2020年10月14日(水)0ブックマーク

唯一無二の中小飲食店向けセントラルキッチンとして飛躍~ミクリード片山礼子代表・石井文範取締役

経営ハッカー編集部
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個人経営の居酒屋向けを中心に業務用食材通販を手掛けるミクリード。内食・中食・外食の3つの厨(くりや:台所の意)をリードする企業となるべく、その名がつけられた。経営理念は「日常生活の笑顔あふれる食事シーンに貢献する」こと。以前は業務用食材卸のターゲットからは外れていた個人経営の居酒屋を支援すべく、株式会社ミスミ(現:ミスミグループ本社)のフード事業としてスタートした同社。子会社として独立後、紆余曲折を経て、2020年3月に上場を果たした現在、中小飲食店全般へと支援対象を拡大し、さらなる事業拡大を目指している。コロナ禍で苦しむ中小飲食店を支え、食材だけではなくコロナ補助金・支援融資等の情報も提供。フレキシブルに飲食店に寄り添うビジネスを展開するミクリードの代表取締役片山氏と取締役石井氏に、上場までの道のりと現在、そして今後の経営戦略について聞いた。

 

目次

    ミスミの一事業からミクリードとして上場するまで

    ―まずは現ミクリード設立までの経緯について教えてください。

    片山:ミクリードは、1995年10月、BtoB市場でFA部品や金型部品などの通販事業を営む株式会社ミスミ(現:株式会社ミスミグループ本社)のフード事業としてスタートしました。

    メインの顧客層である電機や自動車関連メーカーの海外シフトが活発化した当時、ミスミとしては国内の空洞化を懸念し、既存事業とは全く異なる顧客層の獲得が必須であると考えたのです。そこで、多角化の柱にしようと、顧客の声をダイレクトに汲み取り事業化する「マーケットアウト」の理念のもと、ミスミのカタログ販売のノウハウが活かせる一事業分野として立ち上げました。

    簡単に言うと、中小飲食店の方が個別に食材を買い出しに行ったり、食材卸と交渉したりするのは時間的にも労力的にも大変であり、これらをお店に居ながらにして、カタログで商品情報を確認し、見積もりを取ることなく、簡単・即時に注文・取り寄せを可能にしたものです。私は当初から断続的にフード事業に関わり2003年に事業部長となりました。

    しかし、2002年にミスミのTOPが創業社長から2代目社長へ交替したことを契機に、本業である機械工業系の事業に集中するという経営方針に転換。儲かっていない事業は廃止。儲かっている事業は他者資本を受け入れ、将来完全独立させるという狙いから分社化され、フード事業は(旧)ミクリードとして2006年に子会社化されました。翌年10月に保有する全株式を酒類の販売・卸事業を手掛ける株式会社カクヤスに譲渡。その後、カクヤスによる吸収合併を経て、2012年11月にカクヤス100%出資の元、再度同一社名の(現)ミクリードが設立されます。この時、私が再度代表になりました。

    カクヤスのフード事業のリソースを受け継ぎ、ミクリードとしてそのまま事業を継続する一方、翌年3月、商品調達力の強化を目的として、カクヤスは国分株式会社(現:国分グループ本社)にミクリード株式の49%を譲渡。当社と国分は事業提携がスタートしました。さらに11月には国分がミクリード株式の10%を株式会社トーホーに譲渡し、当社はトーホーとも事業提携を果たします。

    そして2016年にはカクヤスグループの再編に伴い、カクヤスが保有する全当社株式をSKYグループホールディングスが継承し、同社が新たな親会社となりました。

    このようにさまざまな企業事情による複雑な紆余曲折を経たのち、2020年3月、当社は東証マザーズへの上場に漕ぎつけ、新たなスタートを切ったのです。

    ―上場を目指すきっかけは何だったのでしょうか。

    片山:直接のきっかけは独自の基幹システム開発を迫られたことです。ミスミ傘下の時はミスミのシステムに、その後はカクヤスのシステムに同居していたのですが、カクヤスが上場を目指すことになり、カクヤスからシステムやネットワークを全面的に切り離すことを要請されました。更にはこれだけでなく、業務委託していた総務や経理・人事などの管理部門機能までも切り離されることになってしまったのです。当社には基幹システムはもちろん、管理部門がありませんでした。それを一から構築するのであれば、それはもう上場作業に等しいではないかとの思い至り、上場を決断しました。

