脱サラ起業を考える人がまずしておきたい3つの準備
これで分かった脱サラ起業、最初の一歩
脱サラして起業しよう!と真剣に考えている方は、脱サラしても何とかなるという勝算を少なからずお持ちではないでしょうか。
-しっかりと業界を研究し尽くした -業界でのコネクションを数多く積み上げることが出来た -初期投資を十分カバー出来る資金が準備出来た -事業プランでは十分利益が出ている、失敗するはずがない -自分のスキルをもってすれば、十分勝てるという自信
どれも大切なことで、1つでも欠けると起業初期につまずいてしまう原因となりかねません。しかし、これらの準備を周到に行ったからといって、成功するとも限りません。
屁理屈かもしれませんが、起業のチャレンジが失敗に終わるということは、起業して始めた事業を中止することに他なりません。失敗しないためには、事業を行い続ける必要があります。
「脱サラをして起業で成功する」という考え方の他に、「脱サラをして起業で失敗しない」という考え方を持つことをお薦めします。
「失敗しない」ということは、事業を頓挫させないということです。なぜ事業が頓挫するのかというと、理由の恐らく90%以上が資金ショートによるものです。自己資金、家族援助、創業融資、取引先への支払時期の繰り下げなどできうる全てのことを行い、万策尽きた時が、失敗の宣告を受ける時と言えます。再起不能となる前に、自主的に事業を中止し、撤退することも含みます。
どんなに事前準備を用意周到に行っても、資金が枯れてしまっては、事業は継続できません。そこで、脱サラ起業を考える人が、資金ショートにより起業を失敗に終わらせないために、まずしておきたい3つの準備についてご説明します。
1)1つ目の準備:生活資金の洗い出し
あなたは1年間にどれだけお金を使っているか把握していますか?
家賃、食費、水道光熱費、通信費(携帯、インターネット、NHK、衛星放送、ケーブルテレビなど)税金、保険料、遊興費。ご家族がいればご家族分の生活費、教育費など書き出してみると、新たな発見があったりします。
生活費の洗い出しは、今の生活レベルを維持するために必要なキャッシュがいくらなのか明確に理解するために、行うべき重要な準備と言えます。必要な生活費の金額は月平均額で把握します。
地域によって住居費が大きく違ってくるかと思いますが、大体30万円±10万円が目安ではないでしょうか。仮に生活費として月額30万円かかるとすると、起業して毎月30万円の利益がないと、遅かれ早かれ資金がショートして起業が失敗に終わることになります。家族からの援助、カードローンなど一時しのぎは出来ても本質的な解決とは無縁です。
是非、毎月の生活費を洗い出してみて下さい。
2)2つ目の準備:原価率と事業固定費から必要な売上を考える
1つ目の準備に比べて、いきなり難しいテーマだと感じられるかもしれませんが、事業を行う上で誰もが考えなければならないことなので、単語に惑わされずに、感覚的に掴んで頂きたいと思います。
原価率を導き出す
原価率を考える理由は、その裏側にある利益(粗利)率を知るためです。
売上 - 原価 = 利益(粗利)
1 - 原価率 = 利益(粗利)率
という関係性にあります。
売上は説明するまでもありません。そして、利益は、売上から原価を差し引いた残額のことです。すなわち重要なのは原価です。原価とは業種によって様々ですが、
製造販売業:原材料、加工工賃、製造人件費など 小売業:商品仕入れなど 飲食業:食材仕入れなど ソフトウエア受託開発業:エンジニア人件費など 人材派遣業:派遣人件費など のようになります。原価とは、すなわち1円でも売上が生じる際、必ず連動して生じる費用だと考えると分かりやすいのではないでしょうか?
余談ですが、よく「原価率は何%以内にすべきだ」といった話が経営分析を行う際取りざたされるのですが、脱サラして起業を目指す時点では気にする必要はありません。今回ご紹介している1つ目の準備と2つ目の準備を行うことの方が重要だと思います。
話を戻すことにして、この原価がどれだけかかるのかをしっかり調べることは、起業の生命線とも言える大切な準備作業です。この原価が売上100に対していくらかかるのか?30なのか50なのか?この数字を把握すれば、原価 ÷ 売上 = 原価率が判明します。
そして先程述べましたが、本当に重要なのは利益(マージン)率です。利益(マージン)率は、
1- 原価率 = 利益(マージン)率
ですので、原価率が分かれば、利益率は自ずと確定します。
事業固定費を算出する
次に事業固定費です。
初期の投資費用に気が取られがちになるのですが、継続的に発生する毎月の事業固定費が 原価率とともに、検討すべき重要な数字と言えます。事業固定費とは例えば、
店舗家賃、事務所家賃、通信費、水道光熱費、原価以外の人件費(通勤費や社会保険負担も含む)
のようなものがあります。
言い方を変えると、売上がその月ゼロになったとしても、原則発生する費用が事業固定費です。
さて、ここまでの準備で明らかになった数字を並べてみます。
○○○ × 利益(マージン)率 - 事業固定費 - 生活固定費 = ◆◆◆
この○○○の部分には当然ですが、売上を入れます。この◆◆◆がゼロ以上にするためにはいくらの売上金額を○○○の部分に入れなければならないのかを、計算してみて下さい。
例として、数字を当てはめてみたいと思います。
(例) 利益(マージン)率 60% 事業固定費 月35万円(起業する本人の人件費は含みません) 生活固定費 月25万円
すると、結果は、○○○部分は月100万円になります。
イメージしているビジネスを脱サラして実現化させる上で、この月100万円の売り上げを上げることが出来るのか否か?実現可能性は?それまでに要する期間は?
