失敗から学ぶ日々。Coupe・竹村恵美の反省と成長の経営ストーリー
サロンモデルと美容師をつなぐプラットフォーム「Coupe」を運営する株式会社Coupe。その代表を務める竹村恵美氏は大学在学時に同サービスを作り上げ、起業しました。
CAV(サイバーエージェント・ベンチャーズ)からの資金調達に成功するなど順風満帆に見えますが、実は様々な困難を乗り越えていたそう。起業ハッカーでは竹村氏に起業当初のストーリーを尋ねてきました。
サービスのアイデアはモデルハントで苦労している美容師の親友を見て思いついた
「Coupe」は、美容師の友人がモデルハンティングに苦労している姿を見て思いつきました。
先輩のスタイリングと撮影のため、モデルになってくれそうな人を見つけるのが新人美容師である友人の仕事。でもなかなかOKもらえないんですよ。一人のモデルを見つけるのに約8時間かかるそうです。
せっかくモデルを受けてくれる方を見つけてきても、先輩が気にいらないとまたやりなおし。それで疲弊している彼女を見て「カワイイ子をハントできるサービスを作ったらいいのでは?」 と考え、美容師がサロンモデルを容易に探せるサービス「Coupe」を始めました。
Coupeは美容師がオンライン上でサロンモデルとマッチングできるサービス。
ビジネスモデルではなく「問題を解決したい」とプレゼンした
卒業間際になったとき、Coupeを続けるために起業しようと決めました。しかし、法人化するにあたってはある程度の資金が必要。そこで株式会社TECHFUNDが主催するピッチ大会(※注訳1)に参加しました。ビジネスモデルをプレゼンする人が多いなか、私は「こういう問題を解決して、こういう社会にします」と、会社のビジョンとストーリーを語ったんですよ。他の人と違うアプローチ方法に興味をもっていただき、CAVから投資を受けられることになりました。
※注訳1:ピッチ大会・・・主に投資家へのプレゼンテーションを指す。対象は新しいサービスやプロダクト。
社会人経験ゼロからのスタート
起業をしたものの、社会人経験のない私は右も左も分からない状態でした。そこで助けてくれたのはビジネスを知る人生の先輩たち。
投資先を探していたときに、甘い言葉をかけてくれた企業もありました。しかし、明言してもらえなかった契約内容は私にとってやや不利な条件でした。でも、当時の私の知識は契約や経営、お金まわりに関しては不十分。向こうが提示する甘い話を鵜呑みにしそうになっていました。そういった状況でも的確なアドバイスしてくれる人の存在はすごく大事だなと感じました。
本当は急がなくても良かった……。発注での反省
Coupeのサービス自体にも反省点はあります。ローンチ当初はログインせずに依頼フォームからメールを送り、私の所に届いたメールをモデルにLINEでメッセージを送付。その後のやりとりは美容師とモデル間で直接おこなうという体制をとっていました。
サービスローンチ当初のトップページ。モデルと美容師が直接やりとりをするコミュニケーション設計だった
しかしこれでは手間もかかるし、モデルが自分のメールアドレスやLINE IDを使わなければならない。「自分の個人情報を知らせたくない」というモデル側からのリクエストが届き、Coupeのアカウント上でメッセージのやりとりができるよう、システム変更をおこなおうと思ったんです。
当時の私は、スタートアップが成長するために必要なのはスピード感だと考えていました。だから、素早くシステムを変更するために外部の企業に依頼したんです。しかし、複数のエンジニアに修正や機能追加をお願いした結果、コードがつぎはぎだらけになってしまったんです。今同じことをやるなら、エンジニアを自社でひとり雇って開発する方を選ぶでしょうね。
メンバーのモチベーション管理は社長の仕事
メンバーのモチベーション管理も、代表の重要な役割だと考えています。以前、メンバーの前で落ち込んでしまったことがあるんですよ。すると、メンバーの士気も下がってしまったんですよね。スタートアップはやる気と勢いと夢で動いているふしがあります。それを損なわせないためにも、代表の私は明るく夢を語るべきなのだと学びました。
ただ、マネジメント経験がないことは私の弱みです。メンバーの成長とモチベーション管理のために、どのようなキャリアステップを踏ませようか日々考えている状態です。
サービスを通して個人を輝かせる世の中に
Coupeを始めた当初の目標は「美容師におけるモデルハント問題の解決」でした。現在では「サービスを通して個人を輝かせること」にシフトしています。
一昔前の女の子の憧れは読者モデル。でも今は時代も変わり、読モよりサロンモデルの方が羨望の目を向けられているんです。プロにヘアメイクや撮影をしてもらい、その写真をSNSにアップロードできることが今の世代に憧れる理由です。
お金儲けは大変。ダメかもしれないと思う瞬間が、毎日ある
起業してお金儲けは大変だと改めて実感します。若くして起業した女性はキラキラしたイメージを持たれがちです。でも、現実は泥臭いことばかり。毎日会社に寝泊まりをしている時期もありました。
正直、「もうダメかもしれない」と思う瞬間がほぼ毎日あります。Coupeは投資を受けている会社です。私の一存で辞めることはできません。ですからときには人を頼りながら自分を奮い立たせているんです。
それに、「ダメかも」と思うのと同じくらい「イケる」と感じる瞬間もあります。たとえば、予算の大きなお仕事が決まったり有名な投資家が興味を持ってくれたりするときです。そんな瞬間には嬉しさでいっぱいになれるんです。
失敗から学び、日々前進する
過去の自分にアドバイスできるなら、資金集めや開発を急いで妥協するな、といいたいですね。決めていない状態は精神的に負担となります。つい即決したくなってしまうのはスタートアップあるあるですが、焦りは冷静な判断力を奪い、結果として失敗を招くことも少なくありません。
でも、こういう反省があって今があります。起業してからは学ぶことばかりですが、しっかり前に進んでいるという実感はあります。
それに、私には相談できるビジネスの先輩たちがいます。ゼロからここまでやってこれたのはそういった方々のおかげです。人を頼れて、人に信頼される経営者であり続けるためにも、これからも頑張っていきたいです。