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freeeが会計以外の領域でプロダクト開発を進める理由は? 新プロダクト事業責任者に聞くバックオフィスの価値の高め方

経営ハッカー編集部
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freeeが会計以外の領域でプロダクト開発を進める理由は? 新プロダクト事業責任者に聞くバックオフィスの価値の高め方

クラウド会計ソフトの印象が強いfreee。しかし、開発しているプロダクトは会計freeeだけではない。2017年にリリースした人事労務freeeをはじめとして、2020年には福利厚生やプロジェクト管理ツールなど、バックオフィスに留まらず経営全体を包括的に支援する新しいプロダクトを開発してきた。
 
これら新プロダクトの事業責任者を務める高村大器さんは、2016年2月にfreeeに入社。中小・中堅企業向けに、会計freeeを中心とした統合ERPを提供する事業部に所属し、直近2年間は営業部門の責任者として数多くのユーザーと接してきた。そのなかで、中小企業の多くが共通して抱える課題に気づいてきたという。
 
2020年7月から開発チームと連携し、新しいプロダクトの立ち上げに従事してきた高村さんに、freeeが新プロダクトを開発する理由や中小企業のクラウド化推進に必要なアプローチ、新プロダクトを通じて実現したいことについて聞いた。

目次

    「経営に付加価値を生むバックオフィス」の実現に必要な2つの考え方

    取材に答えるfreeeの新プロダクト開発責任者・高村大器さん

    ──freeeでは、どのようなビジョンを描いてプロダクトを開発しているのでしょうか?
     
    代表の佐々木(大輔)は、創業時から「『いい会計ソフトを作ったね』と言われる会社で終わりたくない」「freeeは中小企業の経営のプラットフォームになる」と言っています。スモールビジネスを主役にするため、その支援に必要となるプロダクトを開発しています。
     
    ──人事労務や福利厚生、プロジェクト管理など、会計以外のプロダクトを開発した理由を教えてください。
     
    freeeを「バックオフィス効率化ツール」から「経営プラットフォーム」に進化させるためです。効率化だけでなく、経営や事業が伸びるプラットフォームにしていきたいと考えてます。

    経営に対するバックオフィスの価値を上げるために必要なことが2つあり、1つは定型業務を効率化して時間を作ること。以前、当社が行った調査では「社員300名以下の中小企業のバックオフィスで、日々の定型業務に追われている人」が70%以上にのぼっています。そういった状況を改善するために、定型業務を効率化する会計freeeの開発と事業を推進してきました。
     
    もう1つが、付加価値のある非定型業務を増やしていくこと。定型業務の効率が上がっても、それが直接、売上や採用力のアップにつながるわけではありません。「スモールビジネスを、世界の主役に。」という当社のビジョンを実現するために、付加価値のある業務を進めていけるプラットフォームを作ろうというのが新プロダクトを開発した理由です。
     
    ──3つの新プロダクトそれぞれのサービス内容について、具体的に教えてもらえますか。
     
    まず人事労務freeeは、多岐にわたる中小企業の人事労務業務を一本化してシンプルにするプロダクトです。

    人事労務には、給与計算や勤怠管理、人事管理、年末調整など、たくさんの業務があります。個々の業務に対応するサービスは数多くありますが、業務ごとに最適なものを選んだり、各ツールで入力したデータを最終的に統合して管理・活用したりするのは、予算や人手に限りのある中小企業にとってハードルが高い。人事労務freeeを導入することで、それらの業務すべてを一元管理できるようになります。

    福利厚生freeeは、中小企業でもローコストで福利厚生の運営ができるサービスです。経営メリットが大きく着手もしやすい、借り上げ社宅の管理サービスから提供開始していますが、福利厚生は多岐に渡るため、今後は他の領域のサービスも少しずつ提供していく予定です。

    プロジェクト管理freeeは、制作会社や受託開発会社のようなプロジェクト型の事業において、リアルタイムな経営改善を実現するサービスです。プロジェクト別の収支や稼働率を見える化することで、無駄や課題点を洗い出し、経営をスピーディーに改善していくことができます。
     
    ──先ほど、バックオフィスの価値を高めるためには、付加価値のある業務を増やしていくことが大切とおっしゃっていましたが、どのような業務に付加価値があるといえますか?
     
    ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源を改善することにつながる業務だと思います。
    そのためには、多くのバックオフィスでメインとなっている「過去の記録や処理」ではなく「未来への打ち手」につながる業務が必要です。

    プロジェクト収支管理を例に挙げて説明すると、たとえば、あるプロジェクトで稼働予定の工数が予算を超過しており、想定外のコストになりそうだと早期に分かれば、事前に対策を取れます。

    このように過去に起こったことを記録するだけでなく、未来がどうなりそうか?という予測を立てて早期に手を打つといった意思決定をしていくのも「付加価値のある業務」の一つ。稼働するプロジェクトは数も多く、多様なことが多いですが、こうした観点で全社を横断的に見られる部門は企業のなかでバックオフィスしかありません。 
     

    取材に答えるfreeeの新プロダクト開発責任者・高村大器さん

    ──中小企業の抱える課題はどこにあると思いますか?

    大きく2つあります。まず、経営環境の変化や働き方改革などの政策によって、「バックオフィスにかかる負担が増える」「業務効率化の必要性が増す」という相互に関係する課題が同時に発生していて、悪循環が起きているんですね。

    そして、この悪循環を解消できる専門人材もまた不足している。これが中小企業の抱える大きな課題のひとつだと思います。

    また、人材不足を補完するツールが十分に配備されていなかったことも挙げられます。中小企業のバックオフィスシステム自体の改善や進化も、ここ30年ほど目立ったものがありませんでしたし、クラウドソフトの普及率も大手企業と比べるとかなり低い。

    総務省の調査によると、大手のクラウド普及率が77%であるのに対して、中小企業では30%台というデータもあります。当然ながら、業務刷新の経験がある方も少なく「そもそもどうすればいいかわからない」「知っているけれどできない」「やっているけれど非効率」といった状態から抜け出せなくなってしまうんです。

    ──freeeの新プロダクトは、そのような中小企業の課題に対してどういったアプローチができるでしょうか?
     
    最初に述べたとおり、freeeは経営プラットフォームになることを目指しています。そのためプロダクトも機能ありきではなく、「どこにどれだけ人員や時間を割くべきか、業務フローはどうあるべきか」といった「あるべき姿」の設定を一緒に考えるところから設計しています。

    とはいえ、いくつもの領域を同時に考える工数をかけられる企業は多くないので、各プロダクトを使いながら、順番に整理していけるようにサポートしていくわけです。

    先ほど述べたプロジェクト管理freeeでは、データドリブンで先々のお金の動きを予測することで、大胆な意思決定を実施できるようになるため、利益率の改善を図りやすくなります。
     
    福利厚生freeeは、採用力のアップや従業員の定着といった部分に効くサービスです。福利厚生があるのとないのとでは就職志望率が異なりますし、福利厚生が充実している会社で長く働きたいと考える社員も多いでしょう。

    会計freee人事労務freee、周辺のクラウドサービスとのAPI連携を強化も、こうした「あるべき姿」の達成に必要な要素を、幅広いサービスで包括的にアプローチするためにやっています。
     

    取材に答えるfreeeの新プロダクト開発責任者・高村大器さん

    ──業務を改善するために、よくわからないままクラウドサービスを利用して失敗した経験がある中小企業も多いと聞きます。
     
    お客さまから寄せられるケースとして多いのは、「働き方改革に対応するために勤怠管理のクラウドサービスを導入して業務効率化はできたものの、1年後くらいにまた別の課題が浮上した」というものですね。
     
    それで、次の年には給与計算のクラウドサービスを入れて、勤怠管理と併用して使ったところ、ダブルメンテナンスになりミスが起きてしまうとか……。複数のクラウドサービスを同時に使うと、それらを手作業で連携して運用しなければいけないため、ミスが起こることもあります。
     
