【後半】アフリカで事業をしている人集合!“困りゴト”から見るアフリカとは?『Alliance for LOVE #1』イベントレポート
国際社会による地球規模での社会課題解決に注目が集まる今、アフリカへの関心も年々高まりをみせ、日本の事業団体によるグローバルな活動も増えています。一般財団法人アライアンス・フォーラム財団主宰で2019年6月18に行われた『Alliance for LOVE #1』では、2019年8月に横浜で開催される第7回アフリカ開発会議(TICAD7)に向け、アフリカで事業を行っている事業者が持続可能な発展と開発について話し合いました。
後半パートでは、空港から駆けつけ緊急参加したアライアンス・フォーラム財団代表理事・原丈人氏によるスピーチをお届けします。
現地に行って見聞してから判断する
原丈人氏:今日はお忙しいところ、ありがとうございます。私も今、香港のデモに参加して帰ってきたところなんだけど(笑)。先ほどから聞いていて、「現地の価値観と違うことを押し付けてはいけない」という話題がありましたが、そもそも民主主義は押し付けの価値観だからね。民主主義は正しいのか、どう思います?国によっても歴史によっても文化によっても違うよね。だから本当に難しい。
今回も香港のデモには、いろいろな人が参加していました。日本の新聞を見ていると、中国共産党の横暴が目立つような印象ばかりを受けるけど、現地に行くとまた違う。中国の国営企業から多額の金を横領した人たちが香港に何千人と逃げているのですが、容疑者を中国本土に引き渡すことを可能にする「逃亡犯条例」がないので、中国政府は連れてこれないんですよ。こういう報道は日本ではあまりされていない。だから現場に行って、いろいろ聞いてみないと分からない。私はいろいろなことが起きると、必ずそこに行って見聞して、自分の考えを決め、それで判断をした上で進めていきます。
最先端技術は中国に移っている
私が香港に大変関心をもっているのは、私が長年拠点にしているシリコンバレーが近い将来に潰れると思っているからなんですね。中長期の研究開発が米国では起きなくなっている。統計を見てもわかります。20年ほど前は、世界の30分野の最先端は全てアメリカです。去年の暮れに出た統計は、これはオランダの統計で客観的にアメリカと中国を見ているんだけど、30分野のうち23分野はもう中国に移っているんですよ。今、中国の南部のグレータ・香港ベイエリアには、ライフサイエンスから医学まで、すごいテクノロジーがたくさん集まっています。こういう地域の人達と、どうやって新しい仕組みを作っていくのかが、私の関心事でもあります。
事業の目的は健康で豊かな中間層をつくること
前半のディスカッションでアライアンス・フォーラム財団の原くんがアフリカの話をしたから、私はバングラディシュの話をしましょうか。アライアンス・フォーラム財団も、それから私が経営しているデフタ・パートナーズも、事業の目的はひとつ。それは世界中のすべての国々で、健康で豊かな中間層をつくるということです。そういったことに私は関心があるんですね。アライアンス・フォーラム財団がバングラデシュで活動しているのも、デフタで半導体やソフトウェア、通信などのテクノロジーを扱っているのも、全部その目的のためにやっています。
なぜやるかというと、面白いから。だから個人個人がやりたいことを好きにやればいいと思います。今はわりと平和な時代だから、世界の危険な地域に行かなければ、特に日本国内にいれば安全ですよね。ですからリスクがないと考えて、好きなようにやればいいんです。
バングラデシュに5Gネットワークを普及させる
バングラデシュでは、途上国で一番最初の5Gのネットワークを普及させます。北海道の約1.6倍の面積のバングラデシュには、約1億6千万人が住んでいる。しかし、そのうちの40%くらいが字を読んだり書いたりできないという非常に貧しい環境で暮らしています。読み書きができなければ、中産階級になれませんよね。その結果、ずっと貧しい状態でいると。原くんたちが行っているミクロなボトムアップのアプローチも重要だけど、マクロでガサッと変革していくやり方も重要なんですね。だから両方サンドイッチでやっていく。
私はこのことをするため、2005年にブラック・ネットというインターネットのISPを使った通信事業をバングラデシュで始めています。2005年ごろというのは、途上国の貧しいところへの支援はODAか、または宗教団体や慈善団体の寄付しかなかったんですよ。でもどちらも長続きしない。ODAも政権によっては、政府が腐敗していてほとんど国民に届かない場合も多いですよね。ですから、私は第三の方法を考えた。
それは民間事業を作って、その会社が利益を出すと。BRAC(バングラデシュ農村向上化委員会)という、貧困部の学校22,000か所やクリニック3,000か所などを運営しているNGOに株式を4割持ってもらい、例えば1億円の利益を出せば4000万円は彼らに行くようにしました。NGOは株主がいませんから、配当を出す必要がないので、すべての資金が教育や医療に使えるという、どこにも存在しなかったモデルを自分で考えて実際につくったんですね。
帯域の一部をNGOやベンチャーに開放したい
そして今度は5G。約3,000か所の基地局をもう決めてきました。この決定は結構早くて1日で決めるんです。もちろん準備はあるんですよ。でも準備をしてもトップがすぐに決めてくれないから困る、といった経験のある方も多いでしょう。そうならないようにするために私も覚悟を決めて、最高幹部を集めて取締役会議を開いて、CEOと合意する様子をみてもらい、全部そこで決定するのです。
5Gですから、帯域がたくさんある。そのうちの1割〜2割は世界中のNGO、またはベンチャービジネスで遠隔医療や遠隔教育をしたい人達に自由に使ってもらいます。その中で優れた事業モデルを持っている人には、今度は彼らの意思で、インドやアフリカ、ラテンアメリカなどの諸国に出ていってもらう。そういったことを個人、ないしは民間からやっていこうと思っています。
〈了〉
【プロフィール】
原 丈人(はら じょうじ)
内閣府参与、アライアンス・フォーラム財団 代表理事。1985年に、米国公益法人のアライアンス・フォーラム財団をスタンフォードで創立。同財団は国連経済社会理事会の特別協議資格を持ちアフリカでの栄養不良改善、金融制度改革や貧困層の自立化ための事業を行う。さらに、日本の民間セクターと途上国首脳を結び付けるため2012年からアフリカCOMESA加盟国19か国、太平洋島嶼国14か国、イスラム57か国などの大統領、首脳が集まるAFDP途上国首脳・経済人会議を主宰してきた。
国連政府間機関特命全権大使、米国共和党ビジネス・アドバイザリー・カウンシル名誉共同議長、ザンビア共和国大統領顧問、首相諮問機関の政府税制調査会特別委員、財務省参与、経済財政諮問会議専門調査会会長代理などを歴任。一貫して株主資本主義に警鐘を鳴らし、公益資本主義の実現を提唱。 著書に『増補 21世紀の国富論』(平凡社)、『公益資本主義』(文春新書)などがある。
【団体概要】
一般財団法人 アライアンス・フォーラム財団
所在地(日本オフィス):〒103-0023 東京都中央区日本橋本町2-3-11 日本橋ライフサイエンスビルディング5F
設立年:1985年