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2019年07月09日(火)

【前半】アフリカで事業をしている人集合!“困りゴト”から見るアフリカとは?『Alliance for LOVE #1』イベントレポート

経営ハッカー編集部
【前半】アフリカで事業をしている人集合!“困りゴト”から見るアフリカとは?『Alliance for LOVE #1』イベントレポート

国際社会による地球規模での社会課題解決に注目が集まる今、アフリカへの関心も年々高まりをみせ、日本の事業団体によるグローバルな活動も増えています。一般財団法人アライアンス・フォーラム財団主宰で2019年6月18に行われた『Alliance for LOVE #1』では、2019年8月に横浜で開催される第7回アフリカ開発会議(TICAD7)に向け、アフリカで事業を行っている事業者が持続可能な発展と開発について話し合いました。
前半パートでは、事業者が“悩みゴト”や“困りゴト”を共有して展開したディスカッションの模様をレポートします。

既存のビジネスモデルでは、アフリカ社会は変えられない

山中:ファシリテーターの山中です。よろしくお願いします。今日のテーマは「困りゴトからみるアフリカ」ということで、同じ悩みを持っている人と交流したり、解決している人たちの情報を持ち帰ったりすることによって、ぜひ明日からのそれぞれの活動に活かしていただければと思っています。まずは登壇者の皆さんに自己紹介と、今何に困っているか、何を悩んでいるか一言いただきます。

加藤:マテリアルワークスの加藤です。マテリアルワークスは創業して14年になる会社で、主軸事業のマテリアル(素材)事業に関しては、徹底した現場主義で我々独自のマテリアルの流通を一から作ろうというテーマで取り組んでいます。創業して最初の10年間、商社機能を追求していく中でアフリカに行き着きました。
東アフリカ地域の製造業の方とのお付き合いが圧倒的に多いです。南アフリカには我々のサプライヤーさんがいて彼らから調達している状況です。最初は商社機能だったのですが、昨年、ライオン㈱さんから千葉の市原の工場を購入させていただき、物流機能を内製化するとともに、製造業にも参入しました。設備を一部アフリカに持っていき、商社機能だけでなく製造業としてもアフリカで事業をつくっていこうと仕掛けているところです。
今日の悩みは、アフリカから離れますが、スリランカ向けの商品で取引先からの支払いが遅れているといったことがあり、それをどう解決していくかといったところです。本当に毎日のように小さな問題が起こっている中で事業を行っている、という感じはしますね。

山中:僕も海外といろいろやりとりしますが、なかなか反応がないときがあるじゃないですか。そういったときはどうしていますか?

加藤:ちょっとしたことでもできることは全部やるようにしています。例えばまさに今日やってきたのですが、例えばスリランカの会社さんだけでなく同業者の方にも「最近どうですか?」と電話をかけたりとか。

山中:それはなぜ?

加藤:ローカル(現地)では同業・協働同士で連絡を取り合って情報共有などを行っているからです。ちょっとした牽制ですがそういう細かい積み重ねがノウハウになっているのかなと思っています。また明日は別の悩みがあると思います(笑)。

山中:ありがとうございます。続いて原さん、ご挨拶と今日の悩みを。

原:アライアンス・フォーラム財団の途上国事業部門、原孝友と申します。担当事業の一つめはザンビアとバングラデシュで行っている栄養改善事業です。二つ目はベンチャーを含む企業の方々、理念を共感できる方々と一緒に途上国で事業をつくる新規事業開発です。これらの事業の中でマインドセットを変えるというのが非常に大事でして、人材育成としての研修事業も日本と海外で行っております。なので栄養改善、新規事業開発と研修事業の大きく分けると三つを行っております。

山中:マインドセットって何を変えないといけないんですか?

原:アフリカなど途上国で新規事業を検討する際に語られるビジネスモデルは、過去の延長線上のものが多いんです。それを、そのままアフリカに横展開することもできるかもしれませんが、それでは社会は変わらないというのが私の実感です。特にアフリカはこれから人口が40億人くらいに増えるわけですね。貧困層が4割近くいて、そういった人をより質の高い(=教育を受けた)中間層に引き上げていくというのが我々のテーマですので、全く違うブレイクスルーが必要だと感じています。固定概念やこれまでの経験を一度壊さないと、同じ延長線上の発想になってしまうので、そういったマインドセットを変えるというような研修を現地で行っています。

山中:実際、固定概念ってあるんですか?「みんな何でそんなこと思っているんだろう」と客観的に見ても思うことがある?

