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グリー大矢俊樹氏がCFOになって痛感した次の世代を育てる重要性 「CFO候補を育てるとすべての会社は強くなる」

経営ハッカー編集部
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グリー株式会社 本社にて 大矢俊樹氏

「CFOは着任した瞬間から、後身を育てたほうがいい」と話すのは、グリー株式会社 取締役 上級執行役員 最高財務責任者の大矢俊樹さん。公認会計士の資格を持ち、監査法人を経て事業会社でCFOやCEOのキャリアを重ねてきた。

経理・財務のプロフェッショナルでありながら、事業にも精通し、経営者と二人三脚で企業をスケールさせる。現在は日本CFO協会の理事として、社内外で若手の育成にも力を入れている。そんな大矢さんが自身の経験を振り返り、「大企業だけでなく、中小企業も日ごろの業務の中でCFO候補を育てられる」と話す理由を聞いた。
 

目次

    ITが社会を変えるうねりを肌で感じて事業会社へ

    インタビューに応えるグリー株式会社 CFO 大矢俊樹氏1

    ──大矢さんのこれまでのキャリアについて、あらためてお教えいただけますか。

    大学1年生まで水泳に打ち込んでいたのですが、2年生になったときにすっぱり辞めて、手に職をつけたいと公認会計士の勉強を始めました。そして3年生のときに資格を取ったんです。すると、学校に大手監査法人がスカウトしにくるようになりました。その流れで社会人生活をスタートさせました。

    監査法人では、入社したての新人も、経験を重ねたベテランも一人のプロフェッショナルとして扱われました。さまざまな企業の監査プロジェクトにいきなり配属され、財務諸表が適正につくられているかをチェックする日々です。プロジェクトでは上司、部下の区別はありません。監査のプロとして独立独歩の精神で仕事をすることができ、とても楽しかったですね。

    当時は、20代前半の若手ながら、企業の経営者や経理部長と話をすることが多かったように思います。監査という第三者の立場から、企業全体を俯瞰する経験を積ませてもらうことができ、そこで経営について体系立てて学びました。

    そんなとき、ソフトバンク・インベストメント(現・SBIホールディングス)に誘われて、転職することになりました。その年はちょうど、「ビットバレー構想」が生まれ、孫(正義)さんが米NASDAQと折半出資によるナスダック・ジャパン設立を発表した1999年でした。サイバーエージェントやDeNAといったベンチャー企業が次々と生まれ、ITの力で社会が変わっていく大きなうねりを感じましたね。

    ──会計事務所を開いて独立しようとは思わなかったんですか?

    もう少し事業の中まで関わって企業を成長させ、未来をつくる仕事がしたかったんです。

    財務諸表って、いわば企業にとって“過去の記録”なんですよね。これから先もずっと過去と向き合い続けるより、たとえばもっとリスクを取った投資をして、投資先の経営に参画したり、事業にコミットしたりしたくて。

    実は当初、IPOを通じて企業の未来を支援できそうだとナスダック・ジャパンへの転職を希望し、応募までしていたんです。ところがその過程で関係者から誘われ、ソフトバンク・インベストメントに入社することになりました。

    ──その後、ヤフーに入社して内部監査やM&A、さまざまなアライアンス業務を手がけます。

    そこで出会ったのが、クレオというシステム会社でした。ヤフーでは当時からエンジニア採用に力を入れていて、開発をサポートしてくれるパートナー企業を求めていたんです。そこで、受託開発ビジネスや『筆まめ』というソフト販売が安定していて、すばらしいエンジニアがたくさんいたクレオに、私の判断で投資することにしました。

    ところが、同社は不採算事業なども抱えていて。そこで私がCFOとして事業に入り、ビジネスモデルを大きく変えたり、希望退職を募ったりしたんです。このとき、私自身に事業運営や経営の経験はありませんでしたが、これまでさまざまな企業を見てきたことや、投資会社で事業会社の経営に関わった経験が生きて、最終的にはCEOにも就任してなんとか事業を再建できました。

    クレオのCEOになって1年ほどして、今度はヤフーのCFOにならないかと誘いを受けました。ただ、今振り返ると、当時の自分の振る舞いには後悔しているんですよ。
     

    投資先を再建、その後の“後悔”をビジネスカウンセル制度に昇華

    インタビューに応えるグリー株式会社 CFO 大矢俊樹氏2

    ──厳しい経営状況を回復させた立役者ですよね。なぜ後悔しているんですか?

    クレオで後任のCEOを置かなかったからです。実は、私が退いた後、また混乱してしまいました。せっかく立て直した事業が傾いたり、うまく組織運営ができなかったりして、カオスになってしまいました。その頃の私には、将来を見据えて人を育てておく意識がなかった。クレオの人たちには、すごく悪いことをしたなと思っています。

    いま振り返ってみると、例えばCFOに就任するなら、すぐに次の財務を担うCFO候補に目星をつけて、育て始めるのがベストでしょう。CEOやCMOも含めて、CXOにあたる役員クラスは、早くから育てておくべきだと思います。そうでなければ、いきなり役員に就任しても器が追いつかず、経営がうまくいかなくなってしまうケースがあるんです。これは大企業だけでなく、中小企業でも同じことです。

    ──当時の後悔を、その後の仕事にどのように生かしていますか?

