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2019年08月23日(金)

18万人の社長に聞いた、誰にも言えない悩みを解決する71の処方箋~日本最大級のWeb経営者メディアWizBizの新谷氏に聞く

経営ハッカー編集部
18万人の社長に聞いた、誰にも言えない悩みを解決する71の処方箋~日本最大級のWeb経営者メディアWizBizの新谷氏に聞く

社長業は本当に孤独だ。いつも資金繰りの不安にさいなまれ、新しい顧客は思うように増えず、厳しく指摘すると社員はすぐに辞めてしまう。さらには、優秀な人材が入ってこない。後継者がいても継がない・・・そして、そんな悩みを相談できる人がいない。頭の痛い問題が次々発生して、心が休まる暇がない。独り悩み続けることが、社長という業(ごう)なのかもしれない、とさえ思う――。
 
そんな中堅中小企業の社長の経営相談をライフワークとするWizBiz株式会社の新谷哲社長は、この度出版した著書「社長の孤独力」(日本経済新聞出版社)の執筆にあたり、18万人の経営者にアンケートを実施。1,000種類の悩みから、さらに社長に共通する71の悩みに集約し、1つ1つに解決策となる処方箋を示した。20年にわたり社長の悩みと向き合ってきた新谷氏がそのアンケート結果の裏側にある本当の社長の心を読み解く。誰にも言えない、社長
の「本音」とは何か?そしてその処方箋とは?

18万人の経営者アンケートでわかった誰にも言えない社長の本音

―「社長の孤独力」を出版するために、社長さんにアンケートをとられた目的は何でしようか?

これまで経営コンサルタントとして約20年、数多くの社長の相談にのってきましたので、社長の悩みや経営課題もある程度はわかっているのですが、これを機にもっと幅広く偏りなく意見を聞いて、全体の傾向を踏まえた上で悩みを取り上げることも重要だと思いました。そこで、今回本を書こうと決めたとき、まずWizBiz会員になっていただいている18万人の経営者にアンケートをとるところから始めたのです。結果として、個々に事情の違う1,000種類の回答が返ってきたわけですが、これらに共通する悩みをさらにまとめて整理していくと全部で71種類の悩みに集約されました。この1つ1つに処方箋を書いたという形式になっているのが、この本なんです。後ほど、1部をご紹介します。

―実際はどんな悩みが多かったんですか?

一番回答が多かったのは、「人」についての悩みです。採用も含めると35.0%の経営者が悩んでいる共通の問題です。次いで、「セールス」や「お金」に関する悩みが32.9%、その他、「経営全般」が25.9%といった順番です。経営全般というのは、それこそ内容はバラバラで、会社の方向性や事業計画などの全体的な内容から個別の問題や分類不能といったものまで多岐にわたります。
 
ただ、中小企業の経営課題については様々なアンケートが発表されていますが、私がこれまで社長さんの相談にのってきて、一番、誰にも言えずに、本当にしんどかっただろうなと感じてきたのは、「お金」の悩みだっていう実感があるんです。でもアンケートには書かない(笑)。それが本音だと思いますね。

社長のお金の不安を解消する方策(処方箋1/71)

―たしかに、お金の悩みはなかなか人に相談できませんよね。

銀行には勿論言えないし、個人的なことはナンバー2にだって言えない。ましてアンケートになんて書けないですよ(笑)。特に資金調達については、あまり詳しくない方が多いんですが、それが人に言えない。だから、私はまず社長のお金の悩みに応えたい、と思っているんです。

―なぜ社長さんは資金調達についてあまり詳しくないのでしょうか?

そもそも決算書が読める社長さんが少ないんですね。勿論、勉強されている方も多いんですが、資金調達のための決算書の読み方がわかっているかというと、そうでないことが多い。銀行員さんや、税理士さんでもそうですね。それぞれ専門領域がある。目的によって、決算書の見方、読み方が違うんですね。

―たしかに決算書が読めないとか、資金繰りがわからないとは人に言えませんよね。

そうなのですが、決算書を読み解いたうえ、どのように説明できるかで、資金調達は勝負が決まるわけです。資金調達ができるか、できないか。資金調達の手法はいろいろありますが、その中で、自社はどのように資金を調達していくべきか、という実践的な内容は重要なので本に書きました。

―経営者である以上、皆さんお金の不安は尽きないと思います。具体的に、何からはじめればよいのでしょうか?

