2021年07月12日(月)1ブックマーク

船井総研の財務コンサルが提言! 「お金の悩みがない」経営者がやっていること

経営ハッカー編集部
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中小企業の経営者の悩みは、ほとんどが「人」と「お金」に集約されるのではないだろうか。中でもお金の悩みは、企業の存続に直結する大きな問題である。しかし実際には、「経理・財務の知識がない」「どこに問題があるのか分からない」とお金に困っている経営者が少なくない。
 
「お金の悩みがない経営者は、当座貸越や資金繰り表を上手に活用しています」
 
そう話すのは、船井総合研究所・財務グループの谷翔太さん。これまで数々の中小企業に対して財務コンサルティングを行ってきた谷さんに、経営者から多く寄せられる悩みや、お金に困らないための方法を聞いた。
 

目次

    年商10億円が境目? お金の悩みが発生するきっかけ

    ――谷さんには多くの経営者から相談が寄せられているかと思います。どのようなタイミングでお金の悩みが発生するのでしょうか?
     
    多いのは、「年商が10億円前後になり、実際のお金と試算表の数字が合わなくなってきた」という相談ですね。突然お金が足りなくなり、社長が個人で立て替えて急場をしのぐケースも少なくありません。しかし、年商10億ともなると社長のポケットマネーで対応できる範囲を超えます。そのタイミングで、「そろそろ体制を整えないとマズい」と相談をいただくのです。


    ――年商規模が大きくなるにつれ、お金の管理方法が変わってくるのですね。業種や業態によって違いはありますか?
     
    基本的な考え方として、在庫を持つ商売ではお金の悩みが発生しやすい傾向があります。したがって流通小売や住宅会社、自動車販売店からは、資金繰りや財務の相談を受けることが多いですね。一方で、作ったものをすべて納品するような製造業の会社は業績が安定しやすいので、金融機関のフォローがやや厚く、お金の相談をもらうことは少ない印象です。そういった事情も、お金の悩みにつながってくるでしょう。
     

    数字が合わない、お金が貯まらない……経営者によくあるお金の悩み

    ――中小企業の経営者からは、具体的にどのような悩みが寄せられていますか? その原因と解決方法を教えてください。
     
    おおむね下記の4つに分類されます。
     
    1.利益は出ているのに、なぜかお金が貯まらない
    2.試算表と手元で管理している数字が合わない
    3.どれくらい投資をしても大丈夫なのか分からない
    4.金融機関からどれくらい借入できるのか分からない
     
    「利益は出ているのにお金が貯まらない」のは、在庫資金などお金を借りなければならない業種において「借り方」が正しくないことが原因の一つとして考えられます。例えば、常に1億円分の在庫を持っている会社だとしましょう。商品仕入れのために1億円を借入し5年で返済する場合、1年間に2000万円ずつ返済していかねばなりません。せっかく利益を出しても返済に充てられるため、新たに商品を仕入れることができない。そこで必要資金のギャップが生まれるのです。
     
    お金の借り方には、毎月返済だけでなく、借りっぱなしにできる「短期継続融資」もあります。そもそも借入方法に選択肢があることを知らず、お金が貯まらないのです。

    ――借入の選択肢は、どう調べればいいのでしょうか?
     
    金融庁は、「短期継続融資の積極的な推進をしていきましょう」という方針を打ち出しています。金融行政方針は毎年発表されているので、概要だけでも見ておいてください。
     
    当社からは、メルマガやセミナー・勉強会で最新情報をご案内しています。
     
    ――「試算表と手元で管理している数字が合わない」のは、どういった原因で発生するのでしょうか?
     
