2020年09月07日(月)2ブックマーク

企業と投資家をつなぐインフラ整備で日本の上場企業の時価総額を高める~ウィルズ杉本光生代表

経営ハッカー編集部
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日経平均が38,915円の最高値を付けた直後にはじまったバブル崩壊。東証の株主種別毎の株式保有率でみると、この機を境に外国人機関投資家が国内金融機関を逆転した。その後も外国人投資家の株式保有率は増え続け、今や30%前後となって日本市場のメインプレイヤーだ。対して、国内個人投資家の保有率はと言えば、1970年には40%を占めていたものの、現時点では20%を切った。一方で、日本の個人金融資産は約1,800兆円に積み上がっている。そんな中、日本の上場企業の多くは今の時価総額が実力を反映していないと不平を言い、個人は個人で銀行預金など自身の金融資産の低利回りを嘆いているというわけだ。東証を盛り上げる中心が外国人で、日本の巨額な個人マネーの多くは資産運用に向かわないまま。このいびつな日本の資本市場を抜本的に何とかせねばとの問題意識から立ち上がったのが、株式会社ウィルズ(東証マザーズ4482)だ。同社は上場企業と投資家をインターネットでつなぎ、企業にとっては株主獲得のマーケティング、個人にとっては高い利回りの資産運用支援といった、双方にメリットのある株式情報インフラを形成し、着々と市場にインパクトを与えつつある。今回は代表取締役CEOの杉本光生氏に、同社サービスがもたらす日本の株式市場活性化の可能性や、上場企業はどうあるべきかなどを聞いた。

 

目次

    ITを活用した類を見ない投資家マーケティング支援サービスの展開

    ーはじめに御社のサービスの内容をお聞かせください。

    株式会社ウィルズでは、効率的な資本市場の形成と企業価値最大化の支援をミッションに掲げ、ITを活用した投資家マーケティングの総合支援ツールとして「IR-navi」「プレミアム優待倶楽部」といったサービスを提供しています。また、喫緊のコロナ対策で脚光を浴びたバーチャル株主総会とオンライン決算説明会の支援も行っています。

    まず、「IR-navi」は、上場企業が国内外の特定個別の機関投資家による当該企業の株式保有状況を確認できる、国内機関投資家・外国人投資家・個人株主をインターネット上で直接結ぶ国内唯一の投資家マーケティングツールです。2020年7月末時点で、上場企業約300社に導入していただいています。

    続いて、「プレミアム優待倶楽部」は、株主の「デジタル化」と「ポイント機能」を併用した新しい株主優待サービスです。株主には、配当とは別に保有株数や保有期間に応じた優待ポイントが付与され、1ポイント1円換算でブランド和牛や高級ワインなどのグルメ、電化製品、ゴルフ用品、温泉旅行など約5,000点の商品と交換できます。また、複数の会社から発行されたポイントを合算して「WILLsCoin」に交換することができます。WILLsCoinはJALのマイルや他社ポイントにも交換できるなど、幅広い使い方があるのが特徴です。

    さらに、2020年4月からは、「オンライン決算説明会」と「バーチャル株主総会」についての問い合わせも数多くいただいています。これまで一般的に本人認証が難しいとされてきたサービスですが、株主番号毎の本人確認やブロックチェーン技術などを活用することで、非常に高いセキュリティレベルでIR関連のオンラインイベントを実施することが可能となっています。

     

    長期保有の安定株主層を増やして日本市場全体の底上げを狙う

    ―IR-naviの開発にはどのような背景があったのですか?

    1997年から金融ビッグバンが始まり、「日本の銀行は潰れない」と信じられてきた“銀行不倒神話”が脆くも崩れ去りました。それまで日本の大企業の株は、その多くを銀行が持ち合い株として保有していたため、90年代初頭まではIRに関心のある企業は少数でした。ところが90年代後半になり、銀行が倒産したことで持ち合い構造が崩れ始め、銀行が持っていた株、いわゆる政策投資のお付き合い株がどんどん売られ始めた。その代わりに台頭してきたのが、外国人機関投資家です。1995年の外国人機関投資家の持ち株比率は6%程度でしたが、90年代後半になると10%を超え始め、今では約30%にまで上がっています。

