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2020年12月07日(月)

ホットリンク内山幸樹グループCEOに聞く~SNSマーケティングによる知の結集で、人類進化に貢献

経営ハッカー編集部
 ホットリンク内山幸樹グループCEOに聞く~SNSマーケティングによる知の結集で、人類進化に貢献

インターネット黎明期の1995年。Googleが設立されるより早く、検索エンジンの開発に携わった日本人がいる。株式会社ホットリンク(東証マザーズ3680)グループCEO内山幸樹氏だ。「情報のゲートウェイをいち早く押さえた者が勝者となる」と、開発に賭けた内山氏の読みは数年後に現実となった。しかし、この時に勝者となったのはGoogle。巨大資本の前に「技術だけでは勝てない」ことを思い知る。あれから20余年。検索エンジンマーケティングに限界が見え、SNSマーケティングの市場が飛躍的に伸びてきている。リスティング広告で「いますぐ客」を刈り取る狩猟法だけでは顧客資源はすぐに枯渇する。そこで潜在顧客層にファンを拡大しコミュニティを育てるSNSマーケティングが今求められているのだ。「デジタルマーケティング業界は今、20年に一度の地殻変動が起きている。」と内山は言う。インフルエンサーに頼るのではなく、口コミビッグデータを活用し、着実にファンを増やしていく、ホットリンクが提唱するサステナブルで効果の高いSNSマーケティングとはどのようなものなのか? また、SNSマーケティング市場の成長性、ホットリンクの今後の戦略を内山氏に聞いた。 

 

日本最初期の検索エンジン開発で起業、SNSデータ解析ツールで上場し、SNSマーケティング支援で世界展開へ

―はじめに事業概要をお聞かせください。

当社は「知識循環型社会のインフラを担い、人とAIが互いに補い合い、世界中の人々が暮らしやすい“HOTTO(ほっと)”できる世界の実現に貢献する」ことを目指して創業されました。

事業ミッションは、「ソーシャルメディアマーケティングにスタンダードを創る」こと。その実現のため、創業以来、15年にわたり世界中のアーンドメディア(ブログ、SNS、口コミサイト、ニュース記事等)のビッグデータを収集、蓄積し、解析サービスを提供してきました。現在は、その膨大なビッグデータと解析ノウハウにより、持続的で効果性の高いSNSマーケティング支援サービスを提供しています。

-ホットリンクの創業、上場に至るまでの経緯をお聞かせください。

大学時代は物理学に魅力を感じていました。専門課程では船舶海洋学を専攻し、数値流体力学などのテクノロジー研究にのめり込み、そのまま大学院に進みました。

研究のため米国サンディエゴに滞在していた1994年、世界中のコンピュータを繋ぐことができる革新的なインターネットという技術に出会いました。当時は、Googleもない、まさに黎明期。世界が1つのネットワークで繋がるイノベーション前夜です。いち早く情報のゲートウェイをおさえたプレーヤーが覇権を握る。この技術の可能性にワクワクしながら、インターネット検索エンジンの開発に着手したのです。

1995年、海外の投資家にプレゼンする機会も得て、そのまま在学中に起業することになりました。その後、某有名ITベンチャー企業から事業買収のオファーもありましたが、大人には買われたくないと考え、事業売却は辞退。独自路線を貫きました。しかし、その後、我々が開発した検索エンジンはあえなく大資本に叩きのめされたわけです。

それでも来るべきAI社会を見据え、検索エンジンのアルゴリズムのさらなる研究開発は継続していました。インターネットは人間の脳や生態系との相似形です。脳のメカニズムも未だ科学の探求領域で、テクノロジーも今後さらに指数関数的に進化する。そう確信し、2000年に、AIと人間が互いにできないことを補完し合いながら共存する社会を実現しようと、ホットリンクを設立しました。AIがブログなどの膨大なネット上の口コミ情報、いわば地球上の人間が吐露する本音から人類の集合無意識を読み取り、学習し、人間と対話を繰り返しながら、よりよい世の中にしていく社会最適化の仕組みをつくろうと考えたのです。