    棚卸をしないことが原因の一つです。決算を締めるタイミング、つまり年1回は棚卸するのですが、毎月はしない会社が多いでしょう。そうすると仕入れの原価計上と売上のタイミングがバラバラになり、利益が把握できなくなるのです。
     
    また、年商規模が大きくなるにつれて経理が煩雑になり、追いつかなくなります。もともと10日間ぐらいで締めていたものが1カ月、2カ月とかかってしまうのです。さらに、実際のお金と試算表の数字がズレていても、判断する術がありません。
     
    ――試算表と実際のお金、どちらが正しいのか分からなくなってしまうのですね。どうすれば解決できるのでしょうか?
     
    上手な会社は、B/S(貸借対照表)とP/L(損益計算書)、資金繰りの計画を毎月作成し、実績と照合しています。そうすれば、計画と実績がズレても「この数字は、実績のほうがおかしいのでは?」と発見できるのです。毎月継続すれば間違いが修正されていき、試算表の精度がどんどん改善されていきます。
     
    あとは、経理の締め具合を見える化することも重要です。旧来から使われているインストール型の会計ソフトだと、どこまで締まっているのか見えません。一方、freeeのようなクラウド会計ソフトでは、「締まっているもの」「まだ締まっていないもの」が画面でパッと分かる機能がありますよね。クラウド会計ソフトに変えることで、仕訳が何件残っているか把握しやすくなります。
     
    毎月10日を目途に社長と税理士・経理でミーティングし、締まってないものを確認するサイクルを作っていきましょう。入金や出金など、期限が過ぎているものをチェックしていくPDCAサイクルは、クラウド会計ソフトのほうが作りやすいですね。

    ――なるほど。3つめの「どれくらい投資をしても大丈夫なのか分からない」というのは?
     
    投資判断には、2つの視点があります。1つは、投資した後も必要な資金を調達できる財務状況を維持できるか。2つめは、収益化するまでの期間も資金繰りがうまくいくか、です。
     
    もちろん経営者は、「投資した後も借入できるか?」「ちゃんとお金が回るか?」と考えているでしょう。しかし、どれぐらいの金額なら投資しても大丈夫なのかは案外分からないのです。
     
    投資では、B/SとP/L、キャッシュフローの計画を作り、「この水準だったら大丈夫だ」という数字をしっかり見ていく必要があります。多くの経営者は「半年で一定の収益を生むだろう」と甘く考えがちですが、実際は2~3年かかってしまうケースも少なくありません。当社では、楽観・標準・悲観の3パターンで収益シミュレーションを作成することをお勧めしています。

    ――「金融機関からどれくらい借入できるのか分からない」というのは、銀行や信用金庫との関係性に問題があるのでしょうか?
     

    そもそも、金融機関としっかり話ができていないのが原因かもしれません。多くの経営者は、決算のときに決算書を提出するのと、1~3カ月おきに試算表を出すぐらいしか金融機関とコミュニケーションを取らないのです。それだと金融機関側は、資金ニーズや財務状況を理解できません。「いくらぐらい借入できるの?」と経営者が聞いても、金融機関の担当者は正確に答えられないでしょう。
     
    成長している会社の社長は、決算書ができあがったタイミングで必ず金融機関へ行き、支店長に決算の報告と今後のビジョン、事業計画を話しています。資金繰りの予測や投資計画を見える化し、資料を渡していれば、金融機関側も正しい融資の提案ができるはずです。経営者は金融機関へ定期的に情報提供し、信頼関係を築かなければなりません。
     

    当座貸越や資金繰り表を活用し、毎月B/Sをチェック

    ――これまで挙がった以外に、「お金の悩みがない」経営者が行っている施策はありますか?
     
    主な施策として、下記の3つが挙げられます。
     
    1.当座貸越を上手に活用している
    2.1年間の資金繰り表を作成している
    3.毎月B/Sをチェックしている
     
    当座貸越とは、ある一定額の融資枠を契約して、その範囲内でいつでも借りたり返したりできる制度です。在庫金額のピークが1億2000万円の会社の場合は、1億2000万円の枠を作っておき、手元のキャッシュ残高が足りないときは借入し、余裕があるときに返済していきます。
     
    すでに5年返済で借入している場合は、まず当座貸越で融資枠を契約し、長期借入を整理していきましょう。月々の返済額が減り、資金繰りが安定します。当座貸越を上手に活用することが、資金繰りの改善やキャッシュフロー強化に有効です。ただし当座貸越は、財務内容が良い状態でないと利用できないので注意してください。
     
    ――「資金繰り表」とは、どういうものでしょうか?
     