    また、上場すれば知名度が上がるので、人材確保においてもプラスになると考えました。当時、当社の役員は5人いましたが、常勤は私のみで、ほかの4人は出資会社からの出向だったため、私はたった一人で上場を志し、足場を固めていくことになりました。

     

    上場準備の苦労やトラブルを乗り越えて

    ―上場準備ではどのような点に苦労されましたか。

    片山:私以外の役員は出向だったために総入れ替えする必要があり、会社としての形態を整えるのが一番大変でした。まずは、監査役を含め役員全員を、縁故を含め人選し、一人ずつ声を掛けて就任に同意してもらう形でのヘッドハンティングで揃えました。

    石井:実は、私もその時にミスミからヘッドハンティングされた一人です(笑)。ビジネスそのものは元々、上場企業であるミスミの一部門としてシステマティックな仕組みで回すスタイルだったため、IPOの基準を満たすための準備にそれほど苦労はありませんでした。しかし、それらが文書化されていなかったため、そこを整備しつつ、足りない部分を文書化し追加していく感じでしたね。社員が少なく人海戦術は無理なので、上場までのタスクを洗い出し、負荷を分散するよう心掛けて作業に当たりました。

    片山:カクヤスのシステムから独自のシステムへの移行は大きなハードルでしたね。しかも、上場の承認直前には大きなシステムトラブルを起こしてしまいました。上場審査に対する影響はもちろん、お客様に迷惑をかけてはならないと必死で復旧作業に当たり、何とか一日で復旧させることができたのですが、その間は生きた心地がしませんでした。

    石井:あまりにもタイミングが悪く、東証などへの状況説明にも苦労しました。今でも思い出すと冷や汗が出ます。後に東証の担当者の方からも「あの時は上場中止に追い込まれると思った」と言われた程です。

    片山:しかし結果的には、正直に情報を開示したことで社内外のステークホルダーを大切にする会社だと認知していただけました。必死のアフターフォローで、このトラブルで失ってしまった売り上げを一週間でリカバリーできました。真摯な対応が評価され、危機をプラスへと転じることができたのです。

    ―株価を設定するためのロードショーはいかがでしたか。

    石井:投資家の方々に、しっかりとミクリード事業の魅力を評価してもらい、上場時に売出してもらう主要株主2社にそれぞれ納得してもらえる株価にしなくてはならないのが大きなプレッシャーでした。

    片山:2週間半、朝から晩まで機関投資家をまわり続けました。機関投資家の興味を引き出すべく、説明に腐心しました。

    石井:株価のバリュエーションは類似業種をどこにするかで大きく違ってきます。全く同じような業種がないため、仮に食材卸を類似業種とすれば安く、EC通販系を類似業種とすると高く設定されることになります。また、投資家の判断もすごく高く見積もってくださる方から、単なる食材卸に過ぎないと判断する方まで、評価にかなり幅がありましたね。結局、当社はその中間辺りに落ち着きました。

    片山:そのほか、限られた時間内で親会社との書類上のやり取りを完結しなくてはならないなど、上場準備は大変なことばかりでした。しかし、その時に構築した骨組みが今でもしっかりと機能しており、一緒に苦労を乗り越えた役員メンバーとは深い信頼で結ばれています。

    ―上場によってどのような変化がありましたか。

    片山:会社の知名度が上がり信用を得たことが大きいです。人材を募集すると、優秀な人材が数多く集まるようになりました。

    石井:M&Aで会社を買いませんかという話も多く来るようになりましたね。商品の売り込みも増えました。とは言っても、当社で提供する商品は目利きのマーチャンダイザーが自ら足を運んで探し、厳選するというスタンスでしたので、基準は厳しいですが…。

     

    中小個人飲食店をスーパーサブとして支える

    ―改めて、御社の事業内容について詳しく教えてください。

    片山:「日常生活の笑顔あふれる食事シーンに貢献する」を経営理念として、個人経営の居酒屋をメインとした中小飲食店への業務用食材の通信販売を主な事業としています。外部環境の変化によりニーズも変化しますが、その都度、中小飲食店の方々が困っていることを的確に把握し、解決するための商品やサービスを提供することを目指しています。