    ここ数年で「HRtech」と呼ばれる人事領域のクラウドサービスが盛り上がり、2017年に50個程度しかなかったサービスが、現在は300個程度まで増えています。選択肢があまりにも多いため、自社にとってどのようなサービスが最適かわからず、次々試してしまったというケースも聞きました。
     

    中小企業のクラウド推進のハードルを下げるfreeeの新プロダクト

    取材に答えるfreeeの新プロダクト開発責任者・高村大器さん

    ──バックオフィスは、定型業務の割合をどの程度まで下げ、非定型業務に費やしていけるのが理想でしょうか?
     
    その割合は、企業や業種、また何を目的とするかによって異なります。
     
    たとえば、以前、私が担当していたお客さまのなかに、従業員100人程度の地方企業の人事の方がいらっしゃいました。以前は、給与計算や勤怠管理など定型業務をこなすのに、まるまる20営業日かかっていましたが、人事労務freeeを入れた結果、以前の半分の10日分の時間で終わるようになったそうです。
     
    その方は、空いた時間で経理の手伝いを始めたとおっしゃっていました。このように、空いた時間を他部署の手伝いにあててもいいし、採用強化など付加価値のある別の業務に向けてもいい。

    効率化した先で時間やコストをどのように振り分けるかは、企業によってさまざまでしょう。大事なのは経営にとって重要度の高い課題を見つけること。逆説的ではありますが、「課題が見つかったら効率化しないと!」というふうに効率化の必然性にも気づけると思います。
     
    ──業務時間が半分まで圧縮されれば、当然、それまでより従業員のプライベートの時間や気持ちの余裕もできて、QOL(Quality of Life:生活の質)も上がる。結果的に仕事に対する捉え方やモチベーションも変わりそうですね。
     
    効率化も付加価値の向上も、実際にやるのは結局人なので、生活の質が上がらないまま長時間労働を続けていたら、付加価値の高い業務を進めようとも思えないですよね。そういう意味でも、まずは定型業務を効率化できるに越したことはない。QOLを上げて、非定型業務を進める余裕ができて、経営に貢献していく……といった流れが理想だと思います。
     
    担当したお客さまに「freeeを入れたことで、バックオフィスが忙しくなる月末月初にはじめて定時に帰れました」と言っていただけたときは、非常にうれしかったです。
     
    ──新プロダクトを通じた今後の展望について教えてください。
     
    繰り返しにはなりますが、freeeは「会計ソフトの会社」から「経営プラットフォーム」になることを目指しているので、まずは「経営のクラウド化」への間口を広げたいと考えています。

    会計システムの移行については、中小企業にとってなかなかハードルが高いと感じる経営者の方も多いです。一方で、勤怠管理やプロジェクト管理は、比較的クラウド化に取り組みやすい領域です。まずはそこから手をつけてみて、クラウドサービスを利用するメリットを感じていただければ「会計もクラウド化しよう」「バックオフィス全体をfreeeのプラットフォームに乗せよう」といった流れになりやすいですよね。

    はじめやすいところ、各企業にとって優先度・重要度が高いところからクラウド化を始め、並行して2〜3年後までの全体図を描いておくことが大切です。

    freeeを使えば、高いコストを払うことなく、バックオフィスが本来すべき業務に集中できる環境づくりを進めていくことができます。DX(デジタルトランスフォーメーション)の波が来るなかで、デジタル技術を活用しない手はありません。プロダクトのラインナップを増やし、クラウドサービスに対する心理的ハードルを下げることは、当社のビジョンを実現する上でも意味のあることになる。
     
    中小企業がDXを進めていく糸口になりやすいからこそ、freeeはそれに応えられるだけの価値をしっかり提供していかなければいけない。
     
    企業によって課題は異なると思いますので、どこから手を付けるべきかお客さまと一緒に考え、長期スパンでマイルストーンを設定するお手伝いをしていきます。

    (執筆:東谷好依 撮影:藤原慶 編集:杉山大祐 / ノオト)


     

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