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2021年06月08日(火)

BtoB受発注システムCO-NECTに学ぶ、企業におけるDX推進のポイント

経営ハッカー編集部
BtoB受発注システムCO-NECTに学ぶ、企業におけるDX推進のポイント

新型コロナウイルスの影響もあり、リモートワークや社内業務のデジタル化が関心を集めるようになった。同時に「デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」の概念が広まり、推進を急ぐ企業も増えている。

DXとは何か。経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」では、次のように定義している。

簡単に言えば、デジタル技術の活用で、サービスや収益構造、組織を変革させ、ビジネス面での優位性を作り上げることで、DXは今後の企業の経営活動において重要な役割を担うと言える。一方で、DXの必要性は感じているものの、着手の方法や推進の仕方がわからず悩んでいる経営者も多いようだ。

そこで今回は、BtoB受発注システムの開発・販売を手がけるCO-NECT株式会社の代表取締役・田口雄介さんに話を聞いた。多くの企業、特にアナログな業種のDX推進に貢献してきたシステムのメリットや活用方法を通して、企業がDXを推進する際のポイントを探っていく。

受発注をアナログからデジタルへ 業務効率化を通して企業の課題を解決する

――まずは、受発注システム「CO-NECT」の概要と特徴を教えてください。

これまでファックスや電話などでアナログ的に行われていた受発注作業を、スマホやパソコンによるデジタルな方法へと簡単に置き換えられるシステムです。

これまでの一般的な受発注システムは、受注側・発注側の双方が同じシステムを導入していなければ使えないものでした。例えば、ある飲食店が一般的な受発注システムを導入したとしても、卸業者やメーカーも同じシステムを導入しない限りは使い始めることができなかったんです。

しかし、CO-NECTは、どちらか片方からでもスタートが可能。受注側が導入し、取引先の名称やファックス番号を入力すれば、発注書が自動生成され、発注側のファックス機にリアルタイムで送信できます。つまり、相手のシステム環境に関係なく、自社の業務フローをデジタル化できるのが大きな特徴です。

また、CO-NECTは受発注だけでなく、納品書や請求書の送信、データ分析なども行えるほか、APIによる基幹システムとの連携も可能。受発注単体のデジタル化ではなく、その前後のフローも含めた全体的な最適化ができるのが利点です。

――CO-NECTを利用しているのは、どのような業種や規模の企業が多いのでしょうか。

食品系のほか、薬品やアパレル、建築資材、工具、キャラクターグッズなど、多岐に渡ります。受注側として利用いただくのは小売りよりも卸業者かメーカーが多く、規模としては、社員数10名未満から1000名以上の企業までさまざまです。

――そうした企業は、どのような課題を感じてCO-NECTに着目するのですか?

ファックスや電話、メール、それから最近ではLINEを使って受発注している企業もありますが、情報の整理が煩雑で、管理工数が膨れ上がっている点が課題だと聞きます。

特にファックスや電話をメインで利用している場合は、必ず出社しなくてはならないことがネックとなり、テレワーク化も進みません。このようなアナログな環境ではヒューマンエラーも起きやすく、労働力が余計にかかるという悪循環に陥りがちです。

――CO-NECTを導入することで、そうした課題が解決されるのですね。目に見えて効果が表れた企業の例があれば教えてください。

例えば、京都の和菓子メーカーでは、1カ月あたり200時間分の工数が削減できたそうです。業務を効率化できるのはもちろん、削減できた経費や人的リソースを、営業や販売戦略など前向きな企業活動に費やせるようになる。そのような効果によって、CO-NECTがDXの入り口を開く役割を担うことができていると思います。

効率化がゴールではない 浮いたリソースを攻めの姿勢に生かすことが重要

――単に受発注業務をデジタルに置き換えることと、企業全体のDXを推進することには、どのような違いがあると考えますか。

受発注は、あくまでも業務オペレーションの一部です。その一部をデジタル化するだけでは、他のシステムとの連携においてアナログな部分が残り、全体的な最適化までには至りません。

まず一部の業務のデジタル化から始めるのは良いのですが、それをいかにして基幹システムにつなぎ込むか、他のツールと合わせてうまく機能させるかまで視野に入れたうえでスタートするのがポイントでしょう。

そして重要なのは、導入後、次のステップに生かせるようにする“攻める”姿勢だと思います。新しいシステムの導入によって直接的に生まれる効率性も大事ですが、注力すべきなのは、デジタルに移行したことによって可視化されたデータを活用して、次の販促や営業に生かすことです。業務効率化はあくまでも通過点であり、それで浮いたお金や時間を企業としての攻めの姿勢に生かしていくことが理想ですね。

「業務にツールを合わせるより、ツールに業務を合わせなさい」とよく言われますが、私はどちらも重要だと考えています。ツールに業務を合わせるのには限界があります。かといって業務にツールを合わせることにこだわると、初期費用が高額となり、メンテナンスコストも膨らみます。ケースバイケースで柔軟に考え、双方をすり合わせながら、オペレーション全体を良くしていく視点が大切だと思います。

導入ハードルを下げるための細やかな工夫が、企業のDX推進を後押しする

――なぜCO-NECTは、多くのアナログ企業をDXへと導くことができたのでしょうか。

お客様からよく言われるのは、画面操作がシンプルでわかりやすいということです。長年アナログなやり方を続けてきた方々にとっては、画面が煩雑だったり操作方法が難しかったりすると、それだけで導入のハードルが大きく上がってしまいます。