原:本当にいろいろあります。例えば、「途上国」と聞くだけで、皆さん「何か問題があるぞ」と、「これを解決しなきゃいけない」と。例えば貧困というとどういうイメージされます?お金がないとか、いろいろあると思うんですけれど、お金がなくても豊かさがあることもありますね。
僕らが関わっている村は貨幣経済ではなく物々交換が中心です。そこに貨幣経済を持ち込んで事業を評価するのはどうかなと思いますし、もう少しマクロなレベルだと、例えばいわゆる低所得国と呼ばれる人たちが目指しているのは、やはり経済成長なんですね。GDPなどを上げようとしているのですが、それだけを計って豊かさを考えると、全く国の全体を見られない。例えば統計を調整しているところもあったり…。
ではコンテンツ(中身)の豊かさをどう考えるのか。本当の課題とは、そもそも途上国の目線でどういうものなのか。先進国の考え方、先進国という言葉も僕はあまり好きではないのですが、いわゆる先進国の目線で途上国と呼ばれる人たちと関わると、非常に問題が起きやすい。
そういったことを考えた上で現地に入り込んで、豊かな社会とは何なのかをその人たちの目線で考えながら事業をつくるのが非常に大事だと思います。それをせずにビジネスになるところのみを目がけてやっていくと、結局は“富める者が富める”というような経済になっていく。ビジネスとして成功することは大前提で必要なのですが、その先に社会の豊かさがしっかり実現できるのか、その点我々の事業部も悩みながらやっています。

山中:なるほど。でも実際は、日本の企業本体が成長するために、いわゆる成長マーケットとしてアフリカを見ていて「事業をしたいが困っている」という人も多いんですよね?

原:それは非常に多いですね。SDGsに絡めて何か事業をやりたいというお話をよく伺いますが、やはり表面的な話で終わらないように私たちは非常に気をつけてまして。
基本的にはSDGsに至る一連の流れを含め、いわゆる国連社会、先進国が最終的にリードしてきたものではあるんですね。他方でアフリカの村の人たちがSDGsを知ってるかといえば、知らないわけです。それよりも自分の目先の生活ですよね。そういった状況を踏まえながら、現地の人々たちとの対話を通して、お互いに描ける未来をつくっていくことを非常に注意して行なっています。その視点をこれから進出される企業さんともぜひ共有したいですね。

山中:ビジネスだけでなく、地域性の課題感や、どう融合して共存していくのかを考えないと、自分たちが成長するために攻めていくだけでは受け入れられないし、続かないし、社会が豊かになっていかない、ということが前提としてあるというわけですね。

原:そうですね。今後の事業はより地球規模で複雑に絡み合うと思います。所謂途上国だけ、先進国だけの話ではなく、全ての人が関わるテーマに、利害関係がある中で、お互いに新しい未来をどう構築していくか、そこに合意をしてから、目の前の事柄に取り組んでいくことが大事だと思います。