ところが、まもなくITバブルが崩壊。創業資金も底を尽き、受託開発で食いつないでいかざるを得ませんでした。転機となったのは、2003年のNTTデータとの提携です。ブログサービスをスタートしました。それをきっかけに、ブログの検索サービスを開発し、膨大なブログ情報の収集と同時にブログコンテンツの分析エンジンの研究を本格化しました。その後、2007年以降、スマートフォンの普及により、Twitter、FacebookなどのSNSメディアが台頭。誰でも即時の情報発信やシェアが可能となり、トラフィックも爆発的に拡大しました。私たちは、こうしたSNSビッグデータをマーケティングに活用するための口コミ解析SaaSを開発し、順調に業績も向上。本格的に上場準備を開始し、2013年、東証マザーズに上場しました。創業時からグローバル展開を構想していましたので、日本での上場は1つのマイルストーンという位置づけです。

―上場後はどのような事業展開をされたのですか?

本格的なグローバル展開を開始するため、AI時代の油田ともいわれるデータの供給元を押さえようと、まずは強い顧客基盤を持つIBMやマイクロソフトに、世界中のSNSデータを供給している米国企業を買収しました。続いて、日本企業の中国進出を支援するため、中国国内のSNSビッグデータ解析に基づいて、メディア広告やSNSを活用したプロモーション支援を本格化させました。その結果、データを活用したマーケティングの上流から下流までのプロセスの垂直統合を実現し、収益化に成功したのです。

  ―創業から20年を経て、SNSマーケティングの課題として見えてきたものは何だったのでしょうか?

いくつかありますが、1つめは、現在のSNSマーケティングは、ビッグデータの収集、分析、活用までのマーケティングプロセスが分業化され、分断されてしまっていることです。

特に、SNSマーケティングは、収集したビッグデータをもとに潜在顧客の深層心理まで踏み込んだデータ解析、ニーズの抽出が必須です。そのニーズに対応したお客様の心を動かすクリエイティブやプロモーション施策を実行し、結果を評価し、改善を重ね、成果を得るまでマーケティングプロセスを止めずに完結させる必要があります。世の中のソリューションがそれぞれ別々に提供されていることが多いのですが、ビッグデータの解析とクリエイティブやプロモーション施策は、いずれかだけでは機能しないのです。

2つめは、効果の持続性に乏しく、再現性が低いという点です。

莫大な予算を検索エンジン広告とインフルエンサーマーケティングに投入すれば一過性のブームは生み出せます。しかし、このような施策を打ち続けなければ成果が出ないようなマーケティングはいずれ限界を迎えます。

とはいえ、企業が大々的なプロモーション活動を展開せずに、口コミを自然発生的に生み出して着実に売れる仕組みをつくることはそう簡単ではありません。仮に1つや2つ成功したとしても後が続かず再現性が低い。そのため、口コミマーケテイングのノウハウを効果が再現性ある形で仕組み化する必要があるのです。

3つめは、前述のようにマーケティングプロセスの分断を解消し、企業が独自に売れる仕組みを構築するためには、データ解析とクリエイティブ、いわば左脳派と右脳派、SIerと広告代理店が合体したようなチームによるプロモーション支援が必要になります。

こうした課題を解決する条件が揃わないと、企業は常に莫大な広告予算を一過性のプロモーション活動に投下し続けざるをえず、サステナブルなマーケティング活動になっていかないのです。

 

世界中のソーシャルビッグデータの収集、解析、プロモーションまで一気通貫のサステナブルなマーケティングプロセスを実現

―先ほどお話いただいたSNSマーケティングの課題を解決するにはどのようなソリューションが必要になるのでしょうか?

