消費税の中間申告・中間納付で知っておきたい申告・納付方法や注意点まとめ
消費税の中間申告を行う義務があるのは、前年度に納付した消費税額に基づいて申告が必要と定められた事業者のみであって、事業者すべてに必要なものではありません。
しかし、義務がない事業者や個人事業主でも消費税の中間申告を行うことは可能です。
2019年10月からは消費税の軽減税率制度が始まるため、消費税の申告手続きが変わる事業者も出てくることが予想されます。
そこで今回は、消費税の中間申告と中間納付についての基礎知識をまとめて解説します。
消費税の中間申告・中間納付とは
「消費税の中間申告・中間納付」とは、「消費税の分割納付」「消費税の前払い」と置き換えて考えてみるとわかりやすくなります。
消費税の精算は1年分が原則ですが、納付する消費税額が大きくなると経営に響いてしまいかねないため、分割納付することによって負担を軽減します。
とはいえ、どんな企業でも自由に消費税を申告・納付できるわけではなく、中間申告が認められる企業や、申告や納付の回数、期限は決められています。
中間申告・中間納付の対象となる企業
前事業年度い納付した消費税額が48万円以上の企業は中間申告・納付の対象企業となります。
「前事業年度の課税売上が1,000万円以上」の企業なら消費税の申告対象なので、間違いなく中間申告・納付の対象に入ります。
令和元年(2019年)9月31日までは、「売上税額−仕入税額>60.95万円」で判断することも可能です。
ここに含まれるのは国税のみで地方税は含まれない点には注意が必要です。
中間申告・中間納付の回数(消費税8%)
中間申告・中間納付の回数を決める基準となるのは、前事業年度の消費税額です。
前事業年度の消費税額(地方税を含む場合):年間の申告回数
国税48万円以下(60.95万円以下):0回
国税48万円超400万円以下(60.95万円超507.93万円以下):1回
国税48万円超4,800万円以下(507.93万円超6,095.23万円以下):3回
国税4,800万円超(6,095.23万円超):11回
納付期間
中間納付には納付期限が設定されており、中間申告の対象となる課税期間が終わった翌日から2ヶ月以内に納付するのが原則です。
中間申告が年1回の場合は、課税期間末日の9月30日の翌日10月1日から2ヶ月後の11月30日までが納付期間です。
中間申告が3回の場合
中間申告が3回の場合は事業年度を3分割し、年1回の中間申告と同様の考え方で納付期間を決定します。
課税期間末日:納付期間
1回目6月30日:7月1日から8月31日
2回目9月30日:10月1日から11月30日
3回目12月31日:1月1日から2月28日
中間申告が年11回の場合
中間申告が年11回の場合は、毎月中間申告・中間納付を行い、決算時は以下の計算式で最終納付額を確定します。
差引税額−中間納付税額の合計額=確定申告で納付する消費税額
納付期限は1回、3回と同様に課税期間末日の翌日から2ヶ月以内ですが、4月分は確定申告の時期ということで5月分の納付期限と同じになります。
“課税事業者は、課税期間の末日の翌日から次の期限までに、所 定の事項を記載した消費税及び地方消費税の確定申告書を納税地 の所轄税務署長に対して提出する(注1)とともに、その申告に係る 消費税額と地方消費税額を併せて納付することになります。”
<引用元>国税庁:申告・納付の手続きは?
中間納付額の算出方法
中間納付額の計算方法は「予定申告方式」と「仮計算方式」の2つです。
予定申告方式
予定申告方式とは、前事業年度で確定している消費税額を申告回数が年1回なら1/2、年3回なら1/4、年11回なら1/12に分割して申告する方式です。
税務署からは「消費税及び地方消費税の確定申告書」と「納付書」が送付されてくるので、申告書を作成して納付書で納税します。
仮計算方式
仮計算方式は、1事業年度を中間申告の対象期間として仮計算を行う方式です。
年1回なら6ヶ月を1事業年度、年3回なら4ヶ月を1事業年度とし、毎回本計算と同様の申告書を作成します。
仮計算方式で中間申告を行うことで納付額を減らす効果が期待できるというメリットがある反面、税額がマイナスでも還付が受けられないというデメリットもあります。
注意したいポイント
申告書を提出しない場合
「消費税及び地方諸費税の確定申告書」を提出しないまま放置すると、申告書の提出があったものとして消費税額が確定してしまい、仮計算方式による中間申告はできなくなってしまいます。
納付が遅れてしまった場合
消費税の納付が遅れた場合、納付期限翌日から2ヶ月までは年率7.3%、それ以上になると年率14.6%の延滞税がかかります。
経理処理方法
消費税は「税抜処理」の「税込処理」のいずれかの方法で経理処理されます。
税抜処理の場合は「仮払金」で税込処理の場合は「租税公課」と勘定科目がそれぞれ異なります。
消費税改正後の消費税額と申告回数
令和元年(2019年)10月からは消費税が改正され、一部の品目を除き8%から10%になりました。
申告回数はこれまでと同様ですが、国税と地方税の年税額は以下のようになります。
前事業年度の消費税額(地方税を含む場合):年間の申告回数
国税48万円以下(61.53万円以下):0回
国税48万円超400万円以下(61.53万円超521.82万円以下):1回
国税48万円超4,800万円以下(521.82万円超6,153.84万円以下):3回
国税4,800万円超(6,153.84万円超):11回
“中間申告書の提出が必要な事業者は、個人の場合は前年、法人の場合は前事業年度(以下「前課税期間」といいます。)の消費税の年税額(注1)が48万円を超える者です。(注2)”
<引用元>国税庁:中間申告の方法
まとめ
消費税の中間申告・納付方法の選択は、事業を円滑に運営していくためにもよく考える必要があります。
1回の納税額をおさえたい場合などにとても役立つ制度なので、消費税改正をきっかけにもう一度把握している内容を整理しておきましょう。
“法人税の中間申告とは、前期に納めた法人税額の半分を事前に国に支払う制度のことを指します。事業開始日より6ヶ月を、経過した日から2ヶ月以内に支払います。”
<引用元>経営ハッカー:法人税の中間申告、誤解しやすい6つのポイントをプロが解説