お金の不安を解消する方法は、3つあると考えています。利益を出し続けること。資金調達をすること。現状のキャッシュフローを正しく把握することです。当たり前に聞こえるかもしれませんが、改善の順番や精度が必要なのです。まず、キャッシュフローがどうなっているのか、「いつ」「いくら」お金が出ていくのか入出金予定日を「毎日」管理し、「いつ」「いくら」足りなくなるのかを日次の資金繰表で予測し、把握してください。月次だと対策が後手に回りますので、「毎日」です。これができれば、あとは、売上を上げ、経費を削減し、利益を出す。銀行に融資をお願いするなど、様々な方法がありますので、詳細はここでは述べませんが、お金の不安は、お金の流れが見えていないことが原因の場合がほとんどなので、見える化することで、これだけでもかなり解消されるはずです。

社員が辞めない組織づくりに必須の3点セット(処方箋2/71)

―人の問題で、社長さんが一番困っていたのは何ですか?

まず、社員がすぐにやめてしまう、営業が育たなない、やる気のない社員が多い、右腕がいないなど、定着育成の問題があります。社長がナメられているとか、社員を幸せにする方法がわからないとか、リストラすべきかどうかといったテーマもあります。それこそ会社によって様々です。

―なるほど。では、具体的に、人を採用してもすぐやめてしまう、という場合はどうすればよいのでしょうか?

「最近の若い社員は、少しきつく言っただけですぐにやめてしまうので困る」という話をよく聞きます。でも、社員が辞めるのは、きつく言うからじゃないと思うんです。言い方の問題ではなく、社長が社員に愛情をもって接していれば辞めないんです。実体験として、私は社員が辞めていくのは社長の責任だと思っています。ですから、まずは、自分に責任があるということを認め、社員に対する姿勢を改めなければならないと思っています。

―社員を定着させるためには、社長自身の成長が必要だということでしょうか?

仰る通りですね。じつをいうと、WizBizも独立して数年間は社員が入ってきてもすぐ辞めてしまっていたんです。叱ってもだめ、叱るのをやめてもだめ。どうしたらいいんだと。
 
それまでは、あえてきついことも言うのも指導者の役割だと思っていました。結果、それが相手のためになると。でも、私自身の姿勢が間違っていたんだと気づきました。叱って何かをさせるのは一番低レベルのマネジメントだと。自分の人間性が高まれば、相手に合わせて怒らずに人を動かしていけるようになる。結局、人間力を鍛えないといけないんだと。ようやくそういう境地にたどり着いた、というところですね。

―具体的にはどのようなマネジメントをすればいいのでしょうか?

社員が辞めない仕組みを作ることです。社員が定着しないのは組織風土、企業文化の問題です。ですから、経営理念、評価制度、就業規則の3点セットがそろっていないと新規採用も実はやめたほうがいい。
 
進め方の要点としては、経営理念で理想の社員像となる行動指針を示します。その行動指針と人事評価制度を連動させると、自社に合う社員と合わない社員が明確になり、合う社員だけが残ることになります。人事評価制度を整備することで、社長も社員に関心を持たなくてはなりませんので、そういう意味でも人事評価制度は重要なんですね。

―社長自身が成長するためにも、評価制度と連動した仕組みをつくる必要がある?

そうですね。社長が自分で経営理念を作れなかったら、それを組織に浸透させられなかったら、社員に愛情をもって接することができなかったら、誰もついてこないんだと。カリスマ経営者以外は、やっぱり仕組みが必要だと思います。評価制度だけを見直しても問題は解決しませんので、この3点セットが連動していることが条件ですね。

売上を伸ばす~集客に効く中小企業のウェブ戦略(処方箋3/71)

―次に、売上を伸ばしたい、集客を増やしたい、というセールスの悩みも多いと思いますが、皆さん、何に悩まれているんでしょうか?