これまでのSNSマーケティングは、データ収集、解析、活用という3つのプロセスの部分最適化レベルのソリューションが提供されていました。しかし、今後は、顧客の事業の成長という視点からの全体最適化を図るためのトータルな売れる仕組みづくり必要です。そのために当社では次のような3つの観点からソリューションを提供していきます。

第1は、SNSビッグデータの収集、解析から、プロモーションまで一気通貫のマーケティング支援サービスの提供です。

当社には過去15年間のあらゆるソーシャルメディアの情報が集積するビッグデータ、世界有数の過去10年以上のソーシャルメディアの研究および分析・解析技術とその実績があります。さらには、世界水準のSNSマーケティングノウハウで顧客のマーケティング活動をサポートしてきた経験があります。これらを組み合わせて、データの収集、分析、活用まで、企業のデータを活用したマーケティングを川上から川下まで一気通貫でサポートできる垂直統合のビジネスモデルを構築しました。

第2は、再現性の高いSNSマーケティングの成功法則から編み出した独自メソッドに基づくコンサルテーションです。

これまで多くの企業が、口コミを活用してブームを生み出す試みをしてきましたが、その成功事例はほんの一握りです。当社は、ビッグデータ解析に基づき、「ULSSAS(ウルサス)」というメソッドにより、再現性があるマーケティングプランを提案し、プロモーションまで実行します。データドリブンによる成功法則に基づくもので、これによりお客様のニーズに的確に対応したマーケティングの成功シナリオを作り、売上アップ等の成果に直結するソリューションを提供できます。

第3は、世界水準のエンジニアとマーケティングプランナーなどスペシャリスト集団の編成です。

企業内にプロフェッショナルなマーケティングチームを最初から作ることは難しいです。そこで、当社はAIを活用したビッグデータ解析を可能とするデータサイエンティスト、データアナリストなどのエンジニア集団と、クリエイティブ、ソリューションに落とし込めるマーケターが高度に連携してマーケティング支援サービスを提供しているわけです。解析・エンジニア系は、世界のAI研究に影響を与える2,000人に選ばれたR&D部長長榊などが在籍しています。マーケティング系は、SNSマーケティングの第一人者と評される当社CMOの飯高などのプロフェッショナル人材を擁しています。いわゆる左脳派と右脳派の人材が、同じ目線、共通言語で会話できるとチームが形成されているという、なかなかありえないコラボが実現できている世界唯一の組織ではないかと思います。

―先ほど伺った再現性のある口コミプロモーションを実現するために必要なマーケティングフレーム「ULSSAS(ウルサス)」について、もう少し詳しく教えてください。

ULSSASとは、当社が提唱する口コミを起点としたSNS時代のマーケティングフレームのことです。広告を起点とした一般的な消費行動のモデルとは異なり、ULSSASは、UGC(ユーザー投稿コンテンツ)を起点に、写真や口コミによって興味を喚起して、検索、購買、シェアといったアクションにつなげ、その結果、他人の興味喚起にもつなげていくアクションを循環させていく仕組みなのです。

以下の6つの要素の頭文字からウルサスと呼んでいます。

それぞれの要素をご説明しますと、以下のようになります。

U:UGC(ユーザー投稿コンテンツ)は、新商品を発表した際に、ユーザーが写真付きの投稿をするといった、ユーザーの投稿のことで、ULSSASはこの口コミが起点になります。
L:Like(いいね!)は、UGCを見たユーザーが投稿に、いいね!やリツイートをすることです。エンゲージメントが高くなるとリーチが伸び、より多くの人の目に触れるようになります。
S:Search1(ソーシャルメディア検索)は、いいね!が付いたコンテンツを見たユーザーが商品を気にし始めて、SNS上で検索をして情報収集する行動です。
S:Search2(Google/Yahoo!検索)は、商品を購入できる店舗を知りたいと思い、検索エンジンで指名検索をする行為です。
A:Action(購買)は、店舗に訪問して、商品を購入すること。
S:Spread(拡散)は、商品の写真を撮影し、SNSに投稿して、拡散するフェーズです。その投稿(UGC)に、またいいね!が付き、ULSSASのサイクルが循環するという連鎖が始まります。