    資金繰り表とは、資金の流れを示す表のことです。資金繰り表には、キャッシュフロー計算書をベースにした表と、入金・出金をベースにした表の2種類があり、私は前者をおすすめしています。B/SとP/Lがあればキャッシュフロー計算書の数字が出てくるのと、試算表が毎月締まれば資金繰りの実績を追いやすくなるからです。
     
    下記にサンプルを用意しましたので、参考にしてください。

    ――3つめは「毎月B/Sをチェックしている」ですね。B/Sを把握できてない経営者は多いのでしょうか?
     
    ほとんどの経営者はB/Sを見ていません。見ている数字は現預金と在庫、自己資本比率ぐらいでしょう。借入を何年で返済できるのか、債務償還年数などの指標をしっかり把握している経営者はかなり少ないと思います。
     
    ――それは単純に、知識がないのでしょうか?
     
    それもありますが、年商3億円ぐらいまでは、P/Lさえ読めていればなんとかなってしまうのです。金融機関からの借入にはプロパー融資と保証協会付融資の2種類があり、後者は比較的簡単に利用できます。
     
    しかし、年商10億円を超えるとお金の動きが変わってくるため、B/Sをきちんと見なければなりません。
     

    会社の成長には、財務の強化が必要不可欠

    ――これまでのお話で、お金の流れを把握できてないことが悩みにつながっていると理解できました。一方で、経理担当者や税理士とのコミュニケーションの問題もあるのではないでしょうか?
     
    たしかに連携不足はありますが、求めすぎな部分もあるかもしれません。というのも、経理の最も大きな仕事は、きちんと仕訳をして月次決算を作ることです。いっぽう財務は、会社全体がどういう方向に進んでいくのか理解する必要があります。その役割まで経理に任せるのは、やや厳しいでしょう。
     
    税理士も、業界独特のお金の動き方や財務のポイントまで把握するのはハードルが高いといえます。やはり経営者が財務をある程度理解した上で、経理と税理士をうまく動かしていくことが必要です。
     
    あとは、財務を外部のコンサルタントに任せるという手もあります。経営者が財務を学ぼうと思っても、ある程度の時間はかかってしまう。そこで会社の成長がストップするのは避けたいですよね。であれば、年商10~30億ぐらいまでは財務を外注し、業績を上げることに注力するほうがいいでしょう。

    ――最後に改めて、財務の重要性について提言をいただけますか?
     
    財務の重要性は、経営者の成長意欲や思考によって変わります。早く会社を成長させたいと考えている経営者は、必ず財務を強化しなければいけません。経営者自身が財務を学ぶとともに、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。
     
    経営者個人の問題だけでなく、組織としてどうやって進めていくか。体制作りや財務機能の持たせ方をしっかり考えてほしいですね。
     


    <プロフィール>
    谷翔太(たに・しょうた)
    船井総合研究所 金融・M&A支援部 財務グループ シニアコンサルタント
     
    大学卒業後、地方銀行に入社。銀行では5年間勤務し、中小企業を対象に法人営業を経験。船井総合研究所に入社後、企業の成長を財務面からサポートし、企業のステージに合わせた最適な財務提案が経営者から高く評価されている。近年は、資金調達や金融機関対策の支援だけでなく、財務管理体制の構築の支援にも注力している。

    業種に特化した中小企業財務と金融機関の現場を知り尽くした船井総研の財務コンサルタントが週3回、経営に役立つ財務情報を配信中!メルマガへの登録はこちら!
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    (取材・文:村中貴士 撮影:宗形裕子 編集:水上歩美/ノオト)
     

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