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2024年11月07日(木)

【イベントレポート】地域企業の人手不足対策最前線~人が採れる・辞めない組織づくりの秘訣を語る~

経営ハッカー編集部
【イベントレポート】地域企業の人手不足対策最前線~人が採れる・辞めない組織づくりの秘訣を語る~
全国法対応・デジタル化支援機構主催の「経営者・管理部門のための企業の法対応 早期対策サミット2024 in 福岡~2025年施行の雇用関連法改正でいま取り組むべき人手不足で事業を止めない組織づくり」が、9月に開催されました。

同イベントでは、法対応のみならず、地域企業の採用や定着に役立つ講演も開催され、キューサイ株式会社 人事・総務部次長 西澤健氏と、フリー株式会社 常務執行役員 髙村大器が登壇。

生産年齢人口が減少し、人手不足や採用難が叫ばれる中、真に採用や定着につながる取り組みとは何なのでしょうか?「【特別対談】地域企業の人手不足対策最前線~人が採れる・辞めない組織作りの秘訣を語る~」の講演をレポートします。

データから分かる企業の深刻な人手不足


髙村:
フリー株式会社の髙村と申します。当社はクラウドサービスで、DXや働き方の改善を支援しています。

もともと大企業様向けのシステム会社で営業をしていましたが、個人的なバックグラウンドとして、家族が地元の建設業や病院、飲食店で働いており、地域の中小企業の役に立つ仕事がしたいと思い、2016年にフリーに入社しました。

西澤
キューサイ株式会社人事・総務部の西澤と申します。キューサイは「まず~い、もう一杯!」というCMの、青汁のイメージが強いと思います。現在は青汁だけでなく、「ひざサポートコラーゲン」などのヘルスケア事業、「コラリッチ」などのスキンケア事業がメインとなっています。

私はずっと営業畑で、通信販売営業や法人営業を担当し、2年前に人事部へ異動となり、今に至ります。本日は採用や人材の定着について、私が経験したことをご紹介できればと思います。

企業の人手不足の状況と深刻度

髙村:
まずは、人手不足の現状と対策について、調査から見えることをいくつかご紹介します。日本商工会議所と東京商工会議所が、中小企業の人手不足の状況について調査した結果、70%近くが「不足している」と回答しました。深刻度については、60%以上が「非常に深刻」もしくは「深刻」であると回答しています。

企業の人手不足への対策

髙村:
対策としては、「正社員の採用活動強化」と答えた企業が70%近くあり、トップ回答です。一方で「業務プロセスの見直しによる業務効率化」、DXを含めた「IT化等設備投資による生産性向上」がそれぞれ30%程度の回答で、深刻な人手不足を感じているものの、対策に取り組み切れていない企業も多いようでした。

キューサイ様は、この調査を見て人手不足に対する実感はありますか?

西澤:
私たちも、事業所(拠点)によっては人手不足を感じるケースが増えてきました。特にグループ企業の「キューサイファーム島根」では、青汁の原料であるケールを作っているのですが、高齢化が進み、なかなか人が集まりにくくなっています。

ナビ型からオファー型に転換し“攻めの採用”を展開


髙村:
ありがとうございます。それではここからは人手不足対策のヒントにもなる、キューサイ様の採用や定着の施策について伺います。実際の取り組みを教えていただけますか。

西澤:
まず、私が人事部に異動してすぐ行ったことは、“攻めの採用”への転換です。

以前は、求人サイトに情報を掲載して、学生さんたちからの応募を待つ「ナビ型」だったのですが、企業側から声をかける「オファー型」に変えました。バランスの良い母集団形成と、自社にマッチした人材を狙って採用するには、オファー型が適していると感じたためです。

採用活動で大事にしているのは、コミュニケーションの質です。オファーを出す際には、定型文を一斉送信するのではなく、その人に合わせて1人ずつテキストを変えています。

オファーを受けてくれた学生さんとは面談を通して、コミュニケーションを取りますが、良いことも悪いことも丁寧に説明します。なぜ悪いところも伝えるかというと学生さんが納得して入社できる環境を作るためです。

また、45歳の私では学生さんはどうしてもかしこまってしまうので、面談では、学生さんに近い年代である1〜3年目の若手社員と話してもらい、聞きたいことを質問できるようにしています。
そのことによって、内定承諾率も、その後の定着率も大きく変わります。

また、学生さんのオファー後のWeb上の動線も調べるようにしていて、タイパを気にする学生さんが欲しい情報を分析し、採用サイトやナビサイトには短くわかりやすいコンテンツを用意しています。

入社3年後定着率90%以上を実現する施策とは?


髙村:
ありがとうございます。事前の打ち合わせでお伺いした、他部署との連携も印象的でした。よろしければ、お話しいただけますか?

西澤:
人事部のメンバーが他部署について学ぶ機会を設けています。例えば、営業部の会議に参加することで、どんな人材が必要なのかがわかります。他部署への理解度が高いことで、学生さんからの質問に対してもクイックに答えることができ、信頼関係が作りやすくなると期待しています。

髙村:
現場を理解することが、面談でのコミュニケーションに活きているのでしょうね。当社も、人事部のメンバーが商談の場に同席することで、学生さんへの説明がうまくなったという事例がありました。非常に効果があり、真似しやすい取り組みですね。

人材の定着については、どのような取り組みをされていますか?

