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2016年07月15日(金)

日本では失敗しても死なない。駐輪場サービス「PEDALRest」のスタートから事業運営まで

経営ハッカー編集部
日本では失敗しても死なない。駐輪場サービス「PEDALRest」のスタートから事業運営まで

pedalrest1 「起業したい!」と思っても、どうしてもハードルが高く踏み切れない人も多いのでは。特にどのようなプロセスで会社を興し運営していくのかは、経験がないとなかなかイメージしにくい部分です。

そこで今回は、慶應義塾大学卒業後、ベンチャー数社での営業・新規サービス立ち上げを経て株式会社スゴログを設立、さらに遊休スペースとインターネットを活用した駐輪サービス「PEDALRest(ペダレスト)」を立ち上げた中島大さんにインタビュー。ペダレストをどのように立ち上げ、そして運営していったのかを語っていただきました。

自転車が撤去されない世界を作りたかった

ペダレストは、遊休スペースとインターネットを活用した駐輪サービスです。狭小地を駐輪場にしていく、Airbnbの駐輪場版というとわかりやすいでしょうか。

もともと僕は自転車が好きで、一社目の会社「株式会社スゴログ」を起業したとき、お金も時間もなかったこともあり、アポイントメントによく自転車で行っていました。駅前にはそれなりに駐輪場があっても、目的地のすぐ近くにあることはレアケース。仕方なくオフィスビルの近くに1-2時間停めていると、撤去されてしまうこともありました。

それで駅前だけでなく、駐輪スペースが点在していて欲しいな、とずっと思っていたんです。そもそも自分が困っていた、というのがペダレストのアイディアを閃いたきっかけでした。 pedalrest2

KDDI ∞ laboへ参画し、ベータ版リリースするまで支援される

スタートアップウィークエンドという起業イベントに参加して、ペダレストのプロトタイプの感触が良かったので本格的に進めていこうと考えたのが、2社目の株式会社自転車創業を起業したきっかけです。

つぎに、KDDI ∞ laboにエントリーしようときめました。 そのときの条件は、「開発できる人がいること」。そこで、幸 龍太郎(現:取締役)に声をかけました。

もともと彼は大学時代からの友人で、デザインを中心にシステム関係も請け負う仕事をしていたので。「エントリーしたいから名前貸してよ」と言ったんです(笑)。ちょうど、彼は当時勤めていた会社を退社しようか悩んでいた時期。もし採択されたら動機付けにもなっていいんじゃないかと思ったんですよね。そこで運良く採択していただいたので、一緒にやろうよ、という話に自然になりました。

起業する上では、やっぱり複数人で創業することをおすすめします。理想は、エンジニア、デザイナー、ビジネスをまわす人間が揃っていることですね。 pedalrest3 開発では、リソースの問題は苦労しましたね。ベンチャーは常にリソースが限られています。特に人的リソースは不足しがちです。僕らの場合も、エンジニアリングとデザインができるのは幸の一人だけだったので、どうしても彼にタスクが集中してしまう。これは当時から今に至るまでずっと継続している問題点ですね。

自転車というプロダクトへの愛

ペダレストをローンチしてからは、メディア取材などもいただいて、『TechCrunch Japan』や『THE BRIDGE』にも掲載していただきました。こういうものが欲しかった、という声も多くあって、とても嬉しかったです。

どうせなら自転車ではなく単価の高い車やバイクの方がいいのでは、と言われたこともあります。でも自転車というプロダクトに対する思い入れや切実なニーズを自分自身が感じていたこともあり、あまりそういった意見は気になりませんでした。 pedalrest4室内駐車場。雨や雪に自転車を晒したくない、という要望に応えた。

駐輪場の貸し手側の十分なメリットを提案できない

ペダレストは、借り手と貸し手、双方がいなくては成り立たないサービスです。借り手に需要があることは間違いないとわかっていたのですが、貸し手側にとってもいいサービスを作るというのがなかなか難しいんです。

プッシュ型のセールスをどんどん仕掛けていったのですが、なかなかうまくいかない時期が続きました。2016年の4月時点で10箇所程度の駐輪場を提供できているのですが、本来の計画ではこれが数百カ所になっているはずだったんですね。貸し手側にとって十分なメリットをうまく提案できていないことが現状の課題だと思っています。