人から「どうせ無理」と言われた事業はうまくいく

山中:わかりました。では鈴木さん、自己紹介と今日の悩み事をお願いします。

鈴木:ボーダレス・ジャパンの鈴木です。よろしくお願いします。僕らはずっとソーシャルビジネスを行ってきた会社で、13年目を迎えるところです。グループ全体で25の事業をしています。
海外という観点でいえば、今9か国で事業展開をしていて、つい最近インドの設立登記が終わり「ボーダレスインディア」がスタートします。アフリカでいうと、ケニアでアルファジリという企業体が、小規模農家さんの生活を向上させていこうという事業モデルをやっていて。さらに将来的にはアルジェリアで展開すべくビジネスプランを練っているタイミングです。
ということで、今25の事業があるんですけど、要は小さくてもいいからソーシャルビジネスが社会問題を解決する、という話で。今SDGsの文脈がありましたが、大きな企業さんで「SDGsに関して何かやらなきゃいけない」という話がどんどん出てきているんですよ。ただ、伺っていると大抵は「何をやっていいのかわからない」という話にたどり着きます。
皆さん、栄養改善といった大きなフレームでのお話をされていて、パブリックセクターのお話をしているのかなという印象なんですよ。でも社会問題って、個人の問題と集合体である以上、個人のことをちゃんとわかっていない限り、事業になるわけがないですよね?「個人が困っていることは何か」それに対して「どういうソリューションが提供できるか」をしっかりと聞き込みながら新規事業をしなければならない、というお話をさせていただいています。
世の中を良くするためには、社会起業家をどれだけ増やせるかというのが一番重要ですし、いろいろ試行錯誤しながら今日も明日も明後日も悩み続ける。そんなところですね。

山中:ありがとうございます。結局はマーケットありきというよりも、人ありきという感じが僕はしていますが、アフリカでの事業のあり方は、「マーケット」「人」どっちから入る方がいいのか。その決断はどうされていますか?

鈴木:ポイントはビジョンです。「どんな社会を作るためにビジネスを使うんですか?」という考え方。あそこが儲かっているからそこに入って利益を出しましょうというのは、ちょっと語弊があるかもしれませんが、誰がやってもできるんじゃないかと思うんです。だけど本来、ビジネスというツールは関わる人みんなが幸せになるための方法論であって、だとしたら「誰を幸せにしたいんですか?」という話になるわけです。
僕らが常にスタート地点にしているのは、いわゆる経済循環の中から仲間はずれになっている人たちを、経済循環の中に新しく取り込み直して、ここでしっかり収益性が上がるということをしていく。それに合わせてサステナブルで、かつエクスパンダブルなビジネスモデルを組む。
なので必ず最初に見るのは、社会の中で困っている当事者ですし、それぞれが本質的に今の世の中の社会構造の中で何に困っているか、何が原因でその状態に陥っているのかを突き詰めた上で、その構造をどれだけ打開できるかというソリューションを描いて、そこから初めてビジネスモデルに入っていく。こういった順番です。

山中:ビジョンはどうやって見つけるんですか?もしかしたら、「何かやりたいけどビジョンが見つからない」という人もいるかもしれない。

鈴木:まずは何でもいいので、現地に行って実際に人に会うことです。皆さん社会問題っていろいろなイメージを持ちますよね。貧困もあれば母子家庭の問題もある、環境問題もあります。あらゆる問題が、いっぱい知識としてあるはずなんですよ。その中で何かしら自分の心にヒットするものをまず決めて、そこを深掘りして実際に会いにいってみる。そういうアクションの中で、「何これ!」と思う課題感が見つかると思うんです。それが見つかったら、すごく重要なのが、「俺これ解決する」「私これ解決したい」と人に言いまくることです。

山中:やっぱり「言う」のが大事?

鈴木:そうです。人に言うと、いつの間にか周りの人たちが応援してくれて「情報をあげるよ」という状況に必ずなって。周りが応援してくれたら、結局いつの間にか自分のビジョンになっていると思うんです。それに向けて自分の中で事業というものにひた走る、そういう順番かなと思います。

山中:そうですよね。僕も事業をつくるときに、最初はいろいろな人にどんどんアウトプットをして、意見をもらっていく。でも特にソーシャルビジネスや社会課題という領域の話になると、応援してくれる人と、「やめておけば」という人に分かれると思うんです。要するに自分がやりたいと思っても、外的ブロックがかかる場合も僕は少なからずあると思っていて。