    このような状況下で、IRコンサルタントだった私のもとには、1999年頃から「自社の株主にどれくらいの外国人投資家がいるのか調べてほしい」という日本の大企業からのリクエストが増えてきたのです。一方で、当時はインターネットの登場によりIT化ブームが世界を席巻していました。そこで私は、インターネット上で証券コードを入力して、その会社の株を誰が何株保有しているかなどの情報が得られるサービスがあれば、潜在的なニーズは大きいだろうと考えました。資金的な課題もあってしばらくは構想を温めていたのですが、どうしても頭から離れず、また周囲の期待も大きかったため、2004年に株式会社ウィルズを起業。翌年IR-naviをリリースしたのです。

    ―御社の成長ドライバーにもなっているプレミアム優待倶楽部の開発背景も教えてください。

    もっと根源的な動機で言えば、IRコンサルタントをやっていると、世界の他の取引所と違い、時価総額が上がっていかない日本の資本市場の構造的な問題が良く見えるようになってきました。そこで、私は以前から「個人金融資産を株式投資へ誘導して日経平均株価を上げ、日本経済全体を底上げすることは可能だ」という思いを強く抱いていたわけなのです。

    その布石とすべく初期のIR-naviは、機関投資家の株式保有状況を調べられるサービスでした。その後新興市場のお客様増加に伴って「もっと個人投資家をマーケティングしたい」というニーズが増えてきました。というのも、まだ時価総額が低い新興企業は、機関投資家のマネーが入りにくいため、個人投資家に多くの株を買ってもらって流動性を上げながら、時価総額を高めていくのが王道だからです。

    そこで配当とは別にポイントが付き、そのポイントを疑似配当のような感覚で使えるという、配当と優待のハイブリッドな仕組みとして考案したのがプレミアム優待倶楽部です。例えばある会社の株を1,000株買うと6万ポイントが付くこともあり、1ポイント1円換算なので6万円相当になる。配当とポイントを合算して総合利回りを計算できるため、個人投資家からすると一般的な株主優待よりもかなり魅力的だというわけです。

    もう1つの特徴は、マーケティング視点で、個人の中でも安定株主増加の仕組みを取り入れていることです。金券類などの優待だけを目当てとした短期保有では、日本企業を中長期的に応援して成長資金を投資いただくことにはつながりません。そこで、保有年数が長くなるにしたがってポイント還元倍率が上がり、個人株主の長期保有を促進する仕組みを作りました。ポイントで交換できる商品の品揃えも、安定株主層に合わせた“大人が本当に欲しいと思えるもの”を取り揃えています。

    プレミアム優待倶楽部は年々登録率が上がっており、導入していただいた会社の株主の平均70%の方が会員登録をしてくださっています。プレミアム優待倶楽部はバーチャル株主総会とも連動したサービスなので、個人投資家の株主総会参加率を引き上げたい会社にとっても、非常に大きな利点になると考えています。

    ー会員登録率7割は驚異的な数字ですね! 企業側はポイント配分をどのように計算しているのですか?

    まず、当社で顧客企業の株主構成を分析します。なぜかというと、株主の構成によって企業価値は相当変化するからです。上場したばかりの会社のオーナーが自社の8割の株を保有していたら、流動性がないので株価は上がりませんよね。株価が上がらなければ、個人投資家もだんだん離れていく。理想的な状態は、外国人投資家が3割、国内金融機関が3割、個人投資家が3割という持株比率です。

    株主構成を分析したら、例えば「20単元ゾーンのポイント利回りを一番高くして、大口の個人投資家を増やしましょう」といった具合に設計を行い、資本政策も含めて優良な個人投資家を獲得できるようにシミュレーションします。現時点で日本企業の平均配当利回りは約2.2%ですが、当社は配当とポイントを合わせて3.5%~4%超の実質利回りになるように設計するのです。利回りが魅力的だから個人投資家が株を買い、株価も上がるというメカニズムですね。プレミアム優待倶楽部は、投資家にも発行体にも、双方にとって非常に大きなメリットがあるサービスです。

     

    個人マネーが投資に回れば日経平均は4万円を超える可能性も

    ー時価総額を上げるには個人投資家による株式投資額を増やすことがカギになると?

