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3年間の育成で「IPOを見られる人材」を目指す freeeの経理マネジャーと新卒社員に聞く"ハイパー目標”と現状

経営ハッカー編集部
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freeeの新卒経理社員は2020年、経営陣や部門長の集まるミーティングに参加し、担当業務を説明するなど、さまざまな業務に対し試行錯誤していた。

その背景には、「3年の育成で「IPO(※)を見られる人材」を目指す“理想ドリブン”な目標のもと、ハイスピードで経理の各種業務を担った経験と、チームの綿密なコミュニケーションがあった。育成を担う小山晋史と、新卒社員の木村真清に話を聞いた。

※IPO(Initial Public Offering:新規株式公開、上場)

目次

    3年間の育成で「IPOを見られる人材」を目指す

    育成を担当する小山晋史(写真右)と新卒社員の木村真清

    ――freeeの経理チームでは、どんな人材の育成を目指していますか?

    小山:会社として「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに掲げています。その観点から、バックオフィスが作業中心から脱却して、「経営者の意思決定をサポートする存在になれるようにしたい」「プロダクトの進化にも貢献したい」、さらには「バックオフィスの進化を通じて、社会の進化に貢献したい」という思いがベースにあります。

    そのためには、経理として「決算を締めること」よりも、もっと先を考えています。高い目標に向けて、3年間でIPO準備ができる経理部長レベルに育てられれば、ミッションの実現に貢献できるかなと考えています。

    ――「IPOを見られる人材」になるには、どのようなことが必要でしょうか。具体的に教えてください。

    小山:私は監査法人、コンサルティング会社などを経て、2019年1月にfreeeに入社しました。そして、コンサルティング会社でもfreeeでもIPOを経験しました。IPOでは、準備の過程でいろんなことが起きるんですよね。

    大事なのは、いろんな事態が起きるなかでも楽しんでチャレンジしていけることかなと思っています。まずは決算に必要な作業を全部できるようになること。そして、会計・財務だけではなくて、プロジェクトの責任者・決算統括として、監査法人との交渉も含めて、開示までやり切れること。さらに、バックオフィスだと、どのようなリスクがあるのか「リスク感覚」みたいなものを養っていくことも必要かなと。

    ――3年間で目指すものとしては、非常に志の高い目標だと感じます。

    小山:我々は“理想ドリブン”と表現しているのですが、理想から考えてそこに近づくために何をしていくのか。提供するサービスから考えるに、やはりfreeeの経理部が理想のバックオフィスを体現していることが結構大事かなと思っていて。そのためには、チームのメンバー自体が常に成長していることが大切です。

    「グロースビジョン」を手に、新卒社員が経理へ

    ――「IPOを見られる人材」の育成の取り組みを受ける木村さんは、2020年の新卒入社とのことですが、この取り組みをどう感じていますか?

    木村:昨年は内定者インターンとして1年間インサイドセールスをやっていましたが、縁があって経理に配属になりました。freeeの経理は当然ながら「会計freee」を使ってバックオフィスのことをすごく考えているので、良いキャリアだと思っています。

    ――木村さんが配属されるにあたって、チームとしてはどんな準備をしましたか?

    小山:どういう育成プランにするか、みんなで議論して、タイムラインを引いたんです。木村にも、入社前に「こんなの作ったけど大丈夫?」と話をしていました。通常だと10年かけても目指すレベルに到達できる人は限られていると思っていて、そこを3年間でやる、と。

    一方で、freeeでは「グロースビジョン」という人事制度を始めています。会社の意向とは別軸で、本人が「freeeの中で」という前提を置かずに将来なりたい姿を応援したい。

    人によっては「こういう会社に転職したい」ということもありますが、そこをちゃんと見据えつつ、「では、freeeだと何ができるかを考えよう」と。経理からfreeeのプロダクトマネージャーやカスタマーサクセスにいくキャリアもあります。freeeから飛び出して、外部のCFOや経理部長を目指してもいいです。

    ――実際の育成は、どのような手順で進められるのでしょうか?

    小山:業務ローテーションを相当速いペースで進めています。その上で、木村には2021年3月に、第3四半期の決算統括というポジションを担当させようと思ってるんですね。入社1年目ですが、チャレンジしてもらいます。

    ――かなり速いペースでさまざまな業務を経験させているとのことですが、木村さんはこれまでどんな業務を担当しましたか?

    木村:まず最初は経費精算など、経理のベースとなる業務から始め、基本的には3カ月で卒業していく流れでした。入社3カ月後にはほとんど全ての業務を入れ替えて、4カ月目からはソフトウェアの資産計上や費用の部門別の分析などもしていました。

    僕の配属自体も“理想ドリブン”だと思っています。大学時代は会計には一切触れていませんでしたが、会社からは“ハイパー目標”と呼ばれる高い目標を与えられており、もちろん大変です。やらなければいけないことはいっぱいあるし、わからないことも多い。それでも、やらなければいけないとなって、なぜその業務を行っているのか自分なりの仮説を持ってあたれなかったり、目的と手段が混ざってしまったり……。

    ただ、プロダクトを一番使っていて、プロダクトについて考えているのは経理部だと思うので、自信をもって、しっかり勉強したいなと思ってます。このチャンスは存分に生かしたいですね。

    「経理からどのキャリアに進んでもいい」がもたらした心理的安全性

    ――木村さんの入社から11カ月が経ちました。ここまでの成果はどう捉えていますか?