鈴木:もちろん、その都度ありますね。経営というのは毎日毎日壁にぶち当たり続けるので、自分なりの判断ができないときだってあるじゃないですか。だから仲間が必要で。仲間がお互いに「それだったらどうしようもないんじゃない」みたいな話をすればいい。
周りから「どうせ無理だよ」と言われたら、それは「万歳」と思った方がいいですね。もちろんいろいろなパターンがありますが、「今までの常識」だったり「既成概念において」言ってくれたら、その事業はうまくいきます。つまり、誰もやっていないってことなんですよ。誰もやっていないということは、そこに新しいマーケットやトライすべきポイントがあるということなんですね。
事業は、ビジネスサイドから見ても、結局まだやっていない人、まだやっていない領域に対して、自分達が正しいバリューを見出すことで成り立っていくじゃないですか。だとすると、やっぱり「無理だよ」って周りが言ったらラッキーと思って、徹底的に深掘る。そういった感覚を持つのはすごく大事かなと。

山中:そうですよね。別に人がダメというからその事業が成立しない、というわけではないじゃないですか。若い時に海外行くとみんなに「無理だよ」と言われるんですよね。でも僕は海外に言って、うまくいったと。事業が成長してくると、「やっぱりできると思ってたよ」と言い出す人もいて。だから周囲の言葉は気にせず、むしろチャンスだと思って取り組んだ方がいいと思いますね。そういうマインドは大事かなと思います。

“現地のリアル”を知ることの必要性

山中:次に、困りごとの中でお金の話が結構ありました。多かったのが、「海外で事業をやりたいけど資金が集まらない」「日本での事業ではお金が集まっても、海外でやるというだけでお金が出ない」という悩みです。実際に加藤さんは、事業を展開していく中で、お金に関してもいろいろな経験をされていると思います。海外で新しく事業を始めるときのお金の考え方をお話しいただけたらと思います。

加藤:我々の会社でも、アフリカに限らずいろいろなことにチャレンジしたいというメンバーはたくさんいます。ただ「これがやりたいから先行投資でこれくらいかかります」という話は、社内ではさせない、しないようにしています。それをやりたいんであれば、同じ商材、同じビジネスモデルを足元の日本でやってみて、その収益を自分で稼ぎながらやるようにと。

山中:例えば、事業としてケニアで何かやりたいんだといったときに、ケニアに投資する前に足元を固めて、余裕ができたら行ってきていいよということ?

加藤:いや、それは同時進行でやるようにします。でもそこはハードワークですよね。

山中:ほとんどのところはそうじゃないかなと。大企業であれば「行ってこい」と言ってくれることがあったとしても、そうでなければ、いわゆるダブルワークになっていくということは、必然的に多いかもしれないですよね。

加藤:会社全体とすると、個の集合体ですから持続的に事業を行うには、全員足したら突破しないといけない必要な採算ラインや予算があって。やりたいことにコミットした責任という意味では、実現するための予算への責任はやっぱり頑張ろうという。

山中:ダブルワークの割合はどうしていますか?例えば、1週間のうち1時間しか枠がなかったら、「やれという割には時間ないじゃん、どうやって事業作るの?」という声が出てきたり。

加藤:それはいろいろやり方はあるんです。例えばアフリカでやりたい事業があったときに、それをブレイクダウンしていくと、そのテーマの中で日本側でもスタディしながらできる、というのあるじゃないですか。それはダブルワークになっているようでも、一連のプロジェクトにはできると思うので。

山中:そういうダブルワークを活用しながら、足元も固めながらやっているということですね。鈴木さんに聞きたいのですが、なぜアフリカに行くのか、なぜその国を選ぶのかという理由も重要かなと思うんですよね。先ほどのお話しのように体験も重要ですけど、大手の人って、原体験がなかったりフォーカスしたい国がなかったりする状態で海外に行かされることも結構あるじゃないですか。そこを悩んでいる人がいたら、どういうアドバイスをしますか?