    株価を形成する投資主体は、大まかに言えば国内機関投資家と外国人投資家、そして個人投資家の3つです。それぞれの保有率は、国内機関投資家が約25%、外国人が約30%、個人が20%となり、残りは持ち合い株などです。現在、日本のマーケットを動かしている主役は外国人で、東証の1日の売買比率の約7割を占めるといわれていますが、東証全体の時価総額が約700兆円ですから、外国人が持っている株は多くても250兆円ほど。国内機関投資家だって年金を含め、せいぜい200数十兆円のウェイトなのです。一方、日本の個人金融資産は約1800兆円以上あり、しかもその半分が流動性のある現預金資産です。それだけで約900兆円ですから、「個人の財布で日本の株式市場は全部飲み込める」といっても過言ではありません。

    私は、もっと多くの個人マネーが株式投資に充てられれば、日経平均株価は4万円に到達できると確信しています。1989年に3万8,915円の史上最高値を付けてから、まだその株価を超えられない国は日本くらいですよ。この30年程で、中国や欧米はもっと時価総額が上がっているわけですから、日経平均株価がもう一度4万円近くになるまで経済を底上げしていかなければ、世界と戦えるわけがありません。ですから私は、個人投資家にもっと日本の株に投資するように促し、日本全体を盛り上げたいと強く思っているわけなのです。

    ーなぜ日本では個人資産が株式投資に回らないのでしょうか?

    私見ですが、その話は第二次世界大戦の終戦までさかのぼります。1945年に終戦を迎え、マッカーサー率いるGHQがやって来て「日本経済をその後50年で復興させる」という絵を描きました。極論すれば、アメリカのような本来の自発的で、自由競争の働く市場原理が「人為的に作られた資本主義」という形に置き換えられ、戦後の日本はその枠にはめられたのです。そして、国の資本で国鉄や電電公社、日本郵政といった主要な会社が作られ、それを親方日の丸のように銀行が支えるという政策的な経済が発展しました。これが戦後の高度経済成長を牽引したことは間違いありませんが、その過程で起こったのが、もたれ合い構造です。国主導でとにかく銀行を強くして、銀行に株を買わせて、銀行が融資して経済を急激に成長させるという構造ができあがってしまった。そしてさらに郵便局は、「郵便局に貯金したら複利で増えますよ」と謳ったわけです。我々の親世代がよく「とにかく郵便局に貯金しなさい」と言っていたように、預ければ安全に増えるという心理を植え付けました。

    こうした背景から「資産は銀行や郵便局に預けておくのが安全だ、株式投資なんてギャンブルみたいなものだ」という風潮がまだ残っているのだと思います。今では預けておいてもほとんど金利がゼロに近いのにもかかわらず、です。反対に、米国などでは個人金融資産の約半分は株などのリスク資産に向けられています。配当利回りだけでも銀行の金利よりはるかに高いわけですから、資産は寝かせておくのではなく、運用するのが自然な流れなのです。

     

    3つの投資主体を1つのプラットフォームでつなぐ唯一のビジネスモデル

    ーESG投資や長期保有の機関投資家を獲得したい上場企業に向けては、どのようなソリューションをお考えですか?

    機関投資家向けには、統合報告書やアニュアルレポートといったコンテンツが重要な役割を果たすので、当社ではクオリティを重視したESGソリューションを提供しています。これまで、統合報告書やアニュアルレポートなどは紙ベースで作成されることがほとんどでしたが、当社は早期にデジタル化させる計画です。1970年代に日本列島改造論によって高速道路が張り巡らされたように、インターネット上に世界中の投資家と発行体を結ぶトラフィックを敷こうと考えています。統合報告書やアニュアルレポートをデジタル化すれば、このトラフィックの上を走らせることが可能になり、世界中の投資家に企業の経営戦略やESGへの考え方、経営計画などをコンテンツとして配信できる。私たちは、そういったインフラを提供する会社を目指しています。

    ー投資家を対象としたクラウドサービスは増えているように見えますが、御社の強みは何ですか?

