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2017年01月06日(金)

利益とキャッシュの違いを解説。黒字倒産にならないために

経営ハッカー編集部
利益とキャッシュの違いを解説。黒字倒産にならないために

Profit Benefit Revenue Earnings Gain Gross Income Concept

起業して様々な苦労を経て、ようやく事業が軌道に乗ってきた頃、作成される損益計算書上では黒字となっているのに、資金繰りは楽にならない。利益は出ているはずなのに、キャッシュがどこに行っているのかわからない。そんな経験はありませんか?

資金繰りを考える上で、利益とキャッシュの違いを認識することは非常に重要です。今回は、利益とキャッシュの違いはどこにあるのか、解説いたします。

利益=現金が増える、ということではない

黒字倒産という言葉をご存知でしょうか。簡単に言えば、損益計算書上では利益がでているにもかかわらず資金繰り等が原因で会社が倒産してしまうことをいいます。なぜこんなことが起こるのでしょうか。

それは、現代の財務会計では利益が出る=現金が増えるということではないためです。家計簿的なイメージでは、黒字=現金が残ると認識しがちですが、会計上の利益は概念的なものであり、必ずしも現金の増加を意味するわけではありません。

では、その違いはどこから発生するのでしょうか。主な要因として掛取引、在庫発生、設備投資、財務取引があげられます。以下、各項目を個別に見ていきましょう。

掛取引や手形取引

一般消費者相手の小売業・サービス業等は別ですが、企業間取引では多くの場合、掛取引や手形取引が行われます。また、近年は約束手形等に代わるものとして、電子債権取引が普及してきています。

これらの取引の場合、売上として損益計算書に計上されるタイミングと、売掛金が回収されてキャッシュになるタイミングがずれることとなります。

例えば売掛取引であれば、毎月の売上を月末にまとめて顧客に請求し、翌月末の顧客の支払日に代金を受け取る、といった具合です。また、支払が約束手形であれば、支払日に顧客から約束手形を受け取り、それを指定期日に金融機関に持ち込み、ようやくキャッシュとなります。

このように、掛取引や手形取引の場合、損益計算書上は売上が計上されていても、それが実際にキャッシュとなるには一定期間が必要になります。

そのため売掛金管理を行い、売上が適正に回収されているか、長期にわたって滞留している売掛金がないかを確認していくことは、資金繰りの上で、非常に重要な作業となります。 なお、上記の締日・支払日・約束手形の期日等は、下請法で規制されているケースもありますが、基本的には取引を行う企業間で取り決めるものです。

顧客の社内ルールですでに決まっている場合も多いですが、新規の仕事を受ける際は、価格だけでなく、いつキャッシュとなるのかもしっかりと確認・交渉することが大事です。

在庫の発生

サービス業では在庫はあまり発生しませんが、モノを扱うビジネスであれば、在庫の発生は避けては通れません。モノを扱うビジネスの場合、サイクルとしては、仕入→売上→売掛金回収→仕入→売上というように、モノを仕入れ、それを売り、代金を回収し、また仕入れを行うこととなります。

そのため、売上が計上されていても、回収したキャッシュはすぐに仕入れに使用され、在庫になっている場合が往々にしてあります。会計上は仕入れをしても利益が減少するわけではないため、在庫が増えても利益が減少することにはなりませんが、キャッシュは仕入れにより確実に減少します。

もちろん、売上の拡大に伴い在庫も増加していくことは自然なことであり、在庫の増加が一概に問題であるとは言えません。しかし、在庫が長期滞留し、キャッシュの回転に影響を及ぼすようになると、大きな問題となってしまいます。

そのため、在庫量に常に気を配り、不良在庫となっていないか、または資金不足に陥らないか注意することは事業運営上、非常に重要なポイントとなります。

設備投資

ビジネスの形態や規模にもよりますが、大なり小なり企業は設備を保有しています。設備を購入した場合は、支払方法にもよりますが、その時点でキャッシュを支払います。

しかし会計上は、支払った金額すべてをその時点で費用とすることができるわけではありません。特別償却等の例外はありますが、基本的に一定額以上の設備を購入した場合、購入代金については、減価償却という方法により、一定の方法で期間按分することとなります。

そのため、購入時点では費用はあまり計上されていない一方で、キャッシュは大きく減少することになります。事業拡大のために設備投資を行ったが、運転資金が足りなくなった、では目も当てられません。設備投資を実施する場合は、銀行からの借入等でキャッシュを賄い、予想利益と減価償却費、ランニングコスト等を考慮しつつ、返済を行っていくのが一般的です。 設備投資は多額のキャッシュを必要とするため、資金繰りには重々注意する必要があります。

財務取引

財務取引というとわかりにくいかもしれませんが、銀行借入のような資金の調達・返済のことをイメージしてもらえば理解しやすいかと思います。

例えば銀行借入では、利息は損益計算書に費用として計上されますが、調達/返済は損益計算書には表れません。つまり、キャッシュとしては借入時に大きく増加し、返済を通じて減少していくことになりますが、利益としては調達/返済により増減するわけではありません。

結果として、損益計算書上の利益と実際のキャッシュは大きく乖離することになります。借入による資金調達は運転資金や設備資金等様々な理由で行われますが、基本的には事業活動による利益を源泉として、返済を行っていくことになります。

ただし、今まで見てきたように損益計算書上の利益がそのままキャッシュとして返済に使えるわけではありません。返済計画を立てる際は実際のキャッシュを常に念頭においておく必要があります。

事業運営にはキャッシュが不可欠です。数字上の利益に目を奪われて、実際のキャッシュが足りなくなった、といったことにならないように、その違いを認識し、資金繰りをしていくことが大事です。

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