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2015年07月14日(火)

株式会社設立のメリット9つを、公認会計士に聞いてみた

経営ハッカー編集部
株式会社設立のメリット9つを、公認会計士に聞いてみた

株式会社 メリット

ビジネスを始めるにあたって個人事業にするか、法人形態にするかは一つの大きなテーマと言えるでしょう。また、とりあえず個人事業としてスタートしたビジネスも軌道に乗って取引規模が拡大した場合には「法人成り」を考える時期が来ることと思います。

一口に法人と言ってもその種類は様々。そこで今回は、法人形態の中でも特に株式会社を選択することのメリットについて北川ワタル公認会計士に伺いました。

 

1)株式会社のメリット(3つの視点)

株式会社のメリットを思いつくまま列挙するのも一つの方法ですが、今回は①財務、②組織運営、③経営戦略という3つの視点で整理したいと思います

株式会社は会社法で規定されている法人形態の1つです。会社法においては株式、資金調達、機関といったテーマごとに条文が整備されており、株式会社のメリットを考えるにあたっても①財務、②組織運営といった区分に沿って整理することが役立ちます。また、①や②の特徴を経営面でも活かすことができるため③経営戦略という視点も付け加えたいと思います。

それでは、さっそく①財務、②組織運営、③経営戦略それぞれの視点から株式会社のメリットを見ていくことにしましょう。

2)「財務」面からみた株式会社の3つのメリット

1. 営利法人であること

株式会社のメリットとして意外と目立たないのが「営利性」という特徴です。営利性というのは、獲得した利益を構成員に分配することを指します。

たとえば、一般社団法人や特定非営利活動法人(NPO法人)も収益活動を行うことができます。つまり、事業活動の中で「お金儲け」をしても問題ない訳ですが、活動の結果生じた利益や残余財産を構成員に分配することはできません。

これに対して、株式会社では剰余金や残余財産の分配が株主の権利として認められています。会社の利益を株主に移転できるというのは実は重要なメリットということができるのです。

2. 資金調達のしやすさ

株式会社では資金調達の一つの方法として株式の発行を行うことができます。

会社法に規定されている株式会社以外の会社、すなわち、合名会社、合資会社、合同会社のような持分会社では原則として出資者が業務執行を行うため、経営参加の意思や能力を持たない者が出資することは困難になります。また、株式発行による増資以外にも銀行からの借入や私募債等の社債発行という手段も使えるため選択肢に幅があると言えます。

3. 様々な種類の株式

増資を行った場合、従来株主の持株比率が低下して経営権に影響を与える場合があります。このような場合には「議決権のない株式」を発行するなどして、議決権比率を維持することで資金調達を円滑にすることも考えられます。

このように普通株式とは異なる内容の株式を「種類株式」と呼び、たとえば、「配当優先株(剰余金の分配を優先的に受けることができる株式)」や「黄金株(重要事項の決議について拒否権を持つ株式)」などが該当します。

また、将来において一定の条件で株式を取得できる権利である「新株予約権」を利用することにより、ベンチャー企業が資金流出を抑制しながら役員や従業員にインセンティブを与えることも考えられます。このような方法をストック・オプション制度と呼んでいます。

3)「組織運営」面からみた株式会社の3つのメリット

1. 一人でも設立可能

株式会社は創業者が設立時の株主と取締役を兼ねることにより1人で設立することができます。

これは2名以上の社員が必要となる「合資会社」や「一般社団法人」、10名以上の正会員(社員)、4名以上の役員が必要となる「特定非営利活動法人(NPO法人)」と比較した場合のメリットと言えるでしょう。

なお、登録免許税を含む設立費用が10数万円程度かかるものの、資本金1円でも設立可能であることはご存じの方も多いかと思います。

2. 間接有限責任制度

会社の債権者は株主に対して直接に債権の履行を請求することはできず、債権者にとっては会社財産だけが頼りとなります。これを「間接有限責任制度」と呼びます。

この間接有限責任制度は株主であるオーナー社長にとってのメリットとなります。また、この制度があるからこそ、株主は自ら経営に口出しせず、取締役に任せることも可能となり、会社の所有と経営を分離することも可能となるのです。

3. 機関設計の柔軟さ

株式会社には、株主総会や取締役をはじめとして、取締役会、監査役、会計監査人など様々な種類の機関があります。会社設立は取締役1名だけで可能ですが、会社の規模や業態に応じて様々な機関設計が可能となります。

たとえば、公認会計士や税理士が就任することのできる「会計参与(計算書類作成を担当する役員)」という機関を設置することも考えられます。

4)「経営戦略」面からみた株式会社の3つのメリット

1. 知名度、信用、イメージ

制度的なメリットとは少し趣を異にしますが、株式会社という法人形態の知名度、信用、イメージには無視できないメリットがあります。実態はどうであれ、屋号だけを掲げている個人事業とはかなりの差があると言ってよいでしょう。

また、合同会社や一般社団法人その他組合形態の事業体と比較しても、株式会社の知名度、信用、イメージは相当優れたものと言えます。大手得意先との取引口座開設や金融機関との関係、採用時における求職者側から見た場合の安心感においても大きな差があるものと考えられます。

2. 組織再編

株式会社の特徴として原則として株式を自由に譲渡できる点が挙げられます。これにより、自社売却を含むM&A(合併・買収)、事業の承継もスムーズに行うことができます。

M&Aや事業承継の際には

  • 事業の全部または一部を分割し、別の会社に承継させる「会社分割」
  • 株式会社2社の株式を交換することにより、一方を完全親会社、他方を完全子会社とする「株式交換」
  • 自社の株式を移転することによって、完全親会社を新設する「株式移転」

など、様々な組織再編手法を利用することが可能です。

3. デット・エクイティ・スワップ(DES)

赤字続きの会社では負債額が資産額を上回る債務超過の状態に陥ることもあります。このような状態では金融機関その他取引先からの信用は得られません。また、業界によっては許認可の要件として一定の純資産額を維持しなければならない場合も考えられます。

オーナー会社などでは負債として社長からの借入金が計上されていることがあります。このような場合には「債務の株式化」とも呼ばれる「デット・エクイティ・スワップ(DES)」という手法を用いて、借入金を資本とすることも考えられます。

このDESだけで債務超過が解消される場合もあります。このような事業再生手法の選択肢が多いのも株式会社のメリットと言えるでしょう。

5)まとめ

いかがでしたでしょうか。事業形態にはそれぞれ一長一短があると思いますが、あらためて見直してみると株式会社のメリットの多さが再認識できるのではないかと思います。メリットを最大限に活かすためにはファイナンス手法や組織再編手法を含む会社法制について知見を有する専門家に相談してみるのも良いと思います。

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公益法人会計、ファンド監査、連結納税、国際財務報告基準等の高度な専門知識を有するとともに、医院、歯科医院、整骨院等の会計・税務及び開業支援にも精通しております。

   

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