このULSSASによる口コミマーケティングと検索エンジン広告との一番の違いは、費用対効果の高さです。検索エンジン広告は、相応の広告費を投入すればホームページにアクセスを誘導することは可能ですが、好感度を持たせるまでは到達し難いのが実際です。一方、ULSSASは、商品に対するユーザーの口コミ情報ですので、低コストで、かつ商品の認知から更に、興味・関心をもたせるまで到達しやすいのです。

また、ULSSASのサイクルはインフルエンサーマーケティングとも違い、持続的な効果が期待できます。有名人に語っていただくマーケティング施策は、いわばカンフル剤で効果は一時的です。一方、一般の方による口コミは、草の根で情報が拡散していく売れる仕組みになりますので、いわば漢方薬による体質改善です。体質改善ができれば即効性のある販促施策も効果が高まり、これらを合わせた相乗効果が期待できます。

 ―確かにULSSASのメソッドで売れる仕組みが構築できれば持続可能で費用対効果が高いプロモーションが実現できますね。

これまでの広告代理店モデルでは、お客様にとって効率がいいマーケティングをすればするほど売り上げが減ってしまう。だから、お客様にとって仮に非効率だとわかっていても広告費を捻出してもらう提案をしなければなりませんでした。このような矛盾が生じるビジネスは、サステナブルではありません。当社はお客様の事業成長を支援するために、費用投下したマーケティング活動の結果が資産として蓄積されていって、将来的にお客様が莫大な広告費を出さなくても良くなっていくような、マーケティングを支援したいのです。

さらにいえば、お客様の事業成長を支援するためには人材育成の視点も重要です。企業が外部に丸投げでマーケティングを委託していると体質改善にはなりません。社員が自ら情報を発信したり、自分ごととして取り組めば、マーケティングのスキルも社内に蓄積されていきます。このようなマーケティングの体質改善コンサルティングによって、中長期的には売上増加に応じた成功報酬のようなモデルを確立したいと考えています。

 

ULSSASメソッドによる実際の成果は?

―具体的に、導入企業ではどのような口コミマーケティングが実現されているのでしょうか。いくつか事例をお聞かせいただけますか?

では、コンサルティング事例として3社の事例をご紹介します。各社の商品や顧客層にかかるビッグデータの分析を踏まえ、最適なマーケティングプランを示し、伴走しつつ、以下のような成果創出に繋げています。

1社目は、食品(洋菓子)メーカー、株式会社シャトレーゼさんの事例です。これまでチラシ広告がメインだったプロモーション手法を見直し、若年層への認知拡大を目的に、2017年7月からTwitterマーケティング支援を開始。店舗への来店促進と顧客のファン化を目的にULSSASのフレームで展開した結果、口コミの連鎖が起き、2年でフォロワーが19万人を超え、UGC発生数が11倍と飛躍的に向上しました。公式アカウントで投稿のきっかけとなる誰でも気軽に作れるおしゃれなスイーツの動画レシピなどの情報を提供し、フォロワーからのツイートにも公式アカウントからリツイートすることで情報拡散しやすい流れをつくりました。このような取り組みによりUGC数増加に比例して指名検索数も伸び、店舗売上増にも繋がっています。

2社目は、ソーセージブランドのジョンソンヴィルさんの事例です。同社は「ブランド認知が低い」という課題をお持ちで、売上に直結するSNSマーケティング支援を希望されサポートを開始しました。主な購入動機のバーベキュー以外の活用シーンを様々な文脈でSNSに投稿していくことでファンづくりを促進。例えば、朝食ならジョンソンヴィル、ビールが好きならジョンソンヴィルなど、ユーザーが調理例を紹介するといった企画も加え日常の生活シーンの提案も効果的でした。その結果、約1年でUGC数9倍、画像付きの投稿が約105倍と右肩上がりの積み上げに成功。ツイートが増加した週末に売上が上がるなど大きな成果が見られました。