鈴木:今日、そういう方は会場にいらっしゃいますか?(挙手なし)。あ、いませんでしたね。

山中:じゃあ大丈夫ですね。でも、僕はたまにそう思うことがあるんですよ。「どうするんだろう?」と。

鈴木:僕らはソーシャルビジネスという特性もあるのですが、結局事業が成功する確率が一番高いのは「その人がやりたいことをやる」。まさしくこれなんですよ。その人自身がケニアでやりたいんだったらやればいい、という感覚なんですよね。ボーダレス・ジャパンは、そもそもやりたいことがある人が入って来るので、最初から理由がはっきりしているケースが多いんですよ。
ただ、普通は皆さん、ビジネスサイドから考えられるじゃないですか。そのときに、自社のプロダクトやサービスの強みが活かせる国はどこか、下調べに相当時間をかけて、結局1年かけてもどこの国に行くか決まらなかったみたいな。そういうパターンは多いのかもしれないですけど。
結局、僕は「決めること」だと思うんですよね。例えば「アフリカに行こう。じゃあ東にしよう」みたいな。東だったらどの辺か、まずはとりあえずでも決めることが大事だと思うんです。まず決めて行動を起こし、東側がアウトなのか、それともお隣の国ならいいのか、単純にそれをスピーディに検証し続ければいいだけの話で。それを5回10回検証し続けたら絶対何かに当たるはずなので。一か月もかからないと思うんですよね。まず決めて突っ込んでみて、間違ってたらピボットして。このスピードでどんどん進んだらいいかなと思います。

山中:リアルを知るというか。現地に行かなければ「ここでやる」というのが決まらないから、とりあえずどこかに行くと決めてみる。それはどこでもいいかもしれないですよね。例えば「絶対に1週間で3カ国を回るんだ」と決める。そこからスタートするかもしれない。

鈴木:どうせやるんだったら、やっぱり自分が、当事者になる人がまず行ってみるという状態を会社の中でつくれるといいですね。

事実だけに着目してニーズを汲み取る

山中:「未知の領域で本当に困っていることが見えない」「本当に大きな枠で、どこの国を選んでいいのかわからない」など、メインターゲットがわからないという質問が2つくらいあったのですが、原さんはどう思われますか?現地のニーズや困りごとのヒアリングを相当やっているのではないかと思います。どのようにされているか、教えてください。

原:現場レベルの情報、ニーズ、困りごとをどう引き出すかということは、「どう問いかけるか」だと思うんですね。例えば、栄養改善で現地に入ると、現地の人が我々が栄養改善をしてくれるんだと思って、「食べ物がない」など「栄養改善のことばかり言うんです。それは僕らのラベルをみているわけですね。いかにそのラベルをなくして、現地の人々の本当のニーズをつかむかというのは、かなり人類学的なアプローチがいろいろ研究なされているんですけれども、ものすごく簡単に言ってしまえば「事実だけを聞く」ことですね。

山中:「事実だけを聞く」とは?

原:例えば、今日何を食べたのか。それは事実ですね。答えられることも事実です。でも1週間前に何を食べましたかと聞くと、我々日本人でも結構あやふやで、それは事実じゃない可能性があるんですよね。何が足りないんですか、何が課題なんですかと聞くと、そこには個人の解釈があり、価値観があり、経験があります。その人の思い込みが入るんです。それは事実じゃない可能性が非常に高い。
僕らは言われている事実だけに着目して、できる限りその場のニーズをつかみ取ろうと思っています。できるだけ解釈をはさまないで生の事実を聞くことに注意をしながらやっています。

山中:今日は何を食べた、1週間前に何を食べた、というのは時間軸の問題で、その事実はわかりやすいですよね。でもそういう明確な事実がわかりづらい事例もたくさんあると思います。

原:なので、「WHY」というクエスチョンは危険です。極端に言えばですよ。「WHY」の質問はかなり解釈が入ります。我々は意図的に使い分けていますが、基本的には「WHAT」の質問ですね。何を食べたのか、何をしたのか、質問を峻別して現地で使用しています。

現地パートナーの見極め方は?

山中:なるほど、わかりました。「パートナーの探し方や決め方がわからない」という質問が結構あります。言語や習慣の違いの中で、どういったパートナーを自分たちが決めていけばいいのか、悩んでいるという方がいらっしゃいました。加藤さんはどうですか?

