「開業当時の自分に伝えたいことはなんですか?」を聞いてみた
会社員をしながら副業でアフリカのワインや雑貨を販売する伊関洋介さん。
2018年2月に個人事業主として開業し、今年2月にはなんと法人化を果たしたそう。
そんな伊関さんに、開業前後の苦労や当時の自分へのアドバイスなど開業からこれまでをお話いただきました。
聞き手:工藤京平(freee株式会社)
アフリカのイメージをアップデートしたい
工藤
伊関さんは副業でアフリカの商品を販売しているそうですが、そもそも副業をはじめるきっかけはなんだったのでしょうか?
伊関さん
新卒で入った前職で2015年からアフリカ事業に携わり、南アフリカに駐在中アフリカを13ヵ国ほど回ったんですね。その時にアフリカのおもしろさや魅力的な製品があることに気がついて、これを日本に伝えたいと思ったことがきっかけです。
ケープタウンの港
工藤
どうしてそれをわざわざ副業にしようと思ったんでしょうか?
僕なら現地の製品を自分で買って堪能するだけで満足して、日本に伝えたいという発想が出てこないような気がして。
伊関さん
それは前職に原体験があります。前職では自動車の製造をしていたのですが、そこにアフリカ各国から工場を作りたいという要望が多くあったんですね。どれも現地の雇用を生み出したり、産業基盤をつくるという目的で。
前職のアフリカ駐在時代の出張先カメルーンでの様子
工藤
各国必死なんですね。
伊関さん
でも、そういった要望はインフラが整っていなかったり事業として採算が見合わずに実現が難しい。こうした現状を知った時に世界中にすでに生産基盤がある製造業(自動車)で国が発展するのは厳しいかもしれないと思ったんです。
そこでそれ以外の方法で国を豊かにできないかと考えて現地のワインや雑貨といった製品に目をつけました。アフリカの魅力的な製品を日本に輸入して、少しでも日本のマーケットをアフリカに開くことができれば現地にインパクトをもたらせると感じました。
工藤
なるほど。
伊関さん
そしてそのためには、日本のアフリカのイメージを変える必要があると思いました。
日本人のアフリカのイメージって貧困だったり上裸で生活をする原住民みたいな感じじゃないですか。もちろんそうした側面もあるのですが、それが全てじゃない。
工藤
たしかに、僕もそのイメージでした。
伊関さん
でも実際はご飯もおいしいし、良い製品もいっぱいある。そして、日本にはない文化もたくさんある。だから日本人のアフリカのイメージをアップデートして、アフリカの魅力を伝えたいと思ったんです。
模様と肌触りが印象的なバスタオルとキッチンタオル
工藤
日本に住んでいるとアフリカ産の製品って日常でほぼ目にすることがないですもんね。
伊関さん
そうなんです。実は駐在中から現地の展示会や蚤の市に行って、売りたいブランドをリストアップしていました。転職も決めていて、同時に副業でアフリカの製品を売ることを当時から考えていました。
現地のテキスタイルショップ店長とのツーショット
本業・副業・大学院を掛け持ちした怒涛の2年間
工藤
大学院にも行っていたって本当ですか?
伊関さん
はい、前職のアフリカ駐在を終え、2017年3月の転職とほぼ同時に大学院にも入学しました。
工藤
大学院では何を学ばれていたんですか?
伊関さん
人間中心デザインを学んでいました。デザインと言っても物理的な製品のデザインというよりかはユーザーのニーズをサービスに反映させるイノベーションプロセスの勉強に近いです。
工藤
大学院と本業、そして副業の両立はかなり大変だったのではないでしょうか?
どのようにされていたんですか?
伊関さん
1年目は基本的に週3日で大学院に行っていました。本業が平日の19:00に終わって、そこから急いで大学院に行って22:30まで授業を受ける、そして土曜日は丸1日授業で、日曜日は大学院のレポートを書いていました。
工藤
やばい...超ハードですね。
副業はその時はどうされていたんでしょうか?
伊関さん
副業に関しては2017年の最初の1年間は仲間を募ったり、コンセプト作りに専念していました。なので、長期連休や大学院の夏休みにおこなっていました。
工藤
1年後の2018年2月に開業されたとのことでしたが、どうして副業で開業しようと思ったんでしょうか?
伊関さん
2018年から本格的に事業をやることは決めていたので。
あと、開業前から少しずつ経費もかかり始めていたのでそれもあって開業を決めました。
WEBサイトが名刺代わりになっていた
工藤
開業後はどうでしたか?どのようなことに苦労しましたか?
伊関さん
一つは売上に寄らず一定額が毎月口座に振り込まれるサラリーマンと違って、自分で事業を行うと売上がたってもちょっと後から振り込まれる。つまり、売上と入金のタイミングが別なんですね。なので売上はあるのに入金がないのでお金を払えないということがあってヒヤヒヤしました。
工藤
それは怖いな。
伊関さん
ほんと、着金が命ですよ。「着金命」ってTシャツ作りたいくらい(笑)
工藤
他に苦労されたこととかありますか?
伊関さん
まだありますよ。
法人相手の新規取引開設が個人事業主だと難しく、手続きが大変で苦労しました。
工藤
それは信用の観点でしょうか?