    機関投資家だけをターゲットにしたデータベースは競合会社にもありますが、当社の強みは、さらに個人株主までをカバーできる仕組みになっていることです。現在10万人以上の株主に参加いただいているプレミアム優待倶楽部のデータベースをIR-naviと連携させることで、世界中のファンドマネージャーにIR情報を配信できるツールとなりました。これは海外の機関投資家と国内の金融機関、さらに個人投資家という3つの投資主体を、インターネット上の1つのプラットフォームでつなごうという構想なのです。このビジネスモデルを実現しているのは、世界でも当社だけです。

     

    日本経済再興のために上場企業が最優先すべきこととは?

    ーそもそも株式市場に対峙する日本の上場企業はどうあるべきなのでしょう?

    日本の企業が最優先すべきは「株主価値の最大化」です。株主価値の最大化というのは、つまり企業価値の最大化によってもたらされます。最大の成長ポテンシャルをマーケットに示すことによって、企業価値、それを表す時価総額を上げるべきだと私は思っているのですね。未来を作って成長ポテンシャルの大きな会社が、マーケットのマネーの応援を集めてさらに企業価値を上げていく。そういう力を持って初めてESG投資などの資金を得てより世の中に恩返しができる。ですから、まず日本の企業は株主価値の最大化を求め、そのためにもっと明るい未来図を描くべきですよね。1970年代は日本企業が世界を席巻していましたが、2000年頃に東芝がサムスンに抜かれ、今ではトヨタがテスラに抜かれてしまった。日本企業としては現実を直視して、その敗因は何だったのかをもう一度考えることが必要なのではないでしょうか。海外企業に抜かれている場合ではありません。

    ー2022年の東証再編にはどのような背景があるとお考えですか?

    これはあくまでも私見です。ブルーチップと呼ばれるアメリカのエクセレントカンパニーの企業の時価総額は、数十兆円から百兆円規模。一方、東証一部企業の時価総額1千億円といったところですが、実際はもっと低い企業も多いのが実情です。また、上場が最終目標となっているいわゆる“上場ゴール”の問題も取り沙汰されています。これでは、機関投資家からしても魅力が薄れてしまい、マーケットそのものの活性化という意味でも好ましくありません。ですから、再編というのはある意味当然の流れだったのだと思います。

    また、再編で株主数や流通株式時価総額などの上場基準も改められ、きちんとした投資目的を持っている優良な株主層を醸成するように促している印象ですね。この点は当社のビジョンやミッションと合致しているため、再編後もより価値のあるサービスを提供できると確信しています。IR-naviやプレミアム優待倶楽部はまだ私の理想とする完成形ではなく、現在フルリニューアル開発に着手しています。私たちはこれからも、理想的な資本市場の形成に向けて企業と投資家を応援し続け、日本経済の発展に貢献できる存在でありたいと思っています。

    ー日本の構造的な問題に切り込み、本質的なビジネスを展開されていることがよくわかりました。これから上場を目指す企業にとっても参考になるお話をありがとうございました。

     

     

    <プロフィール>

    杉本 光生(すぎもと・みつお)
    株式会社ウィルズ代表取締役社長 CEO

    株式会社リクルートコスモス、株式会社アイ・アールジャパンなどを経て、2004年10月に株式会社ウィルズの前身となるインベスター・ネットワークス株式会社を設立。長年のIRコンサルティング経験を活かし、効率的なIR活動の実現を目指して、「IR-navi」を考案・プロデュース。2015年9月には個人投資家向け株主優待サイト「プレミアム優待倶楽部」をリリースし、国内上場企業に対して、戦略的個人投資家向けIRを提唱。日本IR協議会メンバー。

    株式会社ウィルズ (WILLs Inc.)
    https://www.wills-net.co.jp
    設立日:2004年10月18日
    所在地:東京本社 東京都港区虎ノ門3-2-2 虎ノ門30森ビル2F
    代表者:代表取締役社長CEO 杉本 光生
    資本金:202,142,950円(2020年6月30日現在)
    従業員数:64名(役員、パートタイム、業務委託、派遣社員含む)
    事業内容:プレミアム優待倶楽部、及びプレミアム優待倶楽部PORTALの運営
    IR-naviの運営
    ESGソリューション(統合報告書・アニュアルレポート等の企画・制作)

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