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2019年11月05日(火)

世界で加速する、フリーランス・ファーストの波。いま身につけるべきスキルとマインドセットとは

経営ハッカー編集部

柔軟な働き方が魅力のフリーランスが、世界で増加しています。経済規模も無視できない大きさに成長し、2019年には調査会社JWTのレポート『The Future 100』では「フリーランス・ファースト」という言葉が登場しました。

世界中で急成長するフリーランス・エコノミー

アメリカのクラウドソーシングサイトUpworkが実施した「Freelancing in America 2018」によると、アメリカにおけるフリーランスの数は2015年の5,300万人から2018年には5,670万人まで増加。さらに、世界的な金融機関モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)が2018年6月に出した「The Gig Economy Goes Global」では、フリーランスは総労働人口の35%を占め2027年までに国の労働力の半分以上になる可能性があるとしています。

アメリカだけではありません。イギリス・フランス・オランダでは、フリーランスの成長が雇用全体の成長を上回っています。EU諸国におけるフリーランスの数は2000年から2014年の間に倍増し、独立労働者協会(IPSE)によるとEU労働市場で最も急成長しているグループになりました。

日本でもここ数年フリーランスは増加中。クラウドソーシングサービスのランサーズが2015年から実施している「フリーランス実態調査」でも日本国内の広義のフリーランスは1,087万人、調査開始当初の913万人から22.6%増加、経済効果は20兆円超と言われています。
 

フリーランス実態調査

*括弧内は労働人口に関する比率。日本の調査は「フリーランスに関する実態調査」(2017.1/2018.2実施)、アメリカの調査は“Freelancing in America”(2016.8/2017.8実施)に基づく

フリーランス・エコノミーの成長要因はいくつかありますが、モルガン・スタンレーの同記事によると、①55歳から64歳のシニア層の労働人口の増加、②デジタル化、③仕事の満足度が成長の理由として挙げられています。

シニア層の労働人口増加:仕事の自由度を求めて

Morgan Stanley Researchによると、世界的な55〜64歳の労働者の数は2014年の10%から2015年に13%に増加、さらに国連は今後10年間で15%に増加すると予測。これは柔軟な職場環境と仕事、そして生活とのバランスを考慮し、年齢とともに独立して仕事をしたいという気持ちが高まっているためです。

日本でも、会計ソフトのfreeeが出した「起業に関するアンケート調査」によると、50歳以上のシニア層の4人に1人が「起業に関心がある」と回答。同社が主催した確定申告のセミナーでも、定年後の独立を視野に入れて情報収集のために参加したという人もいるほどです。

シニア層

もちろん、定年前にご自身のこれまでの経験やスキルを活かして独立したいという方もいるはずです。また、成熟した社会人だけではなく、ワークライフバランスを求めるミレニアム世代にもこれは同様の傾向で、新卒で会社に就職せずにフリーランスの道を選んだ人もいるほどです。

このように、個人の働き方に柔軟性を与えるだけではなく、社会的・経済的にも利点が大きいフリーランスですが、押さえておかなければいけないスキルや注意点があります。

さらに高まるデジタルスキルの重要性

フリーランス・マネジメント・システム(FMS)をご存知でしょうか?FMSとは、その名の通りフリーランスを管理するシステムで、フリーランスに依頼した仕事や請求などを一元管理できます。

モルガン・スタンレーはフリーランスの成長を支える要因の一つはこのFMSとしています。
オックスフォード大学によると、Fortune 500社のプロジェクトはFMSの登場で2016年から2017年の間に26%も成長したそう。日本ではまだメジャーではありませんが、エン・ジャパン株式会社の「pasture」がFMSのサービスを提供しており、フリーランスと仕事をする機会が多い企業を中心に活用されています。

また、クラウドワークスランサーズなどを通して、仕事の受注やスキル登録もオンラインから簡単にできるようになりました。フリーランスとデジタルスキルは切っても切り離せないものになっています。アメリカのクラウドソーシングサービスUpworkによると、成長する「フリーランスに必要なスキル」のうち20%はデジタルスキルだそうです。

フリーランスに必要なスキル

経理作業もスマホで完結

デジタルスキルとともに押さえておきたいのが、お金周りの知識です。万国共通でフリーランスを悩ませている重大トピックの一つといっても過言ではないでしょう。税金に関する知識や経理作業、老後資金の積立、資金調達や突発的な出費、体調を崩した時の保険も気になるところ。