加藤:事業の業界の特異性があるのかもしれませんが、商社としてやっていると、ある商品部に対してセールスを決めるときは、だいたい1日くらいで決めなければいけないんです。そういう時間軸のところにいると、やっぱり「勘どころ」というか「勝負どころ」を共有できる人が極めて重要なんですね。極端にいうと、商社でいうと赤字でもやるぞと、今はやる瞬間だぞ、といったことを共有できるパートナーです。それは総合的なジャッジメントをするんですけど、もろもろ鑑みた上で、一回目の取引は、かなり強引に入っていきます。

山中:やっぱりそれは日本と一緒で、一回取引があった方が、当然次もやりやすくて、キャパも大きくなっていっていく。

加藤:そうです。商売をやるとドキュメントのやり取りも出てきますし、顔が見えてくる。そうして、どんどんやりやすくなっていくのは確かですね。最初は結構な赤字でも3ヶ月くらい取引を続けたという事例もありました。

山中:でもそことは取引したいから、赤字でも行けという総合的な判断があったということですね。原さんはどうですか?活動上、現地パートナーとがっつり対峙することが多いと思いますが、全てがウェルカムじゃないでしょう?こういうパートナーだったら組まないとか、それも重要じゃないですか。

原:非常に重要ですね。我々は社会的理念を高く掲げて活動しておりまして、その共感を得られないパートナーとは基本的にやらない。社会の変革や、いかに貧困層などをインクルーシブしていくかがテーマですので、利益や収益も事業になりづらいところに配当していきたいと思っています。そういったことに共感いただける企業、現地のパートナーを重視しています。現地政府に対してもそういうことは提言しております。仲間と一緒に相談しながら、このパートナーは本当に信頼に足りうるのか、本気でやる相手なのかどうか、そこは非常にシビアに見極めていますね。

山中:ビジョンや理念を大事にしていくところと、出会う人をパートナーや仲間にしていくというのは、日本も一緒ですけど、特に重要であるということですよね。見極めはどう判断しているのですか?行動をみるのか、何度も話すことで見極めるのか。

原:それは「こちらが本気かどうか」だと思っています。本気で栄養改善したいとか、事業をつくりたいとか、こちらが本気でこれがやりたいと相手に伝える。相手がそこで一歩引いたら、これはもう「ちょっと違うな」と。

山中:熱量で見ていると。こちらの本気の熱量に引いちゃう人はダメだってことですね。

原:現地で付き合いのあるパートナーの方々は、こちらの本気に覆いかぶさるくらいの熱量で接してきます。先ほど鈴木さんの話にもあったように、みんなで応援できるような仲間って、会話の中で端々に伝わってきますので、いい仲間をたくさんつくっていくことは、アフリカ事業において大事だと思います。
自ら現場に行くことだったり、いろいろな言葉にして発信してみたり、その繰り返しの中で熱量や想いが高まってくると思いますので、そういう方々と繋がれる機会はすごく大事にしたいと思っています。

自分たちの「当たり前」を押し付けない

山中:なるほどね。熱量の中で見極めていく、引いちゃったらダメですね。鈴木さんは25の事業を9か国で展開されていると。そこで聞きたいのが、海外とやりとりをする中で「アポが流れやすい」「予定の計画が計画通りいかない」ということです。海外の人たちとやり取りをしていく中で、そういう経験や、もしくはどう対処しているのか、前に進むように瞬時に予定を組みなおすのか、リマインドをかけてなんとかするのか、どうされていますか?

鈴木:グループ内では、そういうことはありません。でもその先は、やっぱりいろいろあります。いわゆる天候とか「道路がない」とか。雨季で雨がドバーッと降ると、もうぬかるみで移動ができないとか、そういった予期せぬ問題をいっぱい抱えるんですね。あとは通関でハンコをおしてくれる人の“アンダーザマネー”みたいな話とか。要は社会の仕組みとして、そういう話がどうしてもある。それを真正面から行くと超えられないじゃないですか。そうなった時に「さあどうする」と。どうしても社会システムとして成り立っている状態の中で、じゃあ法律を変えるのか、政治を変えるのか、なんて話をしても無理なんで。さっさと前に進むためにどうすべきか、というのは常にジャッジメントしますね。

山中:正解は特になくて。原因はさまざまじゃないですか。豪雨かもしれないし、体調が悪いかもしれないし、サボッているのかもしれない。要因はわからないけれど、その時その時に応じてベストな選択をみつけていく努力をする、それ以外ないかもしれない。

