お金の話ばかりする人間には気をつけて。飲食店経営者が語る人間関係の苦悩

米国オークランドのサードウェーブ・コーヒーブランド「BICYCLE COFFEE(バイシクルコーヒー)」を楽しむことができる五反田のカフェ「Think food LOTUS CAFE」を経営する「Think food LOTUS inc.」代表、千田寛子さん。
現在は2店舗目を展開している同店。しかし、創業当初は人間関係に苦労をしていたとのこと。そこで、起業時から現在までの話を伺いました。
私は以前、父親の経営する会社で働いていました。業種は大手建設施工の「足場」を扱うメーカー。足場業界では取得の珍しいGOOD DESIGN賞にもチャレンジしました。 飲食を始めたのは、前会社代表の父の「接待が出来るお店を持ちたい」という思いを実現させるために始めた社内公募に立候補したことがきっかけです。
私は以前から経営に興味を持っていましたが、現社長である父親はあと何十年も代表を退く気はなかった。「自分は125歳まで生きる。残念ながらお前の方が早く死ぬ」というほどの負けず嫌いでした。18年かけて社員数を5名から145名にまで増加させた私に対してもライバル心を捨てれず、目障りになったのでしょう。社内事業のはずが、気が付けば社外独立という形になっていました。
現在、五反田に住みだして7年目の私ですが、五反田に2店舗を構えています。五反田はオフィス街というイメージを持たれますが、実は住宅も多い土地です。土地勘のあるこの場所で飲食店を始めようと思いました。
ひとつめの店舗は、デザイン事務所を営む親戚から「1~2階部分を借りないか?」と誘いを受けて決まりました。
立地の不利はSNSやチラシでカバー
ただ、店は大通りに面していません。ふと通りがかった人が入るような場所ではないので、集客のための施策に力を入れています。FacebookをはじめとするSNSはもちろん、意外と効果があるのはチラシの頒布です。やはり、近くに住んでいる方々にダイレクトに広告を配れるのは強いですね。
チラシは、受け取ってくれた方が読み物として楽しんでいただけるように毎回デザインを変えています。また、五反田の近くにある住宅街は、犬を飼っている方が多い。「ワンちゃんの同伴OK!」と記載したところ、客足が伸びました。近隣にいる方のニーズに訴えかける重要さを実感した出来事です。
犬同伴をアピールしたチラシ。広告媒体の営業担当者からアドバイスをもらったという
良い物件を探すには良い営業さんと出会うことが大切
ふたつめの店舗は、一から探しました。立地が良いのに相場よりも家賃の低いような良い店舗は、とても人気です。20社ぐらいを集めて内見をおこない、その場で商談が始まります。そうなると「誰が一番に、最も高い金額を出せるか」という力技の世界となります。最初に支払う額が200万円だとしても、大手企業はその倍を軽々と出してきます。
大手企業には敵わない。だから、なるべく立ち上げのコストがかからないように居抜きできる物件を探しました。
今振り返ると、良いご縁に恵まれるためには不動産の営業の方との相性も大事だと思いました。実際、私は店舗を決める際に多くの不動産を渡り歩き、気の合う営業さんを探しましたからね。
店を任せた人から株の譲渡を打診された
お店を立ち上げて1年目ですが一番苦労したのは人間関係です。
2店舗目を立ち上げた当初、2店舗目の店長にしていた人とスタッフの間に亀裂が生まれてしまいました。その店長はどちらかというと、人の話に耳を傾けないタイプ。自分の意見が正しいと信じすぎてしまうタイプの人でした。その店長は取締役の肩書や通帳の管理、「信頼関係」と名目のもと株の譲渡すら打診してきたんですよ。
コラム: 株を譲渡すると何がまずいの?
株式会社の定款や取締役、合併・解散など、会社の基本事項は株式総会によって決定されます。株式総会では、基本的に株式1株につき1個の議決権を議決権を持ちます。議決権とは、会社の方針に賛否を言える立場のこと。基本的には、次の割合を保有しないと会社の方針を決定できません。
その打診には、さすがに不信感を抱いてしまいました。このままではお店にも打撃を与えると思い、お店を任せるかわりに彼には1年間の目標値を設定してもらいました。結果、目標には一度も届かなかった。話し合いをした結果、彼には辞めてもらいました。
- 議決権比率 2/3以上・・・特別決議事項(定款変更、合併・株式交換等による組織の再編、解散など)
- 議決権比率 過半数・・・普通決定事項(取締役の専任・解任、取締役の報酬、決算の承認、剰余金の分配など)
- 議決権比率 3%以上・・・株主総会の招集請求権、役員の解任請求権、会社の帳簿閲覧請求権
- 議決権比率 1%(または300個)以上・・・株主総会の議案提案権
つまり、株式の保有率によっては代表取締役を解任して別人を就任させる、いわゆる「乗っ取り」行為が可能となってしまうのです。
スタッフとの溝を埋める、毎日10分間のミーティング
この件から学んだ教訓は「お金」の話ばかりする人には気をつけようということです。お金の話で揉める人は、そのあとも何かにつけて軋轢を作るタイプの人。彼とは、株の譲渡から給料まで短い期間で何度か交渉しました。しかし、自分の利益のみを再優先にする傾向にあり、チームワークにあまり良い影響を与えませんでした。彼が辞めたあとに若いスタッフに入れました。結果会社の風通しが良くなった。当時は悩みましたが、最良の決断をしたと思います。
また、雇用主と被雇用者の仕事に対する意識はまったく違います。その溝を埋めるためには、密なコミュニケーションが欠かせません。実際に、10分程度でも毎日ミーティングの時間を設けています。毎日スタッフ同士で顔をあわせながら会話をすることで業務連絡の抜け漏れも防げますし、相談にものりやすい。まさに「報連相(報告・連絡・相談)」の場となっていますし、会社のビジョンを共有しやすくなりました。
配置換えであらゆる業務の苦労を知ってもらう
円滑なコミュニケーションを生むための一環として、スタッフ内でポジションチェンジを頻繁におこなっています。先週までキッチン担当だった人が、今週はホールをおこなうということもザラです。こうすることで、ポジションごとの大変なところを学び、相手の立場に立って物事を考えやすくなるんですよ。
失敗しても、20代ならもう1回挑戦できるくらいのパワーがある
スタッフのなかには独立を目指している人もいるので、「失敗することが怖い」と相談されることもあります。でも、20代なら失敗したとしてもまた立ち上がり何かに挑戦できるパワーを持っていますよね。
さらにいえば、失っても怖くないものしか持っておらず、体力のある年頃でしょう。失敗するにも成功するにも、早くスタートしたもの勝ちだと思っています。