初期費用を用意し、創業融資を受け、そして起業する…いわば起業はスタートラインなのですが、初めて起業する場合どうしても起業がゴールになりがちです。起業した後、いかに継続していくのか、資金ショートにより起業を失敗に終わらせないようにするのかという視点で考えるためには、この月100万円の売り上げを毎月継続して計上することが出来るのかということを自問自答を繰り返し、失敗しない起業プランを是非企てて下さい。
起業の際、創業融資を受けるとその返済も計画に含める必要があります。また昨今消費税が8%に上がり、今後10%になることを加味すると、上記の○○○部分は、税込売上ではなく、税抜売上で考えていくべきです。税込の売上で収支採算を見ていると、消費税の納税が出来ずに滞納する危険性が出てきます。
いずれにしても、最初は複雑化させずに、シンプルにこの必要な売上という数字を導き出すという作業が重要です。
3)3つ目の準備:将来闇雲に頑張り、疲弊しないために
3つ目の最後の準備としてお伝えしたいことは、事業を継続するための考え方になります。誰もが一生懸命頑張れば結果が出るかというと、それ程甘いものではありません。努力が報われて、事業が拡大出来たとしても5年後も安泰でいられるかというと、そうもいきません。
事業拡大で増大した固定費が原因で業績不振に陥ることも良くある話です。事業を継続することの難しさはやってみないと分からないかもしれませんが、どうせなら失敗しにくい考え方を身につけておいた方が良いのではないでしょうか。
ビジネスには様々なタイプがありますが、次の2種類に区分することが出来ます。それは、 -ストック型ビジネス 弁護士の顧問契約、貸金業、有償会員向け情報提供サービス、定期配送の通信販売サービス、携帯電話通信サービス、衛星・ケーブルテレビ配信サービス、レンタルサーバー事業など
-フロー型ビジネス 不動産販売・仲介業、飲食店業、アパレル業、自動車販売業、ソフトウエア受託開発業、冠婚葬祭業など
の2つです。自分がチャレンジしようとしているビジネスが、ストック型なのかフロー型なのか分析することからまず行ってみて下さい。一概にどちらが良いと決めつける訳にはいきませんが、なんとなくストック型ビジネスの方が、安定的だということはお分かり頂けるのではないでしょうか。
そうなのです。ビジネスを継続していくためには、このストック型ビジネスというものを意識して事業を行うか否かが、大きく命運を分けると言えます。
それでは、「フロー型ビジネスは危ないから行うな」ということかというと、そういう意味ではありません。どのようなビジネスでも勝者と敗者がいて、敗者は撤退し、新規参入者が現れて、常に業界の新陳代謝が図られています。すなわちフロー型ビジネスでも勝者として生き残っている企業が当然ながら数多く存在しています。
ここでお伝えしたいことは、一般的にフロー型ビジネスに分類されるビジネスだったとしても、ストック型ビジネスの要素をサービスメニューに組み込むという発想が重要だということです。
自社の商品を購入した人に対して、無料で会員登録を薦め組織化を図り、優待制度の導入、告知によりリピート(再度)購入を促すことは、まさにストック型ビジネスメニューの導入と言えます。
自動車販売業の場合、1回購入したら3年から5年程度は買い替えない高額商品のため、中々リピート購入を期待した会員組織化は有効に機能しません。また、次に購入する車が自社の取り扱い車種にならない可能性も多分にあります。
そこで、自動車販売業の場合、整備工場を併設させて、車検や修理をサービスメニューに入れることで、一度車を販売したお客様とつながりを持ち、継続的に収益機会を得るというスタイルが確立します。これもストック型ビジネスメニューといえます。
整体・マッサージやリラクゼーションといったサービス業でも、一度来店してくれたお客様に、体調を改善するために定期的な訪問を薦めたり、1週間後、2週間後の再来店の予約を来店時にさりげなく案内するという試みも、単発で終わりがちな、フロー型ビジネスのストック型サービス化の取り組みと言えます。
このフローとストックについて表現を変えると、非継続性(非連続性)ビジネスと継続性(連続)ビジネスと言えます。この非継続性ビジネスの継続化をどのように脱サラして起業した際、取り入れていくのかという視点をもって取り組んでいけば、景気やその他の要因で事業に浮き沈みがあった場合でも、絶対的な事業基盤として浮力を発揮し、事業を継続していく原動力となることでしょう。
まとめ
ここでは、脱サラして起業をするときに準備すべきことを紹介しました。以上3つの準備を行うことで、脱サラして起業するべきかどうかの判断を行う助けとなれば幸いです。