そのためCO-NECTは「わかりやすいアイコンで機能を示す」「文字はなるべく少なくする」「ボタンは大きくする」など、誰もが直感的に操作できる画面を目指しました。

また、導入の手続きや初期設定にもそれほど手間がかからず、契約の翌日から使いはじめられる点もメリットです。必ずしもすべての準備を整えてからでなくとも、例えば1件の取引先から、1つの部署からといったスモールスタートが可能な点が、無理なく始めてスムーズに浸透させることにつながっています。

そして、CO-NECTは受注側の企業に料金をお支払いいただく仕組みなのですが、受注側が発注側を「招待」しやすいことも喜ばれています。具体的には、受注側の企業がCO-NECTを導入して使用すると、取引先に「このURLから発注してください」とメッセージが送信されます。そのURLを開くと注文フォームが立ち上がり、CO-NECTを使った発注がすぐにできるという仕組みです。

発注側はその場で会員登録し、そのほかの情報を入力していけば、すべての発注をCO-NECTに一元化することができます。受注側のメリットとしては、発注先もCO-NECTを使ってくれることで効率化が加速しますし、発注側としても、簡単に新しいデジタルシステムを導入できる。このような相乗効果も、双方のDX推進に寄与していると言えます。

――導入に成功した企業の例をお聞かせください。

1つ目は、飲食店に鶏肉を卸している企業。夫婦で経営されていて、従業員は10人前後です。社長の「業務効率化して、社員の休みを増やしたい」という強い思いがあって、デジタル化に踏み切りました。

他社と相見積もりされたのですが、他社は既存の環境に適合させるためオプションをつけることで金額が大きくなってしまうのに対し、CO-NECTはシンプルでわかりやすい料金設定という点が決め手となり導入されました。

もともとエクセルさえ扱い慣れないほどアナログな環境でしたが、社員思いの社長が初志貫徹で推進を続けた結果、現在はほぼすべての取引をCO-NECTで行うまでなりました。

2つ目は工具メーカーです。会社として導入を決めた当初、現場の営業の方々はオペレーションを変えることに消極的だったそうです。しかし、いざ利用を始めてみると、すぐにその有用性を実感してくださり、今では自発的に「取引先にもCO-NECTを導入してもらいましょう」と提案されるなど、すっかり推進論者に変わられたそうです。

無理なく小規模から始められること、始めるとすぐに作業時間の削減やミス減少などの効果を実感しやすいことが、ポジティブな結果につながったのだと思います。

経営者がDXの意義を腹落ちさせ、熱量を持って伝え続けることが重要

――田口さんがさまざまな企業を見てきた中で、CO-NECTをスムーズに導入および活用するために重要なのは、どのようなことだと感じていらっしゃいますか?

経営者自身が、CO-NECT導入を契機に会社の経営環境や労働環境を革新することを強く心に持ち、確固たる思いで社内説得を行い、地道に行動を続けることです。

当社のクライアントには、すべての取引をCO-NECTに移行した企業が多いですが、まだ一部の取引に留まっている企業もあります。CO-NECTへの移行をスムーズに完了させた企業は、経営者や推進担当者が導入を決めた当初の目的からブレずに、芯をもって社員や取引先に伝え続けている点で共通しています。

また、発注側を招待する際の工夫として「CO-NECTから注文いただくと特典をつけます」といったキャンペーンを、自主的に展開している企業もあります。こうしたことも、受注側企業の強い思いがアイデアに結びついた結果といえるでしょう。

――一方で、企業によっては「今までのやり方で問題ないから」と社員がDX化に消極的なケースもあるかと思います。そのような状況からDXを一歩前進させるためには、何が必要だと思われますか?

どんなにDXに消極的な人でも、この先何十年もアナログな手段を続けていけるはずがないことは、きっとわかっているはずですよね。「現状のオペレーションを変えることが手間だから」といってDXを先延ばしにしていても、いつかは必要に迫られる日が来るはずです。

競合他社や社会全体に大幅な遅れをとった段階でDX化に取り掛かる場合、追いつくためには相当のエネルギーを要するでしょう。そうならないためにも「確実に来る未来に向けて早急に切り替える」と決断することが大切です。

――ここまでのお話を踏まえ、企業がDXを推進するにあたって、経営者がおさえておくべきポイントをお聞かせください。

まず重要なのは、スモールスタートすること。いっぺんにすべてを変えようとすると、時間も資金も、人的リソースの面でも負担が大きくなりますし、万が一うまくいかなかった場合、その損失は計り知れません。

そのリスクを避けるためにも、小さなことから少しずつ始めて、社内の賛同者を増やしていき、徐々に全社へと広げていくやり方をおすすめします。時間がかかるように思えるかもしれませんが、結果としてそれが最短距離になるでしょう。

次に、導入に時間がかからないツールを選択することも重要です。手間の削減はもちろんですが、やると決めたら熱量が冷めないうちにトライするのがいちばん効率的ですから。DXの全体設計ができてから始めるのがベストかもしれませんが、そこに時間が取られるくらいなら、完璧に設計図が整っていなくても、できることからすぐに着手することが大切だと考えます。

そして、私が何より重要だと思うのは、経営者や推進者の熱量です。自らがDXの意義を腹落ちさせ、発信し、たとえ社内に消極的なメンバーがいたとしても粘り強く説得すること。そうした姿勢を持ち続けることが、着実に変革をもたらし、自社のDXを加速させていくのではないでしょうか。

(執筆:北村朱里 撮影:藤原慶 編集:杉山大祐/ノオト)

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