伊関さん
そうです。なので、僕の時は管理体制のチェックや反社チェック含め自宅オフィスにわざわざ先方が来ましたね。
工藤
伊関さんの場合その苦労はどう乗り越えたのでしょうか?
伊関さん
その時は意外にもこの商品を売らせてくれ、という情熱で押し切れました。無茶言って個人と取引できるスキームを作ってもらいました。
でもそうやって押し切れたのは自分のサイトがしっかりあったのが大きかったかもしれません。サイトが名刺代わりになっていたので情熱の裏付けがあったというか。アフリカの現地で仕入れをする時もサイトを見せるとすんなりと納得してもらえました。
伊関さんのECサイト『LEKKER AFRICA』
工藤
開業前からコンセプトを練って、サイトを最初にしっかり作っていたのが功を奏したんですね。
伊関さん
そうですね。サイトを作っていて非常に助かりました。
freeeを始めたらすぐに口座同期をすべき。でないと...
工藤
ずばり、開業当時のご自身に「これだけはしておけ」と伝えたいことはありますか?
伊関さん
一番言いたいのは、開業したらなにも考えずにとりあえずfreeeを契約しろと。でも契約するだけではダメで絶対すぐに銀行口座の同期をやった方がいい。
工藤
(熱意がすごい)
伊関さん
当時の僕は、本業と副業と大学院の掛け持ちで時間的に全く余裕がありませんでした。そんな状況なので、本音としてはバックオフィスのことに時間をかけたくない。なので開業freeeを使ってすぐにコストゼロで開業できたのは大きかったです。
その削れたコストの分、副業の売上を上げる仕事に集中できたのでよかったです。
工藤
銀行口座の同期については何か苦い体験でもあるのでしょうか?
伊関さん
まず、僕が会計freeeに契約したのは2018年4月くらいです。そしていざ確定申告に取り組んだのが2019年1月で、その間一切触っていなかった。
そうするとなにが起きるのかというと、その間の口座が同期できておらず、しかも各銀行のシステムの都合により遡れるのが3ヶ月前とかなのでまったく自動化ができない。
ここでバックオフィスを自動化するという予定が完全に崩れ去りました。
工藤
これは確かに盲点ですね...
伊関さん
課金するだけで油断してましたね。
通帳も3ヶ月以上前の記録は合算になってしまうので、一つ一つレシートや別で管理していた売上を見て記入していきました。
結局こうしないといけないのかよ、、マジかよ、、って(笑)
工藤
これは本当同じ目に合っている人多そう。
伊関さん
このトラップは本当に気をつけた方がいいですね。
というかむしろ口座同期をログインプロセスに入れてほしいくらいです。口座同期はマストにしてほしい。油断しちゃうので。
工藤
(言っておきます。)
伊関さん
初年度頑張ったので今は自動化が進んでいるのですが、それでも半年に一回締めるようにしています。みんなで集まって半期締めようの会みたいな。そうすれば後からめんどくさくなるのも防げるし。
工藤
それいい取り組みですね。
伊関さん
freeeにも個人事業主で集まってクォーターで締める会とか開催してほしいです(笑)
自分一人でやるのって結構億劫なんですよね。拷問に近い。なのでみんなで楽しくやりたいって思います。
工藤
確かに、締めとか単純作業とイライラで爆発しそう。
伊関さん
あと伝えたいこととしては、コンセプト作りをしっかりした方がいいということ、仲間を作ることですね。
工藤
というと?
伊関さん
コンセプトっていうのは、なぜ自分がこれをやるのかというwhyの部分ですね。ここをしっかりと作れていると、自分が挫けそうになった時に色々な方法を考える方向に発想がシフトする。
工藤
ミッションやビジョンみたいなことですね。
伊関さん
副業でやっているとどうしてもうまくいくまでに時間がかかります。そしてなんでおれこんなことしてんだろう、って挫けそうになるんです。そうして空中分解せずに進めるためにはコンセプト作りはしっかりとしておいた方がいいと思います。
工藤
仲間を作るっていうのは?
伊関さん
やっぱり仲間がいるとやれることの幅が広がりますよね。特に副業は時間がないから余計に重要になる。しかも挫けそうな時の柱にもなる。
この仲間っていうのは従業員というよりかはプロボノです。ゆくゆくは会社にして売上が上がってくると、従業員としてお金を払うというのはあると思いますが。
“ライフワークとして今後も続けていきたい”
工藤
今年の2月には法人化をされたということでしたが、何か変化はありましたか?
伊関さん
大きな変化は、やはり法人だと大きな企業とも取引がしやすくなったことですね。今は某百貨店との取引が決まったり、法人のみ使える決済サービスを利用できるなどこれまでにはないスケールで事業を展開できそうです。
工藤
おお、すごい。着々と前に進んでいるんですね。
今後この副業をどうしていきたいか、野望はありますか?
伊関さん
『北欧、暮らしの道具店』のように、日本にアフリカの暮らしを浸透させることが目標です。なのでもっと暮らしに入り込むために今後は日常消費財も取り扱っていきたいと考えています。
南アフリカで主流なペリペリソース。色々なものにかけて味を変化させるんだとか。
伊関さん
また、これってじわじわと浸透して進んでいく事業だと思うので、ライフワークとしてこれからも続けていきたいですね。