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2016年10月25日(火)

金融コンサルタント岡村氏が見たシンガポールビジネスのリアルとは

経営ハッカー編集部
金融コンサルタント岡村氏が見たシンガポールビジネスのリアルとは

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日本、シンガポール、クアラルンプールなどを中心に資産運用や不動産、海外移住のアドバイスを提供する株式会社S&S investmentsを運営する岡村聡さん。シンガポールのビジネス事情や海外を視野に起業を志す人たちへのアドバイスをうかがいました。

リスクを考え始めたら起業に踏み切れない

私は新卒で入社したマッキンゼーで4年勤務した後、企業買収ファンドのアドバンテッジパートナーズに入社しました。しかしリーマンショックのあおりを受けて、金融業界は低迷。金融業界に見切りをつけ、資産運用のコンサルティングとして夫婦で起業しました。

正直、独立当初は起業のリスクについて何も考えていませんでした。そもそもリスクを考え始めたら絶対に起業に踏み切れないでしょう。コンサルティングというビジネスモデルには、そこまで設備投資を必要としません。収益のめどが立たなくても、大きな借金を抱えることはないと考えていました。そして、いざとなれば転職活動したらいいと思っていたんですよ。

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メディア露出で集客。顧客のニーズに応えて拠点をシンガポールに

正直、成功の自信があったんですよ。プロフェッショナルとして金融業界の最前線にいた経験があり、顧客がばんばん集まってくると予測してました。しかし、これが全くの見込み違い。起業当初はあまりお客さんが集まりませんでした。そこで、雑誌にコラムを書いたり、メディアに露出していこうと決めたんです。そうして少しずつ顧客を増やしていき、その顧客から評判が広がったことで事業がまわり始めました。

シンガポールに行く機会が増えたのは、2012年ごろから。震災以降「節税のために移住したい」、「子供の教育のために移住したい」といった顧客のニーズが出てきていたためです。次第に毎月シンガポールへ出張する状態になり始め、2013年にはシンガポールへ拠点を移しました。現在、私は東京とシンガポールを行き来していますが、妻と子供は完全にシンガポールで生活しています。

シンガポールという国のビジネスとは

シンガポールは都市がコンパクト。投資家や情報が集まっているので、ビジネスがやりやすいんです。ビジネスの中心地にあるラッフルズホテルの近くには、世界中のすべての主要金融機関があります。タクシーを使えば移動時間にさほど時間をかけず、大体のビジネスパートナーとミーティングができるんですよ。国際金融都市ランキングでは、ニューヨーク、ロンドンに次いでシンガポールが挙がるほどですからね。

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現地スタッフ採用で国から補助金が出る

シンガポールでは現地スタッフを雇うと国から補助金が出ます。ただし、どんな企業でも良いわけではありません。ヘルスケアやバイオテクノロジー分野をはじめ、ITベンチャーや金融などの業種を特に歓迎しているようです。国土面積の大きくない国ですから、工場などの広大な土地を必要とする製造業よりは高付加価値産業を求めるようです。

文化の違いによるマネジメントの落とし穴

ただし、継続して雇い続けるのは、日本人的感覚でいると戸惑いを覚える方もいると思います。「せっかく入ったんだから2年ぐらいは頑張ってみよう」的な日本的価値観は絶対に通用しません。現地のスタッフを雇用しても、ちょっとでもいい条件の企業へ転職されることはザラ。本当にシビアです。銀行などでも担当者はどんどん代わり替わりますからね。いきなりライバル会社とかに転職したりするんで、びっくりしますよ。でも、そういうものと割り切る思うしかないですよね。

人材を繋ぎ止めておくにはお金と高スキルな仕事を用意することが必要です。マネジメントのコツとしてはどんどんスタッフに任せていき、スキルアップできる場所だとアピールする。決算などを数字で見せ、上昇傾向にあることを知らせていくことが有効なのではないでしょうか。

okamura4クライアントは世界各国にいる岡村氏。常に電話でリアルタイムのコミュニケーションを取り続ける

資産がモノをいう国

実は今、永住権の申請を考えています。ただ、永住権を取得するには国の経済にどれだけ貢献したか、何人雇用を生んだかという非常にシビアな指標をクリアしなければいけません。