    ヤフーのCFOになったあと、「ビジネスカウンセル」という仕組みをつくりました。コーポレートや各事業部、グループ会社に、経営者や事業責任者と二人三脚で経営管理に携わる“プチ経理・財務責任者”を置く手法です。

    見込みのある人には、できるだけキャリアの早いうちに意思決定する経験を数多く積んでほしい。2018年にグリーへ移った後も、同様の制度を採用しました。事業部門レベルで経理・財務の幅広い経験を積み、意思決定できる人材を育てています。

    「ビジネスカウンセル」の仕組みは、ヤフーやグリーだけでなく一部の外資系企業などで経営の伴走役として取り入れられています。
     

    ビジネスサイドで意思決定の経験をたくさん積ませる

    インタビューに応えるグリー株式会社 CFO 大矢俊樹氏3

    ──一般的に、CFOは個々人で仕事の仕方やメソッドが異なる唯一無二のポジションというイメージがあります。大矢さんはどのように育てているのでしょう。

    私は2つの方法で育てるといいんじゃないかと考えています。1つ目は、小さな事業や部署を任せ、裁量をもたせて意思決定させること。経営企画や社長のアシスタントみたいなポジションを経験させるのもありですが、そこで身につくのはあくまでも「意思決定をサポートする」スキルなんですよ。

    自分自身が意思決定することと、サポートするのはまったく違います。できるだけ早くから意思決定する経験を積まなければ、役員クラスの器を持つ人材は育ちません。見込みのある人には早い段階から裁量を持たせ、意思決定の経験をできるだけ多く積ませたほうがいいんです。

    僕自身もクレオのCFOになったのが30代前半だったので、その時期に大きな意思決定をする経験を重ねることができたのは、その後のキャリアに生きていると思います。

    2つ目は、経理・財務などファイナンスのバックグラウンドのあるメンバーを事業部付きにして、予算管理や経営管理を任せること。ファイナンスの素養がある人たちが事業部と伴走する経験を積めれば、ビジネスサイドの人たちと事業をスケールさせることの面白さややりがいもわかるはずです。

    ──「見込みのある人」は、できるだけ早く育てたほうがいいとのことですが、CFOにはどのような人が向いていると思いますか。

    3つの観点があります。1つ目は、やりきる力のある人。財務は決算前に仕事が集中しがちです。ときには、かなりの激務になることもあるでしょう。もちろん、仕事が集中しすぎないように人員を増やすなどして対応すべきですが、大変だからといって「資料作成が決算の締め切りに間に合いませんでした」というわけにはいきません。ですから、やるべきときには集中してゴールまでやりきる力のあることは重要です。

    2つ目は、部署を越境して他のチームとも良好な関係を築ける人。事業会社のCFOは、財務のことだけ見ていればいいわけではなく、会社のさまざまな部署と協力したり、調整したりする必要も出てきます。そのためにも「自分の仕事にしか関心がありません」という人ではなく、他部署の人たちともリレーションのある人のほうがいいなと考えています。

    そして、3つ目として外せないのが倫理観です。企業には社会に対して示すべき大義や使命、存在する社会的意義があります。ただ収益を上げるだけでなく、企業の大義を理解し、社会で何を成すべきかを理解する必要がある。こうした3つの軸が重要だと思います。
     

    中小企業がCFOを育てれば事業が安定しスケールする

    インタビューに応えるグリー株式会社 CFO 大矢俊樹氏4

    ──昨今、CFOのような経営的なポジションを外部から招聘するケースも増えています。自社内で育てたほうがいいとお考えですか?

    できれば自社内で育てたほうがいいと思います。とくに社内のいろいろな人と細やかにコミュニケーションをとり、そのビジネスの持つ大義や社会的意義を知るのは、一朝一夕でできることではありません。事業のみならず、その企業の組織やカルチャーにも愛着を抱き、大義にもコミットしようというマインドセットは、外からやってきてすぐ醸成できるものではないですね。

    そして、自分のキャリアにもこの先何が起こるかはわかりません。経営者やCFOを務める方は、自分が就任した瞬間から社内で見込みのある人を、後任候補として育て始めたほうがいいでしょう。

    ──こうした次世代CFOの育成は、メガベンチャーだからこそできることではないのでしょうか。中小企業にも必要だと思いますか。

    もちろんです。これからは大企業のみならず、中小企業もCFOを育成したほうがいいと思います。そうすれば、経営面で悩んだときや、資金面で困難に直面したとき、経理・財務的な面から経営をサポートしてもらえるはずです。

    中小企業の場合、経営者がある程度イニシアチブを取って育てなければなりませんが、経理担当者かビジネスの責任者を、二人三脚で経営に伴走してくれるCFOへ育てることができれば、強力なパートナーを手に入れることにつながります。

    中小企業であればなおさら、自社のカルチャーやビジネスにコミットしている人が、財務を見ることができれば、企業をより強くまとめ、さらにスケールさせていくことができるはずです。そうなったとき会社は強くなり、事業の成長をより一層加速させることになるでしょう。
     

    大矢俊樹
グリー株式会社 取締役 上級執行役員 最高財務責任者 コーポレート管掌

    <プロフィール>
    大矢俊樹
    グリー株式会社 取締役 上級執行役員 最高財務責任者 コーポレート管掌

    1992年、慶應義塾大学経済学部を卒業後、監査法人トーマツに入社。1999年11月、ソフトバンク・インベストメント株式会社に入社。2003年2月、ヤフー株式会社に入社し2005年6月より株式会社クレオ取締役、2006年4月より同社取締役最高財務責任者、2011年4月より同社代表取締役社長。2012年4月、ヤフー株式会社 最高財務責任者 執行役員に就任。2015年6月、同社 副社長執行役員 最高財務責任者に就任し、2018年3月に退任。2018年9月、グリー株式会社 取締役に就任。公認会計士。


    (執筆:石川香苗子 撮影:栃久保誠 編集:森夏紀/ノオト)
     

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