企業が成長&拡大する中で、社内の経営管理で気を付けるべきポイント
経営管理とは ~ヒト・モノ・カネ・情報をいかに効率的に活用するための管理手法
経営管理というと、テイラーの科学的管理法、ファヨールの管理過程論などが有名かと思います。しかし、いずれも小難しく、取っ付きにくい印象があります。経営管理をシンプルに考えると、ヒト・モノ・カネ・情報をどのように会社の経営改善に役立てるために効率的に活用できるか、ということです。ヒト・モノ・カネ・情報の管理の視点としては、次のイメージになります。
第一に人材開発。人材開発は、社員教育・能力開発・能力を発揮する環境の整備などの組み合わせによって行われる、ヒトを通じた経営管理手法の一つです。
第二に投資管理。投資管理は、店舗の出店撤退の意思決定、設備投資の意思決定(機械装置の購入等)、在庫の調達・廃棄等のモノの管理手法です。
そして第三に経理管理。経理管理は、経営管理の中でも最も重要な要素が多く、たとえば月次決算や資金繰り計画、事業計画の策定等のおカネを中心とした経理管理手法です。これらすべてをどのバランスで管理していくのかが、会社を経営するうえでとても重要になってきます。
ここでは、経理管理にフォーカスして、なぜ必要なのかとその解決策をご紹介します。
経理管理が必要な3つの理由
(1)倒産を防ぐため
会社における致命的で最悪な失敗、それは倒産です。誰も倒産させたくありませんし、倒産によって取引先や従業員に迷惑をかけたくありません。倒産の要因にはさまざまありますが、2015年版中小企業白書によると倒産要因は次の通りでした。
2014年倒産要因 1位 販売不振 68.9% 2位 既往のしわ寄せ 12.1% 3位 連鎖倒産 5.7% 4位 放漫経営 5.0% 倒産理由ダントツ1位の「販売不振」には、外的要因や内的要因等、さまざまな要素が含まれています。一方、既往のしわ寄せ(経営が危機的状況にあるにも関わらず、過去の財産でこれを見えづらくなっていたものが破裂した状態)や放漫経営は明らかに経理管理を怠っていたことが、倒産の要因となってくると考えられます。
たとえば、売上が拡大傾向にあるために、会社の体力(=資産)以上の過剰な設備投資をしてしまい、資金ショートを起こしてしまう(いわゆる黒字倒産)や、あまり多くはないかもしれませんが、社長が会社のお金を流用してしまう(経費を余分に使ってしまう)ケースなどです。
毎月の月次決算を正確に行い、現状を冷静かつしっかりと把握すること、将来の見通しを予想するといった経理管理を行うことで、このような致命的な失敗はある程度防げるものです。
(2)従業員が安心して働ける環境をつくるため
従業員が思う「安心して働ける職場」には様々な観点ががあると思います。経理管理にフォーカスした場合、次の2点が「安心して働ける職場において重要な要素」になると考えられます。
- 会社の業績を従業員にも伝達していること
- 将来の方向性が伝わっていること
1つ目は、会社の業績が従業員にも伝達されていることです。従業員も自分たちの仕事の成果がどのように売上につながり、いかに利益を生み出しているのかを知らなければ、モチベーションも上がりにくいでしょう。
2つ目に、将来の方向性が伝わっていることです。具体的には、「経営方針の公表」と「予算を策定」から構成されます。経営方針の公表は、社長による決意表明です。予算の策定は、社長発信によるトップダウンの要素と、従業員の方々が自ら考え決定していくボトムアップの要素がともに掛け合わされて実行されます。
(3)業務の効率化を進め、売上アップ&経費削減へとつなげる
会社が成長&拡大する中では、必ずといっていいほどに業務のムダ・ムラが発生します。たとえば、部署ごとに文房具等の発注をしている、電話会社が部署や支店ごとに違う、同一保険の二重払い、得意先エリアの重複などです。
また、書類の作成方法や分析資料の作成などでもムダ・ムラが発生していることがあります。営業部と管理部で似たような資料を作成しているがために、人件費のムダ・ムラが生じてはいないでしょうか。
現状の業績をしっかりと把握・分析を重ねることで、業務のムダ・ムラがあぶりだされてきます。これを繰り返すことで収益性が高い会社にしていくことができます。
経理管理で抑えるべき3つのポイント
(1)月次決算をしっかり行う
まずは、現状把握です。現状をしっかりと把握することがなによりも重要です。現状把握は会計ソフトを利用した月次決算によって行うことができます。エクセルで月次決算を行うことはできなくはないですが、やはり会計ソフトをお勧めしています。私ですら、エクセルで行うのは限界があります。
月次決算を行うことで、毎月利益がどの程度出ているのか、経費にムダはないか、現金や預金、在庫がどのように推移しているのかを把握できます。把握した結果から、翌月以降、どのような対策をするべきなのかを考えることができます。
freeeを活用した月次決算の流れをざっくり見ると、次のようになります。
(2)事業計画/資金繰り表をザックリと作成する
社長の「会社への想い」を、経営方針や企業理念としてホームページ等で公表している会社は多いかと思います。しかし、それだけでは従業員がどこを(何を)目指すべきなのかがあいまいなケースがあります。
そこで、「社長と従業員が一緒になって事業計画を作成する」ことをお勧めします。事業計画作成の良いところは、社長と従業員が一体となって具体的な数字に落とし込み、会社の将来をか考えられることです。これを社員で共有することで、会社がより一丸となって将来にチャレンジすることができます。また、事業計画を作成する際に、合わせて資金繰り表を作成することもお勧めしています。
(3)経理管理に強い会計事務所と付き合う
そして何より大切なことが、「経理管理に強い会計事務所と付き合う」です。一口に病院といっても、内科/外科/精神科/産婦人科・・・などと分類されているように、会計事務所も実はその事務所ごとに得意分野が違います。
法人税が得意な事務所、相続税に強い事務所、経理管理に強い事務所・・・と様々です。そのため、経営管理に強い事務所とつきあうことをオススメします。