3社目は、美容業界に特化したヘアケア企業さんの事例です。同社は主に美容室向けにヘアカラーなどを販売する企業です。一般消費者の認知度向上のためにSNSマーケティング支援を開始。オウンドメディアも組み合わせ、Twitterを中心に、Facebookページ運用、Instagram、PinterestなどSNS全般で仕掛けました。UGCをバズらせるための支援を行い、例えば「アホ毛※」を抑える器具の使用前・使用後のユーザー投稿動画がバズり、SNSで知ってネット通販で購入いただける流れに繋がっています。良い商品を作り、口コミしたくなる情報提供をすれば、宣伝しなくても拡散が連鎖し、売り上げに繋げられるという事例です。
(※アホ毛=ピンと跳ねて飛び出る毛)

他にも多くの事例がありますが、ULSSASメソッドに基づいて、コンサルティングとサポートをさせていただいています。

 

20年に一度の業界の地殻変動を機にSNSマーケティングで世界を獲る

―今後の展望をお聞かせください。

この20年でデジタルマーケティングの世界は大変革の時代を迎えています。日本もマスメディアの時代からインターネット検索エンジン広告の時代にシフトしました。2022年にはネット人口の83.3%がSNSユーザーになると予測(出典:ICT総研「2020年度 SNS利用動向に関する調査(2020年7月29日」)されていますので、マーケティングにおける、SNSの重要性は非常に高まっていくと想定されます。実際に、米国でのSNS広告費は、2024年にネット広告市場の29%に到達すると予測されています。近い将来、日本も同様の割合になるはずです。現在の日本のSNS広告の市場規模はネット広告費の15%。2024年には17%と現在の1.3倍に拡大、さらに米国同様に29%になれば、現在の1.7倍の4,300億円規模に拡大の余地があります。SNS広告は、まさに次なるネット広告の主戦場になってくるのです。

当社は、昨年末、上場後の主力事業であったビッグデータ解析SaaSから、SNSマーケティング支援事業に大胆にシフトしました。業界の地殻変動を機に、一気呵成にトップを獲りに行きます。まずは日本、中国。さらには、アジア、米国、ヨーロッパに展開する予定です。

―トップシェアの実現に向けた課題はどのように捉えていますか?

目下の課題は「デジタルマーケティングをやるならSNSマーケティングこそ効果的だよね」と世の中で言われるようにパラダイム転換を実現することです。

かつてインターネット広告も「ネットユーザーはどれだけいるのか」「費用対効果があるのか」と思われていました。しかし、現在は、「インターネット広告は効率的」というのが常識となっています。しかし、クッキー規制などにより検索エンジン広告の効率も低下するでしょう。新型コロナ後、テレビ離れもますます進み、ソーシャルメディア、YouTube、ゲームなどに費やす時間も今後ますます増えるでしょう。ウィズコロナ時代の効果的なマーケティングはソーシャルメディア抜きに語ることはできません。このことをしっかりとお伝えしていきたい。

現在、業績を伸ばしているブランド企業の多くは、メインのマーケティングチャネルがネットにシフトすることを見越し、2000年頃から先進的にデジタルマーケティングに取り組み、まずはインターネットの検索エンジン広告で成果を上げてきました。その結果、先行メリットを享受するとともに、デジタルマーケティングのノウハウも社内に蓄積して、現在のポジションを築いています。

同様に、今、私たちがSNSマーケティングをサポートしている各業界のトップランナー企業の方々は、ここ数年で売れる仕組みづくりを着実に進めています。5年後、10年後には、さらなる飛躍的な成長を遂げ、いずれ日本を代表するブランド企業となっていくことでしょう。その成長の歩みをしっかりと支援していたいと思います。