    ―きめ細やかなサービスが必要なのですね。

    片山:はい。個人経営の飲食店はお客様の支持を得るため、自店の強みとなるメインメニューに注力します。厳選食材を安く仕入れ、自身で調理することで原価率を抑え、ほとんどのお客様に注文してもらうことで収益の大部分を稼いでいます。一方、サブメニューに関しても、手作りしたお店独自のメニューを提供したいと思いつつも、仕入れ・調理などに手間を掛ける余裕がありません。そこで当社では「中小飲食店のセントラルキッチン」として独自性や季節性・希少性などを重視し、メニュー全体としてお店の質を落とさないような商品を提供しています。

    石井:サブメニュー用の手間なし食品を中心に競合が取り扱いの少ない商品を種類豊富に取り揃えて提供する「スーパーサブ」のポジションを目指しています。商品は冷凍食品が85%を占め、肉・魚・野菜・串・揚げ物・デザートなど、下ごしらえのみの商品から完全に加工品されたものまで常時4,000点をご用意しています。

    見積不要でどのお客様にも平等な統一価格で1パックから注文いただけ、お店の食材調達の時間や手間、そして来店客の料理提供の待ち時間の削減はもちろん、フードロスも減るため、お店の経営と環境に優しいビジネスモデルであると自負しています。

    片山:閉店後に翌日分を注文できるよう、関東の1都3県は深夜2時まで注文を受け付け、仕込み時間中の午後3時頃からお届けできるよう、スピードを大事にしています。その他の地域も午後3時までに注文いただければ、翌日の午前中にはお届けできます。もちろん、365日年中無休です。

    ―WEBとカタログ、どちらからでも注文できるのですね。

    片山:従来は、商品のご案内はカタログのみでしたが、現在はWEBが増えています。しかし、依然としてカタログの強さもあります。空き時間にカタログを眺めて新商品に気付いていただいたり、お年を召した方だとカタログの方が見やすかったりと、紙媒体ならではの良さもあるので、二本立てを継続予定です。

    石井:対面営業をしていないため、試食したら頼まないと気まずいというプレッシャーもありません。ご自身でWEBやカタログから商品を気軽に選んで試食して、本当に必要な物だけをご注文いただけます。

     

    ブルーオーシャン市場で事業を拡大

    ―飲食店の中で個人店は最も大きな市場ですね。

    片山:B to B市場の中で当社の属する卸売業種は最も市場規模が大きい上、当社の対象先である中小~個人店は、店舗数でいえば飲食店全体の大多数を占め、商圏は日本全国・離島にまで広がっています。つまり従来の業務用食品卸のターゲットから外れ、顧客・商品ともに競合が少ない広大なブルーオーシャンが主戦場となります。伸びしろが大きく、消費者の嗜好の多様化・業務用食材卸の人手不足から、市場は広がり続けています。

    石井:全国に居酒屋は約12万店ありますが、現在の取引顧客数は1か月あたり1万店超で、さらに伸びている状態です。2020年3月期の売上高は前年比0.3%増の40億円で、まだまだ多くの潜在需要を掘り起こせると考えています。

    ―ミスミやカクヤスなどとの関係で築いた経験をどのように活かされていますか。

    片山:当社はB to B通販におけるミスミのDNAを引き継いでいます。商品・サービス・インフラ等の一連のビジネスモデルをマーケットアウトの視点で創り上げたミスミ流のノウハウが、現在の当社のベースです。自社は事業企画に特化し、他はアウトソーシングする“Small is Beautiful”という組織作りも継承しています。
     
    そしてカクヤスグループと組み酒類と食材を同時提案することで、顧客開拓による事業拡大を果たし、国分・トーホーと連携したことで、商品開発や仕入れにおける安定したサプライチェーンが完成しました。
     
    また、中古厨房機器販売の株式会社テンポスバスターズと協業し、テンポスの店舗で当社の試食会を開いたり、当社がテンポスの商品を紹介したりするなど、顧客の共有化を図りながら相互の商品・サービスの提供を進めています。当社の存在を広く周知できるよい機会を得たと思っています。

     