鈴木:基本はそうですね。常に最善の手を打ち続けることでしか前に進まないとすれば、その場その場で総合的に勘案しながら、前に進んでいくってことですね。
もう一つは、そもそも現地のことが全部わかるはずがないと思うんですよ。わかろうと思ったからといって、わかるわけじゃないと僕は思うんですよね。30年も40年もそこに住んでいるわけじゃないのに、いきなり行ってしゃべって、自分たちが文化をわかったよなんて絶対に言えない。
とすると一番大事なのは、わかる努力をどうするかという方法論の話であって。その方法ってシンプルなんですよ。どれだけしゃべる時間をつくるかっていうこと。そのコミュニケーション量に比例して、その人たちのことを理解でき、信頼が育まれていきます。「効率的にやらなきゃ」というだけで、その時間を削ることはしない方がいい。

山中:今のですごく大事だなと思うのが、自分たちが日本でビジネスをしていると、それと同じ感覚で海外にいってしまいがちだということ。現地に自分たちの「当たり前」を押し付けてしまうというのは、僕もたくさん見てきました。鈴木さんや原孝友さんからお話があったように、その人たちの生活や習慣が実はあって、それを知らないとほとんど押し付けになってしまうんですよね。自分たちの当たり前を軸に物事を考えて、「なんでできないの」って。
例えば時間感覚のズレがあった場合は、その習慣をちゃんと考えた中でスケジュールを組んでいく。文化の違う人たちが一緒に何かをつくるとき、一方的に物事を押し付けないというのは、結構大事です。
でも無意識の中で相手の習慣や文化を見ていない可能性があるから、そういったときは、「相手はどういった生活をしているのかな」とか、「仕事以外のときはどうしているのかな」とか、もっと話をして背景を知ってみる。もっとフラットに人と人としてしゃべる時間を必ずつくるのは、現地のニーズを知る上でも大事かなと思っています。加藤さんは、一番最初はどこの国から行ったんですか?

飛び込み営業から広がる人脈

加藤:仕事するようになってからは、東南アジアを順番に周りました。

山中:そこで自分たちの固定概念とのギャップを感じたことなど、リアリティのある話があれば聞かせてください。

加藤:東南アジアにいっていた十数年前というのは、まだ自分の中で判断軸がなくて、中華圏のお酒の文化に翻弄されていました(笑)。あと中華圏の人と、よくタバコ休憩にいっていました。タバコは吸えないんですけど、それがコミュニケーションなんですよ。「タバコ吸う?」って。お酒も飲めないけど、頑張って(笑)。
会話って、どうでもいいところから始まるんです。例えば、アメリカの製造業の会社にセールスに行ったときなどは1日中工場にいるのですが、工場の人と1時間くらい話していたり、生産ラインに立っている人の横にずっと立っていたり。担当者以外の人ともコミュニケーションするようにはしていますね。そういう中で、オーナーの理念などが見えてくることがありますし、泥臭いですけど、そういったところは気を付けていました。

山中:最初って、1人目を探すのが難しくない?1人仲良くなったらどんどんいけるかもしれないけど、その1人目を見つけるのは勇気がいるんじゃないかと思っていて。出会いの機会はどうやってつくりますか?

加藤:そうですね…そこはまだ答えが出ていないです。巡り合わせのようなこともあるので。でも、「俺すごいぞ」みたいな話をする人とはお付き合いしないようにしていますね。

山中:そうしたら、どうやって人を紹介してもらうんですか?いろいろな国で取引があるでしょ。その最初のきっかけというか、誰かに紹介してもらうのか、ふらっと1人でバーに行ってしゃべりかけるのか、みたいな。経験上はどういうアプローチで入っていくの?

加藤:うちの場合は本当に飛び込みです。取引できそうなところにひたすら電話かけて、泥臭いことやっていますし。飛び込み営業もしていますね。門番がいるようなところにいって、すみませんって営業して。そんな感じで。

山中:原さんはどうですか?

