2020年10月07日(水)0ブックマーク

リモートで強いチームをどう作るか 社員500名でオンライン合宿をしたfreeeが意識したこと

経営ハッカー編集部
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経営基盤本部の辻本裕佳さん。コミュニケーションやチーム作りのためのイベントをコロナ禍でも実施するためにさまざまな工夫を凝らした。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止策として、企業ではリモートワークなどを取り入れ、新しい働き方への切り替えが始まっている。その一方、課題としてあがるのは、社員同士のコミュニケーションやチーム作り。リモートワークにより、それらの難易度は上がっている。
 
freee株式会社では毎年、期初である7月に社員一同を集めた合宿「freee Spirit(通称フリスピ)」を開催。例年は会場を貸し切ってイベントを行っていたが、2020年はコロナ禍の影響で、8時間のオンライン開催となり、社員500名がリモートで参加した。
 
オンラインでは難しいとされるコミュニケーションやチーム作りに、どのような工夫を凝らしたのか。freee経営基盤本部の辻本祐佳さんに聞く。

目次

    目的やテーマが明確な全社イベントは、チームを強くする

    取材に答える辻本祐佳さん

    ──コロナ禍でもフリスピは中止にせず、オンラインで実施したのですね。

    最初から中止にする発想はなかったです。フリスピは社員一同で新年度のキックオフを行う、弊社にとって一番大事なイベント。なので、どのように開催するかだけを考えていました。

    ──毎年異なる目的やテーマを掲げているそうですね。今年の目的、テーマは何でしょうか?

    今回は2019年12月に上場して以来、初のフリスピなので、新たな幕開けとなる重要な場面として、3つの目的を決めました。

    1つは、今後のfreeeにワクワクしてもらうこと。上場して、新しい仲間や経験、作っていけるプロダクトが増えました。イベント全体を通して、「これからfreeeはどうなるんだろう」と楽しみながら働くマインドを醸成することが第一の目的です。

    2つ目は、全員が組織の強さを補強”すること。リモートワークでは、仕事で関わらない相手と立ち話する機会がなくなります。社員同士のつながりが薄れてしまうため、フリスピでは社員がコミュニケーションを取れる場を作ろうと考えました。

    3つ目は、「社会の進化を担う責任感」を一人ひとりが持つこと。これはfreeeが定める価値基準「マジ価値2原則」のうちの1つで、社会全体を前に推し進めるべく、社会に信頼される存在であると同時に、本質的であればリスクを取ってでも挑戦していくという姿勢を表したものです。上場というイベントを、freeeでは「長い序章を終え、これから第一章を始めていく」と捉えているのですが、そのタイミングで今一度社員に「freee第一章における社会の進化を、自分自身が担っているんだ」と奮い立ってほしいと願っていました。

     

    freeeが掲げる「マジ価値2原則」。一つめは社会の進化を担い、信頼される存在になるという自負を持つと同時に、本質的なものに対してはあえてリスクを取り挑戦していくこと。二つめはミッションに共感したメンバーが集まり、自律的に行動することで、その熱狂を社会に伝搬させより良い相乗効果を生み出していく集団であること。

    これらを踏まえた上で、今年のテーマは「全員が組織の強さを“補強”すること」と「これから社会の進化を担っていくんだと一人ひとりが奮い立つこと」にしました。従業員が増える中で、改めて社員一人ひとりに「自分たちがfreeeの一員として新しい社会を作るのだ」とワクワクする機会にしたかったのです。

    ──ただ楽しむイベントにするのではなく、目的やテーマをしっかりと定める必要があるのですね。

    そうです。このイベントでは、適切なチームビルディングを目指しています。

    目的を持たずに「コロナ禍で大変だから仲良くしましょう」とイベントを開催しても失敗するでしょう。せっかく全社員が集まるなら、企業理念を再確認し、ビジョンを共有できる時間にすべきです。そうすることで、社員同士の意識のつながりに発展するのではないでしょうか。

    「freeeの存在理由はこれで、強みはこれ」と、会社の根幹にある価値観を社員同士で認識できていると、全員が同じ方向を向いて、ボトムアップで考えられるチームになっていきます。これらは従業員のエンゲージメントや働きがい、やりがいにも密接に関わる大切なことです。

     

    オンラインでの課題 どうやって社員の興味を惹きつけ、コミュニケーションの場を作るか

    しっかりとした収録・配信環境を整え、万全の準備でオンラインイベントに臨んだ

    ──オンライン開催ならではの課題は何でしょうか?