悩みはそれぞれなんですが、「商品・サービス」、「マーケティング」、「営業」の3つが連動していない場合が多いように思います。まず、商品・サービスは、具体的にどんな人が、どんなシーンで、いつ買うのか? その人は何を解決したいのか?何を楽しみたいのか?を明確にしなければなりません。ターゲットを鮮明にするには、ペルソナ設定の手法をもっとしっかり研究する必要があります。正しく設定したペルソナの人物モデルをもとに、最適なマーケティング手法を検討して、ファインディング(見込み先の発掘)して、営業をかけてクロージング(購入意思決定)をするという流れです。
 
でも最初に改善すべきなのは、クロージング率を高めるところなんです。次に、ファインディング手法を見直し、見込み先発掘の件数を増やす。そのために、アポイント件数を増やす、という順番ですね。自社のセールスの課題に対する改善の手順が、この順番でなかったり、それぞれが連動していない場合が多いですね。

―「新しいお客さんが増えない」、という悩みについては、どのように考えたらいいのでしょうか?

新規のお客さんが増えない原因はいくつかありますが、既存客は減っていないけど、新規のお客さんが増えないという場合の原因は、広告宣伝をやっていないか、やり方が間違ってるか、のどちらかです。
 
以前は、飲食店であれば、ぐるなびや食べログなどのポータルサイトに登録しておけば、それだけで新規のお客さんが増えたんですが、今は、それだけでは増えなくなりました。お客さんがお店をグーグルやヤフーで直接、食べたい物、たとえば「牡蠣、新橋」というキーワードで検索するようになった。つまり目的買いをするようになった。であれば、Webの表記方法など、やり方を変えなければなりません。

―これは様々な業界に共通することですよね。

他の業界も同様ですし、採用でも同じことが言えますね。求人情報の代理店の方に伺った話では、自社の採用ページをつくって、まとめサイトを使って採用を仕掛けたら、応募者が3倍から10倍になった事例があるそうです。実際にWizBizでも自社サイトを充実させたことで、毎年5,000名を超える経営者のセミナー集客ができるようになりました。

―今後、新規開拓は自社サイトを使った手法が主流になっていくのでしょうか?

商材によって違いますが、セミナー、ネット、店頭といった組み合わせですね。自社サイトの他にも、紙媒体のチラシ、フェイスブック広告、リスティング広告、インスタグラムの活用などがありますので、すべての手段を試す場合もあります。どれが効果的なのかは、業界や商材によって違いますので、必ず反応率のデータをとって、反応率が高い物に集中させてください。いずれにしても、どの業界でもインターネットを使った集客は必ず必要になります。あまり知識がない方も今からネット集客の方法をセミナーなどで勉強しておいたほうがいいと思います。

―リピーターが増えない、という場合はどうしたらいいのでしょうか?

まず考えるべきなのは、過去と比較して、あるいは競合に対して、自社の商品・サービスのレベルが落ちていないか?ということです。早急に原因を分析して、対策を打つ必要があります。いくら新規のお客さんを増やしても、風評が広まってしまうと二度と来てくれなくなるわけですから。

―まずは、問題は自社にあるのではないか、と考える必要があるわけですね。

仮に競合ができたことが要因であっても、そうした環境変化に対応できないのは、自社の問題ということです。環境は変わり続けますから、お客さんが期待する内容や水準も変わります。だからどんどん商品やサービスも変わり続ける必要がある。ディズニーランドのようにですね。飲食店だったら味や雰囲気かもしれない。
 
これは、あらゆる業種に言えることで、会社が生き残っていくためには、それだけ商品・サービスのレベルが高くなくてはいけないんです。ポイントカード、クーポン割引などの施策を打つ前に、商品・サービスのレベルを上げること。この順番が重要なんですね。

解決できない問題はない。解決策は、必ずある!

―「社長の孤独力」で、一番、伝えたかったことは何ですか?

