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2020年12月03日(木)

インプットした情報はDropbox Paperで一元管理 WACUL竹本祐也氏に聞く「CFOに必要な情報収集と管理のコツ」

経営ハッカー編集部
インプットした情報はDropbox Paperで一元管理 WACUL竹本祐也氏に聞く「CFOに必要な情報収集と管理のコツ」

企業における財務戦略の立案と執行を行うCFO(最高財務責任者)は、会社を経営するにあたって要となる存在だ。とはいえ、現在CFOとして活躍している人たちも、もとは経理担当やマーケティング、コンサル出身者などさまざまな経験を経てきた人ばかり。
 
株式会社WACUL(ワカル)のCFOとして財務戦略を中心に、数値をベースとしたビジネスディベロップメントの策定や事業提携の推進などを行っている竹本祐也さん。CFOに就任するまでの間、株式アナリストや経営コンサルティングという経験を積んできた竹本さんに、CFOにステップアップするために必要な能力や経営者視点の獲得、情報のインプット術を伺った。
 

問題の根本原因を追究する考え方がCFOには必要

株式会社WACULのCFO(最高財務責任者)を務める竹本裕也さん。

──CFOに就任するまでの経緯を教えてください。
 
中学生の頃から起業やビジネス、株取引などに興味を持っていました。大学卒業後は新卒で採用された証券会社のゴールドマン・サックスへ。自分の名前でレポートを出して、世の中に訴えかける株式アナリストという仕事に憧れがあったんです。
 
でも、株式アナリストは外部の人間として顧客企業が今後どうなるか、社会の情勢を見ながら考える評論家の立場。もう少しビジネスの現場に近い場所で働きたいと思い、外資系戦略コンサルティングファームのA.T.カーニーに入社しました。
 
コンサルは「アドバイザー」の立ち位置で会社を支援していきます。しかし、アドバイスだけではなかなか行動に移せないケースがあって、「もっとこうしたらいいのに」というジレンマを抱えることがありました。「それなら、もう自分でやるしかない」と思い至り、経営と金融というバックグラウンドを生かして会社の中で舵取りをしていくCFOに就くことに決めました。
 
──株式アナリストと経営コンサルの経験を積んでCFOになったということですが、それらを経て学んだことは、CFOの職務にどう役立っていますか?
 
課題解決への考え方のアプローチはすべての仕事に共通しています。考え方のアプローチは、大きく分けて3つのステップがあります。

  1. 解きたい課題を深掘りする
  2. 深掘りした中からその根本となる重要ポイントを特定する
  3. 解決に向けてそれぞれの専門家の意見を聞きながら、その根源にある重要なポイントを変化させる方法を実行する

たとえば、遅刻する社員がいるとします。その理由は寝坊か、朝ごはんが遅いか、交通機関が乱れやすいか……さまざまな仮説が立てられます。もし寝坊が原因なら、さらにその根本には前夜の深酒や寝起きの悪さなどの理由がある。この理由が何であるかによって、解決方法は「酒を断つ」か、「目覚まし時計を増やす」かに分かれます。
 
ビジネスも同じです。取引先と問題が起きたとき、いちばんシンプルな解決方法は謝ることですが、根本原因を改善する方法を見出さなければ同じミスが起きてしまいます。CFOは企業経営を成功させるために、長期的な視点で財務戦略を立てる能力が問われるため、その場しのぎではなく根本原因を追求する考え方のアプローチが重要になります。
 

CFOを目指すには興味・関心をもって視野を広げるのが大事

株式会社WACULのCFO(最高財務責任者)を務める竹本裕也さん。

──CFOを目指す人には、どんな力が必要になるのでしょうか?
 
専門領域にこだわりすぎず、所属する部署以外の横のつながりに興味・関心を広げていく力が必要です。
 
CFOになると、「運転資金の増加を抑えたいという問題を解決するためには、支払いサイトを定める契約書の文言を変更する法務からアクションを起こすべきか、それとも金融機関を活用してキャッシュの出入りを変える財務からか」などと考える場面が多々あります。だからこそ、それぞれの部署でアクションを起こすと、何がどう変化するかを広く知っておくことは意義深いです。
 
最近は専門性を大事にする人が増えてきています。専門性というと「法務」「経理」といった部署意識に制約されるイメージがありますが、経営層へのステップアップを目指すならば「問題解決」や「数字分析」という視点で専門性を捉え、周囲の人の仕事にも興味を持てるようにしたいですね。
 
さらには、縦方向へも好奇心を広げていきたい。上司がなぜこういう結論を出したのか、関心を持って聞いてみる。そうやって興味の幅を広げていくうちに、次第に「では会社のためにはどうすべきか」と視野が広がっていきます。
 
──自分の専門分野以外に興味・関心の幅を広げるのは、簡単なようで難しい。まず何から始めればよいのでしょうか?

重複しますが、人や物事に対して好奇心を持つことです。「面白くない」と思うと、そこから学べなくなるので、「誰かが一生懸命にやっていることは面白いことかも」と考えを改めたいですね。
 
興味・関心を広げるためには目的意識も大事です。とはいえ、上司からの評価を高めたい、などの目先だけの目標だと動機づけが弱い。経理の仕訳を学ぶことが、将来M&Aをした企業のPMI(M&A成立後、効果を最大化するために行う統合プロセス)に役立つかもしれない。もっと先の未来を見つめてほしいです。
 

課題感を常に持ち、「ひっかかり」を増やす

──竹本さんご自身は、CFO就任が決まってから、どんな準備をしたのですか?
 
