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2017年10月17日(火)

ミャンマーで学んだ、バックグラウンドの異なるメンバーとのコミュニケーションの取り方&リーダーシップについて

経営ハッカー編集部
ミャンマーで学んだ、バックグラウンドの異なるメンバーとのコミュニケーションの取り方&リーダーシップについて

こんにちは、渋谷ですいな綜合会計事務所を経営しております、公認会計士・税理士の渡口と申します。

現在すいな綜合会計事務所には私を含めて5名のメンバーがおり、その中では31歳の私が一番年下です。私より40歳以上年長のベテランのメンバーもいます。

今までの人生で、特にリーダーらしいポジションについたことのない私ですが、優秀なメンバーに恵まれたことで、なんとかここまで乗り越えてくることができました。

その過程でリーダーシップについて学びました。とくに、スタッフのバックグラウンドを理解したうえで、コミュニケーションをとることがリーダーにとって重要な要素であることを体感しました。

今回はバックグラウンドの異なるメンバーとのコミュニケーションについて書いてみます。新しいメンバーとのコミュニケーションで困っている方の参考になれば幸いです。

公認会計士を目指したきっかけ

私は生まれてから高校まで群馬県太田市で育ち、大学は東京の大学に進学しました。大学2年次までは毎日が夏休みのような生活で、とても充実した大学生活でした。大学で得た友人たちとは、今でも深い付き合いがあり、一生の友人との出会いを作ってくれた大学には、とても感謝しています。

大学2年次が終わるころ、「このまま楽しい思い出だけで大学生活が終わってもいいのか?」と思うようになり、将来のために何か自己投資がしたくなりました。とはいえ、何を始めたらいいのかわからず、一番身近にあった公認会計士という資格を目指すことにしました。

公認会計士の勉強はそれなりにハードでしたが、2年次までに大学生活を満喫しきった私は、もう大学生活に未練はなく、遊びの誘いは全て断り、残りの大学生活の全ての時間を試験勉強に注ぎ込みました。そして、なんとか大学卒業後に合格することができました。

合格後に就職した監査法人では、社会人としての基礎、公認会計士としての基礎を学びました。その後ミャンマーの会計事務所での勤務を経て日本で独立し、今に至ります。

リーダーシップの大切さ

小学校から中学校まではサッカー部とバスケットボール部、高校ではラグビー部、大学では音楽イベントサークル、監査法人では大手通信事業者の監査チームと、今まで様々なグループに所属していましたが、特にリーダーらしいことをした経験はありません。

高校時代に所属していたラグビー部では、あまり真面目に練習していないわりになぜかキャプテンに任命されたことがありましたが、顧問の先生と馬が合わず夏合宿中に反乱を起こして半数以上を引き連れて合宿中に合宿所から抜け出し、チームに大打撃を与えたことがあります(そういった意味ではリーダーの素養はあったのかもしれませんが……)。

お世辞にもリーダーシップがあるとは言えない私でしたが、ミャンマーでお世話になった会計事務所で、人生で初めてリーダーとしての意識が生またキッカケがありました。

私がミャンマーに赴任した当初は、日本人の代表が1人、ミャンマー人のスタッフが6人在籍しており、ナンバー2のポジションとして加入しました。

主な業務内容は、現地の日系企業への会計税務アドバイス、決算書の作成、会計監査のサポート、財務デューデリジェンス、会社設立業務等。現地の日系企業に営業に行き、仕事をいただくところからスタートし、仕事をスタッフに指示して作業してもらい、成果物をレビューして最後にお客様へ成果物を提出するという流れでした。

また、スタッフを採用する面接官を務めたり、会計事務所の入出金の管理、スタッフの人生相談や事務所の雰囲気を作りといった、ナンバー2としてのマネージング業務も重要な任務でした。

クライアントからいただいた資料や情報を正確にスタッフに伝え、正しい成果物をクライアントに提出するためには、スタッフとのコミュニケーションを密にする必要がありました。当然、信頼されるリーダーにもならねばなりません。

異文化に対する戸惑い

日本とミャンマーでは、生活習慣や仕事の進め方に多くのギャップがあります。例えば、出勤はサンダルで出勤していました。雨季には町中が洪水になり、革靴では道を歩くことができないからです。

停電も頻発するため停電時はWi-Fiが使えず、復旧されるまで仕事になりませんでした。税法や会計基準もあまり順守されておらず、実務慣行による処理が優先されることがよくありました。

そんなギャップがあったので、加入した当初は、スタッフの間違いを発見したとしても「文化が違うのだから仕方がない」と諦め、とくに注意もせず、優しい上司を演じていたかもしれません。

作業の間違いの内容をスタッフに伝えることなく、自分で修正したこともありました。帰国子女ではない私は、TOEICの試験に出てくるような綺麗な英語しか聞いたことがなく、ミャンマー独特のなまりのある英語でのコミュニケーションもあまり上手くできずに苦労しました。

