おすすめなのは独立すること!? LGBT支援を行う税理士が解説
LGBT(エル・ジー・ビー・ティー)という言葉をご存知でしょうか。レズビアン(Lesbian)、ゲイ(Gay)、バイセクシュアル(Bisexual)、トランスジェンダー(Transgender)の頭文字で、性的マイノリティ(セクシャルマイノリティ)の人々をあらわしています。
最近では、渋谷区の同性パートナーシップ条例の成立や、アメリカでの同性婚合憲の話題などがあったので、テレビや新聞でもよくLGBTという言葉を見かけるようになってきました。
今回は、そんなLGBTの方のライフスタイルには、「独立開業」という働き方が割と向いているのではないか……というお話です。
1)LGBTは独立向き?
総務省統計局の平成24年就業構造基本調査によると、日本の15歳以上の労働力人口のうち、88.5%が雇われている状態なのに対して、自営業者は9.2%。しかも、昔に比べて自営業は減ってきているようです。
身の回りを見ても、個人商店やら町の工場が大分減っている印象がありますよね。そんな家業がない時代、学生さんは時期がくると当たり前のように「就活」をして、会社に入る道を選ぶ人が多いです。
ではLGBTの場合はというと……最近では、就活の際に「LGBTフレンドリー」という観点で会社を選べるケースもあるようです。でも、その会社が自分のやりたい事とは必ずしも一致していない場合や、少し敷居が高い会社だったりすると、そこまでLGBTフレンドリーではない(というより、実際の環境は入ってみるまでは分からないですよね)会社に入社される場合も多いのではないでしょうか。
それでも、運よく仕事も社風も合っていて、LGBTについてもオープンにする・しないに関わらず自分の中でうまく折り合いがつく範囲で生き生きと働ける方がたくさんいると思います。そういう方は、是非、長く勤めてください。無理には独立しない方がオススメです。
でも、会社勤めが合わない、人間関係もLGBTであることを理由にうまく築けない、LGBTを隠しながら働くストレスが大きすぎて精神的に悪いなどの場合、長い目で見ると、転職を考えるより独立を目指す方向が良いかもしれません。自分で作る会社は、自分自身が働きやすい会社、LGBTフレンドリーな会社など、いかようにもできますから。
LGBTで、子どもを持つライフプランを現在も将来的にも想定していない場合、さらに実家などに暮らしていて、住居の心配がない場合は特にそうですが、独立開業の敷居はそこまで高くないと思います。
独立開業というと、素晴らしい特技やきらめくアイディアを持ったスペシャルな人がするイメージがありますが、実際はそんなに特別な人たちだけでなく、身の丈に合った、等身大の小規模事業をやる人も結構います。
2)独立したいと思ったら
独立開業は思ったよりも容易であるとはいえ、独立開業するということは、何らかの仕事に対して他人であるお客さまからお金をもらうということ。何を仕事にするか、したいか、自分に合っているかを考える必要があります。
開業する場合、まずは会社で経験を積んで、同じ業務内容か関連する内容、あるいは勤め人時代に気が付いたニ―ズなどを元に事業を始める方が多いです。(まったく経験のない分野で成功されるケースもたまにありますが……)
たとえ数年でも会社で働くことで、社会人としての一般常識、ビジネスマナーが身に付きます。これは独立開業した後にはかなり重宝するでしょう。ですから、大変だとは思いますが、将来独立したいとしても、一度は就職することをオススメします。
そして、この仕事で独立したい! という事業内容を見つけましょう。LGBTならではの視点や経験を生かしたビジネスでも良いかもしれません。
世の中にない革新的な事業だと素敵ですが、現実的に考えると、そのような事業はリスクが高いことが多いので、すぐ収入を得られる「食べるための仕事」とセットにすると良いと思います。また、資格を取得して独立するケースもあります。
事業内容が決まった後は、会社に勤めながら準備をしましょう。まずは貯金をしていくのと、業種によりますが週末起業、副業などで試してみるのも良いと思います。副業については会社で禁止されている場合があるので、就業規則などをご確認ください。
会社にばれないだろうと思っていても、翌年の確定申告後に、住民税の給与天引き制度を通して発覚するケースもありますのでご注意を。特に来年からはじまるマイナンバー制度によりよりその辺が厳しくなると言われていますので……。
そしてついに独立する場合は、まずは気軽に始められる「個人事業主」がオススメです。ただし、業種によりけりですが、会社を立ち上げた方が営業的に仕事を取りやすい場合もありますので、その場合は「株式会社」か「合同会社」であれば一人でも設立できます。
3)独立後の収入減をカバーするには
とはいっても、独立のリスクはやはり大きいと思う方が多いですよね。たしかに、会社の時のように安定的な収入は見込めませんし、夏冬のボーナスも基本的にはありません。
一般的には、しばらくは収入は減り、贅沢はあまり出来ないと思った方が良いかと思います。住宅をローンで買いたいと思う場合でも、なかなか銀行の審査が通らなくなったりします。(住宅ローンは会社員時代に組むことをおすすめします)
そこで、独立当初は少ない収入に対し、いかに事業の経費や生活費を抑えられるかがポイントになります。今の時代は、大変ありがたいことに無料、または安価で始められるクラウドサービス(Googleのアプリや、会計ソフト freeeなどのWeb上で提供されているシステム)が充実しています。これらをフル活用すれば、事業にかかる備品や、人件費(人を雇う必要性が減るため)を抑えることができるでしょう。
ただし、事業費を節約しつつも実はケチらない方が良いのが税理士費用。多くの独立開業者が、取引が少ないうちは自分で経理業務を全て出来ると思い、自分で色々調べたり、税務署の無料相談・無料申告会などを利用されるようなのですが、税理士を早い段階で付けた方が、税理士費用以上の節税ができて、お得になる場合が結構ありますよ。
また、Web関連の事業であれば、会社は日本に置き、海外で生活をする方もいます。東南アジアなどであれば生活費をかなり抑えることができるようです。
なんとか大変な時期を乗り越えたあと、事業・収入拡大や従業員増加を目指すか、それともそこそこの生活レベルが維持できる収入で良しとするかは、ビジネスの種類、開業者の考え方次第です。
社会的にインパクトのある事業をやりたい方はやはり前者になるでしょうし、マイペースな人生を送りたい方は後者がオススメです。どちらが正しいというのはなくてキャラやワークスタイルの問題です。
ちなみに事業を長続きしたいという観点からは、後者で細く長くやるのが良いかもしれません。独立開業の場合は、その辺の働き方の塩梅を自分で決められるのも、大きな魅力だと思います。
4)まとめ
いかがでしたでしょうか。LGBTの方もそうでない方も、比較的独立開業をしやすい時代になっていると思います。雇われるということだけに視野を狭めずに自分の人生に合った働き方を一度考えてみてはいかがでしょうか。