CFOに関する書籍を読んだり、現役のCFOである知り合いに話を聞きに行ったりしましたね。そうやってざっくばらんに「CFOとは」という雰囲気をつかんでいきました。
 
書籍は海外の事例が多いから、資金調達のパターンも違う。だから「自分の会社ならどうすべきか」と置き換えています。
 
──なるほど、まずは情報収集から始めたのですね。日常的なインプットの場面で重視していることは?
 
書籍もウェブも、流行していることは取りあえず体験。インプットするときは雑食なので、なんでも頭に入れて知識の数を増やしています。ジャニーズが大好きなインターン生と、Kis-My-Ft2の話題だけでランチ中ずっと盛り上がっていられるくらいに、何にでも対応できます。
 
一方で、自分の中で課題があったら抽象化してひっかかりを増やすようにしています。たとえばゲームをクリアしたいと思っていたら、クリアするために裏技を探すのか、1日の使い方を工夫して時間を捻出するのか、などのたくさんの仮説を作る。すると「ゲームの攻略本だけじゃなく、時間管理術の本も読むべきだな」と、仮説の数だけ情報収集する際のひっかかりがたくさんできるんです。
 

自分ごと化してアウトプット 反応を見て情報の取捨選択を

株式会社WACULのCFO(最高財務責任者)を務める竹本裕也さん。

──ひっかかりを増やすことで入ってくる情報量も多くなると思いますが、インプットした情報はどうやって整理・管理されているんですか?
 
インプットした情報は、まず自分ごと化して考えます。書籍を読んだのであれば、「自分だったらどうするか」と主人公に憑依してみたり、「今の自分の職場だったらどうするか」と身近な事例で考えてみたりします。そうすることで自分に定着するし、時には実践することでアウトプットできます。
 
例を挙げると、人材マネジメントに関することを書籍で学んだら、会社の後輩に声をかける際に実践してみる。もしいい反応が返ってきたらその情報は残して、自分のキャラクターに合わなかったり後輩の反応が良くなかったりしたら捨てていく。
 
ほかにも、メモは残していますね。人と話した後はその内容をずらりと並べて、ざっくりと話をテーマごとに括って構造化し、雑多なことをメモにして収納する。
 
メモは、Dropbox Paperで一つのファイルにまとめて管理していて、ミーティングの出来事も友達の話も全部羅列し、検索できるようにしています。情報の整理・管理というと、メモを「仕事」「プライベート」などのフォルダに分けて保管することを想像しがちですが、実は一箇所にすべてのメモを収納したほうが「今の問題に役立ちそうな情報はなんだっけ」と思ったときに、一気に検索をかけることができて便利なんですよ。
 
──あえてフォルダ分けをせずにメモを保管しているのは意外でした。では、メモを残すときに気を付けていることはありますか?
 
多角的にタグ付けすることですね。たとえば、「人間関係」や「オペレーションの課題」などとタグ付けしておけば、問題が起こったときに一気に関連する事項を振り返ることができます。
 
ポイントは、聞いた言葉をそのまま書くのではなく、自分の言葉で置き換えてメモすること。この話題を知りたくなったとき、自分ならどんなワードで検索するかを考えながらメモを残すことで、のちに検索するときもヒットしやすいです。たとえば「貸借対照表」と「バランスシート」、自分がふと検索する場合どちらのワードで検索をかけるのか、それに合わせてメモを取っておくべきです。
 
──それ以外のアウトプット方法はありますか?
 
Twitterやnoteに書き出す、あとは人と話すのも大事だと思います。反応がダイレクトに返ってくるので、「これは皆にはしっくりこないんだな」と判断ができる。
 
アウトプットする場所を作ると、自分の思考が整理されるのでいいですね。インプットとアウトプットは常に一緒に行うようにしています。
 
──インプットした情報を仕事に生かすには、情報を集めるだけではなく、整理・管理にも通じるアウトプットが必要なんですね。最後に、CFOを目指す次の世代に伝えたいことはありますか?
 
それぞれの事例ごとに解決策を覚えるのではなく、一つの事例から抽象化させて解決方法を身につけられるようになるのが大事だと感じます。
 
たとえば「成功者はトイレをきれいにする」という結果を聞いて、トイレ掃除をはじめる人は抽象化が苦手な人です。これは僕の想像ですが、トイレをきれいに維持する思考回路が成功につながるのであって、きれいなトイレが成功へ導いてくれるわけではありません。
 
この結果から抽象化させるのであれば、「思考が整理されている」「汚れ仕事もやる」などの行動様式が正しいんです。この抽象化がうまくいけば、「トイレがきれい」という事象は別の「会議室がきれい」などにも転用できる。
 
具体から抽象化させた解決方法を別の事象でも当てはめられるようになると、一度経験したことと全く同じことでないと解決できない人から脱し、さまざまなトラブルに対応できるようになれます。
 
この解決方法を身につけるには、考え方そのものを身につけるしかありません。仕事の中で解決方法をうまく見つけられないときに、「ほかの角度から見られないか」と自分自身や同僚、上司に尋ねるんです。そうやって対話することで、一つの問題を自分のこととして捉え、多面的に考えられるようになっていくでしょう。

多面的に物事を見つめられるようになれば、わずかな経験しかなくとも、その中から類似事例を見つけることができます。そして自分の経験を生しながら、本質的な解決方法に近づくきっかけを得ることができるようになっていくのだと思います。

 
(執筆:ゆきどっぐ 撮影:坂脇卓也 編集:水上歩美/ノオト)
 


<プロフィール>
竹本祐也(たけもと・ゆうや)
株式会社WACUL 取締役CFO

1985年兵庫県出身。京都大学を卒業後、ゴールドマン・サックス証券、A.T. カーニーそれぞれで5年以上の勤務を経て、WACULの取締役CFOに就任。財務だけでなくコーポレート業務やアライアンス戦略など、ビジネスをドライブするさまざまなことに広く取り組む。
 

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