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2015年09月18日(金)

ベンチャーと中小企業の違いは?中小企業がベンチャーに学ぶこと

経営ハッカー編集部
ベンチャーと中小企業の違いは?中小企業がベンチャーに学ぶこと

office-desk 起業や新規事業、あるいは既存事業改革に携わる方々が、急成長志向を志向するベンチャーから学ぶことは多く、事業に対する一貫した座標軸を構築するための貴重な示唆を提供してくれます。

目次: 1)ベンチャーと中小企業の定義 2)ベンチャーと中小企業の違い 3)この違いの認識から学べること 4)まとめ

1)ベンチャーと中小企業の定義

ベンチャー企業と中小企業の定義を確認してみましょう。実はベンチャーの定義は曖昧で、統一した定義は存在していません。ベンチャー企業の定義について調べてみても、以下のように様々なものが掲載されています。

ベンチャーとは、ベンチャー企業、ベンチャービジネスの略であり、新技術や高度な知識を軸に、大企業では実施しにくい創造的・革新的な経営を展開する中小企業を指す。

(Wikipedia)

産業構造の転換期には、産業の主役が交代し、最先端の分野でそれまでなかった新しいビジネスが生まれ、そして新しい市場が作り出される。そんな時代のニーズを背景に、独自の技術や製品で急成長していく企業を「ベンチャー企業」と呼んでいる。普通この呼び方は、新規に興され、創業からあまり時が経っていない企業に対して用いる。

(株式公開用語辞典)

新しい技術、新しいビジネスモデルを中核とする新規事業により、急速な成長を目指す新興企業

(経済産業省・ベンチャー企業の創出・成長に関する研究会 第1回 資料)

それに対して、中小企業は、中小企業基本法によって資本金額と従業数を以って明確に定義されています。

①製造業、建設業、運輸業、その他の業(②~④を除くもの) 資本金額:3億円以下 常時従業員数:300人以下

②卸売業 資本金額:1億円以下 常時従業員数:100人以下

③小売業 資本金額:5千万円以下 常時従業員数:100人以下

④サービス業 資本金額:5千万円以下 常時従業員数:50人以下

つまり、中小企業の範囲にはベンチャー企業と非ベンチャー企業が混在しているわけです。

2)ベンチャーと中小企業の違い

では、事業規模も組織機能も同じ中小企業のなかでベンチャー企業と非ベンチャー企業を分けるものは何でしょうか。先程のベンチャーの定義からも推測できますが、共通する要素がいくつかあります。

① 起業・創業からの期間が短い、または中小(事業・組織)規模 ② 新しい分野でリスクを取り事業を開始する起業家、アントレプレナーの存在 ③ 事業に創造性、革新性、新規性があること ④ 成長志向があること

そして、この要素のなかでベンチャーと非ベンチャーを分ける最大の要素は「④成長志向、急成長志向の有無」にあると言われています。

したがって、創業間もないこと、経済規模が中小であること、アントレプレナーがいること、事業の創造性・革新性・新規性はベンチャー企業の特有のものではなく中小企業にもある要素ですが、意図した急成長する事業(ビジネスモデル)を設計し、高いリスクを許容し、成長に応じた経営資源の充足を取捨選択するのはベンチャー企業固有の行動と言え、あえてリスクを取らず慣性維持の安定成長を甘受するのが中小企業と言えるでしょう。

この違いを会計・税務分野で挙げてみましょう。

ベンチャーは株式上場のために株価の時価総額に現される企業価値を高める戦略を取ります。この行為は会計では利益を創出して内部留保に、税務では適切な納税に当たります。しかし、一部の中小企業では意図的に事業成長に無関係な費用を発生させてしまうこともあります。

つまり、ベンチャー経営者は株式公開というマイルストーンのために税金も費用として認識していますが、慣性的経営に邁進する一部の中小企業では税金を費用と認識しないわけです。

3)ベンチャーと非ベンチャーの違いをコンビニ業界を例に検討

さて、同じ事業規模・組織機能の範囲にあるベンチャーと非ベンチャー(中小企業)を分ける要素が急成長を意図するか否かということですが、この急成長を意図することとしないことは企業経営もしくは事業運営にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

このことをコンビニ業界での起業や新規事業を例に、経営資源(ヒト・モノ・カネ)の3要素から検討してみましょう。

コンビニ業界ではフランチャイズ方式が広く普及しており、セブンイレブンやローソンのようなフランチャイザーがオーナー経営者であるフランチャイジーとの契約を行い、フランチャイザーの商標・商品・管理システム・経営ノウハウなどを使用する権利をフランチャイジーに与え、その見返りに対価を受け取るという仕組みを取っています。

それでは、このコンビニ業界を例に、モノ・カネ・ヒトの経営資源からベンチャーと中小企業の違い、つまりなぜ急成長を意図的にできるのかを検討してみましょう。

1.モノ

ここでの「モノ」は単なる商品・サービスだけではなく、その設計開発や生産設備、販売する仕組みも含む、所謂ビジネスモデルと定義します。言い換えると、売れる商品・サービスを創り出すことになります。

