2021年08月02日(月)0ブックマーク

融資交渉は“財務の健康診断”から始まる コロナ禍のいま、重要な財務管理

経営ハッカー編集部
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新型コロナウイルスの感染が拡大し、経済活動にも多大な影響が出ています。資金繰りに苦労する中小企業も多いなか、この事態を乗り越えるためには何をすればよいのでしょうか。プロの経営コンサルタントである船井総合研究所の片山孝章さんに寄稿していただきました。

目次

    コロナから1年、忘れてはいけない「制度融資の返済」

    世界が新型コロナウイルスの恐怖に突き落とされてはや1年、飲食・宿泊産業を中心に、企業ではいままで経験したこともないような赤字が発生し、とにかく明日を生きるためにコロナ関連融資等を活用して資金不足をしのいだことかと思います。

    最初は政府系金融機関、次に民間金融機関と、融資制度がこの市況において次々に拡充されたことで、不況にも関わらずじゃんじゃんお金を借りることが“できてしまった”企業も多かったのではないでしょうか。

    また制度融資の多くには、返済を猶予する据え置き期間が設けられています。つまり、当面は外部に流出することのない“資本的側面を持つおカネ”として自社を支えてくれるため、目まぐるしく変わる状況のなか、ともすれば社長は制度融資が借り物、一時的措置であることを忘れてしまいかねません

    コロナから1年が経過したいまこそ、原点に立ち返って自社の状況をよく分析し、融資の出し手である金融機関にどう見られているかを把握するべきです。この記事では、コロナ禍で中小企業の財務・数値管理のお手伝いをする筆者が、金融機関の基本的な思考プロセスをお伝えしつつ、そこから見える「貴社がいま経営でやるべきこと」を考察します。

    “財務の健康診断”を、おろそかにしていませんか?

    緊急事態宣言やまん延防止等重点措置など、この1年は非常に制限の多い状況だったと思い返されます。毎年当たり前のように受診していた健康診断すら予約できなくなり、外出できることがいかにありがたいことかを筆者も痛感しました。

    中小企業もまた、業務手順を大幅に変更せざるを得ず、1年前には想像もつかない姿に様変わりしたのではないでしょうか。不安定な状況が今後も続くことが予想されるなか、企業はそのダメージをできるだけ具体的に定量化して把握する必要があります。

    本来、企業はこうした定量的な情報について、ある程度は金融機関の融資審査を通じて知ることが可能でした。金融機関の融資審査は、健康診断に似ています。審査前には必ず「いくらを何年間借りたくて、金利はこのくらいで……」など、企業活動の隅々を分析し、結果をフィードバックする仕組みがあるのです。

    上図は筆者が「融資組成マップ」と名付けたフロー図で、融資相談の際、中小企業の社長に最低限頭でイメージしておいてほしい要素をまとめたものです。。もちろん、本来の融資審査ではさらに複雑に要素が絡み合いますが、これだけ把握しておけば融資担当者が質問してくることの意味が理解できない……というトラブルは回避できるはずです。

    金融機関に融資相談を持ち掛ける際、社長の多くは下記の例のように案件判断要素を先にアピールしがちです。

    (例1)
    「いやあ、実はこの度うちも県外に工場を新設することになりまして。これまでの本社工場の増強、そして運送の効率化のためですね。すでに工場用地には目星をつけていて、土地だけで1億円、建築費で合計6億円が必要になりそうです。今回の新工場では新商品の開発ラインを中心に運営するので、投資回収には7年を見込んでおり、融資期間は7~10年あるとありがたいですかねえ……」

    ちょっとストップ、待ってください!

    たしかに、(例1)の社長は自社の新規事業のことを一生懸命語っていますし、投資に対する展望も数字を用いて伝えています。しかし、金融機関がまず知りたいのは、案件判断要素の前に先立つ債務者(借り手)要素、つまり「この会社はそもそも健康なのか、そうでないのか?」という部分。(例1)はまるで、健康診断結果を見せないまま、自分は健康だから大丈夫と言い張っているような状況なのです。

    (例2)
    「実は、この度うちも県外に工場新設を検討しています。うちは4月の決算ですけど、今期はコロナの影響もありながらも、なんとか昨年並の損益で着地できることがほぼ確定しました。一応、現預金も昨年並みをキープしてここまでやっており、運転資金には懸念がありません。一方で……」

    真に金融機関のことを理解している(例2)のような社長であれば、まず何よりも債務者(借り手)として会社が問題ないことを事実ベースでプレゼンするでしょう。特に、いまはコロナ市況でいつも以上に健康状況が悪化している企業が多く、問題はできるだけ包み隠さず自社主導で共有することが求められます。

    また、前述のいわゆる「コロナ融資」では、仮に債務者が融資を返済できず金融機関が損を被ることになったとしても、信用保証協会等の公的機関が損失を補填するため、「まあ、ちょっと体が悪い会社だけど、コロナ融資だからいいか」と審査がゆるくなっているケースも少なくありません。

    ✓多額の融資を受けている金融機関に対して、毎月試算表を提出していない
    ✓そもそも、試算表や決算書を即座に出力・分析できる体制がない
    ✓日々の数字の管理(請求書管理・支払い管理・資金繰り管理)に、大量の時間がかかっている
    ✓数字のことは税理士任せで、よくわからない
    ✓以前は仲良くしていた金融機関が、最近はあまり自社に訪問しなくなった

    上記のチェックリストに1つでも心当たりがある企業は要注意! “財務の健康診断”がおろそかになっている可能性があります。財務分析・財務管理というと、なんとなく机上の空論のようで、意味がないもの・面倒くさいものとして認識されがちです。しかし、金融機関もコロナ融資でバタバタ、異常な状況が継続しているいまだからこそ、自社主導で内部のことを定量化し、アフターコロナに再加速できるだけの素地を整えるべきではないでしょうか。

    まずは金融機関と膝を突き合わせるところから

    いわゆる「コロナ融資」が制度設計されてからおよそ1年。今回は、これらの融資でなんとか資金繰りを維持できた中小企業の社長が次の1年で何を考えるべきかを、金融機関の融資審査フローをたたき台にしてお伝えしました。

    ところで、ひと言で「財務の健康診断」とまとめても、売上、費用、利益、資産、資金繰り……と、その要素はいくらでも細分化でき、なかなか自社だけでは判断できないことが多いのではないでしょうか。こうしたときこそ、最も財務事情を深掘りして話すべき相手――融資を最も受けている金融機関の融資担当や上席と膝を突き合わせてください。

    金融機関は、情報共有の手法を知らないなりにも積極的に紐帯を深めようとする企業や、しっかり管理体制を整えようとしている企業に対しては、時間を取って自社の分析結果や課題を共有してくれます。それでも何か問題があり、気になることがあれば、ぜひ弊社、船井総合研究所の財務グループにもご相談ください。

    (文:株式会社船井総合研究所 金融・M&A支援部 チーフコンサルタント 片山孝章)

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