想いさえあれば起業できる。元経営者が語る起業のススメ

「いつかは起業しよう」「この会社から独立したい」。そんな想いを抱えながらも、起業のリスクや失敗を恐れて、一歩踏み出せない方も多いのでは?
そこで今回は、起業して10年間経営をしていた川西さん(現:freee株式会社に所属)にインタビュー。起業や経営時にぶつかった壁や学びをお伺いしました。
会社をつくってみたいと思って、起業した22歳
私が会社を立ち上げたのは、21歳のとき。大学生でした。起業のきっかけは、ビジネスコンテストを開催するサークルへ加入したことでしょうか。サークル活動をしているうちに、事業を動かすことに興味を抱いたんです。当時はいわゆるITバブルの時代。堀江貴文さんが近鉄球団やニッポン放送を買収しようとしていた頃です。その姿を見て、世の中に影響を与え、貢献できる事業を動かすのは面白そうだと思っていました。
サークルに所属している人のなかにはすでに起業している人もいました。彼らに起業への興味を話すと「やってみれば?」と後押しされ、会社をつくろうと考えたんです。
事業を決めるうえで考えたのは、ニーズがあり市場が拡大しているところ。そうして見つけたのが、個人情報保護の事業です。
失敗しても、食いっぱぐれることはない
失敗を想定しなかったわけではありません。しかし、私には学生という身分があった。経営が上手くいかなくても食いっぱぐれないと思ったんですよ。
それに、世の中に起業経験のある人はそんなにいません。失敗して就職活動をはじめても、他の人と差別化できると思っていました。
父親の反対を押し切っての起業
ただ、父親には怒られました。親から期待されていたのは官僚や弁護士になること。その期待に応えず、起業したいと申し出たんですね。父親からは「官僚になっても出世競争に勝つ自信がなく、逃げ道としての起業なのでは」と指摘されたことを覚えています。
最終的には、「大学には通う。1、2年やってダメだったらもう一度考える」と言って押し切りましたけどね。
登記の手続きに手間取った
会社を設立するうえではじめに手間取ったのは、設立のための手続きです。僕が会社をつくったのは2005年のこと。税理士さんにほとんどすべてを任せた結果、30万円くらいかかりました。
お金だけではなく、役所への届け出も大変でした。立ち上げ時のオフィスの所在地は渋谷の宮益坂あたり。手続きは渋谷の税務署でおこないました。
書類不備があるとオフィスと税務署を行ったり来たりして資料を提出し直しました。坂が多い道で行き来だけで疲れ、もう勘弁してくれって思いましたね。
大学の同級生を羨ましく思う
立ち上げ当初は、大学の同級生を羨むこともありました。リーマンショック前だったので、外資系に就職した友人たちは、その年齢にしては高給取りだったんですよ。
しかも、会社を立ち上げしてしばらくすると堀江貴文さんが逮捕されたんですよね。それで「IT=うさん臭い」といった認識が世間で広がっちゃった。合コンではまったくモテなくなりました(笑)。
歳を重ねるにつれて起業して良かったと感じるように
もし普通に企業に入っていたら、と考えたことも、一度や二度じゃありません。若いうちは根拠のない万能感を感じて、どんなキャリアも築ける気がするんですよね。だから、いろいろな仕事に目移りしてしまう。
しかし、経験を詰めば積むほど自分の得手不得手が見えてくる。得意なことと不得意なことを考えると、起業という道が自分に合っていたと感じるようになりました。羨ましさを感じないように努力したわけではなく、自然とこの道を選んだことが間違いではないと思えたんですよ。
苦しんだのは、理想と現実のギャップ
事業自体は需要があり着々と拡大しました。しかし、ここで壁にぶつかった。今の事業を続けたとして、起業当初に思い描いていたようなビジョンを実現できるか、不安になってしまったんです。つまり、社会にインパクトを与え、世の中を変えるような事業にはならないんじゃないか、という疑念に悩まされたんですよね。
自分が現状に悩んでいるときでもお客さんはいました。僕のエゴを理由に目の前のお客さんを蔑ろにはできません。ただ事業を続けながらも、自分のやりたい理想の姿と現実のギャップにはひどく苦しみましたね。
経営者にテクノロジーの知見が求められるようになったと感じた
悩みながらも10年ほど経営者という立場にいましたが、やがて自分の経営観や社長像が時代とずれてきている感覚を覚えました。あくまで私の感覚ですが、かつての経営者に求められたのはコミュニケーション能力や商売のセンスです。しかし、現在ではテクノロジーに対する知見や能力が求められるようになった。事実、世の中には自分より年下ながら立派な起業家がたくさん現れていました。このままでは経営者として通用しなくなると思うと、恐れと焦りを感じたのです。
ただ、ずっと悩んでいるだけでは何も変わりません。自分が心から学びたいと思える会社に入ろうと考えるようになりました。その会社で、社会に求められている社長像を確かめたかったのです。
学びが多そうなfreee株式会社に入社した
当然、企業に入ることに抵抗はありました。面接をする側からされる側、給与を支払う側からもらう側になれるのか、という悩みもありました。それでも、プライドや恥をすべて捨てて謙虚で真面目な態度になれそうな会社を探したんです。
そこで興味を抱いたのがfreee株式会社です。世の中のためになる事業をしている。メンバーもめちゃくちゃ優秀な人たち。なにより、もの凄いスピード感で世の中を変えようとしている会社だと思ったんです。
ここなら、僕にとって多くの学びがあり、僕という人材を有効活用してくれそうだと確信しました。そして入社し、現在にいたります。
起業したいという想いさえあれば会社はつくれる
経験者の立場から言わせてもらうと、起業は世間で思われるほど大したことではありません。強い意欲さえあれば、起業していいと思います。極端な話、動機は「金持ちになりたい」でも良い。
その思いを叶えるための会社をつくれば、仕事はあとからついてきます。だから、人は会社をどんどんつくっていいんですよ。ひとりがひとつ会社を持っているくらいの世界がちょうどいいのではないでしょうか。
ギャップを受け止める覚悟が大切
起業をすると現実と理想のギャップに悩まされることになると思います。しかし、理想のビジョンに辿りつけなさそうだからと、起業自体を諦めてほしくないですね。
ギャップを感じることは避けては通れません。ギャップの存在を受けとめる覚悟を持つことが起業家には大切だと思います。
健康や家族よりも大事な仕事はたまにしかしない
起業にリスクがあるとすれば、健康と家族を失う可能性があることでしょうか。一生懸命に仕事していると、つい二の次となってしまうんですよね。僕が座右の銘にしているのは、健康や家族よりも大事な仕事はたまにしかしない、ということです。
体を壊したら本末転倒ですし、家族を失ったら何のための仕事かわかりません。一方で、家族や健康と仕事を天秤にかけてでも挑戦したいという仕事に出会えたら、とてもラッキーですよね。もうやるしかありません。
起業によって制限されることはひとつもない
会社を立ち上げる分かりやすいメリットのひとつには、ある程度自由にできる時間と収入源をもてることが挙げられます。たとえば、働く日を週2~3日だけにすれば、あとの時間を他のことに使えます。もちろん、会社の成長のために自分へ投資してもかまいません。僕のように、別の仕事をしても問題ない。
それに、会社を立ち上げたからには上場を目指す人も多いかもしれませんが、マストではないでしょう。途中で会社をたたんでも良い。起業して制限されることなんて、人生にはひとつもないんですよ。
