。「IM-DMP」は、ユニークブラウザ換算で日本のインターネット人口の約9割をカバーしています。このユニークブラウザに紐づく属性、興味、関心事などの情報を個人が特定できないように統計的な処理をして、企業のマーケティング活動などに活用できる状態にして提供しているのです。例えば、アドテク分野では、自社で取得した顧客データとデジタル広告配信ツール内で「IM-DMP」が保有するデータを組み合わせて活用することで、無駄のない最適な広告配信サービスを実現しています。

    先ほどご紹介した4つのソリューションを少しご説明しますと、すべて当社の「IM-DMP」を導入企業様のニーズに合わせて柔軟にご活用頂けるサービスです。

    まず一つ目。マーケティング支援は、広告代理店と近いモデルで、予算金額に応じて弊社のデータを活用した効率的なデジタル広告配信を実施するサービスです。当社独自の特徴は、企業様のキャンペーン商品の来訪ユーザーをリアルタイムに分析することで、企業毎に最適なデータを「IM-DMP」から抽出して活用することで、獲得効率の高い広告配信を行えることです。

    二つ目。データマネジメント・アナリティクスは、Google Analyticsや一般的な分析ツールなどで取得するアクセスログに、「IM-DMP」で保有する詳細な属性情報などを付加することで、高度なアクセス解析ができるサービスです。導入企業様の顧客データベースとのAPI連携により、各社独自で高度なアクセス解析が可能なシステム構築もサポートしています。

    三つ目。「Performance DMP」は、「IM-DMP」のデータを最大限に活用した広告アカウント設計とすることで、非常に高効率にコンバージョンを獲得できる成果報酬型のアフェリエイトサービスです。費用対効果が明確ですのでコロナ禍でも大変順調に受注が拡大しています。

    最後に、「Select DMP」は、BtoB企業向けにリード獲得の見込度の高い法人リストを提供するサービスです。例えば、直近30日で自社のサービスと類似する他社サービスやキーワードに興味関心がある企業や、そこから類推したニーズが顕在化しているリード獲得効率の高い企業リストをタイムリーに提供しています。

     

    簗島代表の独自の発想力に惚れ込み参画、IPOに向けたゼロからの体制整備

    ―久田さんはどのような経緯で当社に参画されたのですか?

    私はもともと三井住友銀行で法人営業をしていました。東京都心の中堅・中小企業への融資提案をする仕事です。都内には本当に様々な中小企業があり、所属する支店エリアのお取引先の中にはIPOする企業もあり、自分はそうした成長企業を直接支援する仕事をしたいと思いが強くなっていきました。そこでVC部門への出向を希望したところ、SMBCベンチャーキャピタルへ出向することができました。その後、3年半ほどVC業務を手掛け、急成長する企業、M&Aで事業を売却する企業など様々な企業の現実を見てきました。そんな中、小さいながらも信念をもって地道に事業に取り組み、未知の領域を開拓して成長していく企業にも出会い、こういう企業でゼロから事業を伸ばしてみたい、と思うようになりました。

    以降、様々な企業の経営者と面談の機会をいただく中で、当社の簗島に出会いました。彼の発想は非常にユニークで、ずば抜けて高い感性の持ち主でした。当時、データサイエンティストというと、膨大なデータを精緻に解析して詳細なレポートを作成するのが主流でしたが、簗島は全く発想が逆で、「膨大なデータを高速で処理して、大雑把な傾向を把握したら顧客にスピーディーに提供して、それを何に活用するかを一緒に考えることが重要。緻密な分析をしている暇などない。真っ先に必要と思われるものだけを届ける方が大事だ」、という考え方なのです。このデータ活用のカスタマーファーストの考え方は、簗島独自のものだと。

    また、彼の考え方で特徴的なことは、膨大なアクセスデータのうち、例えば、明らかにリードにつながらないようなウェブのアクセスを削減することで、アクセスしてきた顧客データの価値を高めたほうが、よっぽど高効率のデータ活用ができる、というロジカルな視点です。「これをビジネスにしていきたい。」と、今のオフィスの1/5ほどの小さなオフィスで熱弁する簗島の話を聞きながら、こうした簗島独自の考え方が社会に広まるときっと面白い世の中になるのでなないか、と思い、その時、私は簗島に賭けてみようと決意したのです。

    ―入社後は、どのようなプロセスでIPOに至ったのでしょうか? IPOにあたってのハードルに対して、それをどのように解決してきたのでしょうか?

