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2016年09月01日(木)

社会起業の仕方はNPOだけではない 「非営利型一般社団法人」のススメ

経営ハッカー編集部
社会起業の仕方はNPOだけではない 「非営利型一般社団法人」のススメ

非営利型一般社団法人

「世の中の役に立つことをしたい!」「社会をより良くしたい!」という思いからNPO法人を設立したいと考える社会起業家が多くなりました。しかし、実際のNPOは思ったよりも大変なもの。

設立時の書類作成が煩雑であるばかりでなく、設立時や運営継続の要件も厳格です。最悪、「うっかりミスで設立が取消された」ということにもなりかねません。社会起業初心者の多くの場合、NPOよりも非営利型一般社団法人がオススメです。

非営利型一般社団法人って何?NPO法人との共通点・相違点とは

一般社団法人とは、新公益法人制度の開始に伴い、2008年12月1日に施行された「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」により設立が認められた法人格のひとつです。そのうち、主に公益活動が目的で、一定の要件を満たした一般社団法人を「非営利型一般社団法人」といいます。非営利型一般社団法人には「非営利性徹底型」と「共益的活動目的型」とがあり、イメージとしては次のようなものになります。

一般社団法人 通常の一般社団法人と非営利型の違いは、「非収益活動に法人税が課税されるか否か」です。通常の一般社団法人は、法人税法上株式会社などと同様に寄付金や贈与、会費収入などといった収益活動以外の収入についても課税されてしまいます。しかし、非営利型の場合は、その法人の性質から、一定の収益活動以外の収入については課税されません。ここはNPO法人と共通する点です。

それまで、非営利活動や公益活動を行う場合、一般市民がもっとも設立しやすい法人形態はNPO法人しかありませんでした。ただ、「もっとも設立しやすい」とは言っても、NPO法人は設立の手続きも必要書類も煩雑で、運営管理の事務作業も非常に面倒でした。そこで新たに登場した非営利徹底型一般社団法人は、NPO法人よりも設立も運営もラクで、事業にエネルギーを注ぎたい社会起業家の負担を軽減するものとして徐々に認知を高めていきました。

NPO法人と非営利型一般社団法人の具体的な内容は次の通りです。

  NPO法人 非営利徹底型一般社団法人
0円から 0円から
発起人数 10人から 2人から
役員 理事3名から 監事1名から 理事3名から (非営利徹底でなければ理事1名から)
任期 理事2年 幹事4年 理事2年 幹事4年
登録免許税 0円 60,000円
定款認証 0円 52,100円
設立に要する期間 だいたい5カ月 だいたい2~3週間
書類作成の難易度 高い 低い
役員の親族規定 あり あり
所轄庁への報告義務  あり  非課税の場合は管轄の自治体へ財務諸表を提出 (課税の場合は税務署にて申告でOK)
 法人税  法定の収益事業についてのみ課税  法定の収益事業についてのみ課税
 法人住民税  一定の要件を満たせば免除 (ただし面倒くさい) 課税
登記変更時の印紙税免除  あり なし

さらに、非営利型の一般社団法人は、公益性重視型の一般社団法人であるため、法に定める要件を満たすことが必要になります。

非営利型の一般社団法人は設立時の要件を満たせばOK

非営利型の一般社団法人になるためには、次に掲げるそれぞれの要件を設立時に満たすことが必要になります。

<非営利徹底型一般社団法人の場合>
  1. 剰余金の分配を行わないこと
  2. 解散した時は、残余財産を国や一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めていること
  3. 上記1.及び2.の定款の定めに反する行為(上記1.2.及び次の4.の要件に該当していた期間において特定の個人または団体に特別の利益を与えることを含む)をしたことがないこと
  4. 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が理事の総数の3分の1以下であること
<共益的活動目的法人>
  1. 会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていること
  2. 定款等に会費の定めがあること
  3. 主たる事業として収益事業を行っていないこと
  4. 定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を行うことを定めていないこと
  5. 解散したときにその残余財産を特定の個人又は団体に帰属させることを定款に定めていないこと
  6. 上記1.から5.まで及び次の7.の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えたことがないこと
  7. 各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の1以下であること

ざっくりとまとめると、

  • 利益は配当しないこと(法人の活動に戻す)
  • 親族だけで理事をかためないこと(同族会社と同じように税務当局から見られています)
  • 私利私欲のために非営利型一般社団法人を使わないこと

といったあたりがポイントとなります。

非営利型一般社団法人のメリット・デメリット

非営利型一般社団法人のメリットは「設立時と運営時の事務手続きがラク」という点にあります。NPO法人の場合、「所轄庁の審査が必要」「設立趣意書、事業計画書、収支予算書などの提出が必須」「発起人は10名以上」など事務手続きの煩雑さがネックになります。

社会貢献への情熱で乗り切れればよいのですが、そこで疲弊して本来の業務に集中できなければ元も子もありません。その点、非営利型の一般社団法人は、そもそも所轄庁の審査などはなく、設立は株式会社などの普通法人と同様です。そのため短期間で、かつ少人数で設立することが可能となります。

デメリットは、事務手続きが普通法人と同様であるため、その分設立費用が掛かるという点です。ただ、この点も、freeeなどで用意されている各書類を参考にしつつ、一般社団法人用の定款を用意し、必要要件を満たせば、専門家に依頼せずとも自分たちで設立して費用を抑えることでクリアにすることができます。

また、毎年最低でも年7万円の法人住民税均等割額は払わなくてはなりません。しかし、NPO法人が住民税免除を受けるための毎年の手続きも面倒なもの。最終的には「お金をとるか、手間をとるか」を基準にそれぞれで判断していただくことになりますが、設立のそもそもの目的を考えるならば、お金を払ってその分本業に集中することがより合理的なのではないでしょうか。

小規模に社会起業をスタートしたい社会起業家には、一般社団法人がオススメ

一般社団法人を利用した社会起業は、徐々に認知度が高まってきたものの、NPO法人に比べればまだまだ世間には浸透していません。そこで活用を避ける人もいますが、大事なのは「設立の目的」と「どれだけ本業にメリットがあるか」であって、見た目の問題は二の次のはずです。さらにマンパワーが足りないならば、事務作業がより効率的でなければ本業に集中できません。

非営利型一般社団法人での社会起業は、「小規模から社会起業をスタートしたい」、「まだメンバーが集まっていないけれど、それでも世の中を変えていきたい」という人に特におすすめのスタイルだと言えるでしょう。

鈴木 まゆ子
税理士、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年に税理士登録。現在、外国人のビザ業務を専業とする行政書士の夫と共に外国人の起業支援に従事。現在、会計や税金、数字に関する話題についてのWeb上の記事執筆を中心に活動している。税金や金銭に絡む心理についても独自に研究中。共著に「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)がある。

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