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2014年09月01日(月)

事業承継のプロが教える中小企業が勝ち残るための7つの極意

経営ハッカー編集部
事業承継のプロが教える中小企業が勝ち残るための7つの極意

事業承継のプロが教える中小企業が勝ち残るための7つの極意

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<目次> 極意その1 事業承継は現経営者が率先して旗振り 極意その2 専門家のサポートを受け、事業承継計画を作成する 極意その3 候補者の中から後継者を見極める 極意その4 後継者教育で磨きをかけよう 極意その5 他の相続人の遺留分に配慮しつつ、自社株と事業用財産を後継者へ集中させる 極意その6 任意後見制度を活用する 極意その7 相続税節税、納税対策も抜かりなく

Y市N町にある創業40年の食品製造加工業「ニコニコこんにゃく株式会社」。創業者である会長は70歳。ここ数年会社の看板商品であるおでんの具材『ニコニコこんにゃく』の売上が思わしくない。2代目社長は長男46歳。若い女性向けのヘルシーなデザート『ダイエットぷりん』を開発し、これに活路を見出そうと考えているが、会長は『こんにゃく屋はこんにゃくを売っていればいいんだ!』の一点張り。会社の実権は今も会長が握ったまま。現場の指揮も、取引先との交渉も会長があたっている。自社株の2/3以上会長が保有したままである。

会長の財産は自社株と会社の事業用土地建物が大部分を占め、現預金はほとんどない。会長に万が一相続が発生した場合、県外でサラリーマンをしている次男・三男に法定相続分を主張されたら、会社財産が分散し会社存続が危ぶまれる。会長は高齢の為、最近体調が思わしくない。内心では社長と今後の会社ことで話し合いを持ちたいと思いつつ、とくに対策は取っていない・・・中小企業経営者の高齢化が進むとともに、事業承継に関する相談が増えてきています。しかし、『万が一』の事は、気がかりだけれどまだ起こっていない事。なにもせずそのままにしている経営者さんが多いのではないでしょうか。

 

「ニコニコこんにゃく株式会社」に相続が発生したら・・・

•会長が保有していた自社株式が、後継者以外の相続人に渡り、社長の経営権が不安定になる •社長が自社株の大部分を相続できたとしても、自社株の相続税評価額が高く相続税が払えない •次男三男が法定割合での相続を主張し裁判沙汰になるかも •会長と長年現場に携わっていた従業員が後継者の新たな経営方針を受け入れようとしない •取引先も金融機関もは経営者の交代をきっかけに取引の継続を考え直してしまう可能性

事業承継は『万が一』でなく『必ず』やってくるもの。経営者さん、次の7つの極意を参考にしてまず行動を起こしてください。

極意その1 事業承継は現経営者が率先して旗振り

「万が一」は現経営者の「死」を連想させる為、息子や従業員は言い出しにくいことです。まずは、現経営者のあなたご自身が口火を切りましょう 「事業承継計画を立てるぞ!」と。

極意その2 専門家のサポートを受け、事業承継計画を作成する

自分の姿は自分には見えない。それは会社も同じです。まずは専門家に相談してください。一緒に会社の現状を見つめ直し、事業承継計画を練りましょう。

財務・税務のプロの顧問税理士への相談

会社の収支及、財産状態及び自社株の評価を行うとともに、現経営者の相続財産評価、相続税試算、節税・納税対策を行います。

法務のプロの弁護士への相談

後継者が円滑に承継できるように会社法務を見直します。そして遺言を活用した相続対策を行い、相続人間の争いを未然に防止します。

経営のプロの中小企業診断士への相談

経営に関する幅広い分野(ビジネスモデル、財務、人・組織、株式、法務、マーケティングなど)の知識・視点を持ち、経営全体を横串しを通して見ながら、“後継者が企業を存続・発展できる”体制を整えます。事業承継に関する様々な問題(相続・遺言等)を部分的に支援するのではなく、“全体最適”となるよう、税理士・弁護士・司法書士等と連携しながら、事業承継全体のコーディネーターとしてやる気のある後継者を“伴走支援”します。

極意その3 候補者の中から後継者を見極める

後継者の候補者として考えるのは多くの場合親族で、多くは経営者の子息・子女でしょう。子供に経営者としての資質のある者がいない場合や親の会社を継ぐ意思がない場合、他の親族を検討してみましょう。親族に該当する者がいない場合、従業員の中から見込みのある者を探しましょう。親族や従業員に候補者がいない場合、会社そのものを売却し第三者に経営してもらうM&Aも選択の一つです。 平成23年中小企業庁は実施したアンケート結果によると、親族に承継する企業は全体の6割とのことです。この後は親族承継の極意について話を進めていきましょう。

極意その4 後継者教育で磨きをかけよう

後継者が決まったら、現経営者が従業員・取引先・金融機関等に後継者の「お披露目」しましょう。と同時に、後継者は社内社外で研修を受け、来るべき承継に備えましょう。

会社内研修

・自社各部門(営業部門、財務部門、労務部門など)の現場を経験し必要な知識を身に着ける ・役員等の地位につけ、自覚を与える ・現経営者のノウハウを習得する

現経営者と後継者とでは生きてきた時代も商売に対する考え方も違うのでぶつかるケースもあると思います。税理士、診断士等の客観的第三者を間に入れて、冷静にお互いの意見を聞くことも必要です。