    私が入社したのは2016年4月。当時、創業3年目で、売上が7億円に到達するほど倍々基調で業績は順調に伸びていました。成長スピードに資金繰りが追い付かず、かつ更に成長スピードを上げるための新規事業立ち上げを行う良いタイミングでしたので、すぐに電通様、YJキャピタル様に出資を依頼し、当座の運転資金と新規事業の資金を3億円ほど調達しました。これが入社後、最初の仕事となり、その後、早速、2016年9月頃から上場準備に入り、早々に監査法人、証券会社との契約を進めました。また、上場準備が本格化した2016年末に私自身も取締役CFOとなり、以降現在まで、コーポレート部門全体を統括しています。

    一方で、上場に向けて社内体制の整備を進めなければなりませんでした。当時、経理機能はもとより管理部門すらなく、決済機能もすべて親会社にありました。上場するわけですので事業の成長を止めずに管理部門を早々に内製化しなければなりません。スタッフがいませんでしたので、私が銀行に口座開設を申し込み、請求書も発行しました。でもそのエビデンスとなる契約書がほとんどない、当時はそんな状況でしたので、まさにゼロから管理部門を立ち上げたというのが実際のところです。上場企業になる以上、社会の信用を得られる社内体制の整備は当然ながら重要ですので、当社の場合は、予実よりも管理体制の構築が最大の課題でした。

    もう1点は、個人情報保護法改正のタイミングでしたので、データの取り扱いも重要な審査ポイントになりました。当社は個人情報はもちろん、個人が特定される可能性がある手法でのデータ取得もしない方針ですし、当然オプトアウトの仕組みもあります。さらに、当社のガイドラインとして、サンプルデータが少なく個人が特定されやすいデータは取得しない、という方針で情報管理をしています。結果、特段指摘を受けることはありませんでした。なお、当社は、社会の公器としての意識を強く持ち個人情報保護法などの法令はもとより、データを活用されたくないユーザーの意向を尊重するなど、倫理を重視して取り組んでいます。また、上場の過程でそのような企業の姿勢をしっかりと説明できる体制を整えてきました。

    このような取り組みを経て、2019年9月に上場承認、10月に東証マザーズに上場することができました。

     

    投資家に向けて語るフィンテック等、新領域との提携による成長戦略

    ―では、今後の事業展開はどのように考えていますか?

    今後は、既存事業に加えて、2つの新規事業を立ち上げ、より幅広い分野で事業を展開していきます。

    まず、フィンテック分野においては、株主でもある新生銀行様との合弁事業として信用スコアサービス提供事業を行う「クレジットスコア株式会社(以下、クレジットスコア)」を設立しました。新生銀行様と開発した独自のスコアリングモデルを他の金融機関にも販売し、金融業界に横展開をしていく予定です。ウェブ上のデータと金融資産のデータを掛け合わせて個人が特定できない状態でスコアリングするという独自のモデルを採用していますので、これまで各金融機関がご利用になっているモデルに加えて、当社のモデルを審査や保証のプロセスに組み込んでいただければ、より信用力の高い顧客を呼び込むことができるようになります。

    次に、プライバシーテック(消費者のプライバシーを保護し、適切にパーソナルデータを活用するための技術)分野については、株式会社ベクトル様との合弁で「Priv Tech株式会社(以下、プライブテック)」を立ち上げました。今後、より多様な業界でのデータ活用と、個人のプライバシー保護を両立させ、お互いに気持ちがいい関係を実現するためのプラットフォーム事業を展開していく予定です。

    なお、このようにIPOを機に、新生銀行様や、ベクトル様など、私たちの技術力を高く評価してくださる、より信用力の高い企業との提携が実現しやすくなりました。今後も、様々な業界とのアライアンスを進めていきたいと思います。

     

    投資家の信頼を得るために~トップランナーとしての誠実なビジネス

    ―次に、IRの考え方についてお伺いします。中長期的に投資家の信頼を獲得するにはどのようにすればよいとお考えでしょうか?

    特にマザーズ企業の場合は明確で一貫性のある成長戦略を示し、それを誠実に実行することが第一だと思います。当社の場合、外部環境のトレンドはもちろん、創業者の想い、データ活用に革命を起こすというミッションを、これまで申し上げてきたような成長戦略で実現していくということを、ぶれずに、1つひとつ誠実に実行していく、成長しているというメッセージを常に発信していきたいと思っています。その動きを四半期ごとにアクションで示すことが、上場企業としての責務だと思っています。

    また、できるだけ幅広い投資家の方々の意見を伺うことも重要だと考えています。私どもはBtoB事業を行っていますが、流動性やCSRの観点からも、個人投資家と機関投資家のバランスは半々という割合が良いのではないかと考えています。私たちが扱うデータは、個人が活動することで生まれてくるものです。そのような活動が循環して、当社のビジネスになっていくので、個人投資家の方の意見も非常に参考になります。

