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2016年10月12日(水)

開業前の準備活動に要した費用はどうする? ~開業費の処理方法~

経営ハッカー編集部
開業前の準備活動に要した費用はどうする? ~開業費の処理方法~

pixta_15638007_s 事業を始めるにあたって、机や文房具などいろいろな経費がかかります。まだ開業していないが支払いがあるものは、どのように帳簿付けすればいいのでしょうか。

開業のためにかかった費用は「開業費」で処理するのが一般的です。ここでは、「開業費」の処理方法を見ていきます。

1.開業費とは

開業前の準備活動に要した費用は「開業費」で処理します。実は、開業費は「費用」ではありません。「繰延資産」という資産の科目です。資産の科目で一旦処理し、その後毎年少しずつ費用に計上します。これを「償却」といいます。

なぜ費用ではなく繰延資産かというと、「開業前の準備費用があるから、今後ずっと仕事をしていくことができる。つまり、開業年度だけの費用ではなく、それ以降の年度にも影響するため、開業年度だけの費用にはならない」という考え方にもとづくからです。

2.開業費として認められるもの、認められないもの

個人事業主の場合、開業までに支払ったものは基本的に「開業費」になります。例えば、店舗を開く立地の調査費やパソコンの購入費、事務所の家賃などです。ただし、開業費にできないものもあります。代表的なものを見ていきましょう。

①1つあたり10万円以上するもの

 1つあたりの取得価額が10万円以上する備品や機械は「固定資産」になります。「固定資産」はその種類や使い方などで、それぞれ何年で経費にするかなどを、別で法律で規定しています。そのため開業費にはできません。

②販売用商品の仕入代金

 販売目的で購入した商品や材料は、開業後に販売等して利益を得るためのもので、「売上原価」になります。そのため開業費にすることはできません。

③敷金など後日戻ってくるもの

 敷金や加盟金などで後日戻ってくるものはそもそも経費ではないため、開業費にすることはできません。

④礼金

礼金は事務所等を借りるときに貸主に支払う金額のうち、戻ってこない部分(月々の家賃を除く)をいいます。礼金も開業費と同じく繰延資産ですが、開業費とは取り扱いが異なるため、原則、開業費にすることができません。

法人の場合は個人事業主の場合と開業費の取り扱いが一部異なります。法人は、開業のためだけに特別にかかった費用しか開業費にできません。個人事業主の場合は、開業前に支払った事務所の家賃や従業員の給料は開業費にできますが、法人の場合それらは開業のためだけの費用ではないので、開業費にできません。地代家賃や給与手当などの経費で処理します。

3.何年で開業費を償却するのか

開業費を何年で償却するのかは、会計上の考え方と税法上の考え方があります。

 会計上…5年で均等償却  税法上…任意償却

会計上は5年間で均等に償却することになっていますが、税法では任意償却です。任意償却とは、0円から開業費の全額(2年目以降は帳簿価額)までの間で、その年に費用とする金額を納税者が自由に決めることができる償却方法です。そのため、今年は赤字になりそうだから償却を0円にしようだとか、黒字が多いので開業初年度で全額費用にしようということが自由にできます。 実務上は税法にのっとって処理する場合が多いです。

4.開業費として認められるのは、いつまでに支払ったものか

開業初年度に帳簿付けをしていると「いったい開業から何年前までの支出が、開業費として認められるのだろう?」と不安に思う人も多いのではないでしょうか。

実は、決まっていません。理論上、開業のために支出した費用は、何年前のものでも開業費にすることができます。開業費について重要なのは、開業のために支出したものかどうかということなのです。

しかし、実務上、5年も6年も前のものを開業費にすることはあまりありません。少し前のものを開業費にする場合は、それが開業のためにかかった費用だという証拠を残しておく必要があるでしょう。

5.開業費の領収書は1つ1つ帳簿付けしないといけない?

開業前に支出する費用は数多くあります。では、それをすべて1つ1つ帳簿に付ける必要があるでしょうか。望ましい姿としては、やはり明細ごとに1つ1つ入力します。これが帳簿付けの基本のためです。

しかし、開業費の詳細を別途エクセルなどにまとめて集計している場合は、まとめて入力しても差し支えないと考えられています。この場合、必ず別途まとめたエクセルなどの資料とともに、開業費とした費用の領収書を保管するようにしてください。

開業前の書類・領収書と、開業後の書類・領収書は分けて保管しておきましょう。固定資産の登録については、通常一括で登録して問題ありません。また償却費の仕訳も明細ごとではなく一括で処理します。   ※あまりないとは思いますが、開業初年度で消費税の課税事業者の場合は、最低限消費税の課税、非課税などの税区分ごとに分けて帳簿に付ける必要があります。

6.まとめ

開業前に支払った費用は開業費で処理します。開業費は繰延資産という資産の科目です。 開業費の償却方法は税法上「任意償却」で行い、納税者でその年の費用とする金額を自由に設定できます。その年の利益の金額を見ながらこのしくみを上手に活用し、節税に役立てましょう。

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