    小山:おそらく最低限のレベルは3年より短い期間でクリアして、プラスアルファの部分をどこまでキャッチアップできるかだと思っています。そもそも、3年間で「IPOを見られる人材」の育成は、やってみないとそのレベルまで到達できるかわからないと思いながら実施しています。

    だから木村にも「3年間で到達できなかったら、ダメなわけではない」と伝えています。それでも“ハイパー目標”なのに、理想のスピードで進んでいるという感じですね。

    ――非常に高い目標も、今のところかなり順調ということですね。育成がうまくいっているた要因は、どこにあるのでしょうか。

    小山:経理には私以外に社員が3人いますが、3人とも新卒だった場合、さすがにこのスピード感では育てられない。前提として、日常業務は普通に回っている状態が確立できないと、チャレンジできないと感じています。

    木村:僕の場合は「経理からどのキャリアに進んでもいいよ」と言われているのが、心理的安全性が一番高かったです。どこに向かっていくのかわからないと苦しくなりますが、納得感を持って目標を決めて、現在、経理の業務ができています。いずれはfreeeでプロダクトマネジャーをやりたいなと思ってますね。

    小山:「ずっと経理で」と言われるよりも、うれしいですね。経理からそのような人材が出てくることは、freeeという会社においてはすごく価値があること。

    だから、価値あることにチャレンジしてるんだ、と本人に話していて。いつか本人のキャリアパスを振り返ったときに、よかったと思ってもらえれば。

    freeeは「ムーブメント型チーム」という考え方があって、世の中を変えようとしたらムーブメントを起こしていかないといけないよね、と。いつかどこかで、「ムーブメントを起こせる経理の人が来た!」みたいなことが起きたらいいなと密かに思っています。

    コロナ禍の影響で3回しか会ったことがなくても、1on1で信頼関係を築けた

    ――コロナ禍での入社となり、リモート環境で業務を進めるかたちになりました。普段からどのようにコミュニケーションを取っていますか?

    小山:アジェンダがなくても、1on1の時間は必ず取る。それはオンライン・オフライン関係なく実施していることですね。チームのメンバーの関係性や状況を把握するために必要だと思っています。

    そこを怠っていると、リモートワークになった瞬間に関係性が崩れることはあるかもしれないですね。1on1なんてほぼ30分間、完全に雑談で終わることもあるよね。ずっとゲームの話してて終わるとかさ(笑)。

    木村:雑談から「小山さんって、こういう人なんだ」とちょっとずつ人物像が掴めて、個人的に大事な時間だなと思っていました。

    小山:ほとんどオンラインで顔を合わせるから、実際に会ったのは、3回ぐらい?

    木村:そうですね。ただし、オンラインでさまざまな話をしていたので、初めて会ったのに、その感覚はなかったですね。

    ――さまざまな業務を行うなかで、木村さんも派遣社員やパートタイマーの方に業務移譲を行ってきたことを聞きました。どのように担当業務を委譲しましたか?

    木村:正社員と派遣社員・パートタイマーの方の全員を含めた、雑談会を兼ねた定例ミーティングが週1回あり、お互いの業務の棚卸しを行います。具体的に話すのは、「◯営業日目ぐらいにどれぐらいの業務量がくるね」「いま業務やっててどうですか?」など。

    「この業務であれば、あの人にお願いできるな」と目星をつけて、マニュアルを作ったり、業務が簡単に回るよう仕組み化したりして、移譲してみる。その後、フォローを入れつつ改善していく。誰か特定の人が切迫することがないように負荷分散しています。

    小山:イレギュラーな対応が必要な作業は、社員が引き取りますが、その作業もある程度体系化することで、減らすことができしました。

    経理の言葉を適切に翻訳し、経営をサポートする

    ――直近の新たな収穫や、今後の展望を教えてください。

    小山:月次で「経理ミーティング」と呼んでいる、経営陣や各部署の部長クラスの人たちが出てきて、業績やコストの確認をするミーティングがあるのですが、木村は自分の担当している業務をきちんと説明しています。freeeくらいの規模の会社で1年目の社員が、CFOに説明する機会はあまりないじゃないですか。良い経験ができてるんじゃないかなと思います。

    木村:先月の経理ミーティングでは「で、結局どうなの?」とか「どっちなの?」とか言われて、「経理用語をモヤモヤとしゃべっているだけではダメなんだな」「適切に翻訳して、求められている情報を的確にコンパクトにまとめるのが大事」と学ぶことができました。

    経営陣や他部署としっかりコミュニケーションを取ることや、相手にも改善をしてもらえるようにリードすることなどが難しいなと感じたポイントですかね。

    小山:まだ1年目ですが、木村はなんとなく3年以内で「IPOを見られる人材」になれそうだなという手応えがあるので、ひとつ成功事例は作れるのかなと。とはいえ、本人が優秀で、モチベーションも高いから実現できるというのは、育成面ではゴールと言えません。「木村だからできた」ではなく、今後もさまざまな人材で達成できればいいと考えています。

    (取材・文:遠藤光太 撮影:北村渉 編集:杉山大祐 / ノオト)

     

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