原:ザンビアでは道端から始めることもありますし、商材をもって街を歩いて、売れそうなところに飛び込み営業したりしています。

山中:結構みんな飛び込みが多いんですね。

原:長年やっていますので、いろいろな方からご紹介いただくこともありますし、展示会でブースを出してそこから広げていく、というやり方もします。でもそれ以外ではリーチできない場合もありますし、全く人脈がない村に降りて開拓してみようみたいなこともありますし。何日もかけてご縁がある方を開拓する、足で稼ぐというのは、たぶん皆さんされていると思います。

山中:最初の最初はホームページをみたり、街にいってみたりして実際に声かけてみると。話してくれるものですか?門前払いされたりは?

原:日本人だと、基本的に海外はやりやすいです。ODAなどで日本人ブランドというのはすごく浸透していて。日本人でこういう事業でこういうことやりたいと言うと、理解してもらえることが多いです。こういう社会をつくりたいんだって話をすると、飛び込み営業でも意外と親身に聞いてくださいますよ。

山中:すごいですね。日本人の特性をしっかり使って、どんどん飛び込んでいくことによって話を聞いてもらったり、そこから仲良くなった人がまた紹介の幅を広げてくれたり。意外とその中から広がっていくってことも十分あるのかなと思います。

後半へ続く>

【プロフィール】
鈴木雅剛(すずき まさよし)

株式会社ボーダレス・ジャパン 代表取締役副社長。1979年広島県生まれ。2004年大学院卒業後、株式会社ミスミに入社。2007年、田口一成氏と共に、株式会社ボーダレス・ジャパンを共同創業。同社は、社会起業家が集い、そのノウハウ、資金、関係資産をお互いに共有し、さまざまな社会ソリューションを世界中に広げ、より大きな社会インパクトを共創する「社会起業家のプラットフォーム(共同体)」として、社会起業家およびソーシャルビジネスを次々と世に送り出している。

加藤勇治(かとう ゆうじ)

マテリアルワークス株式会社 代表取締役。兵庫県出身。東京大学工学部都市工学科卒業。在学中にマテリアルワークス株式会社を設立。旧来の業界の常識にとらわれることなく、ものづくりの現場、そこで働く人とワークすることに徹底し、リーマンショックの大不況の際に大きく事業を拡大することができた。現在は多くの素材メーカーの一次店としてアフリカだけでなく国内外の多くの製造業に素材を供給している。2018年にはライオン株式会社より市原市五井の工場を購入し、製造業にも参入。熟練の現場力を持つシニア層から若年層への継承をテーマとして素材の流通だけではなく蓄電池の製造や水環境制御製品の製造を行う。

原孝友(はら こうすけ)

アライアンス・フォーラム財団 途上国事業部門 マネージャー。大学卒業後、オフィスや商業施設の空間をプロデュースする会社にて、アパレル企業の海外展開プロジェクトに従事。その後、アジア経済研究所開発スクール(IDEAS)開発学修了、外務省、仏HEC経営大学院留学、国連インターンを経て、アライアンス・フォーラム財団に入団。現在は、ザンビアとバングラデシュを中心に栄養改善事業、人材育成事業、新規事業開発等を担当。

山中 哲男(やまなか てつお)

株式会社トイトマ代表取締役会長。1982年兵庫生まれ。高校卒業後、大手電機メーカーに入社。約1年後に独立し、飲食店を開業する。2007年、米国ハワイ州に、日本企業の海外進出やM&A仲介、事業開発支援などを行うコンサルティング会社を設立しCEOに就任。日本企業の海外進出支援、M&A仲介、事業開発支援を行う。2008年、日本で株式会社インプレス(現:トイトマ)を設立し、代表取締役に就任。既存事業の事業戦略策定や実行アドバイス、新規事業開発支援やプロジェクト開発支援を中心に活動中。国土交通省が行う公的不動産活性化プロジェクトを率いるなど行政プロジェクトも手がける。2015ワールド・アライアンス・フォーラム事務局長。国際U3A(AIUTA)及びアジア・太平洋地区合同会議2016実行委員。

【団体概要】
一般財団法人 アライアンス・フォーラム財団

所在地(日本オフィス):〒103-0023 東京都中央区日本橋本町2-3-11 日本橋ライフサイエンスビルディング5F
設立年:1985年

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