個人事業主は資本金が必要ない?|収支計画立て方のポイントまとめ
腕一本で仕事をする個人事業主の方でも大切で必要なこと
例えば何か物を仕入れて販売する事業を営む場合はともかく、ライター、俳優、プログラマー等、特に仕入れ等発生せず、自分のスキル1本で商売される個人事業主の方なら「資本金は不要」と思えるかも知れません。しかし、残念ながらそれは正しい見方とは言えないのですよ。そのような職業の個人事業主の方でも資本金は必要ですし、それと同じぐらい収支計画も大切なのです。
では、何故そうなのか、また必要だとするならどのような収支計画を立てれば良いか等を解説して参りましょう。
[目次] ■1)そのお仕事、本当に当面の資金は不要なのですか? ■2)生活費だって資本金!? ■3)これが大切!収支計画立案の3つのポイント まとめ):業種に関係なく個人事業も資金調達とシビアな収支計画から
■1)そのお仕事、本当に当面の資金は不要なのですか?
では先ほどの事例の中から「ライター」をやっている個人事業主のケースで、具体的に考えてみることにしましょう。ライターは自分が執筆した文章を売ったり、執筆を依頼されることで収入を得る商売と言えますので、文章を書くだけなら資本金は一見不要に思えます。
しかし、例えば執筆した文章を売るために出版社に出向く必要があるなら交通費が必要ですし、その原稿を郵送するなら切手代や郵送費がいりますし、編集担当者と電話のやり取りをするとしたら電話維持費や通話料が必要になってはきませんか。また、ライティングするために取材が必要であれば、更に旅費や謝礼等も必要になってきますよね。
このように考えると、「執筆する」という作業部分だけを見ればお金が不要に思えても、それを仕事として結び付けるには様々な経費が必要になってくることがお判り頂けたと思います。もっとも、すぐに仕事を受注出来れば何とかなるかも知れませんが、仮に1月以上なかなか仕事にありつけなかったとしたらその間の生活費は一体どうなってしまうのでしょうか。
この問いに対して「その心配はない。貯金があるからそれを崩せば生活できる」と個人事業主の方が答えたとしましょう。この問いに対する回答でもうお気付きになったと思います。一見元手がかかりそうにない仕事であっても、軌道に乗るまではある程度まとまった資金、つまり「資本金」が必要になるのです。
■2)生活費だって資本金!?
「生活費が資本金ってどういうこと?」と思われた方もいるかも知れません。確かに生活費は、商法や会計的な定義等を厳密に当てはめれば資本金とは言えないかも知れません。ただ、先ほどご紹介した例のようにライターであってもある程度まとまった資金が軌道に乗るまで必要だった訳であり、そのために必要となる資金を事業者が用意していたとなれば、その資金の性格から言って”事業を行うための資本金”と呼べるのではないでしょうか。
そう申しますと今度は「事業に使う資金ならわかるが、生活費は別だ」という反論が聞こえてきそうですね。そうした捉え方を否定するものではありませんが、仮に個人事業主が事業を通じて稼いだお金から「給与」を受け取ると考えたら如何でしょうか。事業を始めるにあたって「人件費」は当然必要ですし、人件費の代表格である給与を支払うために用立てた当面の貯金も、やはり資本金と呼んで良いのではないでしょうか。
■3)これが大切!収支計画立案の3つのポイント
いずれにせよ、事業をスタートさせ継続させてゆくためには、先ほどの例の通り個人事業主であっても会社の資本金のようなまとまった資金が最初に必要になることは間違いありません。ということは、そのまっとまった資金を無計画に使用してしまえば事業を継続出来なくなることになりますので、収支計画が同時にとても大切であると言えます。
ではその収支計画を立てる場合のポイントを3つに絞ってご紹介しましょう。
1.定額の給与をきちんと設定すること。
収入は「儲かった時は多く少ないときは少なく」が一番いけません。それでは収支は一向に安定しません。安定して事業を続ける為にも、まずは毎月一定額の給与を設定することが先決です。
2.経費は出来るだけ細かく多めに計算、売上は石橋を叩き割るぐらいシビアに少なく。
先ほどの例でご紹介した通り、交通費や通信費、切手代等経費には少額なものから大きな額まで大小様々多数あります。 それらを出来るだけ細かく想定し拾い上げ、月々の経費として計画に計上すると共に、売上は悲観的と思えるぐらい慎重な額で設定しておきましょう。
3.計画は1年分として、最低でも3ヶ月程度は無収入でも継続出来る計画にする。
収支計画は1年間を目安に策定しますが、その際大切なことは無収入の月が最低3ヶ月程度続いても、持ちこたえることができる計画にしておくということです。
収支計画を立ててみたところ、仮に2ヶ月目から売上がたたないと資金ショートすることがわかったとしたら、月々の給与額を見直すか、資金ショートしないよう更に資本金を貯める、もしくは調達することが必要であり、それが出来るまでは事業をスタートさせない慎重さが必要なのです。
まとめ):業種に関係なく個人事業も資金調達とシビアな収支計画から
さて、個人事業主に資本金は必要なのかと言ったことや、収支計画のポイントを紹介して参りましたが如何だったでしょうか。これで十分おわかり頂けたと思いますが、個人事業主の職種が何であろうとも、事業を健全に継続させてゆくためには一定額のまっとまった資本金が必要であり、その資本金を無計画に使い切ってしまうことがないよう堅実な収支計画が必要だと言うことです。
特にこれから個人事業を始めようという方は本記事をよく読み、資金や収支で先々苦労することがないよう、転ばぬ先の杖にして頂ければ幸いです。