たとえば小さな遊休スペースがあるとして、自動販売機の設置と比較したとき、自動販売機の方が儲かる場合もあるし、圧倒的にペダレストの方が儲かりますよ、と言えるわけでもないんですね。

それにAirbnbなら一時期だけ空いている部屋を貸すといったことも可能なのですが、ペダレストの場合は月極ということもあり、長期的な貸与が前提。このあたりも課題として残っています。 pedalest5

創業フェーズでは出資を受けない、という選択

単純に、儲かり始めるまではキャッシュが減っていきます。出ていくお金を減らすため、自転車創業からは役員報酬を貰わず、平行して経営していた一社目の株式会社スゴログで得た収入だけで食べていた時期もありました。

あとは創業フェーズで出資を受けるのはちょっと違うかな、という考えもありました。創業フェーズはどうしても不確実性が高く、ピボットすることも多い。もちろんそれを前提にチームに投資するVC(ベンチャー・キャピタル)もあるのですが、株主がいるというのは会社にとってとても大きいことなんですね。

だから出資を受けるのは、プロダクトがマーケットにフィットしていることがきちんとわかって、お金を投下することで確実に伸びるとわかってからでも遅くない。そう考えて、今は株主も僕と幸だけにしています。

短期でラーメン代稼ぎをするサービスをスタートした

ペダレストは儲かり始めるためにスケールが必要な事業です。例えば1台月1万円でユーザーに駐輪場を借りてもらうとして、その30%程度がペダレストに入ってくるお金になります。だから100万円稼ぐとしたら、だいたい3000台の契約が必要なんですね。それだとすぐには食べていくことは難しい。

かといって、先ほどお話したように、創業フェーズからのファイナンスはあまりしたくない。そこでペダレストをローンチして3ヶ月後に短期でラーメン代稼ぎ(※注訳1)できるサービスをスタートさせました。

それが「マサルでもわかる自転車保険」という自転車保険の比較サイトとそのオウンドメディア「FRAME」です。比較サイトの運営会社で自動車保険の担当をしていたこともあり、比較サイトのノウハウ、保険会社とのコネクションもあり、すぐにリリースできたんです。

FRAMEも当初は比較サイトの送客のみを目的としたオウンドメディアだったんですが、トラフィックが集まるようになってきたため、単一のメディアとしてマネタイズしています。最近は月間で250万PVを突破。記事広告なども入れるようになってきていて、目下成長中といったところです。

(※注訳1)ラーメン代稼ぎ・・・ベンチャー企業が運営代を稼ぐため、別の事業をおこなうこと。

自転車ドメインでスケーラビリティのあるサービスを

今後の目標ですが、スケーラビリティのあるサービスを展開する、ということですね。ただしあくまで自転車ドメインということが前提です。ペダレストもスケーラビリティのある事業ではあるのですが、実現可能性のハードルはなかなか高いというのが実情です。それに代わる事業を何かできないかも並行して模索しているところです。

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リスクがあると言っても死にやしない

起業はリスクがある、とよく言われます。実際にそれで二の足を踏んでいる人も多いと思います。でも、いくら失敗しても、日本なら死ぬということはありえません。出資であれば、よほど契約書の内容がめちゃくちゃなところでなければ、基本的に返済義務はなく、借金を背負うことはないんです。借金を背負うことになっても、極論自己破産という選択肢もありますから。

起業経験者が欲しい企業は意外にたくさんありますし、万が一倒産しても職にあぶれるということはあまりないんです。そもそも正しいメンタリティと最低限のスキルセットがあれば、仮にメインの事業がうまくいかなくても、受託の仕事までままならないということは基本的にないはずなんですね。

僕自身の経験としても、潰れそうになったこともありましたが、なんとかなりました。きちんと頭を使ってアクションをすれば大丈夫です。迷っているのなら、チャレンジする価値はあると思いますね。

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中島大
慶應義塾大学卒業。ベンチャー企業で営業・新規サービス立ち上げを経験したのち、株式会社スゴログを設立し、代表取締役就任。その後、KDDI∞Labo5期にてPEDALRest(ペダレスト)が採択されたことをきっかけに株式会社自転車創業を設立し、代表取締役に就任。

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