    イベントを行う8時間で、社員の興味をどう引き続けるかが課題でした。普段の仕事と切り離して組織全体のことを考える時間にしてほしいという想いから、今まではパソコンを会場へ持って行かないようにしていたんです。でも、オンライン開催にするとパソコンが使えてしまう。さらには、家庭の事情で子どもの世話をしなくてはならない社員もいます。

    これを解消するため、まずはイベントをパートごとに分けて、企画や話者などで変化を付けました。プレゼンの時間も、ウェブ会議システム「Remo」を使って、プレゼンを観ている者同士がチャットを使いながらコミュニケーションを取れるようにしています

    実際の配信画面。freeeのオフィスを背景に参加者の映像や資料、トークする社長の映像をリアルタイムで合成した配信に対して、視聴している社員がコメントを投稿することができる。実際の配信画面。リアルタイムで話す社長や資料を配信し、視聴している社員はコメントを投稿することができる。

    さらに、「フリスピボックス」という箱を事前に社員の自宅に送付。ディスカッションに必要なスケッチブックなどの備品や、ステイホーム中に使えるエプロンやマグカップ、クッキー型などのグッズが入っています(もちろんすべてfreeeのロゴ入りのオリジナル)。ですが、当日指示があるまで開封は厳禁。「10時になったら開ける」などと時間指定することで、ワクワクする要素を追加し期待感をあおりました。

    オンラインでもワクワク感が醸成される仕掛けとして、イベント進行に合わせて開封指示が書かれたfreeeのグッズを社員の自宅に送付した。社員の自宅に送付されたfreeeのオリジナルグッズ。受け身ではない、参加者の一体感を醸成する仕掛け。

    もう一つ悩んだ点は、コミュニケーションです。リアルの場であれば、コンテンツの合間のちょっとした休憩時間に立ち話をしながら、既存社員が新入社員を紹介するなどして新しく人間関係ができていくのですが、その「合間」がオンラインだと難しい。そのため、フリスピ中にチームでディスカッションをする時間を作りました。

    ディスカッションをするときのチーム分けでも一工夫。なるべく交流がない人同士でチームを作りたいけれど、まったく知らない人だと会話が生まれない可能性がある。だから、共通の知り合いがいる人同士を4人ずつ組み合わせたんです。

    弊社では人事評価制度で「ピア・レビュー」という評価を採用しています。これは、仕事をした相手からフィードバックをもらう評価方法です。そのリストをもとに、AさんとBさん、BさんとCさんがレビューをしていたら、AさんとCさんは初対面かもしれないけど、新しくつながっていくことは可能だろうと仮説を立ててチーム分けをしました。

    ──ディスカッションとは、具体的にどのようなことを話すのでしょうか? 

    たとえば最後に行ったディスカッションでは、3年後のfreeeに想いを寄せて、スケッチブックに組織の未来を自分の言葉でアウトプットし、チーム内で共有してもらいました。

    従業員が増えると、会社として何を考えてどこに向かっているかを全員で理解する場が必要になります。本来、一人ひとりがミッションを理解することが大事なんです。単に経営陣のプレゼンを受け身で聞くのではなく、自分がどう仕事に還元していくかを自身の言葉でストーリーテリングすることで理解していく。そういうきっかけ作りをしました。

    昨年からfreeeでは、数年単位の事業方針を固めるようになりました。その方針を、一部の経営陣だけが理解するのではなく、社員全員が自分ごととして納得して進めていくことが事業を推進する力になる。会社が大きくなると難しくなりますが、あきらめずに続けていきたいです。

    メンバーが自分の思いや意見をスケッチブックに書いて共有しあった。

    先の見えない時代は、新しい取り組みに尻込みせず進むしかない

    ──今回のオンライン合宿のような、リモート時代のチーム作りで心がけることは?

    自分たちが何をやっていくべきなのか、というミッションについて、それに関わる全員で話すことではないでしょうか。一人ひとりがオーナーシップを持つことが重要です。

    チームビルディングで必要なのは、やるべきことからブレないこと。日々の変化として、作業のやり方やコミュニケーションなどで少しずつ気になることはあると思います。それを都度つぶしていくのではなく、「チームとしてやること」を念頭に置いて、全体的な動きとして舵取りをしていくことが大事です。
     

    取材に答える辻本祐佳さん

    ──新しい取り組みをする時は、ミスやトラブルも起こるのではないですか。

    当たり前に起きます。だから、それを許容できる会社じゃないとイノベーションは起こせませんよね。ミスやトラブルがあっても、それによるカオスを楽しんで乗り越えていく力がfreeeにはあります。

    ──どうすれば、そのような状況を楽しめる文化が根付くんでしょうか。

    メリハリだと思います。ミスを許容するといっても、何でも黙認できるわけではないですよね。「ここは絶対に守ってほしい」というボーダーを設け、それ以外と明確に分けることです。

    freeeはそもそも、大事にすべき価値基準はありますが、基本的には自分で判断していきます。たとえば、freeeの価値基準である「マジ価値」を忘れていたら指摘する。でも、AさんとBさんで仕事のやりかたが違ったら、それは多様性の部分なので許容する。

    単にミスをすべて許すのではなく、絶対にしてはならないことを押さえることでトラブルやミスを許容する文化につながると思います。

    ──先の見えない時代での新しい取り組みに、会社はどう向き合うべきでしょうか。

    先が見えないのであれば、かき分けてでも前に進むしかありません。「新しいことをできないかも」と尻込みすると進めなくなります。

    私たちにとって新しい取り組みだったオンライン合宿は、正直、チャンスだと思いましたね。来年以降どうなっていくかがわからないからこそ、今回オンラインでできる最高の体験を作って、新しい境地にみんなで行こう。そんな気持ちで企画側はワクワクしていました。

    そういう前向きな気持ちが、新しい時代へと引っ張ってくれるのではないでしょうか。


    (取材・執筆:ゆきどっぐ 編集:水上歩美/ノオト) 
     

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