私自身として伝えたかったことというのは特にないんです(笑)。社長の悩みを解決するための本ですので。しいて言えば、どんな問題でも、解決策は必ずある、ということですね。
 
また、会社の問題は刻々と変わっていくということなのです。したがって、一つを解決するとまた次の問題が出てきます。だから次々に現れる個別の悩みを1つ1つ解決しながら、社長の悩みを俯瞰してみて総合的な課題解決のヒントになるように、「社長の悩みインデックス」のような本になったんですね。
 
よって、忙しい社長さん方が「あれ?これって前も悩んでたよな」と思った時に、いつでもパッと手に取って読んでいただけるバイブルのような本にしたかったんですね。71の社長の悩みを「お金」「人」「集客」「セールス」「採用」「信用」「事業承継」「トラブル」「プライベート」「経営」という10のジャンルに分類して、インデックスのように網羅しているので、社長さんが、その時々の悩みに対するヒントが必ず見つかるように出来ています。
 
文章も短くまとめてありますが、社長さん方だったら、きっとその行間の奥深い部分をわかってくださるんじゃないかなと思います。白い本ですけどびっしり手垢がついていて、10年後も使っていただけていたら嬉しいですね。

―そもそも社長の悩みを1つ1つすべて解決するためにWizBizを立ち上げたということでしょうか?

私がもともと上場企業の当時赤字部門だったWizBizを引き取って独立したのは、社長の悩みを全て解決できる日本一の経営課題解決サイトを作ろうと思ったからなんですね。それまでのコンサルタントとして経営相談の経験を踏まえて、ネット上で会員同士がお互いにできることを提供しあって課題を解決できるマッチングサイトを作りたかった。誰にでもできそうで、じつは誰にでもできるわけではない、そんなビジネスモデルにチャレンジしたかったんですね。
 
さらに言えば、WizBizの使命は、日本経済を発展させ、世界的な企業を輩出することです。だから、「世界の経営者のことを一番わかってあげられる存在になる。」これが我々の使命だと社員に言い続けています。WizBizは「経営者の総合スーパー」を目指しています。全ての経営者の課題を解決できるようにしたい。ニーズに応えられるようにしたい。かつ解決策を選べるようにしたい。スーパーだったら、豆腐を買う時に、木綿なのか絹ごしなのか焼き豆腐なのか、どれでも選べる。そんな総合スーパーのような会社にしたい、というのが私の想いです。
 
だから、私は「社長の話を聞くこと」を主な仕事にしています。その中でわかったのは、社長の悩みはそれぞれですが、じつは皆さん同じことで悩んでいる。共通点がある、ということです。その悩みを解決し、日本中の中小企業を元気にすること。それが私のミッションだと考えています。
 
失敗しても、その失敗を糧にして復活できる。スティーブジョブスのような人がどんどん出てくるような社会じゃないと日本経済は活性化しないと思うんです。そんなチャレンジできる社会を築きたい、これが、私の強い想いなんですね。それが日本を世界の中で輝かせる唯一の道だと思うんです。

―なるほど。では、新谷さんは、実際に社長になってみて、いかがでしたか?

おかげさまで、私はこうしたチャレンジをさせていただいていますので、苦労ばかりで、悩むことばかりです(笑)。でも悩んでおいてよかったなと。結局、社長は、悩むのが仕事のようなものだと思うんです。悩みが多くて当たり前。それが仕事なんですから。諦めましょう(笑)。
 
私も営業で悩んで、コンサルティングで悩んで、社長になって悩んで、でも何とか自分で突破してきた。時々思うのは、コンサルタントと社長業はやっぱり違います。だから社長業をやって、よかったなと、今は思っています。「逃げずに悩むことが会社を成長させる原動力になる」と本に書きましたが、ただ、私自身、辞めたい、逃げ出したいとは、今も、よく思います(笑)。

<プロフィール>
 
社長の孤独力 

https://www.nikkeibook.com/item-detail/32264

 新谷 哲(しんたに さとる)
WizBiz株式会社代表取締役社長
1971年、東京都生まれ。大学卒業後、ベンチャー・リンクに入社。2010年、当時赤字だったWizBizという経営者向けネットメディア事業の20人の部下を引き連れ退職し、代表取締役社長に就任。
 
WizBiz株式会社
https://wizbiz.jp/

18万人の社長・役員などの経営者層が登録する日本最大級の経営者のビジネスマッチング・業種交流会サイトと、年間500回の「経営者向けセミナー」を開催する経営者コミュニティを運営している。

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