BBCがスタートアップ企業6社に事業化支援?変わる大企業の意識!
大企業のヒト・モノ・カネでスタートアップを加速?!新しい共存のかたち
<Photo by Yukiko Matsuoka> 従来の市場競争では、大企業とスタートアップ企業とが対峙する関係になりがちでしたが、昨今、大企業が自らの「ヒト・モノ・カネ」を有効に活用し、スタートアップ企業をサポートする動きが広がってきました。いわば、大企業が、スタートアップ企業のインキュベーターやアクセラレーターの役割を担いつつあるのです。
①業界特化型アクセラレーター
特定の業界に特化し、スタートアップ企業の事業化を支援する先進的な事例のひとつが、英国放送協会(BBC)傘下のBBC Worldwideが手がける「BBC Worldwide Labs」です。2012年9月にスタートしたこのプログラムでは、公募により選出されたデジタルメディア系スタートアップ企業6社を対象に、BBC Worldwideが有するリソースやネットワークを開放し、事業の立ち上げや事業規模の拡大を支援。これまでに、モバイル学習プラットフォーム「KO-SU」、コンテンツ配信ソリューション「Social Spree」らが、このプログラムから巣立っています。
世界を代表するエンターテイメント企業ウォルト・ディズニー・カンパニーも、同様の取り組みに着手しています。2014年夏、スタートアップアクセラレーターのTechStarsと提携し、メディア・エンターテイメント業界に特化したスタートアップ企業向けの事業支援プログラム「Disney Accelerator」を米ロサンゼルスで実施。ディズニー社内の経営リーダーやクリエイター、技術者らを活用し、スタートアップ企業の事業創出を後押しする考えです。
また、マイクロソフトは、2014年7月、アカマイ・テクノロジーズ(Akamai Technologies)との提携により、サイバーセキュリティ分野に特化したスタートアップアクセラレータープログラムをイスラエルに創設しました。公募を通じて選出されたスタートアップ企業には、2015年1月から、イスラエルの首都テルアビブにおいて、第一回プログラムが実施される予定です。
②地域特化型アクセラレーター
特定の国・地域のスタートアップ企業を支援し、地域の経済活性化や雇用創出につなげようという取り組みもあります。
2013年10月、英ロンドンでは、ヴァージン・グループ会長のリチャード・ブランソン氏が中心となり、英国のスタートアップ企業を支援する非営利団体「Virgin StartUp(ヴァージン・スタートアップ)」が創設されました。この団体は、英国の若手起業家を対象に、専門家によるメンタリングやアドバイスを提供するほか、事業資金の融資を実行しているのが特徴。18歳以上の英国民もしくは居住者で、英国内で事業の創出や拡大を計画している人であれば、これに応募することができます。
ベンチャー投資ファンド部門「グーグル・ベンチャーズ(Google Ventures)」や成長株ファンド「グーグル・キャピタル(Google Capital)」などを通じて、数多くのスタートアップ企業を支援してきたグーグル(Google)では、独自の起業家育成プログラム「Google Launchpad」を策定。創業から間もないスタートアップ企業を対象に、プロダクト戦略からマーケティング、ビジネス開発、プレゼンテーションスキルなどを幅広く教える、1週間の集中研修プログラムです。すでにイスラエルで実績がありますが、2014年11月には、いよいよインドでも開講。インド南部バンガロールにあるグーグルのオフィスで、グーグルの社員が講師やメンターを務め、公募により選出されるインドのスタートアップ企業をサポートする計画です。
大企業によるスタートアップ企業への事業化支援は、起業家やスタートアップ企業にとって、事業創出や事業規模の拡大に必要な資金、ネットワーク、知恵などを大企業から得られるというメリットがある一方、大企業にとっても、同業他社に先駆けて、有望なスタートアップ企業と密接な関係を構築できるなどの利点があります。このような取り組みを通じて、大企業とスタートアップ企業との間に「Win-Win」な関係が生まれることこそ、両者の共栄共存への第一歩といえるかもしれません。
TEXT= 松岡由希子