    ニーズに合わせたシステム開発でコロナ禍を乗り切る

    ―コロナ禍の影響と対策について教えてください。

    片山:お客様の来店客減少の痛みを一緒に抱え、一緒に乗り切ることを前面に打ち出し、期間限定で送料無料バーを6,000円から3,000円へと下げました。また当社サイトでコロナ禍での営業支援情報、店舗継続のための補助金・助成金・資金支援などの情報を発信し、電話相談も受け付けています。
     
    石井:当社の営業マンが出向かないというスタイルは時勢にマッチしていたと思います。WEB化が想像以上の広がりを見せました。注文に関しては、コロナ禍で飲食店への来店客が減少しているので顧客単価は下がりましたが、お客様の数は減っていません。食材ロスのない、日持ちする冷凍食品主体の小分け商品という点もよかったと思います。他の食材卸の売り上げが50%戻っていないのに対し、当社は6月期で70%まで回復しています。

    ―システム開発にも注力されていますね。

    石井:2019年2月に独自の基幹システムが稼働し、同時に新WEBサイトをリリースしたことで、顧客開拓も以前の地上戦(カタログ送付や電話営業)から空中戦(WEB集客)へと急速なシフトが進み、劇的に強化されました。
     
    片山:システム開発については、お客様の声を反映し、よりよいサービスを提供できるよう改良を重ね、10月から第5次開発がスタート予定です。これができるのも、独自システムならではです。機能の充実と利便性の向上を図るべく、積極的に投資を行っていきます。
     
    また、B to B市場の中で卸売業種はEC化が遅れているので、当社がリードしてEC化を進展させていきたいです。

     

    顧客に寄り添うサービス展開を

    ―今後の展望についてはいかがお考えでしょうか。

    片山:メイン業種の居酒屋だけでなく、全国に約45万店舗存在する飲食店全般を対象にWEBマーケティングの活用や代理店を増やすことにより新規顧客数の拡大を図っていきます。とにかく当社の存在を知って頂くことが第一です。
     
    一方、既存顧客に対しては、新たな取扱商品による拡販や人材紹介・送客などの新たなサービス展開により、顧客単価の向上を図ります。
     
    石井:受注センターや出荷センターを外部委託する当社は社員が少なく身軽で、フレキシブルに動けるのが強みです。お客様に育ててもらった気持ちを忘れずに、今後もお客様に寄り添ったサービスを提供していきたいと思います。
     
    片山:コロナの影響で居酒屋チェーンの半数は淘汰され、他業態に転換されるでしょう。どのように世の中のニーズが変化したとしても、個人店が戦えるような商品・サービスを提供できるように、大手の動向にも注視しながら、常に時代にマッチした最善の方向へ舵を切っていきます。

    ―中小飲食店にとってなくてはならない存在であることがよくわかりました。ありがとうございました。

     

     

    ◆プロフィール
    片山 礼子(かたやま れいこ)

    株式会社ミクリード代表取締役社長。1988年日興証券(現:SMBC日興証券)入社。1992年株式会社ミスミ(現:ミスミグループ本社)に転じ、2003年同社フード事業部長、2006年(旧)ミクリード社長に就任。2007年、カクヤスのミクリード吸収合併に伴いカクヤス執行役員として勤務後、2012年ミクリード社長に再度就任。
     
    石井 文範(いしい ふみのり)
    株式会社ミクリード取締役。1998年4月 株式会社東海銀行(現 株式会社三菱U FJ銀行)入行 2004年12月 株式会社ミスミ(現 株式会社ミスミグ ループ本社)入社 2010年6月 同社ファイナンス室副ジェネラルマネジ ャー 2017年2月 当社執行役員 2017年6月 当社取締役(現任)
     
    ◆企業概要  
    株式会社ミクリード  

    https://www.micreed.co.jp/
    本社所在地:東京都中央区日本橋2-16-13ランディック日本橋ビル9階
    1995年年10月創業、資本金:7786万5000円、従業員:24名(常勤20名)、上場:2020年3月、上場市場:東京証券取引所マザーズ市場(証券コード 7687)、主要株主:株式会社SKYグループホールディングス、国分グループ本社株式会社、株式会社トーホー、事業内容:飲食店向け業務用食材等企画・販売

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