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2013年11月19日(火)

公認会計士による「起業する前に読みたいベンチャーとスモールビジネスの違い」

経営ハッカー編集部
公認会計士による「起業する前に読みたいベンチャーとスモールビジネスの違い」

ベンチャー,スモールビジネス 会社を興す(起業する)動機は今も昔もさまざまです。自分の実力を試してみたい、今までなかったサービスを世に出してみたい、単純に会社員でいることに飽きた、などなど。 立ち上げた会社はスタートアップとして、立ち上げ初日からさまざまな試練に直面していきます。会社員時代には想像できなかったストレスやトラブルが待っています。

スタートアップにもいろいろな形態やステージがあります。本コラムでは、スタートアップを「スモールビジネス」と「ベンチャービジネス」(以下「ベンチャー」)に区別して、その違いを解説します。実際に起業する前に、どのような形で興すのがよいかを考えるヒントにしてみてください。

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スタートアップにも種類がある

まず、スモールビジネスとベンチャーの違いを見てみましょう。

「スモールビジネス」とは、以下のような特徴を持ちます。

  • 立ち上げ資金を創業者が全額出資している
  • 代表者一人のみ、または取締役3人以下で運営される
  • 手がけているビジネスが代表者のスキルに依存する
  • すでに世の中で認知されている業態である

スモールビジネスで行われる事業の多くは個人事業主の延長線上にあります。個人事業主で行っていたビジネスを法人化して拡大する形態(法人成りといいます)をとることもあり、多くは創業者が自身の身一つでビジネスを行い、すべてのリスクを創業者が負っています。

一方、「ベンチャー」とは以下のような特徴を持つ事業体です。

  • 創業者以外の出資者がいる(ベンチャーキャピタルなど)
  • 取締役会や監査役(会)などの機関が創業段階から設置される
  • 手がけているビジネスが代表者のスキルに依存しない
  • 世の中で認知されていない新しい業態であることが多い

ベンチャーは高いストレッチゴールを設定し、「通常の3倍」でそのゴールに到達することを目指します。(ちなみに赤くはないです。古いネタですみません) いままで世の中になかった、または稀少な価値を創造することを目指して「何か新しいこと」を目指すのがベンチャーです。スモールビジネスやその延長で事業を続けていれば20年かかって実現かもしれない結果を「3年」で出す、そんなスピード感がベンチャーの最大の特徴といえます。 実際のところは「通所の3倍」どころではなく、「10倍」「100倍」のスピードで成長を目指すダイナミックさがベンチャーの魅力にもなっています。

経営スピードを上げるためにベンチャーがやること

ベンチャーがやること スモールビジネスの場合、すべてのリスクとリターンを創業者が受け入れます。多くの場合は創業者が自身が100%株主なので(知人や家族が株主に参加する場合もあります)、リスクと背中合わせに獲得した利益はすべての創業者自身のものになります。

このような事業体はどのように事業展開するも自由ですし、経営リスクは自分自身で負うので失敗しても周囲に迷惑はかかりません。経営がうまくいかなければ私財を持ち出して対応することになる厳しい世界ですが、それだけやりがいはあるでしょう。 一方、経営者がその身一つで事業を行う以上、大きくスケール(事業拡大)していくのは難しい場合が多く、リスクの高さの割りにリターンが多くない(こともある)のが特徴です。

一方、ベンチャーは高いストレッチゴールにハイスピードで到達するために、事業のステージごとに追加資金を投入して急速に事業拡大を図っていきます。ちょうどロケットの二段目や三段目のように、必要なタイミングで資金で点火してブーストしていくイメージです。高いリスクをとる反面、大きなリターンを目指す点もスモールビジネスとは異なります。

このような事業体では非常に高い事業リスクがともないます。大きすぎる事業リスクは個人で抱えきれるものではないため、ベンチャーの立ち上げにあたってはさまざまな方策を講じて事業リスクの分散と資源の集中を図っていきます。具体的には資金面でベンチャーキャピタルやエンジェルといった投資家が支えますし、体制面でも創業者自身以外にその能力を買われたプロ経営者が招き入れられ、創業の初期段階から「事業体」として健全に成長していけるような基盤作りがなされます。これらはすべて将来の高いリターンというゴールに向けて、高いリスクをとるための方策といえます。

ベンチャーは将来の株式公開や事業売却などの出口戦略を想定し、体制作りや資本構成を立ち上げ段階から構築していきます。取締役会や監査役(会)といった会社の機関も設置しますし、普通株式以外に目的に応じた種類株式を発行したりと、さまざまな方策が制度上用意されています。そして、いったん立ち上がった体制は詳細な事業計画と予算実績情報をもとに、事業目標への到達度を継続的にモニタリングされます。そこでは、経営者の視野の範囲で管理するスモールビジネスとは違う視点でのシビアさが求められてきます。

誰のための事業をやるのか?

起業するときにスモールビジネスで行くのかベンチャーで行くのかは明確にこれをすべき、という黄金律や成功法則があるわけではありません。ビジネスの形態はさまざまですし、創業者自身でどちらを目指すのか明確でない場合もあれば、創業してから方向性を転換するケースもあるからです。

一般的に、スモールビジネスは以下のような「自分のための」事業を行うタイプの経営者に向いています。

  • 経営者自身が食い扶持+αを稼げれば十分である
  • 自分のスキルで勝負したい
  • 経営者自身でリスクを全部とるつもりでリターンも自分のみ、自分以外を巻き込みたくない
  • 自分がやっている事業を人に説明しやすい

一方、ベンチャーは以下のような「社会のための」事業を行うタイプの経営者に向いています。

  • 今までない付加価値を提供して世の中をあっと言わせてみたい
  • 高いリスクをとるが、大きなリターンもとりにいく
  • スケールメリットを追求していく
  • 人に説明しても最初はわかってもらえなさそうな事業を手がけたい(または手がけている)

あなたはどのような起業をしたい?

さて、起業の動機や目指すゴールはこのような「スモールビジネス」「ベンチャー」の二者択一ではなく、あなたがやりたいように自由に決めることができます。 事業モデルが当初思い描いた理想どおりに進むことはあまりなく、立ち上げてから路線の変更を検討する局面は高い確率で訪れます。最初はスモールビジネスで立ち上げて、様子を見てから高いリスクをとっていくというパターンもあれば、ベンチャーとして立ち上げても途中でスモールビジネスに転換することもあるでしょう。どのような展開になるにしても、自分の判断と責任で事業の拡大を考えていくことが「起業」の醍醐味なのです。

あなたは「どんな事業を」「誰のために」やりたいですか?

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