会社外研修

・他社で働く ・後継者セミナーに参加する

自社以外の経営を学ぶことが出来、人脈も広がります。

極意その5 他の相続人の遺留分に配慮しつつ、自社株と事業用財産を後継者へ集中させる

後継者が安定した経営を行う為に、現経営者の所有している自社株と事業用財産とを後継者へ継承させる必要があります。現経営者からの生前贈与や遺言などによって、後継者が他の相続人の遺留分(最低限の相続の権利)を侵害して過大に財産を取得した場合、他の相続人は遺留分減殺請求を行って遺留分を取り戻すことが出来ます。現経営者の財産が自社株と事業用財産しかない場合、この遺留分の制約があることでスムーズな事業承継が行えない恐れがあります。

遺留分をめぐる相続人間のトラブル、自社株と事業用財産の分散を防ぐための4つの対策

1.公正証書遺言を作成

公正証書遺言を作成し、すべての相続財産の分割方法を漏れなく記載することで、相続人間の遺産分割争いを回避します。もちろん遺留分も配慮します。弁護士等専門的知識を持つ第三者を遺言執行者に指定しましょう。

2.資金調達をして対応

次のような方法で自社株と事業用財産を後継者に集中させる方法もありますが、会社や後継者に資金が必要になります。そこで信用保証協会の信用保証や政府系金融機関からの低利融資など、事業承継に必要な資金金融支援措置も行われています。もちろん、現経営者と後継者とがメインバンクへ事業承継計画を示し、今まで通りの良好な関係を継続することも大事です。

・現経営者所有の事業用不動産を会社が買い取る ・後継者が後継者以外の相続人に支払う遺留分相当額の現金を準備する ・分散した株式を後継者個人が買い取るか、会社が買い取って金庫株にする

3.会社法を活用

会社法を活用し、自社株を経営者に集中させる方法もあります。

・定款を変更して株式の譲渡制限規定を置き、これ以上株式を分散させない ・議決権制限株式を後継者でない株主に与え、後継者の経営権を安定させる

4.民法特例を利用

経営承継円滑化法の民法の特例の要件を満たしているのならば、経営者から後継者に生前贈与された自社株式について遺留分算定基礎財産から除外又は基礎財産に算入する歳の価額を固定することが出来ます。遺留分の制限を受けず、財産を後継者に移転することが出来ます。

※民法特例の要件 ・中小企業でかつ3年以上継続して事業を行っている非上場会社 ・先代経営者が元代表又は現代表。推定相続人に株式を贈与している ・後継者は先代経営者の推定相続人で会社の現代表。先代経営者から株式の贈与を受けて、議決権の過半数を保有している ・推定相続人合意の全員の合意がある等

極意その6 任意後見制度を活用する

わが国では65歳以上の高齢者の4人に1人が認知症とその予備軍であると言われています。現経営者さんの判断能力が低下し、法律行為が出来なくなると事業承継にも支障をきたしてきます。 任意後見制度は、まだご自身に判断能力があるうちに、将来判断能力が低下した場合の財産管理・処分の方法と任意後見人をあらかじめ公正証書契約で定めておける制度です。長年お付き合いがあり、会社と社長の財産を把握している顧問税理士が任意後見人を受任し財産管理・処分を行うケースが増えてきています。

極意その7 相続税節税、納税対策も抜かりなく

事業承継の為の様々な税制措置が講じられています。これらを上手に利用し、後継者の納税負担が多くならない節税、納税対策を練る必要があります。

1.生前贈与 暦年贈与と相続時精算課税制度との選択

暦年贈与(基礎控除110万円を超えて贈与した場合、超えた金額に対し10%~50%の累進課税)と相続時精算課制度(贈与額が2,500万円を超えた場合、超えた金額に一律20%が課税。その贈与評価額が、相続が発生した際に相続財産の価額に合算され相続税の再計算が行われる。二重課税にならないよう既に払った贈与税額を控除して相続税額を計算、控除しきれない場合は還付)との選択が出来ます。現経営者の年齢、財産内容を考慮しどちらを選択したほうが有利かを検討します。

相続が発生するのがまだまだ先であると見込まれる場合は、暦年贈与を選択し、相続税実行税率より低い贈与税率の金額を計画的に贈与する方が有利です。現経営者の所有する自社株式の価値が贈与時より将来の相続時の方が上がると見込まれる場合には、相続時精算課税制度を利用して贈与したほうが相続時に取得するより有利です。

2.非上場株式等の相続税・贈与税の納税猶予制度

一定の要件を満たした場合、後継者が贈与を受けた非上場株式に対応する贈与税の全額が猶予されます。相続等により後継者が取得した非上場株式の課税価額の80%に対応する相続税の納税猶予を受けることが出来ます。

3.小規模宅地等課税の特例

特定事業用宅地等を、相続人である後継者が取得し事業を継続する場合は、相続税評価額の計算で、400㎡までの評価額が80%減額されます。

4.生命保険を活用

生命保険を活用し、相続税の軽減、納税資金の準備、そして円満な財産分割を行うことが出来ます。

・契約者、被保険者、及び保険料負担者が被相続人で、受取人が相続人の死亡保険金は相続財産とみなされますが、一定の金額(500万円×法定相続人の数)は非課税となります。

・終身保険契約(被保険者:現経営者、契約者:後継者)を締結し、後継者が支払う保険料として必要な額を、現経営者から後継者に毎年生前贈与することで、現経営者の財産が減少しますし、この保険金を相続税の納税資金に充てることが出来ます。この保険金は後継者の一時所得になりますが、相続実効税率より低くなる場合は検討する価値があります。

極意総括 「事業承継できる会社」に変える事

以上のように、事業承継には様々は方法があります。必ず専門家に相談してください。 現経営者と後継者そして専門家とタッグを組んで、あなたの会社を「事業承継できる会社」に変えていきましょう。 TEXT=横浜国際税理士法人 横浜南事務所 榊原志づか

 

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