シンガポールでは、付加価値の高い人に来てもらい、たくさん稼いで所得税や法人税をたくさん払ってもらい、高度なポジションの雇用を生んでもらうことが評価されるポイントとなります。本当にシビアですがシンプルで分かりやすいともいえますね。

能力と成果で人を評価する価値観

シンガポールで妻は働きやすそうにしています。日本の銀行などの会議の参加者は年配の男性がほとんどですよね。しかし、シンガポールでは半分以上が女性。住み込みで働いてくれるハウスキーパーさんがいたり、女性が働きやすい環境が整っていることが影響しているのかもしれません。

いずれにせよ国籍や人種、性別に関係なく、能力と成果を評価しましょうという考え方が徹底されている国ですからフェアであることは間違いないでしょう。

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野心的にネットワークを広げる人が成功する

私は日本人の中だけで人付き合いをしている人を見ると、もったいないなと思ってしまいます。それではビジネスに必要な情報は手に入りませんから。カンファレンスなどでも日系が主催するイベントには日本人ばかりが集まっているように思います。

私の知り合いに、某ハイブランドで店舗のフラワーデザインをしている人がいます。彼は、まったくコネクションのない状態で店舗へ飛び込み営業をしていたんです。さらに言えば、英語も堪能ではなかった。それでもなんとか名刺を渡したと聞きました。

ある日、ハイブランドのある店舗でフラワーデザイン担当者に空きが出てしまった。そのときに、「そういえばフラワーデザインできそうなヤツがいたな」と、彼にオファーがかかったそうです。結果、彼は継続して仕事をもらい、いまではシンガポールにあるそのブランド全店舗のフラワーデザインを担当しています。

このように、最近シンガポールに来て成功している人は野心的にネットワークを広げている方が多いです。うちの妻もそうですが、ビジネスをやりながら国立大学のエグゼクティブ向けMBAプログラムを受ける人もいます。そういうネットワークをうまく活かしている人は展開が早いし、成功につながると思います。

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自分がやりたいことの場として使えるかどうかを考えるべき

正直、いきなりシンガポールで起業するのはおすすめしません。成功確率で言ったら経済規模が大きい分、東京の方が高いに決まっている。シンガポールで成功しそうな何かを考えることは、完全に本末転倒だと思います。自分がやりたいことの場として使えるかどうかを考えるべきです。去年ぐらいから物と金の流れが、アジアからアメリカとロンドンの方にシフトし始めているのを感じています。

シンガポールは、ビジネスの舞台のひとつでしかありません。海外展開することを掲げるより、東京でやりづらさを感じたときに別の場所を考えるくらいがちょうどいいように思います。シンガポールへ行けばうまくいくかもしれない。ですが業種によっては香港やインドのほうが向いているでしょう。あくまで自分がやりたいことを根底に据え、それにあった場所を考えていくことをおすすめしたく思います。

シンガポールだったら業種によっては政府がサポートしてくれるし、現地採用したスタッフにも高スキルの獲得と継続的な事業成長を見せれば、精力的に業務へ取り組んで、良いパフォーマンスを見せてくれる。ビジネス的に面白い場であることは間違いないです。これからシンガポールで起業を考えている人に、最後にアドバイスがあるとすれば……うまくいかなかったら諦めればいい、ぐらいな感じで挑むのがちょうどいいかもしれませんね。

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岡村聡
1979年大阪府生まれ。東京大学工学部卒。東京大学大学院学際情報学府修了。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、国内大手プライベートエクイティ・ファンド、株式会社 アドバンテッジパートナーズに勤務。2010年に、株式会社 S&Sinvestmentsを立ち上げ、代表取締役就任。

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