セブンイレブンやローソンのようなフランチャイザーは、独自の商品・サービスを顧客のフランチャイジーであるコンビニエンスオーナーに提供することによって同業他社との競争を勝ち続けることができます。

例えば、セブンイレブンが初めて店舗でのATM金融サービスを開始したときが挙げられるでしょう。ATMサービスが顧客の来店の動機づけになり、店舗での利便性を向上させ、他のコンビニとの差別化を消費者に明確に示すことができました。

そして、セブンイレブン加盟店の集客や1日平均売上高の優位性に結び、フランチャイジーのコンビニオーナーに対して明らかにセブンイレブンに加盟する動機を提供したはずです。また、この金融事業新規参入はフランチャイザーであるセブンイレブンにも新たな収益源とグループ企業の中長期的資金調達の優位性・円滑化に貢献しました。

一方、フランチャイジーのコンビニエンス店舗オーナーは、セブンイレブンというフランチャイズシステムを選択することでこの独自のサービスを顧客に提供することができます。

ベンチャー固有の急成長を計画すると、商品・サービス提供は、対価を支払ってくれるという意味の売れるもの創りの明快なコンセプトと仕組みが必要になります。

2.カネ

ここでは経営資源のカネを新たな投資機会などの資金需要が発生したときの資金調達と定義します。

コンビニエンスのATMサービス導入の例に戻って考えてみましょう。フランチャイザーはフランチャイジーの店舗オーナーにこの金融サービスを提供するために、新規事業として金融事業に参入するとします。その場合、金融業の許認可、金融サービス開発やその運営、金融システム構築などサービス提供には莫大な投資が伴います。

この資金調達の方法は、株式を上場している上場企業を前提にすると2つの選択肢があります。

① 内部資金調達 自己資金に当たる減価償却・剰余金など

② 外部資金調達 金融機関からの借入金など間接金融、比較的短期間で大量の資金調達が可能な株式発行など直接金融の選択肢ができます。

一方、フランチャイジーのコンビニエンスオーナーが開業する場合、自己資金を含めて金融機関やフランチャイザーの事業金融からの融資など間接金融により賄われます。なお、上場していない企業は間接金融のみの選択肢が一般的です。

ベンチャー固有の急成長を計画すると、新たな資金調達の機会には、間接金融だけでなく直接金融の活用を認識・発想が必要になります。なお、直接金融やファイナンスの知識はその需要が特定層に偏重しているため、非常用層では今後その価値や必要性を十分に議論すべきでしょう。

3.ヒト

ここでの「ヒト」の定義は事業の運営に必要な企業体の組織機能を担う専門性を持った人材とします。一般にこの運営体制または組織機能は企業体の成長に伴い専門的に細分化します。

ここでもコンビニエンスのATMサービス導入の例に戻って考えます。フランチャイザーは、新たな金融事業への参入するために、市場調査、ポジショニング、サービス特長、経営資源配分など周到な事業計画を準備して、実施主体の組織機能を構築することになります。

一方、フランチャイジーのコンビニオーナーの開業には、この店舗運営に必要な中核業務はフランチャイズシステムに大部分が含まれ、その利用により目的を達することができます。ここで必要なのは常時店舗を運営する人材の確保、その労務管理などになります。

ベンチャー固有の急成長を計画すると、人材を確保・採用する行為は、組織機能の設計を明確にする認識の必要を痛感します。

ヒトとの関係で組織機能を代替した人材確保の延長線上に、特に経営者層に必要な認識として、そもそもこの事業はなぜ行うのか必要があるのかという事業の目的、そのマイルストーンとしての事業の出口戦略があります。

自己または内部資金を拠出したのであれば、投資に対する資金回収の方法を事前に決めている必要があり、この観点からも資本に関するファイナンス知識が求められることが理解できます。

4)この違いの認識から学べること

ベンチャーの急成長の源泉を経営資源から抽出し、次の3つに整理しました。

1. ビジネスモデルへの徹底的な拘り

モノの検討から抽出された要素です。売れる、すなわち対価を支払ってもらえる商品・サービスの創造・仕組みの構築を意味し、製品・サービスのライフサイクル、利益の持続的成長を前提にすると企業の永遠のテーマと言えるでしょう。

2. ファイナンス知識

カネから抽出された要素です。商品・サービスの取引を複式簿記に編集した財務会計に加えて、事業規模に無関係に、資金の取引をベースにしたファイナンスの知識が今後は必要になるでしょう。例えば、プロジェクト投資の評価・判断、事業の売却・買収に伴う事業評価などです。

3. 適切な戦略性

ヒトから抽出された要素です。言い換えると、組織機能を担う人材構成を組成することです。しかし、事業を計画通りに遂行するのが目的ですから、特に内部資金の投資に対する対価の回収方法を予め決めておくという考え方を戦略性と表現しています。

まとめ

最後に、ベンチャーから学べることを総括しました。

1.(とても難しいけれど)売れるものを造り続ける 2.利息は借金だけでなく、自己(内部)資金にも生じている 3.事業に拠出した内部資金の投資に対する回収方法を事前に決めておく

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