こういったフリーランスの悩みや不安を解決するサービスが、各国で続々と登場しています。例えば、イギリスでは2018年にバックオフィスサービス『ANNA』がローンチされました。

ANNAは、Absolutely No-Nonsense Adminの略で「バックオフィス業務を明確にスマートにこなす」という意味です。スマホで全てが完結し、AIが自動で学習して請求・支払い漏れをリマインドしてくれます。経理作業に苦手意識を感じやすい、クリエイティブ業界の方をメインターゲットとして開発されました。クールなUI、ポケットの中で全てのバックオフィス業務が完了するスマートさは、多くのクリエイターに支持されています。

また、日本でも会計ソフトのfreeeがスマホアプリを提供。ANNA同様に請求書のリマインドをしてくれますし、スマホで撮影したレシートを登録し出先でも簡単に経理作業が可能。銀行口座やクレジットカード口座を連携すれば、手入力すら必要なく自動で経理を完結できます。

スマホアプリの画面スマホアプリの画面

App Store App Store

さらに特筆すべき点は、同社が提供する資金繰り改善ナビ。これまでの会計データをもとにAI(人工知能)が資金繰りの状況を予測、もし資金繰りが厳しい時は借り入れの提案や請求書の売却(ファクタリング)など、資金繰りに役立つ情報を提供してくれるのです。

freeeに限らず、他の会計ソフトや大手金融機関もAI(人工知能)を活用しフリーランスやスモールビジネスをサポートするサービスを提供しています。

仕事の満足度と幸福

最後にご紹介したいのは、仕事の満足度と幸福について。
フリーランス・エコノミーが成長している理由には、仕事への高い満足度があります。ランサーズが2015年から実施している、「フリーランス実態調査(2019年度版)」によると、仕事に対する自由度・裁量権・満足度はいずれもノン・フリーランスと比較して非常に高いと報告されています。満足している理由は「自分の能力を活かしている」と感じるから。

また、働く場所・時間を選ばないこともフリーランスの魅力の一つで、満足度にも大きな影響を与えているでしょう。

例えば、フリーランスのライターである筆者は、アムステルダム駅を一望できるコワーキングスペースで、様々な国のフリーランスと交流しながら仕事をしています。

アムステルダム中央駅
(著者撮影:曇りでも晴れでも美しいアムステルダム中央駅)

年に何度か日本に戻りますが、帰国時は母の介護をしながら自宅で仕事をしており、フリーランスでなければこのライフスタイルは実現できなかったと実感しています。

MeetBerlage
(著者撮影:1日に20-30人が利用するコワーキングスペース MeetBerlage
自身のスキルを登録するだけで無料利用できる)
 

このコワーキングスペースは、オランダの著名な建築家が設計した建物の一角を間借りして運営されています。オランダだけではなく、アメリカ・ヨーロッパ・アジアから多種多様なフリーランスが集まり仕事をしているのですが、仕事の満足度や幸福に関する考え方についてヒアリングをしてみました。

あるデザイナー男性は「自分の人生において一番大切なものは子供」と力強く言っていました。仕事ももちろん大切ですが、家族との時間もかけがえのないものだそうです。育児に関わることを「父親の権利」と考えており、子供の送り迎えをする男性や、朝の送り迎えのために自転車に子供を乗せて走るお父さんも、オランダでは珍しくありません。家族の時間をとても大切にしているのです。

また、指圧の思想に魅せられ指圧センターを経営する男性も「大切なものは家族と仕事、そして友人たちとビールを飲む時間。美味しいコーヒーを楽しむ時」と教えてくれました。

価値観や働き方が多様化しても、国が違っても、人々が根本的に帰る場所は「家族」なんだなと感じずにはいられません。まだ家族を持たない人たちにとっては、仕事を通して新しい発見をすることや、仕事仲間・友人たちと過ごす時間も大切なものでしょう。

滅私奉公・終身雇用の時代は終わりを告げました。これからはフリーランスだけではなく、企業に勤める人々からも柔軟な働き方に対するニーズが高まるはずです。

そんな時に重要なのが、これまで紹介してきたように自分の仕事をスマートにマネジメントするツールの活用や、自分の幸福にまっすぐ向き合えるマインドセットではないでしょうか。

文=佐藤まり子
 

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