    ―では、最後に、これからIPOを目指す企業についてアドバイスがあればお聞かせください。

    これからIPOを目指す企業は、新規性の高い事業分野の企業が多いはずです。つまり、そのような新規性の高い企業が上場するということは、その業界のトップランナーとして社会から注目が集まります。後続の企業も、先行企業が社会に与えるイメージの影響を受け、投資家から「きっとこういう会社なんじゃないか」という見られ方をします。たとえば、私たちのDMP業界であれば、今後も業界を発展させていくためには、個人データの取り扱いのポリシーは非常に重要で、しっかりユーザーの同意を得た範囲で適切に使用しなければ社会からの信用は得られません。1社でも悪質な使い方をしていたら業界そのものの信用を失墜させかねません。トップランナーとして上場する企業は、こういった業界に与える影響をしっかり考えて誠実なビジネスをしていくことが非常に重要だと思います。

    また、上場要件も、ぎりぎりでクリアすればよいわけではありません。私たちは、上場後も、さらに成長・発展していくにはどうすれば良いのかという視点で取り組んできました。時価総額1,000億円を超えるような企業は、目指すべきスケールに相応しい状態を見据えて内部管理体制を強化し続けたからこそ、そこまで成長できたわけです。先輩企業の後姿を見ていると、ガバナンス体制は、さらによりよい姿を目指して誠実に取り組んでいくことが、最後には報われるのではないかと思いますね。

    私たちのビジネスは、社会からデータを預かり、それを解析して、新たな価値を生み出す仕事です。多くのステークホルダーに支えられてこそ成り立っています。真剣にIPOを目指したからこそ、例えば電通様、新生銀行様、および様々な業界の企業様から貴重なアドバイスをいただくことができました。様々な株主様が集まってきてくださることで、その先の成長にもつながります。今後も、しっかり流動性を高めていきたいと考えています。親会社の下で一定の役割を果たす子会社のままであったら、このような気づきは得られなかったのではないかと思います。この場を借りて、ステークホルダーの皆様に改めて感謝を申し上げたいと思います。

    ―御社はDMP業界のトップランナーとしてユーザーファーストの視点でデータを取り扱い、クライアントと社会への価値貢献を追求されていることがよくわかりました。本日はありがとうございました。

     

    <プロフィール>
    株式会社インティメート・マージャー
    取締役 久田 康平(ひさだ・こうへい)

    2009年 株式会社三井住友銀行へ入行。2013年よりSMBCベンチャーキャピタル株式会社へ出向し、複数のベンチャー企業への支援業務に従事。2016年 当社入社。同年当社取締役管理本部長に就任。
     
    株式会社インティメート・マージャー
    https://corp.intimatemerger.com/

    所在地:〒106-0032 東京都港区六本木3-5-27 六本木山田ビル4F
    設立年月日:2013年6月24日
     
    役員一覧:
    代表取締役社長 簗島 亮次
    取締役 久田 康平
    取締役 村井 浩起
    取締役 佐伯 朋嗣
    取締役 永井 秀輔
    社外取締役 永田 暁彦
    監査役 大島 忠
    監査役 横山 幸太郎
    監査役 大杉 泉
     
    事業内容:DMP(データマネジメントプラットフォーム)事業
     
    加盟団体
    一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会(JIAA)
     
    主要取引先
    グーグル合同会社
    株式会社 電通
    ヤフー株式会社
     
    グループ会社
    Priv Tech株式会社
    クレジットスコア株式会社

    シェア0
    ツイート
    ブックマーク0
    後で読む

    関連する事例記事

    • インタビュー・コラム10月27日経営ハッカー編集部

      freeeが会計以外の領域でプロダクト開発を進める理由は? 新プロダクト事業責任者に聞くバックオフィスの価値の高め方

      0ブックマーク
    • インタビュー・コラム10月23日経営ハッカー編集部

      ブシロード橋本義賢代表に聞く~IPディベロッパーとしてのエンターテイメント産業の創造とは?

      1ブックマーク
    • インタビュー・コラム10月21日経営ハッカー編集部

      「スポットコンサル」で世界中の知見と、挑戦をつなぐ〜ビザスク端羽英子代表&宮城勝秀氏

      1ブックマーク
    • インタビュー・コラム10月16日経営ハッカー編集部

      コパ・コーポレーション吉村泰助代表、馬場洋和取締役に聞く~実演販売×卸という新業態でマザーズ上場

      0ブックマーク
    • インタビュー・コラム10月14日経営ハッカー編集部

      唯一無二の中小飲食店向けセントラルキッチンとして飛躍~ミクリード片山礼子代表・石井文範取締役

      0ブックマーク
    関連記事一覧