個人事業主の廃業手続きと間違えやすい5つのポイント
個人事業主が廃業する場合は、「廃業届」をはじめとする各種書類を所轄の機関に提出しなければなりません。
廃業しているのにもかかわらず廃業届を提出しないままでいると、事業が継続しているとみなされて税金が発生してしまう可能性があります。
そこで今回は、個人事業主の廃業手続きについて解説していきます。
廃業手続きの方法
廃業手続きとは、必要事項を記入した書類を「税務署」と「都道府県税事務所」に提出することです。
手続きに必要な書類は、「青色申告をしている事業主」や「消費税の課税事業者」「給与支払者」などで提出すべき書類が異なります。
廃業手続きにともなって必要となる書類には以下のようなものがあります。
個人事業の開業・廃業届出書
事業所得、不動産所得、山林所得を得ている個人事業主が廃業する場合は、廃業届を提出しなければなりません。
開業時に提出したものと同じ「個人事業の開業・廃業届出書」に廃業に関することを記載し、廃業から1ヶ月以内に所轄の税務署へ提出します。
提出日が土日祝日の場合はその翌日が提出期限です。
<参考>国税庁:個人事業の開業・廃業等届出書
所得税の青色申告取りやめ届出書
青色申告をしている個人事業主が廃業する場合は、「所得税の青色申告取りやめ届出書」も廃業届と共に税務署へ提出します。
提出期限は廃業する年の翌年3月15日までで、取りやめの理由は「廃業のため」とします。
<参考>国税庁:所得税の青色申告の取りやめ届出書
事業廃止届出書
消費税の課税事業者は「事業廃止届出書」を税務署に提出します。
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
事業税を納税している事業者は、都道府県税事務所へ「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を提出します。
提出期限は都道府県によってそれぞれ異なるため確認が必要です。
所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書
所得税を予定納税している事業者は、「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」を提出することで納税額が減税もしくは免除されます。
<参考>国税庁:令和元年分所得税及び復興特別所得税の予定納税額の7月(11月)減額申請書
廃業手続きのベストタイミング
廃業手続きをできるだけ簡素化したいなら、12月末に近い時期の廃業がベストです。
そうすれば確定申告と廃業手続きを同時進行できるので、短い期間ですっきりと片付きます。
廃業で間違えやすい5つのポイント
不動産所得があるなら廃業できない
事務所として自宅を貸すなどで不動産所得がある場合は確定申告をしなければならないので、廃業届や青色申告の取りやめ届出書、事業廃止届出書などの提出はなく、引き続き事業主としての立場が継続します。
廃業後の必要経費の取り扱い
廃業したタイミングによっては、廃業後に生じた経費をどうするかという問題が生じます。
事業で必要経費となるものは、廃業した年の所得計算において必要経費として計上することが可能ですが、経費として認めるかどうかの判断が分かれる場合もあります。
可能であれば、年末に近い時期に廃業日を設定したほうが安心です。
“個人事業を引き継いで設立された法人が、個人事業当時から引き続き在職する使用人の退職により退職給与を支給した場合において、その支給した金額のうちに、個人事業当時の事業主の負担すべきものとして当該法人の所得の金額の計算上損金に算入されなかった金額があるときは、その金額については、その事業主が支出した退職給与として法第63条の規定を適用する。”
<引用元>国税庁:法第63条《事業を廃止した場合の必要経費の特例》関係
所得税と復興特別所得税の予定納税額の減額申請
廃業後の予定納税額が基準額よりも多いならば、「所得税と復興特別所得税の予定納税額の減額申請」を税務署に提出して予定納税額の減額してもらうことができます。
1年の途中で廃業した場合
廃業したのが1年間のどこであっても、翌年の確定申告は行わなければなりません。
まとめ
法人が廃業するとなるとかなり複雑な工程を通り抜けなければなりませんが、個人事業主の廃業は廃業に関する書類の提出と確定申告のみという簡素なものです。
ただし、同じ個人事業主でも選択している状況によって届出書類の数や提出先が異なるので、廃業の際に提出もれなどのないようよく確認しておくことが重要です。
廃業に関する最新かつ正確な情報を入手するためにも、国税庁のホームページを活用しましょう。
“まず、個人事業主が廃業を申し出る場合、誰でも共通して提出しなければならないのが、「個人事業主の開業・廃業等届出書」です。納税地となっている、所轄の税務署に提出を行います。”
<引用元>経営ハッカー:廃業の前に個人事業主が知っておきたい「手続きの仕方」