2019年03月08日(金)2ブックマーク

タイミングが大切!自宅の購入費を非課税で贈与してもらう方法

経営ハッカー編集部

フリーライター(元東京国税局職員)の小林義崇です。

 

「住宅の購入」にまつわる税金の優遇特例は色々ありますが、恩恵を受けるための条件は複雑です。

万が一、手続きを誤って特例を受けられなくなると、あとから多額の税金が発生しかねませんので、あらかじめ特例を狙って準備をしておきたいところです。

今回の記事では、「住宅取得資金の贈与を受けた場合の特例」(以下「住宅資金特例」)について解説します。

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贈与を受けるタイミングなど、特例を受けるためには間違えやすい条件もありますので、これから住宅を購入しようと考えている方は、制度についてしっかり理解しておきましょう。

贈与税の非課税限度額は「年間110万円」まで

まず、贈与税の基本について、簡単に説明します。贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。

現金はもちろん、不動産であれ、保険金の権利であれ、経済的な価値をもつものはすべて対象となります。

贈与税の計算方法は、1月1日から12月31日までにもらった財産の合計額から110万円を引いた金額を、以下の表に当てはめて算定します(この方式を「暦年課税:れきねんかぜい」といい、そのほかに「相続時精算課税」方式もありますが、本記事では割愛します)。

年間110万円を超える贈与があった場合、翌年の2月1日から3月15日までに申告と納税をしなくてはなりません。

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 <国税庁ホームページより抜粋>

上記の表は、左側の「特例税率」と、右側の「一般税率」に分かれています。特例税率とは、父母や祖父母など、直系尊属から財産の贈与で、贈与を受けた人(受贈者)が20歳以上のときにのみ適用される税率です。

この要件に当てはまらなければ、すべて一般税率で計算します。 いずれにしても、贈与税なしで財産の贈与を受けるためには、年間110万円に留めなくてはなりません。

贈与税の税率は他の税目と比べ高く、たとえば、親から2,000万円をもらった場合、2,000万円×45%-265万円=635万円もの税額を納めなくてはなりません。

住宅取得資金のように、大きな買い物を目的として贈与を受ける場合には、110万円の限度内では収まらないケースもあるでしょうから、贈与税の申告が必要となります。

そこで利用したいのが、「住宅取得資金特例」なのです。

住宅取得資金だけに使えるおトクな制度

住宅取得資金特例を使うと、贈与を受けた金額が110万円を超えても、一定の上限内であれば非課税とすることができます。

この非課税となる上限額は、2018年1月現在の法令では以下の表のとおり、新居を取得するタイミングに応じて変動し、さらに、新居を取得する際の消費税が10%になっているかどうかで決まります。

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 <国税庁ホームページより抜粋>

上記の表のとおり、住宅取得資金特例は平成33年までの制度であり(元号改正の影響や、さらに特例が延長されるかは不明)、非課税となる上限額も毎年減っていきますから、多くの資金贈与を受ける予定のある方は早めに手続きを進めると良いでしょう。

頭金の贈与はOKでも、住宅ローン返済資金の贈与はNG

住宅取得資金贈与特例を使うにはいくつもの条件があり、一つでもクリアできなければ特例を使えなくなります。順番に説明しましょう。

1 贈与を受けたときに贈与者の直系卑属(贈与者は受贈者の直系尊属)であること。 ⇒直系卑属とは、血のつながる子や孫などを指します。たとえば妻の父から贈与を受けたときのように、血のつながりのない相手からの贈与は認められません(養子縁組をしている場合、実の父母に加え養父母からの贈与でも適用できます)。

2 贈与を受けた年の1月1日において、20歳以上であること。

⇒1月1日判定なので、20歳になってすぐ贈与してしまうとNGになります。

3 贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下であること。

⇒合計所得金額は、自身が稼いだ収入ですので、贈与を受けた金銭は含まず判定します。

4 平成21年分から平成26年分までの贈与税の申告で「住宅取得資金特例」の適用を受けたことがないこと。

5 自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から住宅用の家屋の取得をしたり、これらの方との請負契約等により新築若しくは増改築等をしたものではないこと。

実家の建物を買い取るような場合には使えません。

6 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて住宅用の家屋の新築等をすること。

ここは非常に誤りの多いところです。住宅取得資金特例は、新居の建物に名義がある人にしか使えません(わずかでも共有持分があれば大丈夫です)

たとえば夫が自分の親から贈与を受け土地を買って、建物は妻が自己資金で建てた場合、住宅取得資金特例を適用することはできません。

この場合、あとから妻名義の建物を夫名義にしても、住宅取得資金特例は使えませんし、妻から夫への贈与として、さらに贈与税が発生してしまいます。

もうひとつ注意が必要なのは、①贈与を受ける、②その金額を全額使って翌年3月15日までに新居を建てる、という流れを遵守しなくてはならない、という点です。

勘違いされるのは、「贈与された資金を住宅ローンの返済に充てても良いのでは?」という点です。これは現状の制度だとNGです。いったん建てた後に使うお金は、特例の対象になりません。「全額を充てて住宅用の家屋の新築等をする」という条件ですから、新居が建っているのに手元に贈与資金が残っていると特例を使えなくなってしまいます。

7 贈与を受けたときに日本国内に住所を有していること ⇒一時的な海外転勤などの場合には認められることもあります。

8 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は同日後遅滞なくその家屋に居住することが確実であると見込まれること。

⇒建築中などで新居に未入居でも、「入居予定」ということで住宅取得資金特例を使って申告することはできますが、12月31日までに引っ越しを終えていなければ、特例の適用が認められなくなりますので、修正申告が必要となります。

9 新たな家屋の登記簿上の床面積(マンションなどの区分所有建物の場合はその専有部分の床面積)が50平方メートル以上240平方メートル以下で、かつ、その家屋の床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住の用に供されるものであること。

10 中古住宅の場合、建築後使用されたことのないものか、建築後使用されたことのある家屋であれば、その取得の日以前20年以内(耐火建築物の場合は25年以内)に建築されたもの

⇒耐火建築物とは、鉄骨造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造などのものをいいます。

11 建築後使用されたことのある住宅用の家屋の場合、地震に対する安全性に係る基準に適合するもの(または耐震工事予定)であることにつき、一定の書類により証明されたもの 以上の条件をすべて満たした場合には、住宅取得資金特例を適用することができますが、最後に強調しておきたいのが、特例を使うためには、必ず贈与税の申告期限内に手続きを済ませなくてはならない、という点です。

贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、非課税の特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に戸籍の謄本、登記事項証明書、新築や取得の契約書の写しなど一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出しましょう。

もし申告期限に間に合わない場合は、特例は認められず、110万円を超えた金額に対して贈与税が課されてしまいますので、準備は早めにしておき、税務署でチェックを受けておくのが望ましいです。

 

1981年生まれ、福岡県北九州市出身。埼玉県八潮市在住のフリーライター 西南学院大学商学部卒。 2004年に東京国税局の国税専門官として採用。以後、都内の税務署、東京国税局、東京国税不服審判所において、相続税の調査や所得税の確定申告対応、不服審査業務等に従事する。2014年に上阪徹氏による「ブックライター塾」第1期を受講したことを機に、ライターを目指すことに。2017年7月、東京国税局を辞職し、ライターとして開業。
Twitter:小林義崇
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