自分の方が上のポジションだし、監査法人で培った会計知識も負けるはずがないと、上から目線でスタッフに接していたこともあったと思います。しかし、スタッフに対するその姿勢は大きな間違いであることに気づいたのです。

ミャンマーでの苦悩と、リーダーシップの大切さへ気づき

そのような姿勢で偉そうに指示を出していたのですが、スタッフは私の指示をあまり真剣に聞いてくれません。成果物には間違いが目立ち、クライアントに提出できるレベルではありませんでした。

あるときスタッフから、「日本のスタイルで進めないで、間違いを指摘してほしい」と言われました。

それまで私が考えていた優しい理想の上司は、スタッフにとってまったく理想の上司ではなかったのです。文化が違うのだから仕方がないと”優しく”接していたつもりが、勉強熱心なスタッフ達の本心は、「もっと会計や税務の知識を共有してほしい」だったのです。会計処理に間違いがあったら、正しい会計処理を知りたがっていました。

お国柄かもしれませんが、ミャンマー人は勉強熱心で、自分の専門性を向上させるべく、仕事が終わってからもスクールに通ったりして努力されている方がたくさんいます。

もう一度現地の文化を本質的に理解し、スタッフ一人一人と真剣にコミュニケーションを取ってみようと思いました。また、自分が持っている知識を共有できるように行動することにしました。

具体的には、会計監査チームに対して、日本式の会計監査の勉強会を開催したり、SNSを活用しました。現地ではFacebook、ViberといったSNSが日本以上に流行していて、SNSを活用することにより、上司から部下、部下から上司といった双方向的なコミュニケーションを容易にしました。

間違いを発見した場合には、見逃してこちらで勝手に修正するのではなく、スタッフにその内容を伝え、なぜそういう結果になってしまったのか、正しい処理はこうで、今後このミスを防ぐためにはどうしたら良いか、日本ではこういったツールを使っているから参考にしてみてはどうか、といったことを、スタッフが納得するまでとことん話すことにしました。また、勉強会を開き、日本で学んだ会計知識を共有しました。

勉強熱心なスタッフですので、こちらが真剣に伝える姿勢で話すと、どんどん吸収してくれました。議論に熱中しすぎるあまり、時には言い合いになるようなこともありましたが、こちらの熱意も伝わり、スタッフのスキルが向上したことにより、業務をスムーズにクリアできるようになりました。

仕事以外の面でも、文化の違うスタッフとのコミュニケーションを大切にしました。 ランチはスタッフが持ってきてくれる弁当を一緒に食べ、それぞれのメンバーの誕生日には誕生日パーティーをしました。

ミャンマーには誕生日をとても大切にする文化があるので、誕生日を一緒に祝うことは欠かせません。よく水や電気が止まり困っていたので、現地の知恵を拝借すべく、日常生活の相談もしました。

ビジネスの現場においては、相手の文化や考え方を知ったうえで接するほうが当然有利です。仕事以外の面での付き合いを深めることによって、スタッフの文化や考え方を知ることができ、仕事においても大いに役立ちました。

ミャンマー赴任時代の苦悩を独立後に活かす

日本に戻った私は、監査法人時代の同僚と渋谷で会計事務所を開業しました。クライアントがゼロからのスタートでしたが、運よく開業時期が確定申告の時期と重なったこともあり、少しずつクライアントが増えていきました。

その後、会計士受験生時代の同志、経験豊富なベテラン職員などメンバーが増えてゆきました。

前述しましたが、事務所では私が一番年下です。もともと会計士業界に年齢は関係なく、合格年度、もしくは入所年度が早い順に序列が生れるのですが、とはいえその組織で一番年下の私がリーダーをしているのは、少し不思議かもしれません。

年下の私がリーダーシップを取れているのかはわかりませんが、優秀なメンバーに日々助けられており、常に感謝の気持ちを持って接しています。また、開業以来、離れていったメンバーがいないことも、ありがたく思っています。

各メンバーのバックグラウンドも様々であるため、毎日様々な考え方や意見が出ます。時には言い合いになることもありますが、できる限りメンバーのバックグラウンドを理解し、また、私のバックグラウンドを知ってもらうことにより、双方向的なコミュニケーションを心掛けています。

私が異国で学んだ、真のリーダーシップとは、「相手の文化やバックグラウンドを理解したうえで、コミュニケーションをとる」です。

相手のバックグラウンドや前職の文化を理解して、共に成長する姿勢で臨むことの重要性は、ミャンマーであっても日本であっても同じなのかもしれません。

1986年生まれ、群馬県出身。渋谷で会計事務所を経営する公認会計士/税理士。 有限責任あずさ監査法人(KPMG)にて、金融商品取引法監査、会社法監査、海外レポーティング業務等に従事。その後ミャンマーに渡り、ミャンマーの国際会計事務所にて、会計・税務アドバイザリー業務、デューデリジェンス業務、国際税務業務、会社設立業務、監査業務等にジェネラルマネージャーとして従事。 帰国後、すいな綜合会計事務所を設立。

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