 

経営の知識、経験を社会に還元

―内山さんは社会活動にも積極的に取り組んでおられます。

企業経営は問題解決行為そのものです。20年間、大小さまざまな問題を解決し続けていると、どこをどう改善すれば物事がうまく回るようになるか手に取るように見えてきます。このような知見を私個人の学びにしておくのは勿体ない。そう気づいたのです。

きっかけとなったのは、2014年に、日本初の全寮制の国際高校、ユナイテッド・ワールド・カレッジISAKジャパンの立ち上げにファウンダーの一人として参加したことです。当校は社会変革を起こすチェンジメーカーを育成することが目的で、世界中から多様な生徒、先生が集まり、非常にユニークな授業を行っています。それまでは、会社を成長させることが自分がもっとも世の中に貢献できることだと考えて、自分の全精力を会社の成長に捧げていたのですが、この学校に関しては、上場によって得た利益のほんの一部をISAKに寄付させていただいただけなのに、20年後、卒業生が世界のいろいろな場所でリーダーとして貢献しているだろうってことがすごくイメージできたのです。それがきっかけで、会社以外のところでも、自分が培った経験・人脈・資産などが世の中に活かせる領域があるんだと気がついたのです。

今は、LGBTのカップルの方々が家族として認められないというような社会課題の解決にも取り組むようになりました。具体的には、ブロックチェーン技術を活用して、同性カップルの方にパートナーシップ証明書の発行を行うと共に、その証明書をもっていると家族を対象とした各種サービスを提供してくれる企業ネットワークを作る活動を、一般社団法人Famieeとして取り組んでいます。ブロックチェーンは社会システムを変革する可能性のある技術です。若い世代が新しい技術を開発し、我々のような大人の世代が社会の制度を作っている人たちを説得するようなチームを組んで世界を変える。こういった変革を世代を超えて一緒にできるというのは非常に面白いと感じています。 

また、出身地の富山への地元貢献として、プロバスケットボールチーム「グラウジーズ」の経営にも携わっています。

起業後の20年で培った経験、人脈、智慧を、事業活動以外にほんのちょっと振り向けるだけで世の中に貢献できることが非常に多い。ホットリンクでやるべきことを全うすることで、その経験を活かして私自身が社会に貢献できることがどんどん増えていく。これからも、私自身がもっとできることを増やしてきたいと思っています。

―内山さんの挑戦の歩みは、デジタルマーケティングの歴史を体現されているように思います。今後、日本発のSNSマーティングがグローバルスタンダードになり、世代を超えて継承、発展し続けることを期待しています。本日はありがとうございました。

 

<プロフィール>
内山幸樹(うちやま・こうき)

1995年、東京大学大学院在学中に日本最初期の検索エンジン開発に携わる。1997年、東京大学大学院博士課程を中退、検索エンジンのベンチャー企業に専念。数々の先端的WEBシステム開発を担う。2000年、株式会社ホットリンク設立、代表取締役社長就任。検索エンジン、ソーシャルブックマークサービス、ブックマーク共有型検索エンジン、リコメンデーションエンジン、ブログ分析サービス等のWEB2.0的先端サービスの開発を先導する。2014年、Effyis, Inc. 取締役就任。2019年、株式会社ホットリンク 代表取締役会長就任、SAMURAI Security株式会社 社外取締役就任、一般社団法人Famiee(https://www.famiee.com/)設立、代表理事就任、株式会社富山グラウジーズ 社外取締役就任
 
株式会社ホットリンク
URL:https://www.hottolink.co.jp/
代表取締役グループCEO:内山 幸樹
設立:2000年6月26日
所在地:東京都千代田区富士見一丁目3番11号 富士見デュープレックスビズ5階
株式市場:東京証券取引所マザーズ(3680)
連結子会社:EFFYIS,inc. 、株式会社トレンドExpress、 流行特急
事業内容:SNSマーケティング支援事業

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