今だからこそ知っておきたい、消費税の経過措置について説明
平成29年4月1日より、消費税の税率が8%から10%に引き上げられることが決まっています。といっても、4月1日になったら全てのものにかかる消費税が10%に変わるわけではなく、一定のものやサービスについては、その後も8%で対応するといった経過措置が設けられています。今回は、その消費税の経過措置について説明します。
1)消費税課税のタイミング
経過措置をみていく前に、消費税が課税されるタイミングの基本について確認しましょう。
私たちは、コンビニでお弁当を買ったとき、レジでお弁当の代金と一緒に消費税も支払っています。つまり、お弁当を受け取った(=引渡しがあった)時が、消費税が課税されるタイミングです。
このタイミングは、税率についても同じです。物やサービスの引渡しがあった時の税率が8%ならば8%の消費税が、10%ならば10%の消費税が課税されます。今回の増税でいうと、平成29年3月31日までに引渡しがあるものについての消費税率は8%、平成29年4月1日以後に引渡しがあるものについては消費税率10%ということになります。
2)経過措置が適用される場合
では、消費税の税率が変わる時期を挟んだ取引の場合は、どうなるのでしょうか。たとえば、映画のチケットを平成29年3月31日に購入しておいて、翌日の4月1日に映画館で鑑賞するとした場合です。「映画鑑賞」というサービスの引渡しがあるのは平成29年4月1日ですから、消費税率は10%になっています。
本来の考え方だと、引渡しつまり、サービスの提供があったときが課税されるタイミングですから、この場合の消費税率は10%となります。しかし、こういった取引については、税率の変更によって不利益や不都合が生じることを極力減らすために、消費税率は8%で良いとする「経過措置」が設けられています。
3)映画館や旅客運賃などについての経過措置
先ほど例示したように、平成29年4月1日以後に利用する映画館や劇場への入場料のうち、平成29年3月31日までに支払済みのものについては、経過措置が適用されます。
つまり、消費税率8%で購入したチケットを、平成29年4月1日以後もそのまま使えるということです。映画館などの他にも、競馬場、競輪場、美術館、遊園地の入場料などの他、旅客運送の運賃などについて、同様の経過措置が適用されます。
4)通信販売についての経過措置
通信販売についても、経過措置が設けられています。内容としては、平成28年9月30日までにその販売価格等が提示されている商品を平成29年3月31日までに購入手続きすれば、その引渡しがあった時が平成29年4月1日以後であっても、消費税率が8%になるというものです。
平成29年3月31日までに注文すれば全て8%、というわけではありませんので注意が必要です。
5)請負工事についての経過措置
注文住宅などの請負工事については、平成28年9月30日までに請負契約を締結していれば、引渡しが平成29年4月1日以後になっても消費税率が8%になるという経過措置があります。
新築分譲住宅などは、原則として、引き渡し時点の税率が適用されます。しかし、その建物の内外装や設備などが譲渡を受ける人の注文に応じて作られる場合には、その契約を平成28年9月30日までに締結していれば、引渡しが平成29年4月1日以後になっても消費税率は8%です。
まとめ
消費税が引き上がるときに慌てないように、今の段階から消費税の経過措置について学び、来るべき税率の変更に備えておくと、会計や経理もうまくいくのではないでしょうか。