西澤:
オファー時の面談以外では、新卒社員の入社後、1〜6年目ぐらいの社員をエルダーとして配置しています。これによって、課題や悩みも含めてコミュニケーションを取りやすい体制を作っています。
また、ストレスチェックやエンゲージメントについてのアンケートを年数回行い、必要に応じた面談も行っています。これらの施策も功を奏し、入社3年後の定着率が約90%以上となりました。

理念・ビジョンから考え、具体的な施策に落とし込む


企業の魅力因子「組織の4P」


髙村:
ありがとうございます。今までの採用や定着のお取組みについて、「組織の4P」というフレームワークを使って、改めて整理させてください。

こちらは、採用や定着にもつながる企業の魅力因子を示したもので、1つ目が「Philosophy」で、理念・目的・ビジョンでの魅力。2つ目が「Profession」で、仕事・事業のおもしろさでの魅力。3つ目が「People」で、人材・風土による魅力。4つ目が「Privilege」で、待遇・働き方・環境面での魅力です。

非常にわかりやすいフレームワークなので、引用しています。先ほど伺った取り組みは、Peopleによるものだと感じたのですが、いかがですか?

西澤:
たしかに、人材や風土も大事にしていますが、まず採用の軸としたのは、Philosophyでした。当社の理念は、“年齢を重ねることを前向きにとらえ、こころ豊かに生きる”ことを目指す「ウェルエイジング」です。それを実現するために、今あるヘルスケアとスキンケア事業以外にも、大きな柱をどんどん作っていかなければなりません。

これまではトップダウンで動いていた組織でしたが、それだけではなかなか新しい市場を作ることができないものです。そこで、自発的・自主的に考えて行動できる人材を生み出していきたいという考えをもとに、「そういう学生さんたちを採用していく必要があるよね」「そういう社員を育成していく必要があるよね」と落とし込んでいきました。ですので、PhilosophyとPeopleの合わせ技になっています。

髙村:
具体的な施策・取り組みだけではなくて、理念やビジョンに紐付けて考えるのが大事なんですね。

西澤:
その点が最も大事です。理念やビジョンを考えないまま、具体的な施策を行っても、目的達成のためにはならないと思います。企業ごとに理念やビジョンは異なるので、本当にその取り組みが必要かどうかを考えることがポイントになります。

働き方や労働環境の改善にはテクノロジー・DXが活きやすい


髙村:
「4P」のなかで、Philosophy、Profession、People、その企業の本質的な魅力が出るところで、特に時間をかけて取り組むべきポイントだと思っています。

一方で「土台となる労働環境や待遇面の改善になかなか取り組み切れていない」とおっしゃる企業様も非常に多くいらっしゃいます。私たちとしては、Privilegeこそ、ある程度の正解があり、DXが活きやすい領域だと考え、ご支援しています。

私たちに対するご要望で多いのは「バックオフィスの人員がノンコア業務ではなく、コア業務にフォーカスできるようにしたい」というもの。次に「バックオフィスの人員だけではなく、一般社員も生産的な働き方に変えたい」というご要望です。その上で、採用や定着を強化するために、例えば「なかなか自社で福利厚生を運営できていないけれども、コストを下げつつシンプルに運用できる制度を一緒に作ってほしい」といったご要望に対応しております。

このように、テクノロジー・DXは環境整備が得意分野であり、Privilegeの魅力をシステマチックに構築できるのが特徴です。その部分を私たちに任せていただき、PhilosophyやProfession、Peopleなどの本質的な部分を、企業様に注力いただくのが、理想だと考えています。

キューサイ様では、テクノロジーを使った取り組みは何かしていますか?

西澤:
テクノロジー・DXによる効率化は、やはり土台となる部分で有効だと考えています。私からメンバーへは「基礎的なところはテクノロジーに任せて、考える部分や創造する部分に力を入れましょう」と伝えています。

最近では、採用を担当している社員も、ChatGPTを活用するようにしています。学生さんたちへのオファー文も、ChatGPTを活用してたたき台を作りつつ、各個人向けにアレンジした文章をお送りしています。単に力技ではなくて、テクノロジーを活用しながら人間が考えて業務を進めることが非常に重要になると思います。

経営陣の承認を得て、他部署との協力体制をつくる


髙村:
お聞きしたいことがまだたくさんあるのですが、お時間が迫ってきました。最後のまとめとして、「地方企業が人手不足解消のために今日から取り組めること」について、アドバイスをいただけますでしょうか。

西澤:
繰り返しになりますが、まず理念をもとに、どのような人材が必要なのか、そのためにどんな方法を取るべきなのかを考えることが、重要だと思います。

新しいやり方を会社に導入しようとするときは、社長や役員たちの賛同を得ることがとても大切です。例えば、私たちが求人の方法を変えたいと思ったとき、「会社の目指す方向性に沿って考えた結果、この新しい方法が最適だ」と経営陣に説明し、了解をもらいました。このように丁寧に進めたことで、会社全体の協力を得ることができました。

経営陣の承認を得た後、社員に向けて新しい方針を説明する機会を設けてもらいました。これにより、会社全体で積極的に新しい採用方法に取り組むことができました。新しいことを始める際は、まず会社の理念に基づいて考え、そして経営陣の理解を得ることから始めるのが大切だと思います。

髙村:
人事の方が営業部などの会議に参加することで、現場の理解度を上げる取り組みはすぐできそうと感じましたし、営業出身の方が人事部に異動することが多様な考えを生むことも非常に勉強になりました。本日は誠にありがとうございました。

西澤:
ありがとうございました。

(執筆:遠藤光太 編集:ノオト)


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